怪我と痛みと悲劇と平和と
<警備隊西第2隊>
※性的ないたずら、くらいのエロがあります。





  【後編】



 オールベイが部屋に帰れば、部屋のもう一人の住人は思い切り爆睡中だった。
 部屋に入ってもベッドに近づいても見下ろしてても突いてみてもザウンが起きる気配はない。大きめのベッドの真中で堂々と大の字になってそれはそれは気持ちよさそうに寝ている姿は、なんだか自分の中に溜まっていた毒気がすっかり抜けていくくらいの破壊力があった。

「平和だなぁ」

 思わずそんな言葉を呟いてしまってから、ベッドサイドに座り込んで指で頬やら鼻やらをつついてみる。最初は反応がなかったザウンも、しつこく繰り返せば鼻をふがふがしてみたり眉をぴくぴく揺らしたり手で払おうとしたりして、その小動物じみた反応もまた楽しくて可愛らしい。

「ザ・ウ・ン君〜」

 こそっと耳元に小さく囁いてみれば、やっぱり起きないもののくすぐったかったらしく、ザウンは顔を顰めて耳周りを手で払う。彼が動く度に『むー』とか『うにー』とか舌ったらずで子供みたいな声を上げるのも面白い。耳の中に軽く指を入れてくすぐってみれば嫌がって顔を振って、止まればまたくすぐって、顔を振ってを繰り返している内、とうとうオールベイは声を出して笑ってしまった。

「本当に平和だなぁ……でもここまで起きないとちょっと癪だよね」

 だから今度はわざとそっと、起きないようにザウンの服を捲っていく。腹が見えたらへそを指で軽くくすぐって、胸が出ればその小さな赤い突起を舌でそっと舐めてやる。

「ん……」

 そうすればザウンは軽く身を捩るから、今度は本格的に舌でそこをくるんで甘噛みまでしてやる。更には指に唾液をつけて、もう片方の突起もその指で摘まんで擦ってやる。

「は……あ……んぁ……」

 明らかに甘い声が寝息に混じって聞こえ出して、オールベイは更に調子にのって舌で強くそこを擦る。吸って、回りをくるくるとなぞって、先端をしつこく擦る。

「ふぅ、ん……はぁ」

 大の字になって寝ていたザウンが大きく身を捩って寝る体勢が横向きになる。そこでオールベイは自分もベッドに乗り上げると、彼の横に寝転がって、その体を後ろから抱くようにひきよせ、片手で再びザウンの胸を弄って、もう片手をザウンの下肢に持って行った。反応を示している彼の性器を手の中に納め、ゆるく擦り上げながら、感じて体を丸くしていくザウンの耳元に唇を寄せる。

「ザウン君、起きないなんて酷いじゃないか」

 とはいえ、言っている言葉の割に起こすつもりのない小さな声では、やはりザウンは起きずにくすぐったがるだけだ。けれど今度は耳を払うような余裕もなく、与えられる体への刺激の方に悩まし気な声を上げながら、ザウンは首を竦めて体を丸めてどんどん小さくなっていこうとする。

「起きないからいたずらしちゃうよ」

 言いながら、首を竦めたせいで肩に埋もれかけた彼の耳朶をオールベイの唇が食む。勿論愛撫の手は止めず、絶えず彼の敏感な場所を弄りながら、ちゅ、ちゅ、と音が出るように耳朶を銜えて吸う。

「あ、ぅ、ぅ……ん、ふぁ……あ、ん……」

 甘い声は涙声のようにもなってきて、耐えきれないのか、彼の足がシーツを掻きだす。びくん、びくんと揺れる腰に自分の股間を押し付け、くちくちと耳の中に唾液の音を響かせてやる。手の中はいつの間にかしっとりと湿ってきていて、ときおり水音まで聞こえてきていたから、最後にオールベイは少し強く、速く、両手共に触れているものの先端を擦った。

「や、あ……ん」

 手の中に温かい液体が溢れる。大人になり切れていない未発達な体が、びくん、びくんと、震えて小刻みに揺れる。オールベイは暫くそんな彼の体を抱きしめて、彼の体から力が抜けたのを見計らってから腕を緩めてやる。それから、指を濡らす彼のものを舐めながら、胎児のような恰好で眠る青年の顔を覗き込んだ。

「起きないのは残念だけど、ザウン君が可愛かったからいい事にしとこっか」

 言ってまた鼻をくすぐってやれば、幼さの残る青年は、ふにゃん、とまた面白い声を出してくれて、オールベイは喉を震わせて笑ってしまった。






 朝――目が覚めたらいつも通り隣に隊長がいたから、ザウンはまだ寝ぼけた頭でベッドから起き上がった。

「ザウン君、おはよう」

 どうやら隊長も起きたらしく、そう掛けられた声には反射的に返事をする。

「はい、おはようございます」

 そうしてベッドから起き上がって、ちょっとだけ肌寒さにぶるっと震えたザウンは、そこで初めて自分が裸である事に気付いた。

――あぁ、昨日隊長とヤったからか……。

 と、考えてから一気に目が覚めて自分の記憶を辿る。

「え? あ、いやなんで俺裸……ってか隊長、俺昨日どうしたんです?」
「うん、昨日のザウン君はすっごい可愛かったよー」
「えぇぇええっ?!」

――俺昨日は早く寝て隊長が仕事から帰ってきたら起こされるだろうから……って起きた記憶がないっ。

 そうなれば出る結論は一つ。

「まさか隊長、俺が寝てる間にっ?!」
「どうかなー、でもザウン君すごい可愛くて良かったよー」
「ヤったんですか? てか俺ヤられてたのに寝てたんですか?」
「どうだったろうねー。でも何やってもザウン君は起きなかったかなぁ」
「やっぱりヤったんですね、寝ながらですか? どこまでですか?」
「さぁどうだろー」

 ザウンとしては真剣に聞いているのだが、隊長はにこにことはぐらかしてくるだけだ。そして結局最後まで、ザウンは隊長の口から真実を聞き出す事は叶わなかった。






 昨夜の自分に何があったのか気が気でないザウンだったが、それで少しどんよりとした気分で食堂に向かえば、彼を待つ災難はそれだけでは済まなかった。
 いつも通り隊長の隣で席について、食べ物を前にしてちょっと気分を持ち直したザウンは、向かいの席に座ってきた女性に驚いて挨拶する。

「あ、エレーナさんおはようございます」
「あぁ、おはよう」
「昨日はありがとうございました」
「あぁ、足はもう大丈夫か?」
「はい、全然大丈夫です。体力の方も回復しました」
「そうか、それは良かった」

 アッテラ神官であるエレーナは、言動は男前だが顔は結構美人で、ただ長身でがっしりした体格の為、ぱっと見テデースのような美青年に見えなくもない。勿論ザウンはこの女傑に肩幅も身長も負けている訳だが、流石に隊の男性陣の戦士体型連中からすれば細身であるし、言動が男前でも食事をする姿はがさつな男共とは違って一口が小さく優雅である。今まで仕事で一緒になった女性から見てもその姿は上品で、実は結構イイ家の出身なんじゃないかなーと思ってしまう。
 ちらちらと彼女の食事風景をみつつ、女性慣れしていないザウンとしては、目の前にいられるとちょっと恥ずかしくてなんとなく緊張してしまうのは仕方ない。

「時にザウン君、君の今日の仕事は午後からだと聞いたが」
「あ、はい、そうですが」

 そこで、ざわり、と。
 何故か食堂の皆の視線がこちらに向いて、謎のざわめきが広がる。ザウンは不審には思うものの、目の前の女性が顔を上げて微笑み掛けてくれた所為でその疑問も何処かへ消えてしまった。

「そうか、では午前中は少し私に付き合ってくれないか?」
「はい、構いません」

 美人に笑顔を向けられて舞い上がるなというのは無理な話だが、周囲のざわめきが更に大きくなった事にザウンは気づかない。更にそのざわめきをよく聞けば、『ご愁傷さま』とか『かわいそうに』とか言っているのだが、やはりその時のザウンの耳には届いていなかった。
 ちなみに隊長はいつも通りのゆるーい顔で、だらだらとかったるそうに食事をしていて、こちらの話にあまり興味はなさそうにしていた。
 だから、ザウンが事態のおかしさに気付いたのは、その後のエレーナのセリフを聞いてからであった。

「君は我がアッテラ神の信徒の割には鍛え方が足りなすぎる。我が神の信徒として恥ずかしくないよう、そのひ弱な体を私が少し鍛えてやろう」

 今度の笑みは背景にゴゴゴゴとか聞こえそうな怖いプレッシャーがあって、ザウンはたった今即答で了承してしまった事を後悔する。そうしてやっと周囲の声が耳に入ってきて、ザウンは更に戦慄する事になる。

『やっぱり……エレーナさんにアッテラ信徒ってバレたらこれだからな』
『可哀想にな、あの人のしごきは鬼だからな』
『冒険者時代は[鬼神エレーナ]って言われてたんだろ、怖い怖い』
『あーでもこれで当分こっちにおはちが回ってこなくて安心だわー、新人君に感謝』

 嫌な汗をだらだらと垂らしながら、ザウンはぎこちなく隣に座っている隊長に顔を向ける。目で助けを訴えていれば、気づいた隊長はにへらっと笑みを返してくれた。

「まぁまた今夜ザウン君が寝ちゃって起きなくても、こっちはそのまま楽しむから大丈夫だよ〜」

 いややっぱり昨日ヤったんですかどこまでですか今日もヤる気ですか俺持ちませんよってか助けてくれないんですか〜ーー……と頭の中でぐるぐるぐるぐる思考が回る。回り過ぎて収集が付かずに混乱しまくる。

「何をしている、早く食え。終わったらいくぞ」

 と、前のエレーナに言われてぎこちなく食事を続けるものの、頭は混乱し過ぎて真っ白状態に近い。

「今夜は絶対に起きれなそうだからもうちょっといろいろ楽しめそうだよね」

 そんな隣の隊長の能天気な声の不穏な発言に、スプーンを持つ手が震える。

「そんなに怯えるな、午後の仕事が出来るように昼前には終わりにしてやる。まぁ疲れすぎて昼は食えないかもしれないが、その分少し倒れていれば丁度いいだろう」

 ふっふっふ、と不穏な笑みを浮かべる美人は怖すぎた。
 そうして震えて固まるザウンに、食事が終わった隊員達が次々と肩を叩いて去っていく。

『じゃ、がんばれよ』
『もうだめだと思ったら気を失ったふりをするんだ』
『弱音を吐くと余計しごかれるからな、意地でも笑え』

 各自アドバイスを耳打ちしてくれるものの、それは脅しじゃないのかとつっこみたくなる内容で、ありがとうございますなんて言える訳もない。

――俺、無事明日を迎えられるんだろうか。

 なんて悲観的な気分になりながら、ザウンはスプーンをスープ皿の中に突き立てながら天井を仰ぎ見る事しか出来なかった。



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そんな感じで、お仕事シーンはアレですが基本はほのぼの話なんですよ。



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