ピンポン  3
 
「眼鏡の上から叩かないで下さいよ。非常識だ」
01/11/30

この間インタビューを受けたよ。

なんかねえ、デジタルシネマの特集らしいんだけど、いやあ、緊張するね!やっぱりあたいは字とか編集とかでワンクッション置いて伝えるほうが向いてるね、うん。単に本番に弱いってだけなんだけど。
でもさあ、デジタルシネマっつっても各パートが個別に開発してっから、なかなか足並み揃わなくて逆に手間取るところもあるんだよね。スタッフもみんな我流だし。デジタルって銘打つ以上、マスターがいっこガン!ってあって、そっから各パートが引き出してまたマスターに戻すって方法が取れるといいんだけどね。現段階で一番面倒なのが変換だからね。ま、いいや。
でもさあ、よくメイキングとかで作品のことを聞かれて応えてる役者さんとかいるじゃない?「毎日がエキサイティングだったよ」とか「脚本を読み終えた日は興奮して眠れなかったわ」とか。あたいダメなんよ。これはもう性格じゃね。インタビューでも『ピンポン』について聞かれたけど、言葉を探しちゃってしょうがないし、「ここを観てよ!」ってことも言うけど、言わなくていいことも言っちゃうからねえ。ありゃあ使えないな。ディレクターさん、ごめんなさい。

さあ、そんな『ピンポン』も8月の頭にクランク・インしてから早4ヶ月が過ぎようとしてます。12月のダビング月間を間近に控えて、いよいよせわしなくなってきたよ。今週はほぼ『ピンポン』の合成入れ込み編集作業に追われてたし。
ダビング本番はクリスマス前後だから、ほんと『ピンポン』とともに年収めってカンジですなあ。
原田組のクランクアップは除夜の鐘を超えるのかどうか?という不安はさておきね。

さて、現段階の『ピンポン』だけど、制作のアスミックさんが精力的に試写アンケートをやってくれたおかげで、かなり具体的な意見を徴収できました。ありがとうございます。
やっぱこういうのって貴重だよ。

総体としては、予想してたよりは好感触だったんで、それは嬉しい誤算だったなあ。うん。
んで、その中にあった否定的な意見を尊重してですね、尊重?いや、考慮か。考慮してですね、素材の許す限りでいろいろとテコ入れをやってました。
試写の時点で入ってなかったCGとか音楽とかも入れてみたりで肉付けがされてくにつれて次第に見栄えがよくなってきた気もするし、ハイビジョンっていう未体験の仕上げ方式で色々と手間取るところもあるけど、見通しは明るめと言えるでしょう。
やっぱねえ、色々と噛み合わないところもあったよ。
編集として「そりゃ、恥ずいっすよ」とか「クドくない?」っていうところとかもね。でも、やっぱ言わなきゃ伝わらないことってのもあるんですね。
やってるほうとしては、「ここまでやれば十分伝わるよ」って思ってても試写を見た人には伝わってなかったりした部分もあったしなあ。
人間関係と一緒だね。
他の作品を観てる時とかは、いけしゃあしゃあと「もっとやらなきゃダメ!」って中途半端断罪君を気取ってても、いざ自分がやるとなると・・・でありまして。
なんちゅうかサンルーフはいいけどオープンカーはおよしになって、みたいなね。なんじゃ、そりゃ。いや、勉強になりました。

あ、そうそう、そう言えばね、今回セットで使ったトイレの壁に、大洋センセイに落書きを散りばめてもらったんですよ。ね?いいよね、直筆だもん。で、そん時に色々サインのオネダリがあったらしいんだけど、どういうわけか、『ピンポン』とは何の関係も無い森下がそのサインを持ってるらしいんだよね。しかもイラスト付で!
なんで?もしかしてホントはスゴイ奴なの?
「ティンポン」
02/08/05

『ピンポン』がクランク・インした日からもう1年が経ちます。早いものです。
HD作品も結構目にすることが増えました。
当時は、同期やら色味の問題やらで、海のものとも山のものとも、といったカンジだったんですが、いくらか「鳴り物入り」の印象は色あせたんでしょうか。
HD作品を最終的にフィルムで仕上げる場合、どこでHD→フィルム変換をするのかが問題になると思うんですが、変則的なことを考えなければ、ダビング作業直前ということになると思います。
しかし、このやりかたは、ダビング中の編集直しがききません。
音楽や、効果音がミックスされてみてガラリと印象が変わることは、よくあります。
そこで、編集にいくらか手を加えたくなるのも、親心というもの。
しかし、用意されたフィルムは、編集された呎でしか存在していないわけです。
切ることはできても、足すことができない。
どうしても足したい場合は、HD上で編集を直してからキネコをやり直さねばなりません。
大幅なロスとなります。
幸いにも『ピンポン』の仕上げスケジュールは長く、ある程度音楽を入れ込んだ状態のものまでオフラインでできました。
しかし、時間がない作品の場合、このやり方は非常にリスクを伴います。
オフラインを落としたVTR、もしくはHDでダビングをするなりして、フィルム変換をダビング作業後にもってくる方がいいのか、なんらかの対処方法が望まれるところでしょうね。

さて、前置きが長くなりました。『ティンポン』につて。
6月の末、プロデューサーの井上さんから急遽招集がかかりました。
『ピンポン』のDVD特典として、宮藤さん監督の短編を撮ると言うのです。
キャメラマンの佐光さんもHDカムをデジカムに持ち替えて参加しているとのこと。
「行きます、行きます。繋がいでか」

この短編、宮藤さん監督で、主演はキャプテン大田です。タイトルは『ティンポン』
キャプテン大田というのは、ペコとスマイルのいる片瀬高校卓球部の主将なんですが、まあ、おとぼけキャラでして、後輩からまるで敬われてないキャプテンなんですよ。
そんな彼の青春がつまった宮藤節炸裂の短編です。

撮影に許された期間は、はげしく天候の違う2日かぎりでしたが、「監督・クドカン/主演・大田」とあってか、スマイル、アクマ、五味、多胡、警官らもかけつけてくれました。
いちおう、本編とシンクロしているので、パロディとしても楽しめるし、特に本編で大田に目が留まった方にはたまらない特典だと思います。

ところでこの短編には、スマイルに想いを馳せる第二の少女、芳村マリが登場するんですが、結構なウェイトを占めていまして、アップもバンバン使ったんですよ。
でも、こんなことなら、本編に登場するスマイルに想いを馳せる第一の少女、服部マコ(ペコにラブレターを取られちゃう娘)の出番をもっと残してあげればよかったかなあと、思わなくもないですね。バッシバシ切っちゃいましたからね。運命とはわからないものです。

キャプテン大田を演じている荒川良々さんは、宮藤さんと同じ大人計画の方なんですが、独特のクセのある演技をされる方ですね。
『突入せよ!』においても、ぎゅうぎゅう詰めの野郎軍団の中から結構な役を射止めてましたし、特異な周波数を身に付けているんでしょう。
『ピンポン』でも、竹中さんに可愛がってもらってたそうです。
と同時に、したたかさも感じます。
今回もですね、まあ、2日で終わるデジカム撮影ですから、それほど気負いするほどのものではないんでしょうけど、スキあらばアドリブをかましてくれてました。
それは、なんてゆうか、その場のノリのような芸人のサービスというものではなく、キャプテン大田とゆう役柄としてのアドリブなんですよね。
本編撮影から1年近く経ってましたけど、ちゃんと予習してきてくれたんでしょうね。こうゆうのは嬉しいですよね。役者の向上心はスタッフに元気を与えてくれます。
片手間に映画で主演張ってるタレントさんたちもですね、是非ともこうゆう姿勢を見習って(以下略

この特典映像は、トレソーラ(http://www.tresola.com/)でも秋頃配信予定だそうです。どうしても早く見たい方はそちらをあたってみてください。
ただし、有料(1000円)です。チッ!


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