映画製作に発憤
 カラン、カラン・・・


いらっしゃいマ・・・
おや、聡一さんじゃないデスカ。今日はまた随分と早いんデスネ。


やあ、ジェイク。
はは・・・早いんだか遅いんだか・・・昨日の仕事が今終わったのさ。

ソレはマタ・・・ズイブンとお疲れデショウ。ゆっくりしていってクダサイ。

ああ、さすがにね。もう年かな。最近無理がきかなくなってきたよ。

聡一さんが年なら私はとっくの昔に引退デスヨ。

やぁ、ありがとう。ゴク・・・ふぅ、生きかえるね。

それだけ忙しいとなると、そろそろ追い込みなんデスカ?

そう、3日後にはALL RUSH。それまでの辛抱さ。
と、言いたいとこだけど今回も相変わらずの低予算でね、スケジュールの方もかなりタイトなんだ。

そうデスカ・・・ごくろうさまデス。
で、どうデスカ?今度の作品は?


最悪さ。みんな自分のことしか考えていない。出来上がってゆく作品が素晴らしいものならまだ報われもする。でも、それが愚にもつかないようなものだとドッとむなしさが押し寄せてきてね。

作品を良き方向に持っていくのが編集マンである聡一さんの務めなのでは?

うっさい、ハゲ!

What’s!?

あ、いや、ゴメン。
ふぅー、そうさ、でも無理なんだ。新たに素材を撮る時間なんてあろう筈もないし、ましてや作品は監督のもんだ。僕が良いと思ったものでも監督がNOと言えばNOなんだ。

それは監督の才能には関係ないのですか?

ない。監督は誰がやろうと監督。才能は二の次。僕の出来ることは従うかアドバイスをすることぐらいさ。作品の良し悪しよりも円満無事に終わることが大事なんだ。生活がかかってるからね。
だから、あんなプライベート色の強い作品がはびこるんじゃないのかな。だいたい、自分の内世界を映像化するだけなら誰だってできるんだ。自分味を出しつつ、それでいて多くの人に理解してもらうことがどれほど難しくて意義のあることかわかってないんだよ。みんな、あの作品に1800円の価値があると本気で思っているのか疑問だね。

そうデスネ。聡一さんには申し訳無いのデスガ、私も1800円払うのなら洋画の方を選択してしまいマスネ。

いいんだ。何も好き好んでリスクの高い選択をする必要はないよ。僕は思うんだ、ジェイク。そろそろ日本映画も、プロデューサーなりエディターなり作品を客観的視点から捉えられる人が前面に出て作品を商品として成立させるシステムを構築していかないといけないんじゃないかってね。でないと、この日本映画に対する偏見は消えないよ。

フ、フ、フ・・・今日はまた一段と怪気炎デスネ。
おや、あちらのテーブルでは阿佐ヶ谷在住の藤原さんが何やら話し込んでいるようデスヨ。ちょっと、聞いてみまショウ。


 ガヤ ガヤ ガヤ ガヤ ガヤ・・・・・
-----------------------------------------
例えばその作品が「**監督作品」と謳っている場合なんかは、その監督目当てで客はやってくるんだから、白いものを黒と言われても従うべきなんだよ。

そうなんスかねぇ。

ただ、ゴラクというひとつの商品として立ち上げられた作品では監督に、そういう鑑識眼を持った人を選出すべきだろうな。

ですよねぇ。昔は、お正月には角川映画なんかが『里見八犬伝』みたいな娯楽作品を必ずやってくれてたんですけど、最近は本当に少なくなりましたよねぇ。『踊る大捜査線』は確かに良く出来た作品でしたけど、こうもTVでヒットしたプログラムピクチャーばっかりだとさすがに・・・

まぁ、日本のシステムじゃあ、エディターが編集権を握るのは難しいだろうけど、プロデューサーで言うなら奥山さんとかがそれにあたるんじゃないかな。もちろん、プロデューサーにもちゃんとした鑑識眼は必要だけどね。

 ガヤ ガヤ ガヤ ガヤ ガヤ・・・・・
-----------------------------------------
鑑識眼・・・そう、鑑識眼が大事なんだよ、ジェイク。

聡一さんは、あれだけたいそうなことをホザくのですから、さぞかし立派な鑑識眼をお持ちなんデショウネ。

あっ、なんだよジェイク、その言い方は!そんなもん持ってるわけないじゃないか!これから培うんだよ!

ホホゥ、逆切れデスカ。こりゃぁ手におえまセンナァ。日本映画の未来も真っ暗デスネ。

うっさい、ハゲ!!

What’s!?

ハゲてるからハゲっつたんだよ!『ロボコップ』のクラレンスみたいな頭しやがって!

You Baster!!

 ガヤ ガヤ ガヤ ガヤ ガヤ・・・・・
99/05/23
 
 


TOP