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どうだい、ジェイク。資料館の感想は？
とても悲しい、というのが正直な気持ちデスネ。
ワタシは戦争のない時代に生まれテ、戦争の実態というのは祖国の作ったテレビや映画でしか 知りませんでしたカラ。
まあ、ヒロシマの立場でアピールしようとすると、ああなっちゃうのさ。
Ｙｅｓ、デモそれは至極当然のことデス。
アメリカには、この言葉はあまり好きじゃないけど、それなりの正義があったろうし、 日本だって、中国で２０万人とも３０万人とも言われてる人達を虐殺してる。ヒロシマはその際の拠点になってたから多分にその力添えをしてたってことになるなあ。
戦争はイイコトはひとつもアリマセン。ケレド、今でもドコカデ繰り広げられてイマス。
人は誰だって自分が１番かわいいのさ。例えそれが祖国や家族のためとあっても、それで罪もない人を傷つけていいはずはないんだけどね。
核兵器の脅威だって、いまだに続いてイマス。ありとあらゆる核兵器削減条約は結ばれるダケデ、少しも現実的な効果をうみだせマセン。
ワタシは今回初めて、原爆のもたらした事実を見ることができマシタ。あのような惨劇を二度と繰り返していいはずもないのデスガ・・・・・
それには、少なからず原爆のもたらす効果というものの認識が薄いということが起因してるんじゃないかな。
そうあってホシイですね。十分認識した上で今の現状があるとシタナラ・・・・・救いはないですカラ。
加害者と被害者は水と油なんだよ。歩みよりはあってもひとつになることはあり得ない。
このまま無意味な虚勢の張り合いは続いていくのでショウカ？
そのためにも、この事実を多くの人に知ってもらわなければ、というのが今の僕の感想かな。恥ずかしい話、今回の参拝で僕の中の原爆がすっかり記号的になってたってことを思い知らされたよ。あの事実は、もちろん決して忘れてはいけないことなんだけど、実際自分が風化させてたからね。忘れることの脅威っていうのを真剣に考えないとなあ。そうすれば、いくらかの抑制にはなってくれるとると思うんだ。
記号的？・・・デスカ？
これまでにも原爆ってのは数々の象徴として映画やテレビで使われてるけど、 そこに使われるのはキノコ雲だけなんだな。よくても原爆ドームや、折り鶴どまり。でも、そこまでなんだよ。そこから先に想いがいかない。きのこ雲の下で何が起こっているのか？ってとこまで想いがいかないんだ。
ピストルが正義の道具として当然のように使われているハリウッド映画と同じデスネ。
そう、ピストルが何をもたらすかってことまでは描いていない。おそらく、今ここでこうしてジェイクと話してることだって、第三者からすれば「ああ、はいはい」ってなもんさ。
タダ、そこまで描いていると2時間という枠では収まりきれないんじゃないデショウカ？
もちろんそうさ。映画ってのは省略と誇張がうみだすものだからね。だからこそ、キノコ雲やピストルが出た時点で、その先を想起するような認識度を高めないといけない。それには、その事実を伝えるような映画や映像資料が必要なんだけど・・・
映像にこだわりマスネ。
映像である必要はないとは思う。さっき見た写真や絵画のほうが力を持ってるって気もするよ。『はだしのゲン』（漫画：中沢啓治作）だっていい。映像でできることは人々を事実に向き合おうって気にさせることかな。資料館に足を運ぼうって気にさせること。映像の持つヒキの強さは否めないからね。
まあ、それが促進したおかげで今の観客は、考えることをやめちまってるって危惧があるんだけど・・・まず、知ろうって気になってもらわないと困るんだ。
知らされる、ってのと知るってのとでは吸収力に絶対的な開きがあるし。
なるほど。キッカケ作りですネ。
広島はこれまでにも何度か世界に出張出展を行って、その度に多くの反響を得てる。知ってもらおうと努力している。
そうデスよね。今でこそ聡一さんは声たからかにおっしゃってマスけど、それまでは 全然認識してなかったんデスモンネエ。知るってことは大事ですよネエ。
そっ、それはそうだけどさ！だからこれからは知ってもらうよう心がけるって言ってるんじゃないかっ！
デモ、そんなことができるんデスカア？聡一さんはヒロシマ市民ですよ。ヒロシマで生まれ育ったヒトがこのアリサマですからネエ。
ぬっ・・・くっ！！
そんなこと言ってる場合じゃないんだよ、ジェイク！見ろよ、街行く人々を！みんなあけましておめでとうってなカンジで歩いてらあ。これを見てて危機感を感じないのかい！？
アナタ、さっきマデあちら側だったじゃないデスカ。
ぐっ！！
・・・・・・・・返す言葉もないよ。そのとうりさ。お恥ずかしい・・・
じゃあ、こういうのはどうかな。
知らなかった僕、というの効果的に使うのさ。
と、イイマスト？
知らなかった僕というか、知ろうとしなかった僕だな。その僕も僕自身だからね。知ろうとしなかった気持ちをふまえて、その僕にいかにして知ってもらうかっていうのを考えるのさ。
ナルホド、それは納得デス。なぜ知ろうとしなかったノカ、デスネ。
もし、たとえば民放のゴールデンタイムで原爆の特集をやったとしても、 はたして視聴率は何パーセントとれるのか？
ウウン、難しいデスネ。
やはり、原爆というのを娯楽で包まないと観てもらえないんじゃないかって気がするんだ。誘い水だね。そのあとでパンチのあるメッセージをおみまいする。
ソレハ、物語のテーマよりも戦場のシーンの物凄さが一人歩きしてイッタ『プライベート・ライアン』のようなものでもいいのデスカ？
まあ、あれはひとつのケースだね。戦場の凄まじさは十分伝えてたと思うから。あれがヒロシマだったなら、それだけでじゅうぶん核の恐ろしさは伝えることができたと思うよ。ただ、スクリーンで起こることって所詮絵空事って認識もあるし、映画を観ただけで知った気に
なっちまうだろうから、原爆について知ろうとする姿勢を与えること。それが目的だね。再現できた技術力がすごいってことじゃなくて、その事実を伝えること。それと、その恐怖が、決して対岸の火事ではないってことを伝えることだね。
そうデスネ。ヒトは自分の身に危険がせまらない限り親身には考えませんモノネ。それがわが身にも起こりうるコトとなれば、考え方も変わってくるカモしれませんネ。
今でも各国で保持されてるあきれるほどの核兵器は、いつどんなきっかけで使用されてもおかしくない状況で、湾岸戦争だってそうだっただろ？そういう環境で生活してるってことを伝えないといけない。
やらなくてはいけないことが山積みデスネ。
世の中には楽しいこともいっぱいある。今が楽しければいいじゃないっていうのが自然な心の持ちようなんだよね。でも、今の平和があるのは戦争で犠牲になっていった人達の上に成り立ってるのは事実だよ。
正直、
ショウジキ・・・何デスカ？
１番効果的なのは、もう一度核戦争を起こすことだと思うんだ。
Ｗｈａｔ’ｓ！！ 何を言ってるんデスカ、聡一さん！正気デスカ！？
人は、忘れることができるから生きていける。これは僕の持論だけどね。
ソレハ確かにそうデスガ・・・・・
これだけ情報化社会が進んでも、本質的なココロの進化ってしてないじゃないか。人間ってのは自分が経験しない限りうわっつらの情報なんだよ。だから同じことを何回も繰り返している。恋にせよ、戦争にしろ。人が後世に残せることって技術だけなんだよ。経験は生まれ変わった時点でゼロに戻っちまう。
デモ、想像することがデキルのもヒトが持つことのデキル特権デス。
そう、そこさ！僕ができることはそこの部分を喚起させること。もう一度過ちを犯さなくて済むような警笛を鳴らし続けること。
原爆死没者の慰霊碑に記されてマシタネ。「安らかにお眠りください。過ちは繰り返しませんから」と。
あれはヒロシマの魂さ。今回の参拝でその魂を取り戻すことができたよ。資料館に行きたいと言ってくれたジェイクのおかげだね。
これから忙しくなりマスネ！
うん、世界平和の実現に向けて心を新たに頑張るぞーー！！
聡一さん！かっこいいデース！！
と、ジェイクは言いました。
Ｗｈａｔ’ｓ！？
じゃあ、ジェイク、あとのことは頼んだよ。
ＯＨ！ワタシがやるのデースカ！？
あたりまえじゃないかっ！遅れてきたんだから！
遅れて・・・って聡一さんも来たとこだって言ってたじゃないデースカ！
ぶちっ！
ＯＵＣＨ！ 抜かないでくだサーイ！！ |
00/08/06 |
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