剣は愛を語れず
※この文中には性的表現が含まれています。読む場合は了解の上でお願いいたします。





  【13】



「あぁ……ふうぅっ……」

 中に注がれる感触を耐えるように、シーグルがセイネリアの胸の上で短く呻く。ぎゅっと握り締められた拳だけは力の入れすぎでぶるぶると震え、彼の歯が僅かに噛み締められるのが見えた。
 そして、きつく瞑られたその瞳の端に、僅かに光る水滴も。
 完全に体から力を抜き、セイネリアの胸に顔を乗せて荒い息を吐く彼に、セイネリアは手を伸ばす。
 乱れた銀色の髪に手を掛けて、思わず撫ぜてしまってから、その手に力を入れて彼の髪の毛を鷲掴みにする。

「ツゥッ」

 顔を上げさせて、顔を合わせる。
 まだ虚ろな青い瞳と目が合えば、彼は歯を噛み締めて視線を逸らした。

「いつまで寝てるつもりだ。まさかこれで終ったとでも思ったのか?」

 言ってから、自ら起き上がって、セイネリアはシーグルの体も起き上がらせる。
 それでも力無くセイネリアに凭れかかっている彼を、追い払うように突き飛ばせば、シーグルの体は簡単にベッドの上に倒れ込んだ。
 シーグルが去った自分の体を見下ろして、セイネリアが顔を顰める。

「酷いな」

 セイネリアの固い筋肉に覆われた腹は、シーグルが吐き出した体液で濡れていた。
 シーグルはベッドに倒れたまま、荒い息を吐いて、瞳を宙に向けていた。

「シーグル」

 呼ばれれば、ぴくりと彼の腕が反応する。

「お前が汚したんだ、お前が処理しろ」

 シーグルの頭がゆっくりと上がって、セイネリアの方を向く。
 それにセイネリアは出来るだけ冷たい声で命令する。

「お前が出したものを舐め取れと言っているんだ」

 シーグルの瞳が僅かに見開かれる。
 それでもすぐに彼は顔を下に向けて、重そうに体を起き上がらせる。
 そのまま、動物のような体勢で、這うようにセイネリアに近づいて行くと、顔を突き出してセイネリアの腹を舐めだす。
 ぴちゃと、猫がミルクを舐めるような音が響く。
 まだ整い切らぬ息の中、舌を出して、彼は自分が吐き出したものを舐めとって行く。
 セイネリアはそんな彼を見下ろして、そして、大方彼が舐めとれたと見てとると、ベッドサイドのテーブルに置いてあった皮袋からあるものを手に取り、体を伸び上がらせた。

「……な、に?」

 シーグルがセイネリアの腹から顔を離し、その感触に驚く。
 セイネリアは構わずに、手に持っていたものを彼の中に押し込んだ。

「う、あっ……何を……やめっ……」

 入れられた衝撃に体を震わせるシーグルを見下ろして、セイネリアは手の中のもので彼の中を突き上げる。狭い彼の中は押し込むと拒絶するように押し返してきて、先程セイネリアが中に放ったものを一緒に溢れさせる。

「やだ……やめ……」

 ぐぷ、ぐぷ、と何かがシーグルを貫く音が彼の体の中に響く。
 シーグルは体を固くして、ただその感覚に耐える事しか出来ない。

「何だと思う? 気になるなら自分で手を伸ばして触ってみればいい」

 言われて直後に、シーグルの手が恐る恐る自分の下肢へと伸びて行く。自分の中をかき回す何かを指先で探り、その感触を確かめる。
 セイネリアの唇が笑みに歪む。

「触り慣れたものだ、分かるだろ?」

 セイネリアはシーグルの手を引いて、強引にそれを握らせた。
 それでシーグルもそれが何であるかを理解する。

「あ……」

 分かった途端、シーグルの顔が強張る。
 歯を噛み締めて、心に競りあがる感情を耐える。

「剣を手に取る事を止めたんなら、そこに銜えるのがお似合いだ……ねぇ、しーちゃん?」

 セイネリアの笑い声が部屋に高く響く。

 ――それは、短剣だった。

 恐らく、シーグルが普段右腰に差している、一番短くて、一番速く抜く事が出来る使い慣れた彼の武器だった。ずっと自分と、騎士になる前から鍛錬を共にし、毎日欠かす事なく手入れをしてきた武器のうちの一つだった。
 丁寧に鞘はベルトで固定されているらしく簡単に抜けないようになっていたが、その短剣の柄の部分がシーグルの体の中を貫いていた。まさかという思いを、鍔にあるシルバスピナ家の紋章の浮き彫りが指に当たって肯定する。
 シーグルの手毎短剣を持って、彼の体を突き上げていたセイネリアの手が離れる。
 当然、それで抽送の動きは止まるが、手から力が抜けていこうとするシーグルに、セイネリアが冷ややかに命令した。

「抜くなよ。それでイクまで自慰をしろ。もう後ろだけでイけるだろ、お前は」
「――ッ」

 体を支えてベッドについている手を、シーグルは固く握り締める。
 顔を下に向けたまま、歯を噛み締めて、自分の中に埋まっているものを力を入れて掴んだ。

「う……」

 ず、と力をいれて押せば、体の中に固い物質が押し込まれて行くの感じる。
 手を離せば、身体に押し出されて抜けて行き、押せばまた中に埋まる。ず、ず、と体の中を擦ってくるその感触に、体は確かに快感を感じて疼くものの、喘ぎは噛み締めた歯と共に嗚咽になる、瞳からは枯れた筈の涙が落ちる。

「ぐ、う……うぅっ……」

 ぽたりと、落ちる水滴をセイネリアの瞳が見つめる。
 セイネリアの視界の中で泣きながら手を動かし、腰を揺らす彼の体は、酷く頼りなく、まるで子供が叱られて泣いているようだった。
 それでも彼は、命令された通りに短剣で自分の中を突く。上がる嗚咽の声と手の動きは比例して、激しく出し入れされる短剣の動きと共に彼の声は大きくなる、涙がぽたぽたと彼の動きに合わせてシーツに跡を残していく。

「シーグル……」

 セイネリアの手が、彼の体を押さえ、その顔を上げさせる。
 予想通り、涙に濡れた青い瞳がセイネリアの前に曝される。
 虚ろだった瞳は意志の光を取り戻し、噛み締めた唇が彼の心を映す。
 言葉は出なくても、睨むように見つめ返した強い瞳は、彼の心が絶望の淵から浮かび上がってきた事をセイネリアへ伝えた。
 セイネリアは彼の顔を見てその琥珀の瞳を細めると、乱暴にその体をベッドへと放り投げた。
 その拍子に、彼から抜けた短剣がベッドの下にまで落ちて、カラカラと乾いた音を鳴らす。

「惨めか? 悔しいか? そう思う心がまだあるなら、何故、お前は諦めた」

 倒れたまま、ただ見上げてくる青い瞳を強く睨んで、セイネリアはその上に圧し掛かる。

「全部諦めて、俺に全て明け渡して、何故それで終りにしようとした?」

 足を掴み、わざと彼が痛みを感じる程思い切り開いて胸に押し付け、曝された秘所に猛る肉塊を押し付ける。

「や、うあぁぁっ」

 既に解れ切った中は、それでも強引に押し込めば痛みを生む。
 悲鳴を上げて顔を左右に振る彼を、セイネリアは、彼の中に埋め込んだ熱とは真逆の冷たい瞳で見下ろして言う。

「自分にはもう何も守るモノがない? 何の価値もないだと? よく言えたものだ、お前が何を失ったんだ? 五体満足のまま、ご立派な貴族の身分も、お前が守りたいと願っていた者達も、何も失ってはいないだろう」

 出来るだけ乱暴に、出来るだけ強く、セイネリアはシーグルの中を抉る。
 喘ぎよりも悲鳴が上がるように、殊更強く彼の中を擦り上げる。

「何もないという事を本当に分かっているか? 明日自分が生きている事さえ保証されない立場というのをお前は知っているか? 誰にも知られず、誰にも必要とされず、転がる石ころと同じ立場の人間の気持ちが分かるか?」

 苦しさから逃れようと、シーグルが暴れる。
 シーグルの手が足を押さえつけるセイネリアの手を掴み、それに爪を立てる。
 彼自身も無意識だろう、首を激しく振り、肩を跳ね上げて、足をばたつかせて只管抵抗を繰り返す。
 セイネリアはその彼を、力ずくで押さえつけて腰を叩きつけ、ただ一方的な行為を続けた。

 やがて、叫ぶ声も枯れたシーグルが、声にならない悲鳴を上げる。
 その中に叩きつけるように腰を押しつけて、セイネリアは彼の中へ己の欲を注ぎ込んだ。





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後半はエロとはいってもエロさ重視ではなかったので、更なるエロを期待してた方にはすいません。
次回は、セイネリアさんの見せ場ラスト。



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