超愛のリレー小説

−−−たまに私だけの天使−−−

第一話  (たまごだワン作)

  『・・・・え・・・』

  「えっ?」

  『・・・・え・・・・沙恵・・』

  「だ、誰?」

  『・・・沙恵・・・・沙恵・・』

  「誰なの、私の名前を呼んでるのは?ひょっとして・」

  「沙恵、沙恵!いい加減に起きなさい!」

  「へっ?」

突然それは聞き覚えのある声に変わる。目を開けるとママが私を揺すっていた。

  「う・・・ううん。もうちょっと。」

  「なに言ってんの!早く顔洗ってご飯食べなさい!もう、いつまもお寝坊さんな

んだから。」

  「ううぅ・・・、はーい。」

もうちょっと夢みてたかったのに。あまりにもドラマチックじゃない結末。

ってもうこんな時間!手早く身支度を済ませて、リビングへダッシュ!

牛乳を一気に飲み干し、トーストを一枚失敬して今度は玄関へダーッシュ!

  「ちょっと、ちゃんとすわって食べなさい!」

  「ごめーん。学校間に合わないから食べながら行くー。」

トーストをくわえながら急いで靴を履き玄関を出る。

  「言ってきまーふ!」

こんなふうに、私、都立小河野高校二年生、『森下沙恵』の一日が始まる。

校門までたどりついたところで、いつもの声に足を止める。

  「沙恵ー!おはよー!」

親友の『尾山由佳』が走ってくる。

  「あっ、由佳。おはよー。」

  「ねえねえ、昨日のドラマ見たー?」

  「見た、見た。あれって意外な展開よねー。」

なーんて、とりとめのない会話をしながら教室へむかう。

よーし、今日も一日がんばるぞ。

今日の一時間目は私の苦手な数学だ。

先生が黒板に問題を書きながら

  「誰か前に出て解いてもらおうかな。えーと・・・」

教室中に視線を走らせる。はっ、しまった。一瞬、目と目が合っちゃった。

  「じゃあ、 森下。やってみなさい。」

あーあ、やっぱり。なんてついてないんだろう。私がうなだれていると後ろの席から

  「沙恵、沙ー恵っ。これ、もってきな。」

小さな紙がそっと渡される。由佳からだ。私だけにわかるように軽くウインクしている。

女の子にしては珍しく数学が得意な由佳はこういう場面でよく助けてくれる。

持つべきものは親友よね。と思いながら由佳にウインクを返し、黒板へ向かう。

手の中のメモを見ながら(勿論、先生にばれないように)ぎこちなく数式を書いていく。

  「うむ、よく出来てるな。よろしい席にもどって。」

ううー、由佳様ありがとう。って、え?

 『沙恵ちゃん。帰りにアイス。ごちそうさまー。』の文字がメモの一番下に・・・。

由佳様、お願いだからダブルはやめてね。今月お小遣いがピンチなの。

お昼休み。いつものように仲のいい女の子達とお喋りしながらお弁当を食べる。

  「そう言えばさぁ、そろそろ学園祭よねぇ。」

  「そうそう、今年もやるのかなぁ。」

  「やるって、なにを?」

  「やだぁー、ライブよ、ラ・イ・ブ。」

今まで黙って聞いていたのに”ぴくっ”っと反応してしまう。

それを由佳に気付かれたかも。やばーい。

  「んー?沙恵ちゃん。何かなー、今の”ぴくっ”って。」

  「な、なんでもないわよ。ほんとになんでもないんだから。」

あからさまに動揺しちゃった。もう、由佳ったら全部知ってるくせにぃ。

  「なになに?沙恵ー、去年なんかあったの?」

  「沙恵ー、ネタは上がってるのよ。なにもかも話して楽になりなさーい。」

ひーん。一体なんのネタが上がってるのよー。そんな『じと目』で見ないでー。

  「まあまあ、みんな落ち着いて。この子にはこの子の『青春のいちページ』ってのが

   あるんだからさぁ。」

由佳、ナーイスフォロー!って、話をふったのも由佳じゃないのよ、もう。

  「片桐君でしょ。」

どくんっ! いきなりのその名前に固まってしまう。

自分の心臓の聞がこえてくる。

  「片桐って、あの片桐?」

別の娘が意外そうに言った。私はただ黙ってうつむいてしまった。

きっと私、耳まで真っ赤になってる。もう否定しようがない。

  「あんまり騒がれてないけど、彼、結構人気あるみたいだよ。」

  「私、同じクラスだけど、隠れファン多いよ。」

  「でも、沙恵がねぇ。意外だったわ。あんたああいう不良っぽいのが好みなの?」

  「不良じゃないもん!」

とっさに大きな声を出してしまった。一瞬『しーん』となるが

  「話してごらんよ。みんなで応援してあげるから。」

周りのみんなが、とても優しい目で私を見てるのがわかった。

勿論由佳も。私は意を決して話し始めた。

そう、それは、去年の後夜祭。

うちの高校は後夜祭でのコンサートが名物になっていた。

私は最初、あまり興味なかったんだけど

「どーしても見たい!」という由佳にひっぱられて体育館へ入った。

ちょうど二組目のバンドが演奏を始めようとしている。

バンド名は『クレア』全員一年生のわりに、なかなか堂々としていた。

彼の名前は『片桐亨』。ボーカルなのかな。

  「ほらっ、始まるよ。」

正直あまり期待していなかった。演奏は御世辞にもすごくうまい

という程じゃなかったし、私も特にロックが好きというわけでもなかったから。

でも、ボーカルが入ると突然雰囲気が一変した。

なんて奇麗な声。遠いステージじゃない、まるで目の前で歌っているみたい。

その声に体全体が包まれているような感じ。とても幸せな気持ちになる。

スポットライトに照らせれた汗がきらきら光ってる。

  「奇麗・・・・」

どれくらいたっただろう、暫くのあいだ瞬きもせずその場に立ちすくしていると

  「沙恵、ねー沙恵ってば! どうしたの?ぼーっとしちゃって。」

  「えっ、ああ、由佳。」

  「ああ、由佳。じゃないわよ。ほんとに大丈夫?」

  「うん、平気。それより何?」

  「何って、ふーー。もういいわ、帰りましょ。」

気が付くと、由佳のお目当てのバンドは終わってたんだって。

第二話/後夜祭のハプニング (キチントさん作)

「由佳さま、わたし、由佳さまに今まで隠してたことがあるの・・・」
「・・・・なに?」
「・・・・じ、実は・・・」
「な、何よ」
「私ね、私ね、あの日以来ライブハウスに通ってるの・・・」
「ライブハウスって、あなた知ってるでしょ!この前、隣のクラスの田中クンが
見つかって停学になっちゃったの」
「うん」
「駅前の『MAXXON』ね。聞いたことあるもん。クレアがよく飛び入りで
ライブしてるって」
「ごめん、ホントにごめんね、今まで黙ってて・・・」
「薄々感づいてはいたわ、沙絵ってば彼氏もいないのに週末キャンセルが多いんだもん」
「バレてたか」
「ハーゲンダッツ抹茶アーンド、バニラね」
「やーん」
「さ、いよいよクレアよ。2年生がトリでやるなんて前代未聞ね!」
「さあ、朝から並んで手に入れた最前列、へたっぴなバンドの演奏に耐えた甲斐が
あったってものよ!」
「ではー、いよいよー、さいごをしめくくるのはー」
「きゃー!きゃー!」
「沙絵ってば、浮いてるわよ!みんなみてるっ!」
「やーーん」
「クレアー!」
「曲はー“インヴィジブル・ラヴ”!」
「きゃー!きゃー!きゃー!」
「♪俺を見ているおまえの目はー、きっと俺を飛び越しー
奴の姿探してるのさ、ohー、届かないブルウーース♪」
「♪君のくれた約束それはー、きっと俺の知らないー
奴の心追いかけるのさ、ohー、聞こえないブルウーース♪」

「きゃー!片桐さーん!」

「サンキュー! 最後の曲に行く前にみんなに伝えなきゃならないことがあるんだ。
今日限りで俺達この小河野高校を退学して、活動に専念する。プロを目指すんだ!」

「いやーーーん!ちょっと待って、片桐さーん!」

私は駆け出した。そしてステージに上がり片桐さんを目指してまっしぐら。そして、我を忘れた私は、私は・・・

あまりに非道なおれ。あしたはどっちだ!

つづく



第3回 黒闇淵の告白 (最早爽然作)


 
 ここはどこだろう?なんて、知ってるくせにあたしは。眠れない夜はここにくるしかないもの。
 都立小河野高校の、ここ。後夜祭で、あの人は唄っていたわ。
 そして、行ってしまった……。
 早いものね、あれから一年半も経とうとしている。
 夜空を見上げれば、星さんたちがいっぱい。音を鳴らしてくれてるみたいね。もしかして、泣いてくれてる?あたしのために。
 あたしは、そう泣きたいのだ。子供みたく、わぁわぁ声にしたい。
 会いたい、会いたくてたまらないのに。一人で夜空に向かって、
 「好き」
と、叫ぶだけなんて悲しすぎるわ。
 でも、そうすると星さんたちが泣くのをやめて励ましてくれるの。きらきら輝くこんぺいとうになって、甘く胸を満たしてくれるわ。
 風も優しく吹いてくる。暖かい。もう、すっかり春よ。
 ここに通うこともない。
 あなたは現在、なにをしているの?プロになるって上京したきり、噂も運ばれてこないわ。
 どうにもなっていないのなら、会いに来て欲しい。あたしの許へ。この苦しい胸のうちを聞いて欲しい。
 ざぁ、と急に風が強くなった気がした。それも一瞬のこと、なにも変わらない夜空の下、誰もいない高校のピロティにいる。と、思っていたの。
 「森下…さん?」
 きゃああぁぁぁーーーーーーーー。
 どうして、どうしてここに片桐さんがいるの?信じられない。えいっ、とほっぺをつねれば、やっぱり痛ぁ。夢じゃないみたい。
 いるんだ、いまホントに。想いが届いたのね。恋って、不・思・議。
 信じられないのは、それだけじゃないの。会いたかったんだって、このあたしに。由佳にじゃないのよ、正真正銘に『森下沙恵』によ。何度も聞き返して、確認しちゃったくらいだもん。そのたびに片桐さんは何度も強く頷いてくれたんだ。
 嬉しいぃぃぃーーーーーーーーーー。
 思わず口にしちゃった。本人が目の前にいるのに。
 でもしょうがないよね。会えただけでも天にも昇りそうだったんだよ。それだけじゃなくて、
 「きみにとても会いたかった」
 なぁーんて言わちゃうんだもん。星さんたちのところまで飛んでいけそうだった。良かったね、との声が降ってきたみたい。夜空に向けて、ありがとうと呼び返したいくらいよ。
 あんまりにもはしゃぐあたしの様子に、片桐さんは笑ったわ。ちょっと照れてるみたいで、かわいいの。でもね、ちょっと疲れているみたいなの。
 だから訊いてみた。どうして片桐さんわ、ここへきたのっ、て。
 すると、事情を語ってくれた。長々と、後夜祭から今日に至るまでをはなすの。
 いろいろ有ったみたい。でも要はプロにはなれなくて戻ってきたのよね、うん。やっぱり無理なのよ、あんな下手なバックが演奏ではなれないのよ。
 想い出すわ。後夜祭のステージで『クレア』がいっちゃう、て聞いて、あたしは思わず飛び出した。片桐さんのもとへ一直線よ。
 ところが周りのメンバーが邪魔をした。ギターなんてひどいのよ。おもいきり殴りつけたの。おかげで、鼻血ブーよ。客席からは、このドブスって
やじられて。ううん、ベースもドラムのひともあたしに向かって同じセリフを投げつけて来てたわ。最大の恥辱とは、あの時を言うのよね。
 でもそのおかげで、あたしのこと覚えてくれたんだ。そして、今ここに一緒にいる。
 がんばろうよ。あたしは心をこめて励ます。
 ショックよね。『クレア』がプロになるなんて。それがボーカルだけ入れ替えてなるなんて。ひどい話しよ。
 けれども、いい機会なのよ。うん。プロになったからって、それで生活できるようになるとは限らないし。甘い夢はいつまでも追い続けさせるわけにはいかないわ。あたしのために……。
 はっ、と思った。あたしは想い出した。なんで一人でここに来たかを。
 打ち明けなきゃいけない話しがある。正直に、なにもかも打ち明けなくちゃならないの。
 片桐さんが待っていてくれている。優しく微笑んで、砂糖菓子みたいな気持ちにさせる表情だわ。
 驚かないでね。沙恵、正直に打ち明けます。嘘はつけないもの、片桐さんにわ。きっと彼なら受け止めてくれる。だいじょうぶよね、うん。ファイト、ファイト、さ・ぁ・え。いっきまーーす。

「あたし、妊娠してるのーーー。しかも、誰の子だかわからないーー

ーつづくー