風の谷のナウシカ
 宮崎 駿 映画
「生きろ!」のキャッチコピーで世に出た『もののけ姫』は、まだ記憶に新しいが、残念ながら僕はそのメッセージをあの映画から受け取ることは出来ませんでした。読み取ることが出来たのは「ままならない現実」が、ただそこにデンとあるということぐらいだろうか。

存在そのもが強姦者である人間が、それでも自然との共存、共生を成立させたがるジレンマに関して言えば『ナウシカ』の方が圧倒的に描けていたし、娯楽であったし、「生きろ!」であったのよさ。

まあ、そうは言っても宮崎さんの作品はどれをとっても基準点を遥かに超えてて、『もののけ』とて、そんじょそこらの邦画が太刀打ちできない程までに昇華させているんですけどね。

斬新なアイデア。
2時間という枠にキッチリ収めた盛り上がりの起伏。
はっきりとしたテーマと、そこに秘められた送り手の秘めたる想い。

宮崎さんの作品には、「あらわし手」、いやさ、「おもてなし方」として見習うべきところが多い。
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中でも『ナウシカ』は、その世界観の構築が図抜けていた。そこに息づくキャラクター、「掟」がハッキリとこちらに伝わってくる。

こ・れ・は・物語を創造するうえでとってもキモである要素ではあるんだけど、完遂することがなかなかに難しい要素なんですよ。ねっ、観終わってもキャラクターが心に残って、ほら、名前だって覚えてるでしょう。ナウシカ、アスベル、ユパ、クシャナ、クロトワ、大婆様、王蟲、それから最高の見せ場を提供しつつ自ら腐り果てるという画期的な結末を迎えて見せた巨神兵・・・・・

伝説や壁画の引用も見事だったことは、その後にあまたの模倣を産み出すことになってしまった事実が物語ってるし、解決するはずもない問題を取り扱っておきながら、ラストにはあたかも解決したかのような錯覚を抱かせる術も申し分ない。
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正直言うと宮崎さんの手がけた作品でMy Favoriteとなると、やっぱり『カリオストロの城』に道を譲らざるをえないし、『ナウシカ』も語り尽くされた作品なので、今更ここで改めて言う必要もなかったんだけど、ただ、こういった難しい問題を娯楽をからませつつ描ききった『ナウシカ』という作品には敬意を表さずにはいられないし、目指すべき形のひとつとして良きお手本となるのは確かなの。ナウシカが両手を広げて囮となって吊るされた王蟲のポッドに飛び込むところは、何度観ても鳥肌が立つの。
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スタジオジブリ公式サイト
99/09/05
 
 


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