ジョゼと虎と魚たち 
 
boy meets a scenario
03/02/19

『福耳』をやってる頃に、井上Pから「いいホンがあるんだよ」といって読ませてもらったホンが、『ジョゼと虎と魚たち』だった。
井上Pの言葉にウソはなく、本当に良いホンだった。
この世界に入ってホンでしびれたのは、『ラヂオの時間』と原田監督作品ぐらいだったので、ちょっと震えた。
派手さや大ドンデンがあるわけではないけど、滲み出る切なさとたくましさがグッとくる内容だった。
「うお、この作品やりて〜・・・・やれないかな・・・・・他の人に渡したくない・・・・・渡すもんですかっ!」と心は移り変わり、井上Pに懇願した。
ただし、ここで問題がひとつ。
スケジュールが『マナに抱かれて』とモロダブリだったのだ。
思い悩んだオレは、お互いのスタッフに迷惑をかけてはいけないと、「探さないで下さい」の置手紙を残して旅立ったが、本当にダレも探してくれなかったので、寂しさのあまり「やらせてください!」と泣いてすがった。

『ジョゼ』のホンを書いた渡辺あやさんは、「円都通信」のシナ丼とゆうシナリオ公募企画から、めでたくデビューされることになった主婦さん。上記のサイトで彼女の面白いコメントが読めるので、興味のある方はぜひ。
 
あの乳母車、何が乗っとんやろなあ?
03/02/25

まだ半分ぐらいしか揃ってないけど、一発目のつなぎをやってきた。

しょっぱなが雀荘だったんだけど、そこに座っている面々に見慣れた顔が。
特に、『幸福の鐘』でいっしょに編集をやったSABU監督が映っているのは、なんとも言えない奇妙なものが。その奇妙な素材をつなぐオレもまた奇妙。んでもフィルムに映ったSABUさんは、見た目や雰囲気に、他では得がたいものがあるね。
で、その他の卓を囲んでるメンツが、妻夫木君に真理アンヌさんにアクマこと大倉君。
今回、大倉君のほかにもキャプテン大田こと荒川良々さんも本屋の店主役で登場する。
懐かしい顔が見れて個人的にも嬉しい。

妻夫木君をイジるのは今回が始めてなんだけど、彼、いいッス。
なんか久しぶりに若い男優で「いいな」と思える存在に出会えたよ。
ま、『ジョゼ』のホンが彼を想定して書かれたと思しきあがりなんで、当然といえば当然なんだけど。
なんちゅうか、こう、自然。
素ってことではなく、芝居として自然。
イジってておもろい。
彼をよく知るスタッフにしてみれば、「いつもの妻夫木」ということなんで、なんだろう、キムタクみたいなもんなのかな。
ま、そうは言ってもオレは今回が初めてなわけだし、ここんとこなかった素材なんで、楽しませてもらうとしよう。
 
あんた、トカレフ知らんか?
03/03/08

『ピンポン』にスーパーカーとゆうカップリングが見事成功したアスミックの小川さんが、今作でも仕掛けるのが「くるり」
またぞろオレの知らないバンドなんだけど、今回はありものオンリーとゆうわけではなく、何曲か作ってもらえるそうなんで、あがりが楽しみ。
撮影はほぼ終わっていて、その素材も通して観てみたんだけど、なかなかよいカンジですよ。
その中にひとつ、妻夫木君が歩道を歩いてる長回しのカットがあるんだけど、手前を車がバンバン通っててシャッター(人物の手前を横切ること)してるんですよ。
んで、これから芝居が高まるとゆうところで、どうゆうわけか車の往来が止まるんですよね。演出したみたいに。
助監督の五十嵐さんに聞いたら、「信号の偶然」って言ってたけど、あれはやっぱり映画の神様が降り立ってくれた瞬間だったんかなあ。
感動しちゃった。

それにしても、妻夫木君、キスうまいね。
 
食中毒の4割はサルモネラ菌が原因なんや
03/04/03

音楽を担当する「くるり」に会った。
3人来た。
これが正規のメンバーかどうかは知らん。
でも、話を聞いてると「やるな」ってカンジの人たちだった。
どれぐらい「やる」かというと、「よろしくお願いします」と始まった打ち合わせで、メンバーのひとりがタバコを吸おうとしてたんだ。
とてももの静かで、岸田さんのとなりでひっそり座ってたんだけど、いきなりライターを最大出力で噴出させて、軽〜く前髪をチリチリパーマにするぐらい「やる」わけです。

そもそも最初に台本だけ読んだ状態で、くるりが書き下ろしてくれた新曲が、いきなりオレの中ではドンピシャだったのだ。
まあ、最終的には変わってくるかしらんが、あれだけでもくるりに対する信頼度は高かった。

この打ち合わせの前の日に、岸田さんはVを初めて見て、ギターを構え、自然と舞い降りてきた曲をザックリ乗せてみたんだそうだ。
そこで降りてきた曲は5曲。

最近では全編を通して30箇所ほど音楽が乗ることも珍しくないんだけど、『ジョゼ』に関してはこちらも、そんなに音の入る余地は無いと思ってたんで、そこいらへんの温度差は少なかった。

岸田さんが「継母のつくった子守唄」と言った例えも、こちらの「近からず、遠からず、ふたりを見守るような曲」とゆうリクエストを射抜いていた。
音楽のあがりが非常に楽しみ。
 
ジョゼと虎と魚たちとビルとテッドの大冒険

04/01/15

好評のようですね、『ジョゼ虎』
好評のようなんで、コメント復活!
アンド、こぼれ話を少々。

以前、犬童監督と話したことがある。
「もし、大衆芸能の中心が関西であったなら、現在のドラマはもっとストレートになっていたかもしれない」と。

作品中、ジョゼが恒夫に唯一弱さを見せるシーンがあるんだけど、あれも関西弁だから成立したところがある、とゆう意見に思わず納得してしまった。
特殊な生い立ちがそうさせたかは定かではないけれど、ジョゼは強い。
そんなジョゼが、「あなたが好きよ、ここにいて」と言ってしまっては、やはりそれはジョゼではないのだ。
あすこに至る経緯がキチンと描かれていたとしても、あすこで「あなたが好きよ、ここにいて」では、やはり観客は興ざめしてしまうだろう。
エロいことも、あけすけのないことも、惚れたはれたの口上も、何故かスッと聞ける魔力が、関西弁にはあるのだ。
笑いに関してもしかり。
吉本ばかりが関西ではない。
以前、新世界を徘徊したことがあるんだけど、そこで乗ったエスカレーターに「ここでウンコをしないでください」という張り紙がしてあった。もう、なんか、一周してしまった達観さと、生活臭の強い生暖かさ、それでいて愛着の持てる魅力とゆうか、憧れが、関西にはある。いや、そうゆう笑いが関西の笑いとゆうわけじゃないんだけど・・・
『ジョゼ』の笑いも、もちろん犬童監督のフィルターを通ったものだから、あれをたとえてイコール関西とはならないけど、「もし、大衆芸能の中心が関西であったなら?」という言葉には、それを見てみたい!と思わせる力があることだけは確かだ。

うん? 偏見かなぁ。


『ジョゼ』には、博多弁も出てくる。
福岡生まれの妻夫木君の口から出るその博多弁は、また違った魅力がある。それは、博多弁の魅力とゆうより、普段標準語でしゃべってる恒夫の、体面とゆう名の検閲を飛び越えた無防備さだ。経由無しの直結神経。

そうか、無防備さか。
自分が広島育ちだからかもしれないが、どうも標準語の「好き」とゆう言葉には誘導めいたものを感じてしかたがなかった。だから余計に、この無防備さからくるリアリティに心を許してしまったのかもしれない。
アンチ・東京ですな。もう12年も住んでるのに!
新井君も、関西出身の助監督、五十嵐さんに何度もダメ出しされながら関西弁を喋った苦労が報われるというもの。
荒川さんのセリフはね、もう、そうゆうところを超越しているからね、ここでは不問。

まあ、そうゆうことで、これからはもっと方言を精力的に取り入れてみませんか?というお話。取り入れればええ、っちゅうもんでもないけれど。

編集に関しては、おっと、ここからは多少ネタバレを含むので、未見の人は飛ばしちゃって下さいね。
いいですか?いきますよ?

えっとですね、 シーン単位の構成は割と早くに決まりました。
シーンの構成とゆうのは、シーンの中でのカットの並びですね。
それは決まったんだが、そのシーンを、今度は全体の話の中でどう並べるか?とゆうところに
難儀しました。
ひとつは、 ジョゼが一度恒夫を拒絶してから、再会するまでの恒夫の気持ちの揺れ動き。
もうひとつは、再会以降。香苗もからんでくるしね。
後者の方で、ちょっと好評だったのが、ジョゼと香苗が路上で対峙したところでバッサリ切って、「一年後」とする構成。対峙して何が行われたか?は見せない形。
「抜きな、オマエが早いか、オレが早いか、だぜ」と言わんばかりの西部劇カット以降、まったく見せないでその後に突入すると、その間にあったことを観客が好意的に解釈してくれるんじゃないかという期待と、香苗をあそこまで悪役にして良いのか?とゆう憂慮。それと、相対的に対峙のシーンとその後の喫茶店のシーンが長いという意見が多かったため。
でも、喫茶店のシーンで香苗が放つ、「障害者のクセに」という台詞が映倫にひっかかり、切らざるをえなくなったので、あすこのクダリでの香苗の毒が薄まってしまったんだ。
で、結局、喫茶店のシーンはコンパクトにして、対峙のシーンはキッチリ見せようとゆう意見に落ち着いた。
ネットの感想を見ると、その選択は正解だったようだ。対峙を後見したフキ(小学生の女の子)も残せたし。映倫に感謝だね。

映倫問題といえば、ファックシーン。
冒頭早々に恒夫がノリコとからむシーンがあるんだけど、そこで見せる恒夫の腰の動きが映倫の目に止まった。しかたなく切ったんだけど、代替カットもなかったので、ただたんに「早い男」になってしまったのだ。妻夫木君、ごめんなさい。

でも、彼は本当にご飯はおいしそうに食べるし、キスもおいしそうにむさぼるよね。久保田Pは、「妻夫木君がご飯をおいしそうに食べているのを見てるだけで幸せ」と言っていたし、監督の奥さんは、「あんなキスをされて帰る女はタトゥ」って言ってたよ。いや、言ってなかったかな。どっちでもいいや。
とにかく、欲望に無邪気な男を演じつつも、それをイノセントでもって許させてしまう魅力が彼にはあるのだ。
いや、ホント、恒夫はあなた以外に考えられません。
パンフレットのインタビューで犬童監督が、「作品はひとつの強烈なパーソナリティが支配する。『ジョゼ』においては、あやちゃん(脚本家:渡辺あや)なんじゃないかな」みたいなことを言っていたけど、オレの個人的な感想では、『ジョゼ』を支配していたのは妻夫木君だと思うな。『アイデン』は峯田君。今やってる『銀のエンゼル』は小日向さん。この作品もキャストに恵まれた作品なんだけど、小日向さんは群を抜いてイイです。やっぱ、キャスティングって大事よね。

 


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