サイレントヒル2
 コナミ GAME
デビッド・リンチの映画を観るとき、僕は底なしの深海へダイブするような錯覚を覚える。
嫌悪を抑えきれない異形の魚たちが彷徨う、光の届かぬ常闇にライトひとつで潜行するとき、はたして何が見えてくるのだろう。
おそらくは、見てはいけないものばかりなのだ。
見てはいけないものだから、闇で覆っているのだ。
それでも僕は、「闇」の強烈な魔力にひかれ、深く潜行していく。
あまりに大きい「おつり」が返ってくると知ってないながら。
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『サイレントヒル2』は、そんなリンチ色あふれる作品だった。
それは「全ての愛と罪が集まる街」というキャッチコピーにも、よくあらわれていると思う。

あいまいな眠りの中で、夢見るのはあの町サイレントヒル
いつかまた二人で行こうと約束しておきながら、私のせいでかなわなかった
私は一人でそこにいる あの思い出の場所で
あなたを待っている


主人公ジェイムスのもとへ届いた一通の手紙。
差出人はメアリー。
3年前、病気でこの世を去った主人公ジェイムスの妻だ。
来るはずのない手紙に誘われて、ジェイムス(プレーヤー)は再び彼の地を訪れた。

「すべての愛と罪が集まる街」、そして、「思い出の場所」たるサイレントヒルは、死臭漂うリゾート地だ。
人影もなく、固く閉ざされた町並みは訪問者を拒絶する。
動いているのは、クネクネと動く不快な怪物たち。
彩るは、惨劇の跡を思わせる血糊と錆と子供のらくがき。
どこからともなく聞こえてくる、奇怪な音、不快なノイズ。
外を歩けば深い霧、中を歩けば暗い闇が視界をさえぎる。
制約ある視界をかいくぐり、ジェイムスは、メアリーの面影を求めて彷徨い歩く。
怪物たちを殴り殺し、蹴り殺して彷徨い歩く。
深く、どこまでも深く。

そして、物語の真実にたどりついたとき、プレイヤーは愕然とする。
謎の解明を口実に、これまでジェイムスを操って行ってきた数々の行為の真意とともに。
精錬潔白とは程遠いその道のりが、プレーヤー自身をはがいじめにし、まぶたをこじ開け、真実を直視させる。
これは映画では体験できない。
なにしろ、一方的に見せられるのではなく、自分で選択してきた結末なのだから。
見なくていいものに首をつっこんだのは、他ならぬ自分なのだから。
はたしてあなたは、暗く冷たい深淵で、何を見るのだろうか。
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僕はこの作品を、もてあましてたPS2の「その場しのぎ」として購入した。
見るからに『バイオ』なつくりに、鮮度を感じられなかったからだ。
しかし、その偏見は大きく裏切られた。
ひるがえって、1作目(PS1)もやってみた。
『ヘルレイザー』のような禍々しさが異彩を放っていたが、こちらは「巻き込まれ型」
やはり、訪れる必然を感じる『サイレントヒル2』のほうが、肌に合う。
なにより打ちのめされる。
マゾなのかな。

最後に、GAME中ジェイムスが拾うことができるメモに、興味深い一節があったので、ここに載せておこうと思う。
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5月9日
今日は雨。
ぼーっとした頭でぼーっとしている。
何もない日々は平穏だけど、退屈だ。私は何も変わってないから、外にも行けない。

5月10日
雨が降り続いてる。
先生と少し話をした。
悲しむ人がいなければ、私を助けなかったのか?
私が弱いのは事実だ。
誰もが強く生きていけるわけじゃない。

5月11日
雨。
今日の薬は少し苦かった。
これで治ったら、薬漬けの私は本当の私なんだろうか。

5月12日
今日は雨。
全く迷惑をかけないというのも難しいだろう。
だけど、今のままでも、やっぱり同じことだ。
逃げるのは本当に、悪いことだろうか?
否定する人はいる。だけど、私の気持ちは私にしかわからない。
勝手かもしれないが、私はそれで幸せだ。
このままは苦しい。
苦しい、だから

5月13日
今日は晴れ。
退院することになった。
私は----
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サイレントヒル2公式サイト
03/01/30
 
 


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