WEB拍手お礼シリーズ19
<騎士団時代のセイネリアの噂編>








☆☆騎士団時代のセイネリア☆☆ (1/3) ※ランダム表示

 ある日、シーグルとグスがたまたま『強さ』について話をしていると、そこにテスタが割り込んできて、こう言った。
「そういや、団の話で強いっていったら、昔セイネリアって奴がいましてね」
 グスは即『そいつの名を出すな』という顔でテスタを睨みつけたが、テスタは全く気にしない。
 シーグルは聞いた瞬間は表情を強張らせはしたものの、静かに息をつくと真剣な顔をテスタに向けた。
「テスタ、そのセイネリアという者が騎士団にいた時の話、よければ聞かせてくれないだろうか。騎士団最強、と呼ばれていたんだろ?」
「えぇまぁ。ただ俺は隊が違ったんで、マトモに奴の戦うとこ見たのは団の練習試合の時だけなんですがね。いやぁもうね、出鱈目に強くて、槍で相手をふっとばしまくったのはまだいいとしても、剣を合わせた相手をそのまま体毎吹っ飛ばした時にはヘンな笑いが出ちまいましたね。しまいにゃ試合前に睨まれただけで棄権する奴も出るくらいでね」
 シーグルはごくりと喉を鳴らす。だがテスタは、そこでにやりと少々下品な笑みを浮かべた。
「でまぁ、この練習試合ってのは、団内の人間以外にも、その身内か、もしくは騎士やら貴族なら見にくる事が出来っじゃないですか。そうすっとギャラリーにいわゆる貴族の淑女様方ってのがいる訳で、セイネリアの奴があんまりにも圧倒的に強すぎるもんでね、その淑女様方の声援が試合を重ねる度に奴に集まっていきまして……でまぁ勿論あいつがどの部門でも優勝したんですが、その後はそれらの女達に囲まれてえらい騒ぎでしたねぇ」
 シーグルは僅かに眉を寄せて微妙そうな表情を作る。
 グスは頭を抑えてため息をつき、テスタはシシシと更に下品に笑った。
「いやぁ、でもそれで面白い話があんですよ。あの男はまぁ、貴族様でも役職持ちでもないのに、入った最初からそりゃー態度はでかいわ失礼極まりない言動だった訳で、当然、奴の隊の隊長にもその態度でしたンで、そりゃもう最初は目の敵にされてたんですよ」
「それは……そうだろうな」
「それで、隊長さんは仕事じゃいつでも一番重労働の役目を奴に押し付けてたようなんですが、それは全くあいつは苦にしてなかったと」
「まぁ、それはなんとなくわかる」
 セイネリアの馬鹿力を分かっていれば、それはそうだろうとしかシーグルも思わない。
「で、例の練習試合にその隊長さんの奥方も来てて、セイネリアにすっかり熱を上げてしまいやしてね……で、どうもヤったらしくて」
「それは、問題じゃないか?」
 言いながらシーグルは眉間を軽く押さえた。
「いやぁそれがですね、その隊長さんは貴族とはいっても婿養子だったんですよ。それで奥さんの方が立場が強いってんで、まぁ、相当いろいろ言われたらしくて……その日以後、隊長さんはすっかり立場なくして、奴に対してへこへこご機嫌伺いするくらいに成り下がったって話があるんですよ」
「…………」




☆☆騎士団時代のセイネリア☆☆ (2/3) ※ランダム表示

 シーグルはグスと共に、テスタからセイネリアの騎士団時代の話を聞いていた。
 どうにも微妙な表情しか出来ないシーグルが、ため息をつきながら口を開く。
「テスタ……どうせなら、あいつがどんな風に強かったかという話がもう少し聞きたいんだが」
 言われたテスタはにかっと笑って頭を掻く。
「おっとそうでした。……ただまぁ、さっきもいいましたが、俺ァ隊が違いましたからね、奴が戦ってる姿は練習試合の時見ただけで、その練習試合も次の年からは出なくなりましたンで、俺が実際見た話は言えないんですが……」
 そこで明らかに残念そうな顔をしたシーグルを見て、グスがため息を付きながら話に入ってくる。
「騎士団最強って言われるようになったのはその練習試合がきっかけですが、本気であいつが皆から恐れられるようになったのはトーラン砦から帰って来てからですよ」
「トーラン砦というと、派遣部隊か。そんなに大きな戦いがあったのか」
 トーラン砦は、バージステ砦と並んで蛮族との小競り合いがよく発生する場所である。だからシーグルとしては当然そういう結論となる。
「いえ、戦闘規模自体はそこまでじゃなく、実際こっちからの隊が出ていってすぐに収まったんですがね。……相当、現地でのセイネリアの働きがトンでもなかったらしくて、その後からですよ、団内全体で、あいつにだけは逆らっちゃならないって言われるようになったのは」
「そんな……だったのか?」
「俺も、隊が違うんで噂だけしか知らないんですが……馬鹿みたいにでかい盾もって一人で突っこんでいった後、突っこんだその一角を潰して、そっから崩れて敵は敗走、戦闘終了って流れだったそうです。こっち側の半数近くは戦闘せずに終わったくらい、奴のせいであっさり終わったそうですよ」
「そうか……」
 その場面がセイネリアなら簡単に想像出来て、シーグルはぶるりと軽く身震いした。
「帰ってきた後はもう、奴に対する同じ隊の連中は、腫れ物に触るような態度でびくびくしてましたからね、噂がどこまで本当かは知りませんが相当ヤバイ働きだった事は確かですよ」
 だがそこで。シーグルとグスが真剣な顔で話す最中、じっと黙って聞いていたテスタが唐突に話にオチをつけた。
「ちなみに隊長、セイネリアがいた隊が、なぜまたその程度の小競り合いに駆り出されたかってぇとですね、どーも奴が団の幹部連中の誰かの奥方に手を出したらしくって、それに旦那本人が怒って『死んでこい』くらいのつもりだったらしいですよ。同じ隊の連中はとばっちりで一緒に行かされた状態らしくてですね、だから以後、余計にそこの隊長さんも、隊の連中も、奴に対して低く出るようになったらしいですな。お願いだから、大人しくしててくれってね」
「…………」
 がははと大笑いするテスタをしり目に、グスとシーグルはやはり微妙な表情で軽く眉間を押さえた。




☆☆騎士団時代のセイネリア☆☆ (3/3) ※ランダム表示

 シーグルはグスとテスタから騎士団時代のセイネリアの話を聞いていたのだが、どうにも最後は女性問題で終わる話に、なんだか疲れたように大きくため息をついた。そのついでについ、口を滑らせて言ってしまう。
「というか、そんなに奴はあちこち手を出していたのか……」
 そうすれば、その手の話題には瞳を輝かせて、テスタが身を乗り出してくる。
「いやそりゃもうね。あの練習試合の後は、相当淑女方に手を出したらしくて、いろいろトラブルがあったんですがね。それ以外にもまぁ、そこまで周りから一目置かれる存在になると黙っててもいろいろよってくるモンでしてね、女もそうですが、男でもちょっと容姿に自信ある奴とか、あちこち寄ってきたのは大抵食ってたって話ですがねぇ」
 その後に、『当時は、実に羨ましい話だと思いましたが』と本気で羨ましそうな顔をして言うテスタに、シーグルは返す言葉もなくて口元だけで作り笑いを返した。
「まぁでも、そこまでの後ろ盾もない平民出の若造が、あれだけハデにあちこち手を出してたのに無事でその態度のままだったってのが奴の一番ヤバイとこだったと思いますがね。奴を飼い犬にしようとした貴族騎士が、自分の侍女送り込んで懐柔しようとしたらしいって話の時も、暫くして路頭に迷うハメになったのはその貴族騎士の方だったんですからね。見たとおりの強さ以上に、ヤバイって皆言い合ってましたね」
 確かに、この旧体制の腐った騎士団にあって彼が彼のままであれたという事は、あり得ない程に驚くべき事だった。
「確かに、セイネリアという男は、強い男だったんだろうな」
 シーグルの呟きと、その口元に浮かんだ微かな笑みに、グスとテスタはこっそり顔を見合わせたのだった。

 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

 シーグルが去った後、グスとテスタは小声でこそこそと話しだした。
「おいテスタ、お前隊長にカマかけようとしただろ」
「さぁねぇ」
 噂話に詳しいテスタが、シーグルとセイネリアの噂を知らないはずがない、と思ったグスは、少し怒って相棒の不良親父を睨んだ。
「で、お前はどう思ったんだ?」
 嫌そうな顔で続けてグスがそう尋ねると、テスタはやっとこちらを向いて、にやっと少々下品な笑みを浮かべた。
「さぁねぇ。他に付き合ってた連中の話聞いても隊長は呆れるだけだったからなぁ、隊長が奴に惚れてるってセンはないたぁ思うがな。ただ嫌ってるわけでもなさそうだからな、正直分かんね」
「なんだよ、この手の見極めは得意だったんじゃねーのか」
「ま、人の心ってのは複雑なのよ。俺でも全部は分からねぇさ。……ただまぁ、あの男に対してあんな噂立ってるのに、向こうを悪くも良くも思ってなさそーってのは、思った以上に深い間柄っても取れるがね」
「おい、深いってのはなんだ。場合によってはシャレにならんだろっ」
「まー、分かんねーよ、後はセイネリアの方と話して見るしかねーだろよ」


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騎士団編書いてた頃の割りと初期のお礼文章かな。

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