東京公演回想記

 その日の私はやけに興奮していた。
それもそのはずだ。
7年間あこがれていたバンドのライブをあと数時間後に体験できるのだから。
でも、興奮してると言ってもはしゃいでるのではない。
心の奥底ではやけに冷静な自分が居た。
その日は仕事が夜勤だったため、先ほどまで寝ていたからか?
それと、この後仕事に行かなくてはいけないと思う気持ちかもしれない。
友人と新宿まで車で行き、そこから電車に揺られながら、一緒に行く彼にいかにRUSHが凄いかを説明する。
彼には何度かRUSHの曲を聴かせたのだが、どうもゲディーの高音域の声が苦手のようだからである。
(彼とは高校時代バンドを組んでいて、その後もまたバンドを組んでいる)
目的の駅に降り立ち、改札を通り、流れに身を任せつつ武道館を目指す。
歩きながら周りを見渡す。
「この中の何人かは、一緒なんだな・・・」
そう思いながら歩いていく。
武道館に着くと相変わらずのダフ屋が声を上げ、入り口付近でTシャツなどを売っている。
ここでチケットを取り出し入り口を探す。
「南、S列の5番って何処だ?」
ちょっと迷いながら入り口発見。
そこから階段を上っていき、席を発見。
「ここからじゃほとんどステージが見れないな・・・」
(実際ステージの3人は親指ぐらいだった)
「ちょっと残念だけど、生で見れるんだからそれだけでもいいや・・・」
そう自分に言い聞かせる。
それにしても今夜は外人が多い。
(在日米軍の兵士達がかなり来ていたらしい)
前の方でこの時間から騒いでる。
紙飛行機は飛ぶし、かなりみんな興奮している。
さすがに今まで冷静だった自分も興奮してきている。
「早くみたい」
「早く聞きたい」
もうアイドリングは済んでいて、何時でも準備万全だ。

 明かりが消えた。
いよいよだ。
THE SPIRIT OF RADIOのイントロが響きわたる。
歓声も響きわたる。
「うぉー!」
全身に電気が走るように鳥肌が立つ。
いよいよ待ちに待ったライブの幕開けだ。
やはりゲディーはスタインバーガーのベースを使っている。
かなりベースの音が響いてくる。
やっぱり生の音は迫力があるな。
アレックスはストラトキャスターを使っているな。
ニールのドラムセットは凄い!
前後、左右をドラムに囲まれている。
きっと後ろはシンセドラムなのだろう。
2曲目はSUBDIVISIONだ。
重厚なシンセが響く。
このイントロはやはりかっこいいぞ。
かなりタウラスの音が目立つな。
本当に、アルバムに忠実なんで感心してしまう。
独特なドラムから始まるTHE BODY ELECTRICだ。
うん?今ゲディーが「・・・・トウキョウ、アリガト」日本語で喋ってた。
やっぱりこう言うときは少しは日本語で喋るんだな。
THE ENEMY WITHINと続いて次はTHE WEAPONだ。
アレックスが踊ってるよ。
やはりゲディーがあまり動けない分、ステージアクションはアレックスが担当するんだな。
それにしてもこれが3人で演奏している音とは恐れ入ってしまう。
彼らこそ最強のロックトリオだな。
RED SECTOR Aの間ではマグネシュウムがたかれ、もう凄い盛り上がり。
そしてお次はお約束のCLOSER TO THE HEARTの演奏だ。
私も周りでは一緒に歌ってる。
もちろん私も歌ってる。
アルバムで聞くのとは違い、かなりパワフルだ。
ニールは後ろ向いてシンセドラムを叩いてる。
エンディング間近では3人が集まっている。
もう、大歓声。
そして歓声が終わらないうちに私の好きなYYZの演奏である。
この曲では3人のフルパワーの演奏である。
特にゲディーはキーボードを弾かなくても良いため、弾きまくり。
おお、ここでニールのドラムソロだ。
凄い!
凄いドラミングだ。
やっぱりこの曲はかっこいいぞ。
そして曲はTOM SAWYER へ。
もう私の気持ちはレッドゾーンに入りっぱなし。
この曲の終了後ゲディーが、
「ドモアリガト、Thank you very much,Good night!」
と言っている。
まだ聞きたいぞー。
もっと演奏してくれ。
アンコールだ。
みんなの気持ちも同じだ。
凄い手拍子と歓声である。
しばらくして3人が出てきた。
相変わらず歓声は続いている。
「ドモアリガトゴザイマス」
軽いMCの後、サウンドチェックのようにおのおのが音を出した後、
「I see red・・・」
RED LENSESが始まった。
また歓声が沸き上がる。
途中の間奏の部分では、ニールのドラムに合わせてゲディーがスタインバーガーを弾きまくっている。
続けざまに、VITAL SIGNSが始まった。
アレックスのカッティングが印象的な曲である。
アルバムより更にパワフルである。
もう、たたみ掛けるように次の演奏だ。
FINDING MY WAYである。
これを少し演奏した後、IN THE MOODの演奏に移る。
この2曲はシンプルながらちょっとひねりが入った曲だが、さすがに演奏し慣れた曲のためか凄いノリである。
演奏が終わり「Thank you very much TOKYO・・・」「Bye Bye!」
そうゲディーが言った後3人はステージ左に去っていった。
まだみんな聞きたいのか、手拍子が収まらない。
俺だってまだ聞きたい。
まだ聴きたい曲がいっぱいある。
しかし、3人は戻ってこない。
これでRUSHの東京公演は終わったみたいだ。
諦めて友人と出口に向かって歩き出す。
そして武道館を出て駅に向かって歩き出す。
みんな満足してるみたいだ。
もちろん俺だって満足してる。
興奮して友人に向かって、早口で話しかける。
RUSHの曲を知らない彼にとってはなかなか乗れず、大変だったみたいだ。
相変わらずの変拍子とかで。

 ああ、それにしても良かった。
これでこの後仕事でなければ最高なんだけど・・・
そう思い、家に向かったのである。

これが私の記憶の中の東京公演である。
皆さんの中にはこのとき同じ場所にいた人もいると思います。
また、違う場所で同じ体験をした人もいると思います。
これを元にあなたの記憶がよみがえれば嬉しいです。
中には残念ながらこの貴重な体験を出来なかった方もいると思います。
私のあやふやな記憶ですが、夢の中でRUSHのLIVEを体験して下さい。(ライブビデオなどを見ながら)


本当は来日してくれるのがみんなの願いだとは思いますが・・・