HINOKIO 
音楽家 千住 明
05/03/28

千住さんを知ったのは、今からちょうど一年前。
そう、あれは『鉄人28号』のダビングを迎えようとしていた時のこと・・・・・

・・・・・やるだけのことはやった。
が、依然このキビシイ局面を打開できぬまま、ついにダビングを迎えてしまった。
ブラック・オックスに完膚なきまでに打ちのめされた鉄人を見守るがごとく、無力感と奇妙な達観に支配されていたファイナルステージ。
そこにひとつの調べが流れる。
こちらの諦観を、問答無用に鼓舞する調べ!
打ち砕くは鉄人のテーマ!

うう・・・圧倒的だ・・・ こちらの満身創痍を微塵も感じさせない、威風堂々たる出で立ち!
わき目もふらない、余所見もしない、一直線な意志を感じる!まさにHERO!!
こ、これはひょっとしたら・・・

それが千住さんの作ってきた音楽だったのです。
そして、この時の期待に再び応えてくれたのが『HINOKIO』の音楽でした。

まあ、見事でした。
まず、こちらが編集でこうしたい!と思ってもやりきれなかったところ、うまくいってないところを救いまくり、さらにその上を行き、照れることなく、臆することなく、堂々と見得を切ってくれるのです。

『HINOKIO』の音楽は、当初、仮の編集のものに監督の秋山さんが、自分でセレクトした既成曲を当てはめて提示しました。
これがまたあきれるほどに、音楽なりっぱなしです。
その数なんと100曲!!
アホか!!

まあ、これはあくまでMAXの箇所ということだったんですが、それでも千住さんは、「監督のやりたいことがよくわかりました」とそれを受け取りました。

その後、監督と千住さんで色々と打ち合わせを重ね、まとめる所はまとめ、省けるところは省いて、音楽構成を練っていきました。
そして、いざダビングとなった時に完成された音楽を聴いてみると、これがまた見事にハマっているのです。
曲数は半分ぐらいに減っていましたが、それでも一般の作品からすると多い方です。
しかしながら、耳に心地よく、とても効果的だったのです。

こちらの不利を逆手にとって、一気に攻勢にたたみかけるとは・・・・・ おのれ諸葛亮め!


そうですね。
やはり照れちゃダメなんだと思いました。
弱みを見せてはいけない。
映画は観客を騙してナンボです。ウソ〜と思われたらそれで負け。騙して騙して騙しぬいた先にある真実に誘ってこその映画。
芝居がヒドい!とか、素材が悪い!とか言って責任転嫁するなんてのは論外!! スンマセン!

千住さんの音楽は、監督のやりたいことに最大限の技術と引き出しを以って応えることこそ真のプロなんだ!ということを身をもって教えてくれたような気がします。


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