バトルロワイアル
 深作 欣二 映画
情報化が進み、ますますこの世の中には夢も希望もないのだと言わんばかりのご時世に、あえてこれほどまでの直球勝負で来たことに頭がさがる思いなのです。っちゅうか深作さんは昔からそうだったよね。

言ってみれば反則なんです、エエ。クラスメイトと殺し合い。まんまやんけ!と思います。ヒネリもない。
本当なら戦争映画やホラー、はたまた『タイタニック(ふん!)』等に代表されるパニック映画で描かれる、極限状態の心理描写に自らを照らし合わせたりするもんなんでしょう、こういうテーマは。ところが『バトルロワイアル』は中学生が友達同士で殺し合うという、あまりといえばあまりな設定なんですよ。しかも出演者は全て日本人。タイムリーです。想像の余地ないです。夢も希望もありません。
もう、なんちゅうか「そこで見とけ!」って言われてオヤジとオフクロのSEXを見せつけられたような内容でねえ、映画もここまでせんと見てくれんのんかなぁ、なんて思ったりもしました。
ある意味、タブーの露出って手っ取り早いんですわ。ヒキも強いし。バラエティー番組なんか最たるもんです。
そのせいか、この作品も「そこまでやる必要があるのか?」なんて言われてますが。映画としていかがなものか?なんてね。
僕は、そこまでやる必要があったからやったのだ、と理解しました。そういうとこまで来ている現実を知れ!とばかりに。そう思わせる力がありましたから。
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やはりどうしようもなく過保護なんでしょうな、日本は。親と子に限らず社会でも。人に嫌われることを惜しむ社会ですから。コトナカレってヤツですか。僕も人のこと全然言えないんですけどね、エエ。
「臭いものに蓋」をスローガンに芳香剤で誤魔化し続けてきた結果なんかな。極度の潔癖症みたく汚れに弱くなったよね。
まがりなりにも今の日本を変えようと思うのなら、オーバーラップではなく、ザックリとしたカットで荒波にのまれるような苦境に陥る必要があるんでしょうな。変えたい人少ないかもしらんが。んで、今の映画作りも過保護なんかなぁ〜って思ってみたり。スケジュールはキツいですよ、存分に。ただ、その作る姿勢っちゅうかね。
嫌われることを恐れちゃいかんのだなぁ、ナアナアはダメなんだなぁ、中途半端は罪なんだなぁと反省しきりです。もちろん、過去の名作なんかを見れば、その姿勢っちゅうのは学べます。
でも、撮影所システムありきの昔と違って深作さんは、今この自分が働いてるのと同じ制作状況であれをやってのけた、っちゅうのが素晴らしいんですわ。嬉しいんですよ。深作印の免罪符があったにせよね。ガツーンとやられた感じがしました。おまえらなにをテレテレやっとんねん、と。HALさんの言葉を借りるなら爆弾を落とされたんですな。

教師キタノが生徒にナイフ投げ終わったとこで、キタノ中心にキャメラが回るとこがあるんですけどね。予告でも使われてるあの画ね。回転するキャメラの背景に逃げ惑う生徒達がキッチリ効果的におさめられてる。その中心でニヤニヤするキタノ。あれ見た時にもう腹見せてましたからねぇ。ヘッヘッ、なんて舌まで出して。
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この映画、ダメな人はダメだと思います。演出が「ふるい」という声も聞きました。僕は東映マークからシビレっぱなしだったんですけどね。
途中何度か『いつかギラギラする日』の荻野目慶子が脳裏をよぎったりしましたが。(それはご勘弁、という意味で)大人の無責任な言い訳も口惜しかったかな。あの人の描いた絵が生理的に受け付けないっちゅうのもあるんですけど。
これが洋画だったらここまで興奮してない、とも思います。あ、でもアメリカでは受けるかも。メリハリきいてるし。わかりやすいし。
ただね。やっぱり、この世界で生きてる者としては興奮せざるを得んわけですよ、エエ。『シュリ』にも共通して言えることなんですけど。ほんと、ニクイ先輩です。
今世紀最後にこの作品に出会えたことをココロから幸せに思います。
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00/12/09
 
 


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