Ys ETERNAL ~ソフトよりもスタイルが・・・~

●しつこいけれど

しつこいようだけど、今回レビューするのはまた「Ys」だったりする。
今回のYsは、Win95/98版の「Ysエターナル」で、前回のクラシックと違い、
Falcom自らのリメイク
なので期待できるかなぁ~っと思っていたが、はたして実態はいかがなものだろうか?
 

●ぱっと見の出来具合

ただ、ちょっと考えたいのが、「何故今Ysなのか?」ということだ。
確かに移植を希望する声がとても多かったのは事実だろうが、「過去の栄光」を引きずっての移植、発売なら止めたほうが良いと思う。
出すからには、それなりの何かがあってしかるべきだと思うのだが、この辺は何とか及第点だと感じた。
そのポイントだが、

1)斜め移動・ダッシュ移動の存在
クラシックの回でも述べたが、これが意外なほど気持ちよさをます効果がある。
操作ミスが出たって気にしない。
 

2)ゲーム内容の変化
これはストーリーの展開自体に手を加えることで、印象が薄かったものなどがイメージ変わっていた。
それ自体は良い方向で、多少「ストーリーテラー」な傾向が増したが、違和感や不快感を感じるようなものではなかった。
また、これまでのYsでは「マニュアルに載っているストーリー」の一部がゲームの中に取り込まれてたりする。
 

3)止め絵の効果
やたらとアニメーションだのポリゴンだのを入れる代りに、所々で止め絵(せいぜい瞬きや上下スクロール)を表示する形式で、結構これが良い感じでイメージを引き立ててる。
このあたりのセンスと言うのは、「やっぱり良いな」と感じた。
 

●CGのデザインを考える

また、今回のエターナルではCG自体もあまりにも「CG」と言った感じではなく、淡い色調をメインにした綺麗なイラストと言う感じだった。
正直、最近のRPGのイベントシーンと言うと、

・ポリゴンです、ぐりぐり動きます、すごいでしょ。(センスは無い)
・CGですアニメです、こ~いうの好きでしょ。(音声もつく場合アリ)

といった、二択が殆どになってしまっているような気がする。
また、イベント以外のCGでも、あまりにCGしてしまい、かえって気持ち悪かったり、浮いたりしてしまうと思う。(あくまで私個人の感覚だが)
そんな中で、こういう雰囲気のCGというのは「私的にはHITした方」だったりする。
 

●誉め殺しじゃ終わらない

さて、そろそろいつもの「奈落の底へ叩き落す」時間帯に入るとしよう。
リメイクの仕方はポイント抑えていて良かったと思うが、不満点が相当数出てきた。

①画面が暗い
これはオプションでガンマ係数を上げれば良いだけなので、さして問題にならないのだが、
「標準」に設定すると、建物の中が殆ど視界ゼロになってしまうのはいかがなものだろうか?
ラスティン廃坑ならまだわかるが、ダームの塔、神殿、挙句の果てに街の家の中でも見えないことがある。
そういえば、ミネアの城壁を登るところなんて全く見えなかったな。
デフォルトって言うくらいなんだから、「最適」じゃなくてもいいけど「全く見えない、話にならない」ってのは問題ありだと思うけど。
 

②中途半端な3D感覚
プレー中に感じたのが、妙な感じで3Dなところがあるということ。
普通はあまり気にならないのだが、ボス戦で痛感することになった。
実は、ボスのなかで「直立している奴」「足がある部分にしかあたり判定が無い」のである。
ま、当然と言えば当然と言えるのだが、原作では重なればとりあえず攻撃がHITしていた事を考えると、
結構難易度を上げる要因になるのではないか?(まぁ、それでも楽なレベルではあるが)
 

③ダッシュはデフォルト?
エターナルではダッシュ機能があるが、
実際プレーすると普通はダッシュしていないとゲームにならなかったりする。
ザコを相手にするときは歩いた方がいいこともあるが、ボス戦となると
「ダッシュしているのが前提」な感じを受ける。
特にダルク=ファクト、ヴァジュリオン、ピグティモスの三体はダッシュ無しではまず倒せないだろう。
別にいいんだよ、それでも。
でもさぁ、それならダッシュはトルグ式にして欲しいねぇ、仮にも「優しさ」を前面に押し出してるゲームならばさぁ。
方向二回押しって、結構入らなかったりするし、咄嗟に入れるのって辛いんだけどねぇ。
その上②のポイントが絡んできて、ボス戦がちょっぴり辛口に・・・・・・・・
 

何だろうね、ゲーム自体は凄くいい感じだし、リメイクの仕方も上手い方だと思うんだけど、
それ以外の作りこみの部分で丁寧さや配慮に欠ける
というのが気になる。
Falcomのゲームってしっかり作ってあったと思ってたし、ましてやYsは「誰でも楽しめるように」ってコンセプトがあった筈だから余計に気になる。
以前「ソーサリアン・フォーエヴァー」でも似たような事を言っていたが、
「細かい部分の丁寧さが欠けている」
という、なんとも悲しい傾向が出てきているのでは?
今回もやはりバグが結構潜んでいるし、そのおかげで酷い目にもあったし、Falcom製品だから安心なんて
口が裂けてもいえないな!
 

●設定面をつついてみよう

今回、以前はマニュアルの冒頭で、読み物形式で載せてあったストーリーのうち、
エステリア漂着後、バルバドの自警団に助けられてからミネアに行くまでの話
が、ゲームの中に取り入れられている。
ちなみにこのバルバドの住人が一番矛盾の少ない設定を持っていると思われる。
理由は・・・・そりゃ後付けだもん

話の展開でも結構変化があって、

・フィーナの救出で「自力で逃げろ」極道なことは言わなくなった。
・銀のハーモニカを持ち逃げすることができなくなった。
・ラーバの過去がちょっとだけ公開(矛盾はあるけど、何であんなトコにいたのかは判ったような)
ルタ・ジェンマ変態説(そこまで酷くないけど、なんとなくやっぱりコイツ変だなって思えるメッセージがひとつある)

などなど、メッセージ量が増えているので、なんか明後日なこと言ってる奴が減った。
これに伴い、あまりにいい加減な扱いを受けていたヒロインのフィーナにそれ相応のスポットがあたっている。
(しかしバルバドのスラフ君が一番の出世株かもしれない。)

とは言え、本筋は変わっておらず、よってストーリーの矛盾点も変わっていない。
ダルクの馬鹿さ加減も相変わらずやし。
 

●移植に関して思うこと

過去の作品を移植すると言うのは、馬鹿正直にそのまま移植するのではなく、
改善すべきところを改善して、残すべきところを残すと言うスタイルが大事だと思う。
その点、このYsエターナルは、改善すべきところを改善しているとは思う。
が、残すべきところは残すと言うのはできてなかったと感じてしまう。

まず演出面だが、ボスが全員せっかちになったと思う。
ダッシュがデフォな速度設定、またゲーム自体もそこそこスピードアップしているが、だからと言って
ボス登場&戦闘開始の演出まで切らなくてもいいぢゃん。
ダルク=ファクトの「イントロ中はマントからオーラ出して、それから行動開始」っての凄い好きだったんだけど、
エターナルではいきなりピンボール運動はじめちゃう。(しかもダッシュしないと追いつけない速度で)

ボス戦のバランス面では、ダルク戦での床の穴開きパターンが違ってたような?
たしか「連続斬りでやれば、何発殴っても穴ひとつ」だったと思うんだけど、
エターナルだと「殴った分だけ穴」が開いてる気がするのだが。
これでは床の面積が足りないし、その上足元にしか当り判定無いんじゃ凄くきつくないか?
このあたりはバランス設定と言うより、何でそういうものがあったのかって考えて欲しかったな。

で、デバイス面だが、
何で「まうす」なんやねん??
このてのゲームでしかもあのバランスでは、マウスでのプレーなんて不可能じゃないの?
なのにマウスオペレーションなんてついてるのは邪魔以外の何者でもないし、そんなものつける前に、キーボードの入力安定させてくれ。
マウスはメニュー関係に絞って、一般操作には関係ないようにしておいた方が良かったんじゃないのかな?
 

●まとまりないまま結論

クラシック同様、原作が良いだけに、今やっても十分に面白い。
また、アレンジの仕方はクラシックに比べ格段に良く、印象もずいぶんと良い。
ゲームだけなら最低でも90点行っていいと思うが、

実際のところ70点

と、いうのは、ゲーム以外のところの作りこみでずさんな印象を受けてしまったから。
他のメーカーと比べてとりわけ悪い方じゃないけど、安定性やその他細々したところなど見ても、
どちらかと言うとあまり良い部類ではないと感じてしまう。

まぁ、昔のはしっかり作ってあったと思うし、それだけに「質が落ちてないか?」というのが気がかりになったため、
他のメーカーよりはこのポイントはきつめに言ってるけどね。

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