本作品は作品集10「こころやすらぐ紫のおかゆ」の続編にあたります。  ですが、前作を読んでいない方でも大丈夫な内容であるはずです。前作、本作ともに一作で完結しています。  本作品を読んでいただく上での注意点がありますので、駄目な方は戻る事をお勧めます。 ・前作とは大分ノリが違います。 ・想像力が豊かな方にはスカトロに見えてしまうシーンが存在しますが、決して排泄物ではありません。ですが、擬似的であってもスカトロ駄目な方は読まないことを強く、とても強くお勧めします。 ・タイトルが季節外れにも程があります。 以上――特に第二点が――大丈夫な方はスクロールをどうぞ。 「この薬を処方します」  永琳から差し出された薬包の中には、白い粉薬が入っている。  その薬は非常に細かい粒状で、袋に包まれていなかったら体を動かしただけで吹き飛んでしまいそう。  今まで私に処方されていた薬とは、色も粒子の細やかさも全然違う。  私の飲んでいた薬は褐色っぽい、いかにも苦そうな、そして実際にすごく苦い薬だったけど、目の前の薬は粉雪のような薬だった。 「私の風邪はもう治ったんじゃなかったの?」  今日の往診も、紫が永琳を拝み(脅し)倒して、2月13日から連日の往診だった。  それも今日で終わりと聞いている。  昨日の問診で、明日不調なところがなければそれで終わりにすると聞かされていて、ついさっき何も問題なく完治しました、という太鼓判を貰った筈であった。  ちなみに紫は、永琳の往診の交換条件で出禁を食らっていた。  これ以上風邪を悪化させるようなことを、自分の患者にさせるわけにはいかないとの永琳の判断だ。  確かに風邪を悪化させたのは紫だったので半分は本音だろう。そしてもう半分は無理矢理往診させたことへの嫌がらせだと思う。  それでも、寝たきりの私の世話は、紫に派遣された藍が料理を持ってきて、洗濯もしてくれた。  むしろ新鮮だったのは、紫が手紙魔だったことだ。  永琳に隙間で覗くのすら禁止されてしまった紫は、珍しいことにそれを律儀に守っているらしい。そう藍が言っていた。  永琳の「そんなことをしたら貴方の大切な霊夢の診察しないわよ」という脅しに従っているだとしたら何か面映い。  それはともかく、その反動か紫は毎日藍に手紙を持たせてくる。  その分量たるや、読みきるのに十分掛かるくらいの量の手紙を、毎日マメに藍に持たせてくる。  私の返事は便箋一枚未満なのに、藍によるとそれでも飛び上がるほどに喜んでくれるらしい。  「霊夢より」とだけ書いた紙切れでも、今の紫様なら喜ぶだろうよ、とは藍の弁。一回試してみたかったけれど、その機会はしばらくなさそうだ。  その紫の手紙も、まるで医者の様な心配事から、橙には少し早いような際どい内容まで多種多様だった。  良く書くことが尽きないものね、と思いながら毎日布団の中で読ませてもらった。  お手洗いに行く以外、特にすることもない私にとっては、紫には悪いがよい暇つぶしにはなった。  それも今日で終わり。  さきほど藍が、永琳から伝えられた「私解禁」を、主に伝えにマヨイガへと戻っていった。  ただし18時からという制限付きの解禁なのだけれど。  永琳がその制限を掛けた意味が分からなかったのだけれど、その理由は冒頭で永琳の渡して来た薬にあった。 「ええ、貴方の風邪はもう完治しました。  昨日には治ってたんですが、折角なのでもう一日」  永琳の折角のおかげで私は一日紫と会えなかったらしい。一日損した気分。 「あら、そんな妬ましい表情しないで。お詫びがこの薬よ」 「妬ましいって何よ。それでその薬は何よ」  私はごまかすようにお茶を啜る。そして永琳の返事に噴いた。最近の私は永琳の前で噴いてばかりいる気がする。 「八雲 紫専用弛緩剤よ」  でもこの返事を聞いて噴かないのは私には無理だった。 「幻想郷の巫女は、命の恩人に対してお茶を噴き掛けることで報いるのね」 「あんたが変なこと言うからでしょ」  私が顔にぶちまけてしまったお茶をふき取りながら、飄々とそんなことをうそぶく。  やっぱりこの薬師は変だ。 「しかも紫専用って何よ。何に使えって言うのよ。というか何でよ」 「一遍に質問しないでちょうだい。順々に答えるわね。  まず後の質問の答えは、目的は嫌がらせ、いやもっと肯定的に言うなら娯楽ね。  だから渡すのには条件があるわ。どんな使い道をしてもいいから、その顛末を私と姫様に話して下さるかしら。  無聊を慰められるのであればどんな下世話な使い道でもいいわよ。そうこれが2つ目の答えね」 「下世話って……」  永琳が下世話といったときの表情は、こんな薬を渡すからには使い道は一つしかないでしょう、と嗤っていた。  でも実際、紫に対してだったら「そういう使い道」しか思い浮かばない。  紫以外の妖怪なら退治するのに使えるだろうけど、まさかこの薬師は私に対してそんなことを求めているはずがない。もしそうであるならば、私何かに渡してくるわけはない。  私は脳内に浮かぶ桃色の妄想を振り払う。紫にいろいろできる、いろいろ……。そんな妄想を。 「まあ、話すのがいやなら、そうね、50年後に霊夢が生きてたらその時でもいいわよ。  すぐに話せと言っても、いろいろ生々しいでしょうし、50年後だったら何をしても笑い話にできるでしょう」  やはり永琳は私が薬を「そういう使い道」で使うと確信しているみたい。  でなければ生々しいなどと言う筈がない。言い返せないのが悔しいけれど。  それはともかく50年後という条件は私にとっては悪いものではない。 「私が死んだら無効でいいのよね。もし私が死んでたら白玉楼で霊魂の私と会っても多分会話できないわよ」 「まあ、余興ですもの。失敗したところで姫様の無聊が一日増えるだけです。  一日など私達の道程に比べれば、砂粒ほどの存在でもないですし」 「さすがね。一日の余興のために50年間待つなんて」 「盆栽みたいなものよ。毎日手を加えることはできるけれど、結果が見えるのは10年先なんてざらでしょう。盆栽は。  姫様にとっての盆栽が、私にとってはこの薬なのよ」  弛緩剤を盆栽と並べて説明するあたり、頭痛がぶりかえしそう。 「まあ、分かったわ。後質問がもう一つ残っていたわよね」 「そうね、紫専用のくだりね。  まだ説明していなかったし、当然の疑問よね。  こんな薬があるなら前の異変のときにでも使っておけば貴方方に不覚を取るようなこともなかった、と思うでしょう。  あの八雲に効く薬ですもの。尋常な薬でないのは分かってもらえるでしょう。  当然これにはいろいろな理由があるの。  この薬を調合するに当たって私は、効果とのトレードオフに様々な条件を付与しました。  でなければ八雲 紫に効く薬など私でも作るのは難しいですし。まあ、本人の生体サンプルがあるなら別ですが。  ともかく、例えばこの薬はこの博麗神社の敷地外ではまっとうな効果を発揮することはできないわ。  そもそも博麗神社は幻想郷の地脈の都大路にあたるところ、その地脈の力を借りるのが絶対条件なの。だからこれは大前提。  紫が妖怪なおかげね、地脈の効果が及ぼせるのは。これが白黒やら狗メイドだったら、そこまでは効かないわね。その場合は人間用の強めの薬で事足りるけれどね。  それから陰陽の波と、二十八宿も考慮にいれているわ。水星、金星…九曜の巡りは言うまでもないわ。  だから効果を発揮できる時間も短いの。  今日の19時から22時までね。  今日を逃したら次のチャンスは2784日後になるわ。  ちなみに2784日後より今日の方が効果はざっと三割り増しね」  こんな事のためにわざわざ紫にの出禁解除に時間制限を設けたのかと思うと溜息がでた。きっとこの薬師のことだから最初に出禁を申し渡した時点で計画を立てていたに違いない。  溜息の意味を察したのか、永琳は付け加える。 「貴方の健康を考えて出禁にしたのは本当よ。できるだけ合併症とかは避けたいでしょう。  我慢できなくなった紫が猛威を振るったら、貴方に風邪を治す暇を与えてくれないどころか、貴方を『元』人間にしかねないもの」  私は永琳の台詞に頷くしかなかった。  もし紫がいたら、多分私から5メートル以上離れることはなかったと思う。  というかお手洗いの中にまで着いてきかねない。いや、着いてくると断言できる。 「まあ、この薬は置いておきます。  使うもよし使わないもよし、霊夢にお任せするわ。もし使ったなら50年後に一席お願いね。  後、注意点は……特にないわ。  基本的に無味無臭の筈だし粒子も細かいから、一服盛るには丁度いいと思うわ。  水溶性だけど、親油性もそれなりにあるから実質は万能ね。  さすがに経口投与でないと効果は薄いわ。経皮投与も可能だけど、効果は薄いからお勧めしないわ。  静脈注射や皮下注射は……ああ、貴方なら針につけて毒針にすることも可能ね。  でも病み上がりでしょう、そんな不確実な方法には頼らない方がいいわ。  あと、一応貴方が飲んでも無害だから、口移しも可能ね。  大事なことを言い忘れていたわ。その袋の1/10の量でも十分効くし、全部飲ませたところで致死量だったりすることはないから安心して。人間用の薬とは根本的に作用の仕方が違うのよ」  私は永琳が渡して来た包みをじっと見つめてしまう。  そんな私を横目に永琳は立ち上がり、診察に使った荷物をまとめ始める。  私が永琳に僅かばかりの心づけを渡すと、「それじゃ、50年後にね」と言い残して、永遠亭に帰って行った。  そして私の手元には薬が一包み。今は14時、薬が力を発揮するまで5時間ある。  その間に、どうするか私には考える時間があった。  結局使わないなんて選択が私の頭に浮かぶことはなかった。  むしろ考えるごとに、紫にどんなことをしようかという妄想が湧き出てくる。  そしてその結果が目の前の光景だ。  私の腕の中で、私を睨みつけてくる紫。  でもさすが八意印の薬なだけあって、紫の四肢は指や各関節がゆっくりと動く程度。  紫には私がお茶に薬を忍ばせたことは、すでに察しているらしい。  でなければ睨み付けたりはしないだろう。  やはり八意印の仕事は完璧だった。  紫の体はほぼ弛緩していて指先など細かい動作ができるだけ、能力を使えば動けるでしょうにそれもしないということは、そちら方面でも薬の効果は絶大ということみたい。  しかもわざわざ声帯だけはその薬の効果から免れるなんて、なんて永琳の薬はご都合主義なのかしら。  永琳が本気を出したら幻想郷を征服することも可能なんじゃないか、という考えが頭に浮かぶけどそれはありえないなと打ち消す。  あの輝夜がそんなことを望むとも思えない。  それに紫だって事前の手回しさえすれば幻想郷を征服することくらいできる気がする。  それこそ「くらい」って言葉で済ませられる程度で。  もし紫がそんなことをやり出したら私はどうするんだろう。  異変として実行したんなら、一発殴って終わりにできるんだけれども。  まあ、そんな仮定の話をしていてもしょうがない。  今の私には、腕の中の紫がいるんだから。  時間は2時間。  十分とは言えないけど、最低限の時間はある。 「あの薬師の仕業ね。霊夢、貴方何を吹き込まれたの」 「いや、紫を好き放題にできるって」 「……そのままね。私を亡き者にして、幻想郷を永遠亭の……。ないわね、あの永遠亭に限っては」 「まあ、征服するにしても、わざわざあんたを亡き者にしたりはしないでしょ」 「つまり今この状況は霊夢が仕組んだってことね」 「まあ、薬とかは永琳のおかげだけど、使うって決めたのが私なのは確かね」 「どうしてこんなことするのよ……」  やばい、紫が本当に泣きそうになってる。  これを見れただけでも十分かもしれない。  でもせっかくの好機を逸するのは余りにもったいない。 「泣かないでよ、紫。別にあんたのこと嫌いになったわけじゃないんだから」 「わ、分かってるわよ。貴方が私のこと嫌いになるなんて思ってないわ」 「当然でしょ」  紫、すごい自信ね。こんなことをされているのに。  少し罪悪感を感じてしまうけど、先日の事を思い出すんだ、私。  チョコまみれにされたけど、あんなに優しくしてもらった……。  違う、違う。  おかげで風邪が悪化したのよ。 「でも、この前のお礼をしないと私の気が済まないのよ」 「ご、ごめんなさい、霊夢。この前のは、その霊夢が可愛くて……、いつもあんなに気丈な霊夢が、切なそうな顔して頼ってくるんですもの。  正直あそこまで我慢した私を誉めて欲しいものですわ。  貴方気づいていないでしょうけど、貴方が途中で寝ているたびにうわ言で私の名前読んでたのよ。そのたびに私貴方の手を握ってあげたんだから。  そうすると、霊夢貴方風邪で苦しそうな表情の間に幸せそうな表情を浮かべてたのよ。その度に何度襲おうと思ったか。  でもね、さすがに苦しそうな霊夢の顔を見てると悪いと思って、リーマン予想を658個の解法で解いて気を紛らわせたのよ。  でもね、霊夢がチョコレート準備してくれてたでしょう。それで霊夢が泣きそうになったでしょう。  ごめん、その時どうしても超えることしかできない壁の存在を悟ってしまったの、大悟したと言ってもいいわ。  これ以上の我慢は無理だと。だってあの時の霊夢、自分の表情覚えてないでしょう、誘ってるんでしょう、霊夢って表情よ。  別に霊夢がエロいって言ってるわけじゃないの。あ、でもある意味エロいと言っても良かったわね、なんていうかその抱きしめずにはいられないって顔だったのよ、性的な意味でね。  あの時の霊夢に鏡を見せたら、多分霊夢もナルキッソスになってたわよ。  それくらい良い顔してたんだから。  だから仕方ないのよ、全部霊夢が悪」 「黙れ」  とりあえず唇を唇で塞いで、くるくると良く回る舌の動きを封じ込める。  体をロクに動かせない紫は私のキスから逃れる術をもたない。  私が紫の口の中で下を蠢かせると、紫の僅かに動く指先が私の体を叩いてくる。でもそれは余りにもささやかでまるで何も知らない生娘のよう。  私の中で、私を支えていたモノが折れてしまった。  身動きの取れない紫を畳みに押し倒す。  少し強く押し倒したせいか紫の端正な顔が歪む。  薬師の特注品は、痛覚までちゃんと保持させている。本当にあの薬師は何を考えてこの薬を作ったんだろう。  もしかしたら例の姫様との永久に続く情事で既にどちらかに使ったことがあるんじゃないかと思ってしまう。あの二人であればその程度していても驚かない。  他の女のことより今は目の前の紫ね。  押し倒したまま紫の唇を貪り続ける。  ねえ、紫、さっき私が誘ってる表情をしてたって言ってたわよね。  その気持ちよく分かるわ。  今のあんたの表情見てたら、どんな枯れた人間だって私と同じことをするに違いないわ。  その恐れと期待が入り混じった表情を見たらね。  紫の口から、私と紫の唾液が入り混じった液体がこぼれていく。  口も完全には動かせないせいか、少ししゃべり方もおぼつか無い感じだし、こうして簡単に口から涎を垂らしてしまう。  紫のこぼした私たちの唾液を舐め取りながら、紫の服の上からその胸に手をかける。  例の紫色のドレスの方だったら直接さわれるのに、やっぱり冬で妖怪でも寒いのか例の道士服を着こんで来ている。  それでも前掛け部分から手を差し込めばそれなりに紫の胸の柔らかさを堪能できる。 「霊夢……、止めなさい……」 「紫、狙ってるの?」 「な、何を?」 「そんな弱気な表情で言われて止められるわけないでしょう」  身動きの取れない紫の頬を噛むと、「ひいん」という僅かな悲鳴が聞こえてくる。  紫の足の間に正座する。  紫のスカートの中はまだ見えないけど、紫の瞳は既に私にされることを想像してか、僅かに涙ぐんでいる。  その瞳に私の背筋に衝撃が奔る。 「紫、こうして私から見るのは初めてよね。いつも紫にされてばかりで、私紫の服を脱がせたこともないのよ」 「う、うん、そうね。これからも私が優しくしてあげるから、今は……」 「だーめ」紫の膝に両手を掛けて、紫の太腿を押し広げた。 「や、やめなさいっ、霊夢っ」  そこはパライソであった。 「今日は白なのね」  私の眼前に広がっているのは大雪原だった。  ストッキングも白、下着も白、そして私の肌より白い紫の肌が下着とストッキングの間から覗いている。そしてその肌を縦に走るガーターも白だった。  今からこの雪に足跡を付けていくことを考えると私は生唾を飲み込んでしまう。  何度も体を重ねているので、紫が生娘でないことは良く、とても良く知っている。  だけれど先程からの紫のおどおどした様子と、この清楚な光景に私は眩暈がする思いだった。  私はストッキングの上から紫の膝を舐める。私の舌の水分がストッキングに奪われて、紫の雪原が私に汚された。  紫が何か言っているけれど、私はそれを無視して、紫のストッキングに舌を這わせる。  きっと紫のことだから、私に会うために、昨日からどの服を着ていくか選んでいたに違いない。私と暫く会えなかった後はいつもそんな様子だと、紫の式とその式に聞いたことがある。  私はそれを聞いた時は恥ずかしくて鼻の頭を掻いただけだったけれど。  今日もきっと紫は気合を入れて服を着てきたんだろう。隙間からぬるりと現れた時に、紫の服装は一部の隙も見せない完璧なもので、一瞬見惚れてしまった。  今その紫の服を汚しているのだ。  ちょっと酷いかなと思うけれど、でも、私も紫と会うために一生懸命お風呂で磨いた体を汚されたこともあるからお相子よ。  私は自分にそう言い訳をして、紫のストッキングを堪能する。  でも……、ストッキングを舐めるのも良いけれど、今の私には時間制限があるんだった。  例の永琳の薬の効果が丸一日あるのであればこのまま、3時間紫のストッキングを堪能するという選択肢もあった。けれど私に与えられた時間は3時間だけなのだ。  私は紫のストッキングを諦めて次の雪原に向かう。  そこはとても狭い雪原だった。  ストッキングと下着の間、ごく狭い地肌である。  けれどそこには無限の可能性があった。  ストッキングと下着という境界によって作られたその隙間は、まさに奇跡の産物であった。  紫と一緒にお風呂に入ったりした時にはなんとも思わなかったその太腿の一部分は、こうして新しい次元へと上ったのだ。  紫のその領域を指で突くと、心地よい弾力で指を押し返してくれる。舌でその味を確かめると、スカート越しに紫の声が聞こえてくる。聞くまでもない内容なので黙殺。  それにしてもやはり触っても何も反応がないのは詰まらない。こうなるのは分かっていたけれど。  今度永琳に似たような薬を頼むときは、能力、弾幕を全封殺して、身体能力を急激、強力な動きをを封じる程度に調節してもらうことにしよう。そのためならお賽銭一年分くらい支払ってもいいわね。  生体サンプルだったかしら、紫のそれがあればどうにでもなるような事を言ってたし。別にこんな状況でなくても、私が頼めば腕一本でも譲ってくれそうな気がするし。腕もらっても永琳も困るでしょうけど。  紫のあそこを直接触らずに、紫の少ない素肌にキスをする。そして吸う。  それを数十秒もすると唇の触れていた後には、私の唇の痕が紫の白い太腿に残る。  何度も、何回も、何箇所にも繰り返す。  紫の太腿の狭い花壇に紅い花が咲いていく。  そのキスマークは白いストッキングと白い下着に挟まれて、まるで白い雪の間にひっそりと咲いている椿のよう。  紫の太腿を撫でながら、私はその椿に舌を這わせる。  紫の反応が、僅かに聞こえてくる声以外ないのが寂しいけれど、紫にこんなにしてあげられる機会なんてそうはない。  だから私は紫の僅かな反応も見落とさないつもりで、実際「其」を見落とさなかった。  僅かに漂ってくる香り。  ねえ、紫。貴方……。  私は紫のそこに顔を近づけて鼻を嗅いだ。 「紫……、もしかして……」  紫のスカートから顔を出して、紫の顔を確認する。その表情は四肢が動かせるのであれば、扇子で顔を隠すか隙間に逃げ込む、それしかないという表情をしていた。  そして私の言葉には何の反論もするつもりがないのか、口を一文字に閉めていた。  私はスカートの中に残してきた指を、紫の下着の中にゆっくりと入れていった。  僅かな粘り気、それが私が嗅いだ香りの正体だった。 「紫、私に太腿にキスされて感じてくれたのね。キスしかしてないのにね」  紫は何も言ってくれないけれど、言葉以上に顔が紫の心情を吐露していた。紫の顔が紅く染まる。  何とか動く瞳を私から逸らして、私に心を悟られないようにしているけれど、徒労なのは紫本人も分かっているのだろう。 「紫、そんな恥ずかしがらなくてもいいのに。いつも貴方がしているような事を私がしているだけなのよ。  いつも私が止めてって言っても止めてくれないし。紫も分かってるんでしょ、私が止めるつもりのない事を。  だから何も言わないんでしょ。  うん、だから止めてあげないわ。もっと紫を気持ちよくしてあげる」  かすかに紫の眼が揺れた。  期待だったのか、恐れだったのか分からないけれど、紫に宣言した通り、ここで立ち止まる気は全くなかった。  ゆっくりと紫のあそこを指でかき混ぜながら、再び紫のスカートの中に潜り込む。紫の眼は相変わらず、期待と恐れで私を見送ったけれど、私はその期待に応えるつもり。  紫のあそこをかき混ぜている指を使って、紫の下着をずらしていくと、紫のスカートの中に紫の性臭が漂った。 「紫の香り、良い香りね」  本当に良い香り。私の頭をくらくらさせてくれる香りだった。  その香りの発生源に、紫のあそこに私は蜜蜂の様に引き寄せられていく。  私の本能がそれを拒まなかった。私は無意識のうちに、紫のそこにむしゃぶりついていた。 「んっ、はっ、んっ……」  美味しい……。  紫としている時にはこの前の様に舐められたことはあったけれど、私が紫のそこを舐めるのは初めてだった。でも全然抵抗はなかった。  どうして今までこうさせてくれなかったんだろうと、紫を恨みたい気分だった。  私の舌が紫の中をかき混ぜるたびに、紫は感じてくれているのか、分泌する愛液を増やしていく。それを私は口で直接感じることができている。  指で紫のそこを拡げてじっくりと観察する。  弛緩剤が効いているとは言え、生理的な反応は行われる。そうでなければ死んじゃうし。だから紫のそこが蠢いているのも良く見える。  紫の拡げたそこを舐める。見る。舐める。見る。その度に違う反応を見せてくれる。  それが楽しくて、私は何度も何度も繰り返す。そして私は見つけた。  そこ、クリトリスを弄りながら、舐めると紫のそこは一番大きく反応してくれた。しかも紫が上の口からも何か声を漏らしていた。  私が弄る度に、紫の口から押し込み損ねた声が聞こえてくる。  紫の中に指を入れて、紫の愛液だらけになった中をかき混ぜると、いやらしい音が聞こえてくる。その音と紫の声を聞きながら紫のクリトリスに舌を這わせる。 「や、やめっ、霊夢ぅ……」  その紫の声に背筋が震えるような快感を覚えてしまう。私は自分のものに触っていないのに、下着まで濡れてしまっている。その濡れ方は紫の声を聞くたびにどんどんと酷くなってしまう。  私はその声が聞きたくて、夢中で紫を弄り倒してしまう。  紫の声もっと聞かせて欲しい。 「れ、霊夢っ、駄目っ、霊夢っ」  私が強く舐めると、紫の声はいよいよ切羽詰ったものになる。その声は私が今まで聞いた事のない声で、私はその声をもっと聞きたかった。  紫の中をかき混ぜる指の動きを紫の声を聞きながら、紫の声が大きくなるところを探し出す。  そしてそこを見つけた。  そこを弄るたびに紫は私の芯まで蕩けさせるような声を上げてくれる。  紫、紫……。  心の中で紫の名前を呼びながら、紫を責めていく。その度に「霊夢、霊夢」と私の名前を呼ぶ紫の声が聞こえる。  でもあの凛とした紫の声ではない。まるで風邪の時の私のような声。  そしてその呂律の回らなさに紫の状況が良く分かった。  紫、もう限界なんでしょう。  だから私がいかせてあげるわ。  私は紫のクリトリスを舐めていた口を離して、クリトリスを歯で噛んだ。 「ひゃ、あ、れ、霊夢っ……」  紫は私の名前を呼んでいた。その声からは理性が消えていた。紫の全身が快感に溺れていたから出た声。  紫は弛緩剤が効いているのに関わらず、体をかすかに揺らして、その快感を感じ取っていた。  そして私もその紫の声で、思わずいってしまった。紫の声を聞いただけで十分だった。  軽い絶頂だったけれど、それでも絶頂は絶頂だった。  あの紫が私の口と手だけでいってしまった、紫のいく時の顔が見られなかったのは残念だったけれど。  私は意識を混濁させた紫にキスをして、次の準備に取り掛かった。 「何……をするの?」  意識がはっきりしていない紫の質問を無視して、紫の服を脱がせていく。  これからすることを考えたら、紫の服を脱がしておいたほうが良い。でないとわざわざ汚してしまうことになる。  私の本当にやりたかったことの準備をする。  台所からアレを持ってくる。 「な、何? それ?」  ようやく意識が正常に戻った紫の質問は、弛緩剤と状況と絶頂によってか月並みな質問だった。だから私も敢えて愚直に答える。 「何ってチョコレートよ、見て分かるでしょう」 「まさか……、私に同じ事をするつもり?」 「うーん、半分正解で半分外れかしら。全く同じ事をやっても面白くないでしょう」  私はチョコレートを容器に詰める。その容器は柔らかくて、本当はケーキを作るのに使うためのもの。でも紫の体にのせるだけでは、紫のやったこととあまり変わらない。  紫の体を持ち上げる。意外と軽い。  そしてそのままちゃぶ台に載せてしまう。 「ま、まさか女体盛り?」 「それも半分だけ正解ね」  そして私はちゃぶ台にのせて舐めやすくなった、紫のそこを舐める。 「や、いやっ、れ、霊夢。そ、そこは本当に止めなさい!」 「駄目、今日は止めないって言ったでしょう。今の私は紫分が不足しているの。だからもっと紫分をもらうわね」  そう言って紫のそこを舐める。  そこ、そこは……。 「お、お尻なんて、舐めちゃ駄目よっ。病み上がりなんだから」 「病み上がりじゃなきゃいいのかしらね」 「もちろん駄目よっ」 「あら、でも紫のお尻美味しいから止められないわよ」  紫のお尻を舐める。けれど舐めるのが主目的ではなく、あくまでも手段でしかない。  私は手でその容器に入ったチョコレートを温める。そのチョコレートは、溶けやすいクリーム状で温度が下がったところで固体になったりはしない。  そしてこの先は細くなった容器は、握るとその先からチョコレートが押し出される機能がついている。 「ねえ、まさか……?」  紫の顔が青ざめる。ようやく気付いたらしい。  私のことや幻想郷の危機には聡いのに、どうして自分の事には疎いのかしら。 「そう、意趣返ししてあげるわ。折角紫のために準備してあげたんだから楽しんでね。  もし風邪引いたら、永琳呼んであげるから安心して」  容器から少しチョコレートを押し出して、舐め取る。 「甘くて美味しいわよ。紫には敵わないけれどね」  チョコレートは半生のクリーム状、さすがに硬いチョコレートは「危ない」し。 「れ、霊夢、止めなさいっ、霊夢っ!」  僅かに動く身体で紫は逃げ出そうとするけれど、そんな芋虫並みの速さでは逃げ切るのに3時間は掛かるんじゃないかしら。その頃には薬の効果も切れているはずだし。 「駄目よ、紫。愛してるわ」 「れ、霊夢……。こんな時にそんな甘い声出さないでっ。  嫌っ、お尻に当てないでそれ……、止めてっ、霊夢。止めなさいっ」  紫の眦から涙がこぼれる。  私はその涙を、唇で掬い取って、そして容器に力を加えた。 「ひっ、は、入ってくる……。れ、霊夢、もう止めなさい……」 「紫のお尻は嫌がってないみたいだけど。ほらどんどんチョコレート飲み込んで行くわよ。  幽々子みたいに健啖家なのね、紫のお尻は……」  私の手で容器の中のチョコレートは私の目の届かないところに入っていく。紫の普段、出すことしかしない場所に入り込んでいくチョコレート。  眩暈がしそう。まるで風邪の症状が戻ってきたみたい。  でも風邪でこんな高揚感はない。紫にこんな顔をさせてあげられるなんて。こんなに可愛い顔を。 「ほら、紫のお尻、チョコレート全部食べちゃったわよ。口では嫌がっていたのねえ」 「れ、霊夢……。もう……」 「え、もっと食べたい?」 「そ、そんなこと言ってないわ」 「遠慮しなくて良いわよ。ほらまだあるんだから」  私がもう一本、容器を取り出す。紫の顔が崩れる。 「もう、無理。霊夢、止めて、ね」  そんな紫のお願いも、今の私を止めることはできないのよ。  前の容器をゆっくり抜くと、紫は微妙な表情をする。お尻の入り口の異物感が無くなかったからなのか、それとも喪失感なのかは分からなかった。  二本目を差し込む頃には、紫の顔に苦悶の表情が浮かび始める。  そして二本目の中身を全て流し込んだ頃には、紫の額に脂汗が滲み始めていた。 「真夏でも汗をかかない紫にしては珍しいわね。ほら拭いてあげるわ」私はタオルでその紫の肌に噴いた汗を拭き取る。 「れ、霊夢……」  紫は本当に苦しそうで、さすがに罪悪感に襲われる。でも謝るのは後にしよう。 「ねえ、紫。私のチョコレートの味はどうかしら」  紫のお腹に耳を当てると、普段は聞こえることの無い異音が聞こえる。紫の内臓が蠢く音。異物が暴れまわっている音だ。 「れ、霊夢……。チョ、チョコレート美味しいから、お風呂か厠に行かせて……。  ほら部屋汚しちゃうじゃない。だから、ね。そうしたら二人で一緒にゆっくりしましょう。  一週間くらい一緒にいてあげるから。結界の見回りも全部藍に押し付けてきたわ。神社も結界で覆ってしまいましょう。  誰にも邪魔させないの。二人で一緒に暮らしましょう」 「それ、良いわね」 「そ、そうでしょ、ね、だから霊夢」喜色に溢れた紫の表情に見とれそうになってしまう。でもやっぱり初志貫徹よね。 「それは、明日からね。今は……、紫からチョコレート返してもらうわ」 「霊夢、それは止めなさいっ。ほら、早くお風呂に……。力は要らないのよ、もう我慢できないのよ!」 「我慢なんかしなくて良いのよ。ほら、紫……」  紫のお尻に残ったチョコレートを舐め取って、紫のお尻を舌でマッサージしてあげる。わずかににじみ出てくるチョコレート味。私は舌を紫のお尻に差し込んで、紫の身体の「反応」を促進させていく。 「や、霊夢、どきなさい。早く、霊夢、霊夢!」 「嫌よ、紫と一緒だったら、私なんでもできちゃうんだから」 「や、れ、霊夢、も、もう、私、駄目、霊夢、私、もう、が、我慢でき……あ、っ、れ、霊夢っ」  紫のお尻からチョコレートが逆流してくる。いや、この場合は順流か。  紫のお尻に口を当てて、チョコレートを飲み込んでいく。 「や、れ、霊夢っ、出てるのっ、チョコレート出てるのぉ……」  紫はだらしない声と共に、私にたくさんのチョコレートをくれる。  その勢いに私はチョコレートをこぼしてしまい、それを手で受け止める。私の手に紫のチョコレートが溜まっていく。  私は必死に紫のお尻からチョコレートを食べ続けた。  その間紫はずっとだらしない声を出していた。途中から紫の愛液がチョコレートに混じって、とても美味しいチョコレートになったりもしたけれど。 「はぁ、はぁ……、紫のチョコレート美味しかったわ」  私は手も顔も、巫女服もチョコレートで茶色く染められてしまった。それでも全部紫にもらったチョコレートだと思うともったいなくて、できるだけ舐め取っていく。 「ねえ、紫……?」  紫の反応がない。  紫を見ると、紫は恍惚の表情を浮かべていた。 「紫ったら、チョコレートでいっちゃうなんて幽々子もびっくりね」紫はお尻からチョコレートを出して、絶頂に達してしまっていた。  本当にびっくり。  でもそんな紫でも、私の大好きな紫である事に違いはない。  私は紫を抱きかかえると、お風呂へと向かう。  でも台所を一瞥する。  まだチョコレートはたくさん残っている。  紫の薬の効果が切れたら、私がゆかりにしてもらうのも良いかもしれないわね。  ふふふ、紫。  紫にチョコレートを食べてもらうことを想像しながら、私は紫を抱き締めていた。   「というのが50年前の顛末よ」  私の隣では、真っ赤に顔を染めてうずくまっている紫。まるでどこぞの吸血鬼のお嬢様のガードの様。  そして50年前と変わらない姿の二人、輝夜と永琳が愉しそうに話を聞いている。 「二人とも、若かったのねえ」 「全くですね、輝夜。でもこの二人に倦怠期などありませんから、今でも『若い』のですよ」 「蓬莱人である私達には分からない感覚ね。羨ましいわ」 「そうでしょう。ほら、思う存分羨ましがって頂戴」  私は隣でうずくまっている紫の頭を撫でる。  その手は50年前と違って皺くちゃになっていたけれど、紫が今でも大好きと言ってくれる手。だから私は今でも若くいられるのだ。 「ねえ、霊夢。もう良いでしょう、ほら帰りましょう」  紫が涙目で私の袖を掴んでせがんでくる。 「あら、妖怪の賢者さん、まだ霊夢には15年前と27年前と32年前の事を聞く約束が残っているのですよ。  博麗の巫女に盟約を破らせるわけにはいかないでしょう」 「れ、霊夢、止めなさいっ。あの話、人に話されたら私死んじゃうわよ」 「紫がそんなことで死ねるほど、面の皮薄くないでしょ」私は紫の頬を引っ張ってあげる。 「ふぇ、ふぇいむ……」  それじゃ、どの話からしましょうか。