<気分?>

  〜あずさXSS〜 presented by やまぐう様

 日野森あずさがフロアの仕事を終え、事務所に戻ってきたとき、彼女以外の
誰もそこにいなかった。
 妹の美奈は休みで彼女を送るという仕事もなく、ほっと一息ついたあずさは
メイドタイプの制服の一部である髪留めを外そうとした。しかしその手がそれ
を触ったときに、はっとなって動作が止まる。そのまま何かを考える表情になっ
た。
 考えながら視線を自分のユニフォームへと流す。今日一日動き回った疲れが
服の乱れに現れ出ている。
 だが、あずさの視線はそこにあるものよりも、もっと別なものを追っている。
仕事とは異なる何かを考えている。足下まで下りた視線が、また上がって、大
事な場所、さらに上のほうにある膨らみに至る。

 そこへひょっこりと耕治が顔を出した。
「あ、日野森」
「あ、あら、前田君」
 ほんの前の固い表情はすぐに消え去って、あずさはパッと明るい笑顔を彼に
見せている。その笑顔に耕治の笑いが重なった。
「前田君、いま上がり?」
「ああ、終わったところ」
「じゃあ、いっしょに帰りましょう」
 あずさの溌剌とした動作に、耕治はちょっと慌てる。彼はきょろきょろと、
辺りに誰もいないのを確認して口にした。
「ええとお、あずさ」
「なあに?」
 彼女に呼びかけたまま耕治の次の言葉はない。言葉がなくてもあずさは彼の
目の中に、言いたいことが何であるかをはっきりと見ることができる。
「ふふっ、しょうがないんだから」
 ほほえみを返すあずさの目にも、耕治を誘う、やんちゃな光があった。

「あむ、あふ、あうん」
 倉庫に入ったとたん、耕治はあずさに後ろから抱きついた。振り向いた彼女
の唇をいきなり奪う。
 あずさは彼にされるまま、彼の舌の這いずるままにさせている。
 その舌が自分の中に入り込んでくると、待ってましたと自分の舌をそれに絡
める。耕治も負けずに荒々しく彼女のそれを叩いたり、するっと抜けてあずさ
の口内の粘膜に這わせたりする。
「くはあ」
 ディープなキスが終わって、甘く淫らな吐息をあずさが吐く。それは男を麻
痺させる妖しい気体。彼女の体臭と混じったそれを吸い込み、耕治の興奮が倍
増する。

「壁に、手をついて」

 彼のその命令に、あずさはいそいそと従った。
 ぷりっとしたヒップが突き出される。綺麗な曲線。無駄な脂肪がないのに微
かに揺れるそれは、その肉の柔らかさをはっきり表している。
 耕治に捧げられているのは極上のヒップだ。

 彼女の美しさを見るのもそこそこに、耕治はその部分にかぶさっているスカー
トをはらりとまくった。すると…

「! …すげえ…こんな下着つけてたんだ」
 そこに出現した黒いショーツに息を飲む。

 今までずっと、あずさは彼との行為の時に白を始めとして淡い色の下着ばか
り身に付けていた。薄いモスグリーン、水色、ピンク。やはり何より白のこと
が多かった。それらは肌の白さと溶けあって、おとなしく、肌の一部であるか
のように彼の前に控えていた。
 しかし今日のこれは今までのそれらとは全く異なるものだった。あずさの白
さと対照的にその存在が映える。そしてその存在は同時に、そこが女のどうい
う場所であるか、男にとってどんな場所であるかを露骨に表している。

 そこは秘所
 そこは隠さなければいけない場所

 ヌード写真の墨塗りと同じ。男の目から隠す働きをしているようで、実は反
対にそれは剥ぎ取るべきものであるとアピールしている。そして今ここにある
黒は、写真のそれと違い彼が望みさえすればあっさりと取り除けるものだ。
 耕治も、もし今日までに彼女を抱く機会がそれほどなければ、目に焼き付い
たこの瞬間、野獣となり有無を言わさず本能のままそれをむしりとって犯した
だろう。けれども彼には余裕がある。誘惑に半分のみこまれながら、あずさが
こんな格好をしたのはどうしてだろうと考える余裕がある。
 彼が考えている間、あずさの下着はずっと彼の視線に晒されていた。ぶるっ
と震えて、あずさの方から囁き出す。
「あん。今日は、そんな気分だったの」
「“気分”?」
 耕治の目の下の筋肉が微妙に揺れる。かすかに笑って囁き返す。

「エッチしたいって、気分?」
「や。そういう、わけじゃ」

 あやふやにしておきたかったことを言い当てられたあずさは恥ずかしさに身
をくねらせる。
 耕治は指で、秘裂のある辺りをなぞってみる。湿っている。しかし彼はここ
でまた、おやっと思う。まだ制服を着ているとはいえこれほどまでにあずさは
昂っている。そしてさっき事務所で会った様子からしてこの下着をずっと身に
付けていたはずだ。なのにこれだけとは。普段の彼女の濡れようからして、か
なり足りない…。
 言葉にすると長いが、彼の頭に浮かんだ疑念はほんの一瞬のこと。すぐにそ
の湿った場所をしゅっしゅと二本の指でこすっていく。
「アー、あぅ、はあぁん」

 あずさがさほど濡れていなかったのにはわけがある。
 寮でこの下着を選んだとき、選ぶということがどういう意味を持つのかを考
えたとき、それを穿こうとスラリとした綺麗な足を通そうとしたとき、そのと
きどきで秘所から愛液があふれだしてしまった。これではどうしようもない。
いくら拭いて整えようとしても、すぐさま濡れてしまうのだから。せっかく用
意してもこれじゃあ穿けないと彼女は一旦あきらめかけた。
 しかしそこでひらめいた。そのどうしようもないところに生理の時に使うナ
プキンをあてがったのだ。それを付けると動きにくくなってしまうが、下着が
濡れることはない。うん、とうなずいてその上から黒いショーツを穿いて、店
へやってきた。
 股間の違和感、生理でもないのにそれを使っているという事実が、自分が淫
らであることを示していて意識するたびに愛液が湧き出てきた。もちろんそれ
を防ぐためのものだから、安心していいのだが、だからといってはしたなくあ
ふれさせる自分に少々嫌悪感を抱いてしまう。
 それでも一度働き出した後は、過剰な意識はなくなって、ウエイトレスの仕
事をばりばりとこなした。そんなあずさ自身が気がつかなかったこと――今日
の彼女の身のこなしには、いつもの彼女にない艶が混じっていた。もっともそ
れを敏感に感じとったのは葵くらいで、葵にしてもまさかそんなことが原因と
は露ほども思わず単にあずさの女の色気がアップしたわねと感心していただけ
だった。
 仕事が終わって、事務室に行く前にトイレに寄り、ナプキンを外した。無色
のままのそれからムッとする女の匂いが発散し、カアッと顔が火照る。戻って
きて、一呼吸落ちつけて考えていたときに耕治が現れたのだ。

 今、彼が自分のその場所を弄り始めた。
 制服のままでいても、もうプライベートの時間だ。我慢することはない。あ
ずさの体はわかっている。
 耕治の指先にぬるぬるした感触が広がっていく。あ、と耕治が思ったすぐに、
その黒い布地はべとべとに濡れている。
「あずさ、どんどん出てくるよ。エッチなお汁が」
「あうん。だって、耕治がそうやって触るから」
「そう? あずさのココがお願いしているようにも見えるよ」
 会話を楽しみながら耕治の指先は自由自在に動く。といっても耕治の言った
通りあずさの秘裂は彼の愛撫により愛液を垂らしているのではなく、そこが意
志を持って彼におねだりするかのように大量の液を吐き出している。
 耕治の指がべっとりするくらいにあずさの液が外まで染み出てきた。その指
を、ぐっしょりと濡れたパンティごと耕治は彼女の秘裂の中に押し入れていく。
「あうう。来る、あ、あ、入って」
 膣口にちょっと沈んだだけで、あずさの興奮は異様に高まる。
 すぐにそれを引き出し、ぐしょぐしょになった指と布を見て、さあこれから
と思った耕治が、ふと思い及ぶ。
 濡れてない手の指をヒップの割れ目から上へ向かって滑らせていく。背中を
すうっと登らせていき、目指していたものの感触をユニフォーム越しに得る。
「あずさ…?」
「…え、ええ。そう、そうよ」
 彼が布越しに触ったのはブラの背中側。ホックのある辺り。
 そしてあずさが答えた通り、そのブラはパンティとお揃いの黒。
 下の方にばかり注意がいって、彼女ですらそのことを忘れかけていた。
 そう、上下揃えた下着。買うときに店で試着したの時の妖艶な姿は鏡を見て
いたあずさ本人が魅惑されたほどだった。
 意識がほんのわずか移っただけで、あずさの乳首がぴくっと励起する。ブラ
に擦られそこからも甘い刺激が生まれてくる。

 見たい、と激しく欲情した耕治がせっかちにあずさの上のボタンを外してい
く。はだけたときに、黒い色が揺れているのがちらちら見える。彼の手が襟元
にかかると、あずさのほうから率先して制服の上を脱いでしまった。この角度
では黒いストラップだけしかまだ見えない。耕治が言葉を口にする前に、あず
さはゆっくりと腰から上だけで彼を振り向き、望んでいるものを見せつける。

 ああ、確かにそれがある。豊かにふくらんだ乳房を隠す下着が。隠している
ことにならず、男の目に晒している下着が。

 黒いブラだけのあずさの上半身。振り返ったときにスカートのホックも外さ
れ、下半身には黒いパンティが露にされている。
 じっと凝視する耕治の目がぎらつき、しまりなく開いた口から熱い息が吐き
出される。何度か息を落ち着けようとしながら、彼はそれが無駄な努力だと悟っ
た。
「あずさ、すごい。オレ、がまんできない」
「アン、アン、あああ。がまんしないで、あなたのしたいように、私を、私を、
ああ」
 彼女の返事の終わる前から耕治は片手でブラごと胸をわしづかみ、はげしく
揉んでいる。もう片方の手はさっきからずっと黒い秘裂をこすっている。
「ぐううぅ。あーっ、あーっ…もっと、もっとお」
 荒々しい彼の愛撫にも、さらなる刺激を求めるあずさ。その姿は彼を狂わせ
る。いや、既に彼女の方が淫欲に狂っている。彼女に引き込まれ、胸を捏ねま
わす耕治の手の力がより強くなる。綺麗な曲線がゆがめられ、変形し、そして
張りのある弾力はそれを戻そうとする。
 秘所にあった手も胸へ運ばれ、両手を使って耕治はよりいっそう強く揉み込
んでいく。優しく膨らみをローリングするかと思えば、ぎゅうぎゅうとつぶさ
んかという力で掴む。
「あいっ、はぅう、いい、いいのぉ。こうじぃ……イイぃ…」
 彼がするどんな愛撫も、あずさの中にめくるめく快感を生み出す…。

 黒いシルクの手触りは抜群だがそれよりももっと抜群な肌触りを求め、耕治
の手がブラジャーを押し上げる。プルンと弾んで、みずみずしい彼女の乳房が
剥き出しになった。その双球はみずみずしいだけでなく興奮で十分に張って、
大きく膨れている。
「ああふ」
 耕治の手がぶつかっただけで声をたてるほどに彼女の乳房は敏感になってい
る。あずさの声に再び揉みつぶそうとした耕治はしかし膨らみを握るのを避け、
指先で乳輪をくすぐることにした。
「ひゃう、ひゃう、ダメえ〜。そんなの、くすぐっ、たくて、あ、アアっ」
 性の快感とくすぐったさによる純粋な笑いとが混沌となってあずさの頭を揺
すぶる。ともすると笑い出しそうで、気を抜くと気絶しそうになる。
 輪を描く指に対する彼女の反応がおかしくて、耕治はさらにくるくるとなぞっ
てからかい続ける。
「苦しい、だめ、おねがい、これじゃ、つら‥過ぎる」
 短い息を何度も吐いて、耕治に懇願するあずさ。
 あずさの訴えに彼は乳輪を解放し、代わりに乳首を弄り出す。ピンと勃った
それを摘んで引っ張ってみる。
「おおお、いい、いいよぉ、そこ…」
 こんどは指先で胸の中に押し込む。柔かい乳房の中に埋もれるが、指の力を
抜くとすぐにまたピンと勃ってくる。繰り返し繰り返し、押して埋めるたびに
あずさの嬌声が耕治の耳に飛び込んでくる。
「あおぉ、いい、おっぱい、乳首があ」
 何度となく彼女を啼かせてから、ようやく耕治は手のひらに豊かな双乳を収
めた。優しく包み込み、ゆったりと持ち上げるようにして揺らしていく。
 そのたっぷりとした重量感はいかにあずさの身体が引き締まっているかを、
手に感じるカーブは彼女の身体が素晴らしい曲線美を持っているかを示してい
る。
 だんだんと耕治の手に力が加わっていく。揉む、擦る、摘む。彼の一挙一動
があずさの胸に痺れるほどの快感を生み、彼女は悶えながら熱い吐息を吐き出
している。耕治の腰がこの時点でピストンを始め、逞しい肉茎があずさの黒い
ヒップを叩いている。そのノックにあずさも尻肉を震わせて応える。

「も……もう、そろそろ、欲しい…」

 振り向いて、濡れた瞳であずさが訴える。首を縦に振って耕治がパンティに
手をかけ、つるりと尻からめくりおろす。あずさが器用に片足をあげると、足
首からそれを脱がす。あずさはもう片方の足も上げて耕治を助けようとする。
ところが耕治は上がった右足を下ろさせることを許さない。

「えっ?」

 不審に思ったあずさがまた振り向こうとしたとき、その右足に彼の腕がひっ
かかるのを感じた。あっと思う間もなく高く腿が持ち上げられ、股間が、秘所
が露にされてしまう。反対側の足はつま先立ちの状態で、あずさは不安定に立
たされることになる。
 彼女のクレバスは足の開きに応じて自然に大きく開き、その中には淫らな唇
が控えている。耕治は入り口へ陰茎をあてがうと、腰をゆっくりと押し進めて
いった。

 ずぶり

「あうううふん」

 尻が浮いた体勢で、彼の侵入を感じたあずさが、心地そのままの声をあげる。

 締まりのよいあずさの性器も、こうやって足を抱えて広げられては、きゅう
きゅうと締めることが出来ないでいた。だがこのくらいのほうが、柔かい中を
かき回すことができて耕治に都合が良かった。視覚でさんざん興奮している今、
陰茎をまともに絞り上げられたら彼はそれだけで簡単にイッてしまうだろう。
 あずさも、腰をひくつかせながら、彼のモノにかき回される感触に酔ってい
る。普段なら、バックから彼に突かれていても彼女の側から媚肉を蠢かせ、貪
欲に責め立てることもしばしば。でも、こうしてゆったりとした膣内を彼のペ
ニスが動いていくのも気持ちよい。さっきまでの淫らな興奮とは違う。愛しい
彼にされるということ、愛されているということ、それがあずさを幸せにして
いる。
「こうじ、いいわぁ…。…ゆっくりなのに…」
「あずさ、オレを感じてる?」
「ええ。あなたが、私を愛している。私も、あなたを愛しているわ」
 あずさの甘い囁きが彼の耳から脳へ伝わり、新たな脳内物質が分泌されて一
段と強く陰茎がそそり立つ。
「ああっ。大きく、大きくなった」
「あずさが、あずさが愛しいから」
 抱いている彼女の体を、しっかりと支え直す。つま先で立っている足も抱え、
あずさの体を完全に浮かせる。そうしてから改めて、ぐいっと肉棒を突き刺し
た。
 やわらかい媚肉をかき回していたペニスの動きが力強い抽挿へと移り変わっ
ていく。彼女が欲しい。俺のものだという印をしっかりと刻み込みたい。確か
な意志が、あずさをたくましく突き上げていく。

「来る、来る。あなたのモノ、私の中に」
「あずさ、あずさ」

 相求め合う二人の呼吸がひとつになる。あずさは自分の子宮を揺らす亀頭の
感触を、耕治はペニスをやわやわとそれでいてしっかりとくるみ込んでくるあ
ずさの秘肉の感触を、存分に味わっている。激しく突けばあずさが啼き、きゅっ
と締まると耕治が呻く。

 耕治が腕に持った彼女の腿を動かすと、彼女の股間の開きかげんが変化する。
ぐっと狭めれば膣肉の締まりが強くなり、大きく開けば緩む。あずさの名器を
自由自在にコントロールできることで耕治はこの場の主導権を完全に握った。
 あずさは身を完全に耕治へ委ねた。自分でがつがつと悦びを貪る必要はない。
彼が与えてくれる。彼が私を幸せにしてくれる。そう信じて彼に合わせてゆっ
たりと動いていた。
 そんな動きを通じて彼女の心が耕治に流れ込んできた。耕治はそれをしっか
りと受け止め、自分の快感よりもあずさを、あずさを先にイカせようと、彼女
の感じるポイントを丁寧に小突いていく。

 いつもと違う
 もどか、し、い…、それでも彼は激しく奥を突いてくる…彼に揺られ、擦ら
れ、突かれて、あ、お、奥が、あがってくる。私はあなたが…

「大好き。耕治、愛‥してる」
「オレもだ。あずさ、お前がオレの全て」
「あ、ああ、あなたを感じる」

 耕治に導かれあずさは静かになっていく。だがそれは、津波の前に潮が引く
それと同じで、このうえもない絶頂の準備を躯が行っているのだった。
 一方の耕治は、登り始めた二人の感覚を巧みにスピードをコントロールしな
がら行くべきところへ向かわせていく。それは本能的なものだった。締まりが
どうこうなどは関係ない。彼女との繋がり、彼女が愛しい、欲しい。全てが俺
のもので、俺はまた彼女のもの。あらゆる思いがあずさの奥を突き上げる激し
いピストン運動へ昇華していく。

「うっ、くる、来てる、耕治が、あ、アアン…もっと、もっと」
「あずさ、あずさ、俺は、オッ」

 主導権を握った耕治はここまで何とか頑張ってきたが、ヒクヒクと締まって
くるあずさの名器にもう限界が差し迫っていた。

「あずさ、ごめん、おれ、もうすぐ」
「いいの、イク、私もイクから」
「あずさ、あ、あ」
「イク、イッっちゃう、あ、あ、あ、あああああぁっ!」「あああああー」

 ビクビクッっと二度ほど体を痙攣させて、あずさは一気に絶頂へと達してし
まった。それと同時に耕治はペニスをすっぽりと蜜壷の最奥まで挿入する。亀
頭に女の器官を感じた瞬間、精液を発射した。何度も何度も勢いよく子宮にか
かっていく液。あずさは体の奥に感じるその熱さに、途切れることないエクス
タシーの波に運ばれていった…。
 …

 二人が店から出たときにちょうど涼しい風が吹き抜けていく。頬に感じた風
にふっとあずさが顔を振ると、それを追って栗色の髪がたなびいていく。

「ああ、つめたくて、気持ちいい」
「……さっきまで、熱かったからな」
「もう」

 軽く睨んで見せるあずさの目は、それでもさっきまでの行為の余熱できらき
らと光っている。
 そんな目で見られると耕治はどきっとなって、下半身にまた血液が流れ込む。

「あずさ」
「? なに」
「色っぽい」
「え? な、なに言ってるのよ」

 耕治の目に雄の光を感じてあずさが慌てる。もちろんこんな場所で事を起こ
すほどに彼が昂っているわけではない。
 ちらちらと彼に視線を向けたり外したりしながらあずさが答える。

「さっきのは、その、もう穿いてないんだから」
「それでもさ」

 つかつかと近付いて、耕治はひょいとあずさのほてった顔をのぞきこむ。

「あずさがオレのそばでこんな顔をしてると、何度でも惚れ直しちゃうよ」
「ば、ばかっ」

 耕治に背を向けて、つかつかと歩き出すあずさ。あわてて追い掛けた耕治が
追い付こうとしたときにくるっと振り返り、そのまま彼に抱きつく。
「わたしだって、あなたにこんなに惚れてるんだから」
「嬉しいよ、あずさ」
「私も……」
 そのまま激しく唇を貪り合う二人に、月と星の優しい光が降り注いでいた…。

---End---


初出 2000/11/09

 初めての頂きモノでした。予想もしていなかったので、大声で歓喜の声を上げそうになりました。
 しかもえっちぃです。無題でしたので、タイトルはこちらでつけさせて頂きました。
 やまぐうさん、どうもありがとうございました。

 やまぐうさんのメールアドレス:y-takesi-SS@sonic.j.dendai.ac.jp

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