救われない村。
 救われなくてもよかった村。
 神父は、プロビナを、そしてレブラサックをその命を賭して護り抜いた。
 殉教者。
 彼は、チカラ無き者だ。
 振るう拳を持たず、ただその身を削ることで世界から大切なものを護ろうとした。
 そして、この村は。
 チカラ無き者を護ることが勇者の定義ならば、彼らは護られるべき存在ではない。
 彼らはチカラを持っていた。
 「数」というチカラを。
 どれほど弱々しくとも、彼らはそれを世界に対する武器として振るった。
 ならば彼らは護られるべき存在では、既にない。
 戦う意思のあるものを認めるということは、どれほどのチカラを持つのかに関わらず
対等な存在として扱うということだ。
 それが友であろうと、敵であろうと、憎むべきものたちであろうと。
 そして彼らは、我々の友たる資格を自ら放棄したのだ。
 ならば滅びるに任せておけばよかった。
 神父の遺志など思わずに。
 この強き子達を、世界で汚してしまうのならば。
 己が世界をしか認めようとしない彼らに、ならば世界すべてを敵にする覚悟を要求
する。
 小さな正義が大きな正義の前に潰されることを容認するならば、我々は更に大きな
正義として彼らにチカラを問う。
 たとえばそれが、ひとりの有徳の士を悲しませることでさえなければ。


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