ここでキスして。
 椎名 林檎
僕が彼女の存在を知ったのは、ご多分に漏れず『ここでキスして。』でした。してっちゅうんならしたろぉやないか、おぅ?とアルバムを購入したけど、ジャケットが一抹の不安を抱かせました。「なんだか一昔前の自主製作CDみたい・・・」そう思いながらCDをトレイに挿入。ウィ〜ン、シュン・シュン・シュルルル・・・だいたいタイトルからして怪しいよな。『無罪モラトリアム』って60年代じゃないんだ
「んあぁああぁあ〜んあぁあうっふ〜あぁぁああああの日飛び出した〜」

・・・・・あービックリした。のっけから飛ばすなぁ。ねぇ、ちょっと落ち着きなさいよ、お姉さん。ねえったら。ん?いや、でも、なんかこう・・・・・こっ、これは、久方ぶりに耳にするロックとかいうやつなのでは?うん、かっちょいいじゃない。右も左もR&Bのご時世にあってこいつは新鮮だ。しかも「ロック」をお安く口にする昨今の聴きやすいロックとはわけが違うぞ。正真正銘のロックだ。えっ、ちょっと待って、ロックって何?知らんよ、他で聞いてーや。そんなことより詩を曲に乗せるセンスはかつての桑田さんにも似た卓越したもんを感じるよ。ほんまじゃねえ。ちょっと、あんた誰よ!このアルバム全部彼女が作詞作曲しとるんよ。うっそ、ほんま?まだ二十歳そこそこじゃんか。うるさいね、もー、押さんといてーや!
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それにしても、日本の歌もかなりセンスアップしたよねぇ。映画業界と違って非常にお盛んじゃし。やっぱり、そおゆう才能が活躍できる土壌が音楽業界にはあるんじゃね。その違いは何?

一つの作品にからむ人数の多さが違う。
一つの作品時間がお手頃。
予算が控えめ。
etc・・・

そおゆう意味では「漫画」というジャンルも、非常に間口の広いメディアと言えるよね。紙とペンとアイデアさえあれば成立するんだからこれ以上のお手軽さはないよ。

モノを表現するというのは、多分にその人の感性が問われる行為だけど、中年の域に達した人がかつての若かりし頃を反芻して描くのと、若い人が同年代の気持ちを描くのとでは絶対的な開きがある。若い気持ちは若い人にしか描けないとは言わないが、若いときにしか描けない事というのは確実にある。

つまり、若くしてデビューできる土壌というのは、そのメディアにとってかなり幸せな状況であり、各メディアはそのように努めるべきなのだ。
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椎名林檎公式サイト
99/08/15
 
 


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