ファン交 2006年:月例会のレポート

 ■1月例会レポート by fuchi-koma

■日時:1月21日(土)
●テーマ:
書評家・大森望のできるまで
  —『現代SF1500冊』をめぐって—
●ゲスト:
大森望さん(翻訳家・書評家)

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 1月例会は、書評家としての大森望さんとしてお話を伺いました。
 当日は、朝から雪が降ったり、いつもと違った会場という悪条件が重なりましたが、日本SFファングループ連合会議主催・SF新年会の昼間企画の1本ということもあってか、たくさんの参加者が会場に集まって下さいました。

 大森さんに話を伺う司会役は、我が「ファン交」オブザーバーの鈴木力。
鈴木力は、単行本に収録されなかった大森さんの昔の書評なども用意しつつ、次々と質問を重ね、大森望という人間を暴いていきます。
 『現代SF1500冊』の苦労話や「実は当初は大森“のぞみ”“かなえ”“たまえ”の三人がいた」など過去の面白い秘話が盛り沢山で、大森ファンの方々も大いに満足されたのではないでしょうか。かく言うfuchi-komaも大満足でした。
 大森さんは現在、『週間新潮』をはじめとした多くの媒体でSF以外の分野の書評も担当されていますが、「SFの仕事は本業だといつも思っている」という発言には心強いものを感じました。

 昨年の京都SFフェスティバルの朝に突如倒れて入院された事については、『現代SF1500冊』が大森望の集大成であること、更に未来の原稿(『本の雑誌』次月の号)まで入っているなどを踏まえて「あのタイミングで死ねば完璧だった」などと言われた話が会場ではウケておりましたが、いやいや大森さん、まだ死んで貰っちゃ困りますよ(笑)。これからの活躍に皆が期待してます。
いやそうは言ってもあまり頑張り過ぎないで、身体は大事にしていただきたいものです。
うん。だって大森さんの書評をまだまだずっと読んでいきたいのだもの。

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 ■2月例会レポート by fuchi-koma

■日時:2月11日(土)
●テーマ:
ライトノベル・データブック出版からの1年
●ゲスト:
榎本秋さん(ライター)

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★準備中です。

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 ■3月例会レポート by fuchi-koma

■日時:3月11日(土)
●テーマ:
レイ・ブラッドベリを訳す
●ゲスト:
中村融さん(翻訳家)

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 3月例会はS-Fマガジン2006年1月号で「レイ.ブラッドベリ特集」の監修を担当された中村融さんをお招きし、お話を伺いました。

中村さんによると、ブラッドベリの文章は訳すのが難しいそうです。例えば無骨な科学用語を並べて誌的な文章を作ったりするのは面白いのだけれど、その言葉を語感で捉えていく詩のような文章を日本語に翻訳するのは、一筋縄ではいかないのだと中村さんは話します。

翻訳という作業の難しさはなかなか推し量ることのできない領域です。
例えば「screen door」を何と訳すかという話で、そのまま「スクリーンドア」と訳して良いのか、それとも「網戸」にしないと日本の一般の読者は判らないだろうか…とその一語だけでも悩むというのですから、一語一語を丹念にみていく翻訳家の苦労が偲ばれます。

他にも、「ブラッドベリの書くロケットが懐かしいのは何でだろう」とずっと思っていたときに、アメリカで花火を見て、「独立記念日の打ち上げ花火に重ねているからなのだ」という事に気付いたというエピソードは面白く思いました。

中村さんがブラッドベリ自身につて紹介する際に使用した洋書『The BradburyChronicles』は、ブラッドベリ公認の優秀な記者によって書かれたブラッドベリの伝記で、ロング・インタビューや大量の写真でブラッドベリに迫る力作とのことです。
ほんとにたくさんの写真が紹介されていて、この本の翻訳が早くでればいいなと、思わず期待してしまいました。
個人的にはブラッドベリは小説も面白いけれど、自伝的なエッセイやエピソードだけでも無類に面白い、つまりブラッドベリ本人が変てこで面白い人だと思っています。

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 ■4月例会レポート by fuchi-koma

■日時:4月15日(土)
●テーマ:
「オールタイム・ベストSF」分析:日本篇
●ゲスト:
風野春樹さん(精神科医兼レビュアー)

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 4月例会は、ゲストにS-Fマガジン600号記念特大号で「オールタイムベストSF・結果発表 国内長編部門」を担当された風野春樹さんをお招きしました。

 S-Fマガジンでオールタイムベスト(以下ATB)投票が試みられたのは'89年、'98年、'06年の三度です。例会ではその三度のATBを比較し変遷をみていきました。根強い人気で定番になった作品、その傍らで時に埋もれていった名作の数々を確認し、また人気がありそうにみえて何故かベストに入らない作品や、再評価が進んでいる作品など、参加者全員でATBを元に日本SFの歴史を見つめ直しました。

例会の後半は参加者それぞれのATBや、「もっと評価されていいのでは」というイチオシの作品などを紹介していただきました。ホント、好きなものを語る時の人は目は輝きますね(笑)

また投票者数と投票者の年齢の変遷もデータで確認しました。投票者の平均年齢が上がり続けることに加えて、ATBをやる毎に読者投票が半減している事実が指摘され、ではこのまま行くと次回の投票では読者投票がプロ投票の半分になってしまう! という、まるでディストピア小説のような話には苦笑が漏れました。そうならないように願いたいものです。
そのためにファン交も微力ながらSFファンを応援していきたいものだと、fuchi-komaにとって思いを新たにする例会でありました。

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 ■5月例会レポート by fuchi-koma

■日時:5月3日(祭)
●テーマ:
読書会を考える
●課題図書:
「三時間目のまどか」(『ある日、爆弾がおちてきて』所収/古橋秀之著/電撃文庫)

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5月例会は通常の例会をお休みし、東京で行われる年次イベントであるSFセミナーに合宿企画の一つとしてお邪魔しました。

企画部屋のタイトルは「読書会を考える」です。
例会の前半は、現役大学生に各大学サークルにおける読書会の様子を話していただき、具体的な読書会のやり方、ノウハウに迫りました。現在読書会を継続的に行っている東洋大学、京都大学、慶應義塾大学SF研究会、東京大学新月お茶の会、ワセダミステリクラブ(更に関西の社会人SF専門読書会サークル「あんしぶる通信室」にも)にお話を伺いました。

構成人数の規模が違うワセミス以外はやり方自体は殆ど変らないようでしたが、「今ひとつ盛り上がらない」「解釈に終始してしまう」などそれぞれ悩みを抱えているようで、その悩みに年配の読書会経験者がアドヴァイスをしていました。

後半は古橋秀之の短篇「三時間目のまどか」(『ある日、爆弾が落ちてきて』電撃文庫所収)をテキストにプチ読書会をしました。
これは大いに盛り上がりました。
20名ほどの参加する会場の各所から面白い奇説・珍説が飛び出し、会場が波のようにうねります。収拾をつけるべき司会者はてんてこ舞いになりました。
静謐でアカデミックな読書会も良いものですが、熱に浮かされたように語り合い想像(というより妄想?)を膨らませていく読書会も楽しいものです。その熱気はプチ読書会が終わり企画が終了した後も去らず、数名がその場で熱い議論を続けていた模様です。

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 ■6月例会レポート by fuchi-koma

■日時:6月17日(土)
●テーマ:
「オールタイム・ベストSF」 分析:海外篇
●ゲスト:
 林哲矢さん(SFレビュアー)
細井威男さん(SF情報収集者)

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6月例会は、ゲストにS-Fマガジン600号記念特大号で「オールタイムベストSF・結果発表 海外長編部門」を担当された林哲矢さん、同「海外短編部門」を担当された細井威男さんをお招きしました。

 今回は「S‐Fマガジン」誌の3度のATBに1979年の「SF宝石」創刊号で発表されたATBも加え'79、'89、'98、'06年と4度のATBを比較しました。
 前半は日本における海外SFの人気の推移について。林さんの「簡単にまとめると、これは御三家(アシモフ、クラーク、ハインライン)落ちたなあという表(笑)」という指摘から、細井さんが独自に用意された「既読率表+分布図」を使った深い分析まで、ゲストお二方による素晴らしい分析を堪能できました。

 後半は海外のATBについて。飛び出したのはSFのコアなファンやプロが読むSF専門誌「ローカス」誌(英語)のATBデータ。これが日本と全然違っていて面白いです。特に面白いのは、ハーラン・エリスンの異様な人気。短編作家ランキングでブラッドベリ、アシモフ、ハインラインを押さえての1位であったり、短編ベスト5のうち3編がエリスンというのは日本ではちょっと考えられませんよね? 長篇では《デューン》(1位)や『異星の客』(5位)などの人気が日本に比して高く「海外の人はとにかく長いのが好き(笑)」という結論に達しました。

 更に今回は7月のSF大会に向けて「よいこの部屋」企画さんの作られたアンケートを預かり、会場で配布しました(これはSFセミナーでも配布されてました)。「好きだけど友達にはヒミツのSF」「こんな世界どうよ!? SF」など興味深くも悩ましい質問が満載なこのアンケート、会場でゲストのお二方とファン交スタッフが試しに回答してみましたが、なかなかむずかしいです。「好きであることをヒミツにするSFなどないわっ!」という意見は尤もだなと思いましたが、fuchi-komaは昔好きだったライトノベルを挙げてみました。

 日本篇、海外篇の二回のATB企画を通して、参加者の方々がSFの面白さについて改めて考えることができたなら良かったと思います。

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 ■7月例会レポート by fuchi-koma

■日時:7月15日(土)
●テーマ:
 『ライトノベル「超」入門』を語る
●ゲスト:
 新城カズマさん(作家)

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 7月例会はゲストに作家・新城カズマさんをお迎えし、4月に出版された『ライトノベル「超」入門』(ソフトバンク新書)を中心にお話を伺いました。

 先日の日本SF大会「ずんこん」では『サマー/タイム/トラベラー』(ハヤカワ文庫JA)がめでたく星雲賞日本長篇部門を受賞しSFファンに新城カズマの名が馴染み深くなりました。そんな新城さんはライトノベル・レーベルでも多くの作品を著し、またネットワーク・ゲーム制作や書籍企画などを行う有限会社〈エルスウェア〉代表・柳川房彦としての顔も持つ多才な方です。

『ライトノベル「超」入門』(新城さんの周囲では『ノベ超』と略されているそうなので、以後本稿もそれに従います)が刊行されたときに「なぜ新城さんが?」と思ったのはfuchi-komaだけではないでしょう。実は一昨年に刊行された『ライトノベル完全読本』(日経BP出版)の編集に〈エルスウェア〉の業務で携わった(柳川房彦名義)ことでライトノベルに詳しい人という印象が生じ『ノベ超』の出版につながったのだそうです。

例会は『ノベ超』の目次に沿って進行し、前半ではライトノベルという言葉の出自から、第二章の〈キャラ類型解説〉までを話しました。〈キャラ類型解説〉には特に大きく時間を割き、面白い例証をされていた各項目をライブで解説していただきました。

ここには周囲のスタッフが勝手に入れたネタも入っているとのことでしたが、新城さん自身の思い入れも半端ではなく〈メガネっ娘〉や〈メイド〉に対する鋭い洞察が披露されていきます。新城さんの場合、思い入れはただそれだけでなく源流を探って歴史を紐解いていくという作業に繋がっていきます。そのストイックなまでの探究心がライトノベルに限らずフィクションを創造する新城さんの基盤になるのだろうと、創作の秘密を垣間見られたような気がしました。

後半ではライトノベルを経済現象として捉える新城さんの大きな視点でのお話が面白いものでした。「ゼロジャンル」という新城さんにとって最近のライトノベルと非ライトノベルの作風に関する前向きな違和感を表現した言葉も、本当に深く物事を考えている人でないと出て来ないものです。ライトノベルを軸に話が広がり、かつ深められた例会だったと思います。

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 ■8月例会レポート by fuchi-koma

■日時:8月26日(土)
●テーマ:
 『日本沈没』読書会
●案内人:
 鈴木力(ファン交オブザーバー)
●☆テキスト:
 『日本沈没』上下(小学館文庫)

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 8月例会は映画化&第二部の発行を記念し、名作『日本沈没』をお題に、読書会を行ないました。

 読書会は、本会のオブザーバーで「大の小松左京ファン」でもある鈴木力が案内役となり、まずは参加者の『日本沈没』、『日本沈没 第二部』、そして映画版(1973年、2006年)の感想をお聞かせいただくところよりスタートしました。

 当時の沈没ブームを知る人、今回初めて読んだ人、様々な立場の人の率直な意見が聞けるのは読書会の素晴らしいところです。案内役の力さん自身は、『日本沈没』に中学生の頃に出会ってから、部分的に読み直した回数を含めれば、なんと100回以上も読んだそうです。すごい情熱! みなさんはそれほど読み直した作品がありますか? fuchi-komaはないです。

 力さんが用意したレジュメには「継続された戦争としての小松SF」とあります。「地には平和を」—『日本アパッチ族』—『日本沈没』という系譜をたどり、記述を拾っていくことで、力さんはそこに擬似本土決戦としての日本沈没というものを読み取っていきます。作家・小松左京にとって戦争が如何にSFと結びついたものであったか、具体的な発言や記述をみると、その根の深さが伺い知れます。

 参加者からは、日本沈没という現象に際したとき「なんもせんほうがええ」という意見が出ることが日本人独特のものであると思うかどうか、などの意見が飛び出し、議論が盛り上がりました。

 そして最後に、現在ビッグコミックスピリッツにて連載中のコミック版(作:一色登希彦)が紹介されました。原作小説から大きくかけ離れたコミック版。「これを小松左京原作でやって良いのか!?」と憤りながらも、力さんは幾つかのシーンを面白可笑しく紹介してくれます。「な、なんだってー!!」という言葉が何よりも似合うコミック版。そのスゴさをぜひ皆さんも確認してみてください。

 オリジナル小説、第二部、映画にコミックと、まさに『日本沈没』を語り尽くす例会でありました。

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 ■9月例会レポート by fuchi-koma

■日時:9月16日(土)
●テーマ:
 ダンセイニ、その魅力
●ゲスト:
 小野塚力さん(〈PEGANA LOST〉評論担当)
 稲垣博さん(アマチュア翻訳家)
 未谷おとさん(〈PEGANA LOST〉編集担当兼発行者)

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 9月例会はゲストにロード・ダンセイニ研究誌〈PEGANA LOST〉を発行している西方猫耳教会の三名をお招きし、お話を伺いました。

 まずは小野塚力さん。
 もともと大学で国文学を専攻していて、国文学の論文を書くときにどうしてもダンセイニを扱いたかったので比較文学としてダンセイニについて書いたら、やっぱり教授に怒られた(笑)と、こんなエピソードで始まる「私とダンセイニ」、さらに「ファンタジー作家として」のダンセイニ、「日本への受容」。星新一試論を書いて第一回日本SF評論賞の最終選考に残った小野塚さんならではの整然としたダンセイニ論をお話いただきました。ダンセイニは日本では荒俣宏さんの紹介された「幻視者」としての側面ばかり評価されていて、コントのような笑える作品もうまいのにあまり評価されていない…という話は、なるほどと思いました。

 つぎに稲垣博さん。
 〈PEGANA LOST〉誌上でダンセイニの作品や自伝をバリバリ翻訳し紹介し続けている稲垣さん。初めて読んだダンセイニ作品『エルフランドの女王』の結末にものすごい衝撃を受けたそうで(本を読んで初めて泣いたとか)、それ以来、こんなすごい作品はもう読むものかと決めて、再読はしていないそうです。
 アーサー・C・クラークとダンセイニの書簡集を引用しながら、ダンセイニの魅力をたっぷりと語ってくださり、「エルフランドの入口はロンドンの近くにある筈なので、行って探したい……というのはウソです」のような面白いノリで会場を沸かせてくれました。

 さいごに未谷おとさん。
 〈PEGANA LOST〉の創刊号(98年)からずっと編集をやり続けている未谷さん。この日の例会のために〈PEGANALOST〉vol.11.11号を発行してくださいました。ありがとうございます。
 「ペガーナの神々を読むことは、若い頃の特権だ」などの名台詞が印象的だった美谷さんのダンセイニとの出会いは、H・P・ラヴクラフトを通じてだったそうです。今回は美谷編集長に〈PEGANA LOST〉を創刊号から順に、苦労話を交えながら、どんな内容かをざっと紹介していただきました。
 また所蔵するダンセイニ・コレクションの一部を持ってきて紹介してくださいました。ダンセイニ直筆原稿のコピーは、会場内で回覧されました。fuchi-komaも見ましたが、筆記体は綺麗なのか下手なのか解らないくらい崩されていて、何語かすら判別できませんでした(もちろん英語です(笑))。

 ゲストのお話を聞いていると、同じダンセイニを焦点に集まったメンバーも三者三様の形でダンセイニと付き合ってきたのだということが分かってきて、とても面白いです。
 ダンセイニという作家の奥深さを教えてもらうと同時に、ファン活動の可能性というものを考えさせられる例会でありました。

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 ■10月例会レポート by fuchi-koma

■日時:10月21日(土)
●テーマ:
 ジュヴナイルSFを語る
●ゲスト:
【第一部】大橋博之さん   (挿絵画家・ジュヴナイルSF・ジュニア小説 研究家)
【第二部】タカアキラさん(ジュヴナイルSF愛好家)
     三村美衣さん(書評家)

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 10月例会は、SFマガジン告知後大橋博之さんからの嬉しいお声掛かりにより、急遽、午後1時30分より第一部「ジュヴナイルSFの絵を語る」、午後2時より第二部「ジュヴナイルSFを語る」という二部構成となりました。

 第一部は、現在「SF Japan」誌で「日本ジュヴナイルSF戦後出版史 −少年SFの系譜−」を連載中の大橋博之さんによる武部本一郎、依光隆、金森達といった、かつてジュヴナイルSFの絵を描いてきた絵師たちについてのお話でした。

大橋さんは多量の原画を持ってきてくださり、出版された本のイラストと比較して論じ、絵柄の変遷や印刷効果として反映されていない部分の魅力などについてお話くださいました。30分では勿体無いような実に密度の濃いお話でした。

 第二部は、まずゲストお二人のジュヴナイルSF体験からお話いただきました。
 懐かしい、あの頃は良かった……といった話をされるのかと思いきや、お二人の話は「このジュヴナイルSFを読んでトラウマを受けた!」のような恐ろしい話が中心。当時のジュヴナイルSFには救いのない終末テーマの作品が多く、それがよく記憶に残ったということでした。

fuchi-komaは全然それらを読んでいないのですが、小沢正『砂のあした』、佐野美津男『犬の学校』『だけど僕は海を見た』、久保村恵『ぼくのまっかな丸木舟』などは、あらすじを聞いただけでガクブルでした。皆さんの中にもタイトルを聞いて「あれか!」と思い出した方もいるのではないでしょうか?

 後半は例会の参加者にも一人ずつジュヴナイルSF体験を伺いました。
 ここでもいろいろなジュヴナイルSFが登場しましたが、特筆すべきはA・ベリャーエフ『生きている首』です。あまりに多くの方が「印象深い本」として記憶していたので、一人一人「読んだ? 読んでない?」と『生きている首』で踏み絵をさせられました(笑)。

 タカアキラさんに「あれを読んでいないなんて君は幸せだねぇ!」とまで言わせる『生きている首』。参加者からは「自分の小学校では「呪いの本」として読むと死ぬという噂があった」という発言も飛び出しました! いったいどれほど恐ろしい本なのでしょうか。読まなかったのは幸せと言われましたが、『生きている首』の話で楽しそうに盛り上がる参加者を前にfuchi-komaは読んでいないことを悔やまずにはいられませんでした。

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 ■11月例会レポート by fuchi-koma

■日時:11月11日(土)
●テーマ:
 若者の知らないSF用語講座
●ゲスト:
 小浜徹也さん(編集者)
 平林孝之さん(東京大学新月お茶の会)
 福永裕史さん(京都大学SF研究会) ほか

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11月例会は、京都SFフェスティバルに合宿企画のひとつとしてお邪魔しました。

 昨年の京フェスにもファン交は出張し、「初心者向けSF用語集作成準備会」という企画をやらせていただきました。そのときは「新しい時代のSF用語集を」ということで、いまどき使われていない古い用語は削っていく予定でした。ところが蓋を開けてみると、ベテラン方の語る古い用語にまつわる蘊蓄話はたいへん面白く、それらはSFの歴史そのものであると知ったのでした。

 それを受けて今回の企画では、使われなくなって久しい、若者が知らないようなSF用語を集めてみました。(主な参考文献:『世界のSF文学総解説』伊藤典夫・編、自由國民社)

 用意したSF用語の数はおよそ190。これをゲストの現役大学生二人 とfuchi-komaの他、18歳男×2、20男、27男、30男にサンプルとして参加してもらい、事前に「知っているかどうか」○×をつけていただきました。

 当日はこうして出来上がった表を配布し、それぞれの用語について若者や参加者が疑問を呈し、ベテランが解説を返すという形で進行しました。

 具体的には、まず若者が全滅だった用語「シェイバー・ミステリ」「イデオット・プロット」「EGOBOO」「グロク」「ぱらんてぃあ」について、次いでほぼ全滅だった「大会ゴロ」「ダイアネティクス」「リカントロピイ」「ホシヅル」等について、編集者・小浜徹也さんを中心に、駆けつけてくださった水鏡子さん、大野万紀さん、大森望さん、u-kiさんといったSFのベテラン勢が面白おかしく解説してくださいました。

 個人的に興味深かったのは「シェイバー・ミステリ」と「ダイアネティクス」についての話。両方ともまったく知りませんでしたが、オカルトと宗教とSFが紙一重であるということを実感させてくれる話でした。

 その後も「“イドの怪物”っていうから、貞子のことかと思いました」「そっちの井戸じゃないよ(笑)」などと漫才のようなやり取りをしつつ、企画終了時間までSF用語の蘊蓄で盛り上がるのでした。
 嬉しいことに、ここで使ったSF用語表はその後も広間など会場の別の場所でも話題になっていたようでした。

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 ■12月例会レポート by fuchi-koma

■日時:12月16日(土)
●テーマ:
 高次元にあそぶ
●ゲスト:
 小笠英志さん(博士(数理科学)、物理学者、数学者、作家、大学講師、アマチュアウィンドサーファー)
  志村弘之さん(イーガンの番人)

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12月例会は三部構成で進行しました。

◆第一部 「高次元がみえる(ような気がする)工作」
 小笠英志さんによるトポロジー(位相幾何学)基礎講義を聴きながら、紙/ペン/はさみ/テープを使い、参加者が各自で実際にメビウスの帯を工作しました。ときどき笑いの入る小笠さんのオモシロ講義を聴きながら手を動かしていくと、クラインの壷が三次元空間でできない理由などが自然に理解されていきます。会場の各所で「あ、そうか!」「なるほど!」という声があがっていました。
 ここで次元についての基礎的な知識を確保し、高次元の手触りを得た(ような気がした)ところで、第二部に進みました。

◆第二部 「高次元といえば『ディアスポラ』」
 イーガン訳者・山岸真さんの相談役を務める“イーガンの番人”志村弘之さんによる、グレッグ・イーガン『ディアスポラ』高次元描写解説。会場の要望で、主に「コヅチ理論」について説明していただきました。
 コヅチ理論とは『ディアスポラ』作中に登場する難解な理論で、その高次元描写にはfuchi-komaのような数学的知識の乏しい人の多くが「何が書かれているのか全く分からなかった」と匙を投げる理論です。
 志村さんは、著者イーガンのウェブサイト(英語)のカラーイラストを駆使しながら丁寧に説明し、会場との応答の中でコヅチ理論の輪郭をあらわにしていきました。『ディアスポラ』は細かいネタを読み飛ばしても壮大なスケールを楽しめた小説でしたが、そのネタを理解できると何倍も楽しくなるものでした。

◆第三部 「あなたの好きな「異次元SF」」
 fuchi-koma司会で参加者全員に「好きな異次元SF」を聞きました。いろんな作家・タイトルが挙がりました。一部列記します。
 小松左京「蟻の園」『果しなき流れの果に』、星新一「おーいでてこい」、ブライアン・オールディス『世界Aの報告書』、W・H・ホジスン『異次元を覗く家』、フレッド・ホイル『10月1日では遅すぎる』、ルーディ・ラッカー『セックス・スフィア』、P・K・ディック『高い城の男』、キース・ローマー「多元宇宙SOS」etc...
 他にも「お腹に四次元に通じるポケットを持っているネコ型ロボットが出てくるマンガがありまして……」と話を始める人がいたり、ゲストの小笠さんからは「ウルトラマンAで空が割れて異次元から怪獣が現れるところ」という答えが出るなどマンガや特撮作品にも言及され、たくさんの「異次元SF」の話を聞くことができました。

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