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しじゅうはって ねやのざれごと

【四十八手 閨の戯れ事】


honte.jpg   本手

仰向けの女の上に、男が向かい合わせに腹這いになる形で、つまり正常位のこと。いうまでもなく現代はもちろん、さまざまな体位(の名称)が考案された江戸時代でも最もメジャーな体位でバリエーションも多い。《四つ手組み》、《四つがらみ》、《本間(ほんま)どり》ともいうが、やはり《本手》が代表的な呼び方で、春本には「本手に組む」、「本手に取る」という表現がよく出てくる。なお、後出の茶臼、櫓がけ、横がけ、後ろどりなど本手以外の体位を、当時は総称して《曲(きょく)どり》と呼んだ。


網代本手(あじろほんて)

本手の最もベーシックな形。仰向けになり膝をまげて脚を開いた間に男が割って入る。この網代本手から女が男の腰や胴に両足を絡みつけたのを《足絡み》、あるいは《揚羽本手(あげはほんて)》という。足絡みから女が両腕も絡ませると《襷がけ》、男も両腕を絡ませて、男女が互いにしっかり抱き合う形は《番い鳥》。網代本手や揚羽本手にとりながら男が両手を床について肘を伸ばし、脚を伸ばし気味に上半身を女から離して向かい合うと《壽本手(ことぶきほんて)》。壽本手から脚を引いて膝をつき、腰を浮かし気味にすると《富車》になる。この富車が別名《ひき蛙》と呼ばれるのは、そのときの男の恰好がカエルに似ているから。このとき完全に腰を下ろしてしまうのは《机がけ》。また、壽本手の形から女が男の体の間で自分の脚をあぐらをかくように交差させれば《洞入本手(ほらいりほんて)》、女が脚を交差するのでなく両脚を閉じるようにして膝を折り曲げ、男がその上からその膝を押しつぶすようにすると《笹舟本手》、女の脚を男が自分の肩までかつぎ上げれば《深山本手(みやまほんて)》、あるいは《かつぎ上げ》という形になる。


筏本手(いかだほんて)

足絡みや番い鳥から男が女の背中に片手をまわして女の上半身を持ち上げた形。ここから男が膝を立て、女のからだを浮かして、ゆっさゆっさと揺らすと《筏崩し》になる。筏崩しは男が両手あるいは片手と両膝で女の体重を支える体力勝負の体位。


入舟本手

足絡みから女が後ろ手に両手をついて上半身を浮かす一方、男は膝を立てて上半身を起こし、手を女の腰や尻にまわしてそのからだを持ち上げた形。女を舟に見立てている。


うけあし

「女の股の付け根より男が両手を入れて抱きとれば玉茎(たまぐき)は根元まで十分に入る。およそ下がりたる開(ぼぼ)は、このようにすれば上開と同じ」(下品〈げぼん〉な下つきも男が女の両足を抱え上げて腰を上げてやれば上品〈じょうぼん〉の上つきと同じ)というので入舟本手の変形。女が上半身を浮かさない入舟本手。


空竹割

男が女の両足の間に割って入るのではなく、女が両脚を閉じ、男が上体を起こして両脚を女の脚の外側に出し、太ももで女の太ももを閉める形。《小股ばさみ》ともいう。これから男が上体を女のほうに倒し、脚を伸ばして足首のあたりを女の足に絡みつけると《志がらみ》になる。


井筒組み

「女は仰向けになって両足をまっすぐ伸ばし、男は向かい合わせにその上に乗って女の足の外へ両足をまわし、女の両足を男の両足で挟むように締める。そして男は少し下へ移動し、始めは核の上面を深くは突かずそろそろと突く。ぐちゃぐちゃと音がしてきたら本手に組み、女のくび下へ両手をまわして締め付け、両手で女の両足を強く挟み急に突けば、女はすぐに気をやる」というので空竹割のこと。
井筒組みは、「女が一度気をやったあと」でするのがよく、「両足で強く女の両足を挟んでやれば再び気をやる」そうだ。


松葉ちがい

空竹割のような態勢で男女の伸ばした両足が交互になる形。男女の脚の伸びているさまを松葉に見立てているが、とうてい松葉には見えない脚の人でもやっぱり脚は松葉。この形から女が男の首に手を回せば《磯の波枕(なみまくら)》となる。これは男が九浅一深、大腰小腰に腰を動かすと、男の首に絡んだ女の腕が押しては引く磯の波のように見えるから。


松葉くずし

現代でいう《松葉くずし》は、横になった女の上になっているほうの足を男が抱え、男は富車のような態勢でする形のことだが、江戸四十八手でこの形は《肩すかし》といい、《松葉くずし》は、松葉ちがいと同じか、松葉ちがいから男が女の足の間にもう少し深く割り入れた形のこと。


松葉反り

女は仰向けになり、男は女と逆の方向に斜め仰向けになって股を合わせ、足を相手のからだに絡み付けるようにして、それぞれが上体を内側に反す形。男がうつぶせ状態から仰向けの女の脚に割って入れば《梃子がかり》、《筏流し》、《逆さ浮橋》と呼ばれる形になる。


鶺鴒本手(せきれいほんて)

「女を仰向けに寝させて帯紐を解き、着物や小蒲団を丸めて女の胸に載せおいてから、女の両股を広げてその間に割り込み、女の臀の下へ小蒲団を畳んで敷いて、尻を少し持ち上げ加減にする。女をいじくりまわし一物を臨ませて気をやろうと思うとき、男は膝を女の尻の下へ敷くような心持ちで両手をかけて女の尻を持ち上げ、女の両足を肩に乗せ、自分の前へ女の尻をひきつけて気をやる。このとき女もいたってよいので、胸の上に載せてある着類蒲団などを両手に抱え締め付けて気をやる」そうだ。「下品な開も上開と同じ」というフレーズが思い出されるだろうが、入舟本手やうけあしは男が女の腰を抱えるのに対し、この形は女の腰の下に蒲団や枕を敷いて腰を上げる。《枕かがり》、《臀まくら》ともいい、江戸時代には腰の下に敷く専用の枕があったとか。


十字がかり

仰向けの女の上に男がうつぶせで「十」字状に乗りかかる形だが、男のものが長くないとちょっと無理?


淀の水車

仰向けになって両足を抱えて腰を高く突き出している女の上に、男は女と逆方向に両手を床につき、四つんばいの恰好で覆い被さりはめ込む形。《かげろう》ともいう。これから女が腰の下に枕などをあてがいって腰を浮かせば《廓(くるわ)つなぎ》。このとき男は腕立て伏せの格好になる。男が上体を起こして中腰になる淀の水車のような形を《砧》、あるいは《違い駒》という。


chausu.jpg   茶臼

仰向けになった男の上に女がまたがって腰をおろす女性上位の形を総称して《茶臼》と呼ぶ)。曲どりのなかではもっともメジャーな体位で、男女が向かい合う形の茶臼を、ほかの茶臼のバリエーションと区別して《本茶臼》と呼ぶことがある。大坂冬の陣で徳川家康が陣を構え、豊臣家が滅亡した翌年の夏の陣で真田幸村が討ち死にした茶臼山は、天下がひっくり返ったいわくつきの山だから、女が上になる形を茶臼と呼ぶようになったいう、もっともらしい説がある。また、茶臼を《駒掛け》と呼ぶこともあるが、これは上に乗った女の上下するさまが、濶歩する馬に乗った人の揺れに似ていることからついた名称で、つまりは騎乗位と同じ意味。このとき男が女の腰を抱えて回したりするテクニックを《茶臼回し》と呼ぶ。茶臼から女がうつぶせになり、男女が両脚を伸ばせば《茶臼のばし》、茶臼のばしから男女が両手、両足をさらにがしっと絡め合わせると《筏茶臼(いかだちゃうす)》になる。
なお、抱えどり(後出)の変形に《本駒掛け》というのがあるが、ここでは駒掛けとは別のものとして扱った。


反り観音

茶臼から女が後ろに反り返る形。男が頭を上げると観音さまを拝めることからついた名称のようだ。また、女が反り返るのとは逆に前屈みになるのを《海老》と呼ぶ。その中間の女が上体を起こしている形を《時雨茶臼(しぐれちゃうす)》という。つまり駒掛けのこと。時雨とは、辞書によれば蝉時雨という言葉があるように、しきりに続くことをいうそうだ。時雨茶臼のときに男の腰の下に枕などあてがいものをすると《機織茶臼(はたおりちゃうす)》という。腰の位置が多少高くなるから、女が腰を動かしやすくなるというのだろうか。


後ろ茶臼

仰向けになっている男の上に、女が茶臼とは逆の後ろ向きに、男に背を向けて乗る形。女を上に乗せてとることから《乗せどり》ともいう。


帆かけどり

「男、仰向けに寝て足を伸ばし、女を後ろ向きに腹の上にまたがらせ、女まかせにするなり」という形で、つまり後ろ茶臼の同じ体位。男を舟に、女を帆に見立てた形だ。《帆かけ舟》という言い方もある。このとき女は床に膝をつかないで、足で体重を支えるのがコツ。そうすれば腰が自由に動かせる。


月見茶臼

後ろ茶臼から女が男の足を抱くように前屈みになった形。男が頭を上げる見える女の尻を月に見立てた。《絞込千鳥(しめこみちどり)》、《花筏(はないかだ)》ともいう。月見茶臼から男が両手を後ろ手につき、もっと月見をしようと上体を起こせば《絞込錦(しめこみにしき)》になる。


撞木反り(しゅもくぞり)

後ろ茶臼から女が月見茶臼とは逆に、上体を男のほうに反らした形。撞木というのは鐘をつくT字型の棒のこと(金槌の柄が長くなったような形)。この撞木を逆さにした凸態勢が後ろ茶臼で、柄に見立てた女の上体が反るので撞木反りとなる。


十文字がけ

女が仰向けの男の上に横茶臼に乗る形で、そのものずばりの《横茶臼》という呼び方もある。女は股を広げても閉じてもよいが、動作は不安定になりがち。そこで安定感を増すために男が片足を上げ、女はそれを股に挟むように抱くのが《寶舟(たからぶね)》。帆をあげた宝船に見立てている。


後ろづけ

仰向けになった男が両足を開き、あるいは足首を持つなどして腰を高く上げたところへ、女が男に背を向けて上から乗る形。女は膝をつくか中腰になり、ときには両手を床につく。いわば男女が位置を替えた砧。


yagura.jpg   櫓(やぐら)がけ

男は正座かあぐらをかいて座り、女を両膝の上に抱えて向かい合いになってする形。座位のこと。《腹櫓》、《俵がけ》、《投げ網》などともいう。絵本(艶本)の世界ではこの絵がよく出てくるが、西洋ではこの形でいたすことは少ないそうだ。江戸では幕末まで現代のような掛け布団を使うことは少なく、代わりに夜着という着物状のものをまとって寝ていた。これだと前を開けるとすぐ櫓がけにとれるので、この形がもてはやされたのかもしれない。


居茶臼

「男は両足を投げ出して座り、女は男の股の上に乗りて両手で男を抱き、男は片手で女を抱き寄せ、両々相向かわしめて玉茎を開のなかに入れる」という形で、櫓がけの別称。茶臼から男が上体を起こした形なので《座り茶臼》ともいう。この形から女が男の腰に脚を絡めると《茶臼がらみ》、《唐草居茶臼》という形になり、絡めた脚の片方を男がすくい上げれば《股すかし》、両手で両足をすくい上げれば《下がり藤》になる。居茶臼から男が抱き寄せていた腕を離し、後ろ手について自分のからだを支えるようにするのを《忍居茶臼(しのびいちゃうす)》、女も後ろに手をついて向かい合うような形になると《鏡茶臼》、この形から女が両足を男の肩にかければ《狂獅子(くるいじし)》になる。


玄宗どり

「入れおいて互いに起き上がり、女まかせにする」ということなので、茶臼から上体を起こした櫓がけのこと。


抱えどり

男はあぐら座りまたは正座して、その上に女が男に背を向けて腰をおろす、櫓がけの女が向きをかえた形。このとき男は女の両脚あるいは腰を抱えてやるところから《すくい上げ》ともいう。《乱牡丹(みだれぼたん)》というのはこの形から男が女の両足をすくい上げて開かせる形で、《乱蒲公英(みだれたんぽぽ)》というのもこの形だと思われる。男が椅子などに座った抱えどりは《背負いがけ》という。抱えどりから男が正座または足を投げ出し、後ろ手になって上体を反らし、女は膝をついて前屈みになり、手もついてからだを支えると《本駒掛け》になる。また、抱えどりから男が仰向けになって脚を投げ出せば《後ろ茶臼》とそのバリエーションに、前に倒れて女が下になれば《後ろどり》、男が両手を床について仰向け状態になり、女も腕を伸ばして床に両手をつき、前のめり状態に尻を突き出せば《大渡し》(後出)という形にもっていける。ただし、気持ちいいか、つらいかは別の話だが。


後居茶臼

「男は両足を伸ばして座り、女は後ろ向きに男の上に座し、手づから玉茎を開内に入れる。男は女の腹を抱いて激しくこれを勤む」という形。抱えどりのひとつ。


yoko.jpg   横づけ

男女が向かい合わせに横に寝てする形。《並び》、《矢合わせ》、《落松葉》などとも呼ばれる。また、横だと男は大腰小腰という激しい動きができないためからか、動作が緩慢で疲れないためか、《不精取り》と呼ばれることもある。この形や本手から男が女の片方の脚の下に腕を差し入れて内側からすくい上げると《内枠》、外側から抱き上げると《外枠》という形になる。横づけから内枠や外枠にとるのを《濱千鳥(はまちどり)》という。

「さて、横抱きにして割り込み、一物をやわりやわりと静かに出し入れすることおよそ百回ばかり、このときはあまり強く突かず、抱きしめずして、からだを離して静かにあしらい、二、三度奥へぐっと入れて、急に四、五度突き立て、女の乳のあたりへ我が顔のいくほど下がって両足を押し屈めたら、女の腰のあたりへ膝のいくようにぐっと抱きしめ、大腰に抜き差しして、おりおり雁首にて縁をこすり、男の方より骨もひしげよばかりに女を抱きしめ、出し入れ強くして、少し男も息づかいを荒くしてみるべし。このとき、いかようの慎み深き女、または気もなく天井板を数えている女でもたちまち我を忘れて鼻を鳴らし、すすり声を出すべし。少し泣き出すとき、男静かに腰を使い、手の指先にて核の上をちょいちょいといじるべし。このとき女夢中になりてうなり声を出すべし。男もうなる声に合わせて、一気に気をやるべし」


矢筈(やわず)がけ

横づけの形から女が片脚を男の腰に絡める形。《横笛》、《蛙(かわず)がけ》、《手斧がけ》ともいう。《片手矢筈がけ》は、この矢筈がけから女が後ろの男に腕を回した形のことをいうのだろうか?


要石(かなめいし)

仰向け、または横になった女の片方の脚を脇の下に抱えて男は横になり、T字型のようになってする形のこと。横づけからの変形で、《八ツ橋》とも呼ばれる。要石とは、男女が両脚を絡めて腰と腰とが容易に離れそうもないさまが、重くてやすやすと動かせない要石のようであることからついた名称。


横どり

男女とも横に寝て男が後ろからする形。《うしろ並び》ともいう。女が仰向けからやや横になり、男がその脚をすくい上げて後ろから入れるのは《鴨の入首(いりくび)》と呼ぶ。形が鴨の首に似ているからだそうだ。この形は《浮橋》と呼ぶこともあり、この形から男が上になっている片方の脚を女の両足の間に割り入れ、女がやや仰向けに上体をそらすと《八重椿》。男からは女の胸やさね周辺を責めやすい形になる。さらに八重椿から男が女の上の脚を脇に抱え、両膝を立てて上体を起こせば《燕返し》、脇ではなく肩に抱えると《肩すかし》になる。燕返しからだと《後ろどり》へ移行しやすい。もちろん、逆の流れも可。燕返しから女が抱えられていた脚を自分のほうに折りまげ、その脚の側のほうの腕を男の首にまわして上体を起こせば《卍くずし》。燕返しから女が横向きのまま、抱えられていた足を下ろして両足を閉じ、男が両ひざをついて上体を起こした態勢ですると《いすかどり》となる。いすかはくちばしの上下が食い違っている鳥のこと。女は横どりの態勢、男は本手の態勢なので、このような名称がついたのだろう。


零松葉(こぼれまつば)

横どりからの変形で仰向けか横になった女に対し、背を見るようにT字型になって男が横になる形。女は片足は男の胴に乗せ、もう一方の足は男の両足で挟み込まれる。女が両足とも男の上に乗せると《菊一文字》、あるいは《御所車》と呼ばれる形になる。このとき女は両肘をつくと腰を動かしやすくなる。


古今三朝(こきんさんちょう)の伝の羽交い締め

「女を横にして、男は女の尻を抱いて後ろから押し込み、腰を使いながら上になっている手で女のさねがしらをソロソロとこすり、女を仰向かせて乳を吸う」というから、横取りの三所責めのこと。《三所責め(三所攻め。みところぜめ)》とは体位に関係なく男が女の三ヵ所を同時に攻めること。《四国責め(四国攻め)》は舌、両手、玉茎による四ヵ所同時攻撃で、これも体位は関係ない。


tachi.jpg   立ちどり

男女とも立って、女は片脚を男の足または腰に絡ませ、男はその脚か尻を抱えてする形。《櫓だち》、《立ち臼》という呼び方もある。「男は片手にて女の片股を抱え、もう一方の片手は向こうの壁にても柱にてもしっかりと押さえ、女まかせに入れさせ、男は受け身なり」という記述があるが、女が片股を抱えられているのならば、むしろ男が主に動くはず。


後ろ矢筈(やわず)

立っている男の前に女は背中を向けて立ち、男は女の片股をすくい上げ、後ろからはめる形。


立ち横どり

「男床辺に立ち女の脚をまげて爪立ちながら玉茎を進める」のだそうだ。女の片脚を上げてとる立ちどりには違いないが、「爪立ちながら」の部分が理解できない。背の高い女だと男は爪先立ちにならなければいけないという意味なのだろうか。


蝉がけ

2人とも立って向かい合い、女が片脚を男の腰に絡める立ちどりのこと。女が男につかまっている姿を蝉が木にとまっているさまにたとえている。《立ち鼎(かなえ)》ともいう。また、《鯉の滝のぼり》と呼ばれることもある。これは男の突き上げに女が上へ上へとせり上がっていくようなさまからついた。


止り蝉

蝉がけの形から女が両脚を男の腰に絡めた形。男は女の尻などを両手で抱え、腰を使いながらえっさえっさと女のからだを揺らす、男の体力がものをいう体位。《櫓立ち》、《みこし》ともいう。かつて有名になった《駅弁ファック》のこと。


仏壇返し

立って上半身をかがめて尻を突き出した女の後ろから男がする形。女は壁や柱、椅子、机などにつかまってからだを支える。《将棋倒し》ともいい、碁盤につかまれば《碁盤攻め》と呼ぶので、テレビぐらいの小さな仏壇ならからだを支えるには都合のよい大きさだから、仏壇返しというのはもともと仏壇でからだを支えた形をいうのかもしれない。ただ、扉を開けたままだと罰当たりなので、扉を閉め、裏にひっくり返さなきゃいけないということか。仏壇返しの態勢のまま数歩、後ずさって女が床に両手をつくと《大渡し》とか《後ろ櫓》と呼ばれる形になる。これから男女とも膝をつくと《後ろどり》。


usiro.jpg   後ろどり

女はうつぶせになり、両手を床についてひざまずき、男は女の後ろにひざまずいて、両手で女の腰を抱えて玉茎を開に沈める形で後背位のこと。男は両手を床についてもよい。《出舟後取(でぶねうしろどり)》、《潰駒(つぶしこま)がけ》、あるいは《鵯越(ひよどりごえ)》とも呼ばれる。鵯越は源平合戦で、海のほうから攻めてくるとばかり思っていた平家の虚をついて、源義経が背後の山から攻め入った『鵯越の逆落とし』の故事に由来するもので、平家を女に、源氏を男に見立て、男が背後から襲うさまからついた名称。

「女が嫌な男とするときは後ろ向きにすることを好む。幸につきだす尻にあてがうことができるなら、女の尻のところへあてがい、そろそろと入れ、半ばも入りて潤いが出てきたら、男は女の背中を離れてぐっとからだを横にし、二人のからだが鐘つき棒ようなT字型になるようにする。男が両足をぐっと伸ばし女の尻をひきつけ、手を後ろから女の臍の下、毛際のあたりへ当ててしめつけ、その手で女の尻を男の方へひきつけるようにして腰を使うと、男根の頭は子宮へ届くので、女はこらえきれない。女の尻を少し押したたせ、男も半分おきて片手をつきながら、片手では尻をひきつけ、大腰を使うべし。どれほど堪え性のある女でも我知らずに鼻息荒くなり、声をあげ気をやること妙なり」


畜生どり

後ろどりのこと。《御殿もの》ともいう。もちろん獣姦のことではない。

「いろいろといじくりまわし、十分気を揉ませて女をうつむけにして尻を立てさせ、男は女の後ろにひざまずいて、自分の前へ女の尻をぐっと引き寄せ、膝の上へ上げるようにして入れれば、女は押立尻をしているため、思うように腰を使うことができず、じれ込みもがくものなり。誠に根元まで心よく入るものだから、女は取り乱して夢中になり、いろいろとからだをもがき、恥ずかしきことも何も忘れてしまう。このとき男は少しからだを後ろのほうに反りて、男根の出し入れを見ながらつつくべし。見ながらすれば気のいくを長引かせることができるから、張り裂けるばかりになってもいかない。女の淫水がしとどに出てきたら男根を引き抜いてよく拭き、すぐに本手に取り組み、四ツになって力のありたけ抱きしめて、根元まで一気に入れて容赦なく大腰を使い、無性やたらに出し入れ激しく、男もいますぐ気をやるように鼻息高くよがってみせれば、女もそれに浮かれて心狂乱のごとくになり、男にしがみついて息もせわしく、我を忘れさまざまの世迷言をいいながら気をやることおびただしく、身が抜けたようにうっとりし、悪くすると腰も抜けて、暫くは立つこともできないものなり」


しき小股

後ろどりから女が床に突っ伏し、両足もまっすぐに伸ばした形。男は太ももで女の太ももをはさみ込むようにする。


すそ野

後ろどり態勢の女が片足をもっと引き、男を受け入れやすくしたところへ、横になった男が女の後ろからする形。


後ろ畜生どり

女がうつぶせになって尻を突き出している上に、男も両手足を床についてうつぶせになり、片手で玉茎を開中に押し込む形のようだ。


押し車

女は両手を床について上半身を支え、男が女の両脚を両脇に抱え込んでする形。《大車輪》、《とんぼ返り》とも呼ばれる。小学校の体育のときにやったこの体操というか運動はけっこうきつかった。あまり長時間やる恰好じゃないかも。


雷ひしぎ

「雷ぼぼといって、ことのほか音が大きく周囲に響いて気の毒なものがある。このとき男は腰を使わず、入れたままで女まかせ(女が動く)にするのがよい。これを雷ひしぎという」のだそうだ。曲どりだそうだが、組み方はよくわからない。男が大腰を使うから大きな音がするのだとすれば、後ろどりではないだろうか。


tomoe.jpg   片男波(かたおなみ)

男が舌で女の開やさねがしらを愛撫する性戯のこと。《舌人形》、《花菱責め》ともいう。一方、《指人形》という言葉があるが、これは男が指で女を愛撫したり、女が自分で自分を指で愛撫することをいう(というよりも、愛撫するときの道具というニュアンスのほうが強い)。ちなみに男のせんずりを江戸時代は《五人組》とも呼んだ。

「玉門をくじるに口伝あり。はじめ空割(そらわれ。割れ目)のあたりより毛の生え際をいく編となくなで下ろし、さねの下、ぼぼの口もとを指先の腹でくじるなり。そして中にも指を一本入れ、上のほうを強く指の腹にてかきなで、潤い出るにしたがい、さて指二本を入れてぐるぐるとかきまわし、ぐっと奥のほうへ深く入れ、中のまわりになまこのごときひらひらするものあらば、いつまでも浅く深く抜き刺しすべし。女、身もだえ、顔は火照り上気する体ならば、おのずから子宮(こつぼ)動き、口を開き、女の鼻息荒くなるに従い、火のごとく熱くなるなり。そのとき十分によがるを見て玉茎をぐっと根まで突き入れ、しっかりと抱きしめるなり。それよりは心のままに行なうべし」


千鳥の曲

女が男の一物をくわえて舌を絡ませ、じゅぽじゅぽとやり、また手や指で玉茎やふぐりをなでなですること。《雁が音(かりがね)》ともいう。

「玉茎をくじる口伝。交接の気なき男の傍らへ女のほうより男のまたぐらを探り、うかがえどもその気なくば、まず玉門のふくれたるところを男のからだにすりつけ、足を絡ませ、いろいろと話などしながら男の口を吸い、いまだ気、動かざるときは玉茎を温かな手にてしっかりと握り、少し気を持つようならば玉茎の後ろよりカリ際を指にてなで、せんずりをかくごとくさまざまにくじるなり。(男)おのずから気を持ち、カリ首ふくれ、熱気出るにしたがいむくむくとおえかかるべし。そのとき鈴口へ指の腹をもってしっかりと押さえながら他の指にて亀頭の胴を柔らかくかくべし。男根は快きままにいきり、筋張りあがり、頭、てらてらとして紫だち、はちきれるばかりにどきどきと節くれだつとき、女は指先にて唾をカリ際へ塗りて空割へのぞませるべし」


巴どり

仰向けになった女の上に男は逆さに腹這いの形になり、女は男の一物を口にくわえ、手はその周辺を愛撫し、男は女の開を口や舌でべろべろする、おなじみの69のこと。片男波と千鳥の曲の組み合わせであり、《椋鳥》ということもある。男が下で、女が上になる69は《逆巴(さかさどもえ)》、あるいは《逆椋鳥(さかさむくどり)》、男女が横になって互いにするのは《二丁だて》、《二つ巴》という。


鵯越の逆落とし

男は仁王立ちになり、女は逆立ちして、互いに口や舌で性器をぺろぺろする、巴どりの立位バージョン。《唐獅子の逆落とし》というのも、おそらくこの形だろう。しかし、これはお互いに気持ちいいというより苦痛なだけなのでは?


丹田くじり

本手ではめながら、男が女のさねをいじること。体位というよりは性戯。丹田とはへその下の下腹部のこと。具体的にはへそ下三寸のあたりだという。


大みだれ

交接の最中に、男はまらを抜き、女の股を開いて一物で子宮(こつぼ)の口やさねがしらを上下にこすりまわすこと。これも性戯のひとつ。乱れるというよりはじらしだ。


孕みどり

「孕み女は茶臼の心持ちにて男の後ろへ手をつき、女まかせにとるべし。また尻からとるもよし」
妊娠している女は本手などに組んで腹に負担をかけてはいけないから、茶臼(本茶臼、後ろ茶臼、後ろ居茶臼)に組むか後ろどりに取るのがよいという、女が妊娠中の組手指南。


二女どり

仰向けになった女の上に、もう一人の女がうつぶせになり、男が後ろから上下の二女を交互に犯す3P。嫐の女女男。


二人攻め

一人の男は仰向けになって脚を伸ばし、女はうつぶせにその上に乗って玉茎を開に入れる。そしてもう一人の男が女の背の上から自分の玉茎をもって同じ開中を攻撃する3P。嬲。


◎そのほか(名称はわかっているが、形が不明のものを順不同に列挙。何となくわかるものもあるんですけどねえ)
ひき舟、山越し、組矢筈(くみやわず)、業平(なりひら)の吾妻下り、小天狗の早襷(はやだすき)、比翼の鳥の無双締め、大峰入りの覗き穴、所作づくりの子本突き(こぼんづき)、車越し、浮島本手、姿富士、天女松葉絡(てんにょまつばがらみ)、螯絞(はさみじめ)、鴨の羽返し、とんぼつり、逆とったり、片かけ、窓の月、かけくずれ、二本づめ、帆立貝、逆手がらみ、向こう突き、突き回し、かかえ上げ、足かかえ、衣被(きぬかつぎ)、昇りかけ、吊り橋、立てひざとり



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