いくら春が近づいて来たとは言っても、まだみぞれ混じりの雨が降る日もあるくらいで、夕方ともなるとさすがに冷え込んでくる。  だから『こんな状態』でも通行人から見て、そんなに不自然には見えないだろう。そう信じたい。 「公園のベンチで仲睦まじく一緒のコートに包まっている恋人」とだけ見てくれればいいんだけど、本当のことを知られたら、警察呼ばれるような状態だし。 「なあ、楓ちゃん。もう、止めないか……」 俺は思わず声が大きくなりそうになるのを堪えながら、俺のコートに中にいる楓ちゃんに囁く。 楓ちゃんの手が止まり、視線が俺の顔に絡みつく。 「………」 楓ちゃんは結局は何も言わずに、にっこりと笑う。 ただしその髪を揺らし、首を振りながらだったが。 俺のコートから首だけ出している楓ちゃんは、そりゃもう可愛くて、愛猫という言葉がぴったりくるような感じなんだけど……。 そんな楓ちゃんの指が僅かに動く。それだけで俺の体は跳ねるように反応してしまった。 俺の体内が楓ちゃんの細い細い指でかき回される。そのたびに俺のペニスは激しく脈打つ。 その上、俺のペニスの先はその掌で軽くだけど握られて、ゆっくりと擦られる。 アナルに一旦指を入れられてしまっては、なんとすることもできないし、それ以前に通るかもしれない通行人のことを考えたら、コートがはだけてしまわないようにコートをしっかりと握る程度のことしか俺にはできなかった。 「耕一さん……」 俺の胸元から楓ちゃんが俺を見上げる。その表情は上気していて、艶っぽい。 だが俺はそれどころではなく、アナルに与えつづけられる刺激に、思わず声を上げてしまいそうになるのに耐え続けるしかなかった。 だが、往来がなくはないはずのこの公園で楓ちゃんに弄られ続けるうちに、俺のペニスから滴った雫は楓ちゃんの掌を伝わって俺のペニスに拡がっている。 楓ちゃんの指が俺のペニスの裏側を思いっきり指の腹で押し付けてくる。 「んっっっ」 それに俺は思わず、息を漏らしてしまう。その息は外気に晒され、白い靄となって散っていく。 そしてアナルを弄られると同時に、楓ちゃんの親指の腹がペニスを擦ってくる。 「ぁ、ぁ、ぁぁぁぁぁぁぁぁ」 その決して強くはない刺激に俺は腰を動かすがそれで却って、アナルの中の指の角度の変化に刺激されてしまう。 俺は耐えるために、コートごと楓ちゃんの体を抱きしめると、楓ちゃんの口から「あっ」という声が漏れる。 先ほどから楓ちゃんは俺の服の中に顔を埋めるようにしている。 その楓ちゃんの吐息が、何枚もの服越しに俺の肌に僅かな温もりを伝えてくる。 俺は楓ちゃんの体を抱きしめて、楓ちゃんの指から伝わってくる快楽に耐える。 顔の肌は外気に熱を奪われているはずなのに、寒さを感じることはなく、ただ楓ちゃんの指にいじられていることで、そこが熱を持ったように熱く、全身は熱を持っているだ。 まるで、寒さと熱を感じる風邪を引いたときのような感じだ。 そんなことを朧に考えている間にも、俺のアナルはかき混ぜられ、俺の中に澱みのようなものが堆積していくのが分る。 俺はこんな公園のベンチという状況にも関わらず、楓ちゃんの手でイってしまいたいと思った。 「っ、あぁぁ…………」 排泄感と共に、俺のアナルからゆっくりと楓ちゃんの指が出て行くのが分る。 「ぁぁぁぁぁぁ」 俺はその感覚に耐えることはできず、ただ口から漏れる音を小さくしようとすることしかできなかった。 いつのまにか楓ちゃんの顔が見上げる体勢に戻っている。 その表情は……分っている。 俺達は唇を重ねる。唇で繋がる。 「ふぁぁぁぁ」「んんんんんんんんんん」 扇情的にお互いの唇を求め合い、啄ばみ合い、舐めあう。 そんな口唇の動きと共に、一旦は抜かれた楓ちゃんの指が俺のアナルの窄まりを外から刺激してくる。 窄まりを伝うように、ときには軽く差し入れて、俺を高めてくる。 俺はただ楓ちゃんを強く抱きしめ、唇を貪りつづける。 楓ちゃんは抱きしめられながらも、俺のアナルの入り口をつついたり、広げたりしながら俺のアナルを弄りつづける。 そのたびに俺の体は少しだけだが、ぴくりと反応してしまう。 「ぷぁぁぁぁぁ」 お互いの唇が離れ、二人の間に白い靄が停滞する。 「耕一さん、知ってますか」 唐突な楓ちゃんの問いに俺は戸惑う。 何の話だか、まったく想像もできない。 「ええと、何の話かな……?」 「この公園……、通り道なんですよ。梓姉さんの」 「っ」 「とは言っても、たまに使う程度なんですけど」 「さっきはまだ帰って来ていなかったので、これから通るかも知れませんね。ここを」 「なあ、楓ちゃん………」多分、俺の表情は狼狽なんてことばじゃ表現できないものになっていただろう。 俺はさすがにここを離れたいと切実に思った。だがそれを言おうとしたが、楓ちゃんのがそれを遮る。 「だめ、ですよ。耕一さん」 「だ、だけど……、っっっっ」 「んっっ」 俺のアナルに再び異物感が走る。 ゆっくりとではあるが楓ちゃんの指が再び入ってくる。 「んんんんんんんん」 俺は楓ちゃんと再び唇を重ねることでその感覚に耐えようとした。 「んん、あっっっぁぁぁぁぁぁぁぁ」 だが、予想を越えるアナルを押し拡げられる感覚に俺は思わず声を上げてしまう。 さっきまで一本だったものが二本になったんだろう。 「か、あ、ぁ、あぁぁ、あぁ、あ、あぁぁ」 その圧迫感に俺の背中に汗が走る。 「もっと行きますよ……」 唇を離した楓ちゃんが宣言するように口を開いてそう言った。 そしてその言葉の通りに、楓ちゃんは俺のアナルの中で二本の指を動かし始める。 その指の動きは俺のアナルを拡げるかのように、アナルの入り口付近を占有していく。 「ぁぁぁぁ、か、楓ちゃん……」 ゆっくりとだが、弱くはない力で俺のアナルが拡がっていく。 俺は思わず、獣のような叫び声を上げたくなるのを我慢して、楓ちゃんをひしっと抱きしめる。 楓ちゃんも俺の胸に顔を埋める。 そんな行為が何分続いたんだろうか。 もうここが梓の通学路の一つであるということも忘れるくらいに俺の脳ミソがグチャグチャになってきたときだった。 「あ、柏木……楓ちゃん?」 第三者の声に俺たち二人の体がびくりとさせる。 「あ、あ、……、高嶋のおば様?こ、こんにちは」 ゆっくりと振り返った楓ちゃんが口を開く。 目の前……と言っても数メートルは離れているが、見知らぬおばさんが立っている。 「こ、こんにちは」 俺は狼狽しながらも挨拶をする。 「もしかして……、耕一さん……でいらっしゃいますか?賢治さんの息子さん?」 「ええと……親父のことをご存知で?」 俺の耳元に楓ちゃんが囁いて、この女性のことを教えてくれる。 まあ、要は柏木家の近所に住んでいて、旦那さんが鶴来屋の関係者らしい。 それなら親父を知っていてもおかしくはないし、俺のことも知っていて当然だろう。 そんなことを考えながらも俺は必死に今の惨状がばれないように、コートをしっかりと握る。 こんなことしてるのがバレて、噂でも広まったら、地獄からでも親父が蘇ってきて、殴られるに違いない。 その間もその高嶋とか言う女性は喋りつづけている。 「それにしても仲が良いのね」「俺が親父にそっくり」「楓ちゃんも大きくなった」 そんな話を延々と続けてくれる。 まさか追い払うわけにもいかず、ただ相槌をうっているうちに、アナルに違和感を感じる。 「っっ」 まさかとは思ったが、こんな状況で楓ちゃんの指が俺の腸壁を刺激してきた。 「か、楓ちゃん」俺は囁くように楓ちゃんに止めてくれと伝えようとするが、楓ちゃんはそ知らぬ顔で、その女性と話をしている。 さすがにペニスの方は目立つので動かしてないようだけど、俺のアナルは楓ちゃんの指に激しく荒らされている。 「………」 俺は鬼の力に抵抗する以上かもしれないくらいの集中力で平静を保とうとする。 そんな俺を横目で見ながら楓ちゃんは、俺のアナルに二本の指を蠢くように出入を繰り返し続ける。 「…………」 目の前ではさっきのおばさんが、まだ口を動かし続けている。 俺は相槌を打つ余裕ももちろんなくて、ただ楓ちゃんの責めを表に表さないようにするのに精一杯だった。 楓ちゃんの指が俺の腸内の奥深くまで侵入してくる。 いくら楓ちゃんの指が細いといっても、二本の指が根元まで侵入ってくるとかなりの圧迫感と充足感で下半身に快楽の痺れが疾る。 そして前立腺への直接の快楽、その神経そのものを直接いじられるような刺激にとうとう俺は声を漏らしてしまう。 「んっ………」 その時点でようやくそのおばさんは、俺の様子がおかしいことに気付いたらしい、「顔色が悪いみたいだけど、大丈夫」と、心配してくれる。 「ええ、だ、大丈夫です……」 俺はそう声を絞り出す。 「でも……」 「耕一さん、なら大丈夫です……。ちょっと具合が悪そうなのでここで少し休んでいたんです」 そう楓ちゃんがフォローを入れてくれる。 「あ、そうなの。寒いんだから早く、家に帰られた方がいいわよ。それじゃ、私もそろそろ退散しましょうか。千鶴さんによろしくお伝えくださいね」 「はい、千鶴姉さんに伝えておきます。それではごきげんよう」 俺も頭を下げて挨拶をする。 そしてその女性の姿が視界から失せた瞬間、楓ちゃんが擦り寄ってくる。 「耕一さん……気持ちよかったです?」 「か、楓ちゃん……カンベンしてくれよ……」 「でも、今までで一番反応してましたよ、耕一さんの。こっちもこんなになってます」 そう言いながら楓ちゃんが俺のペニスを擦ってくる。 確かに俺のペニスは楓ちゃんの愛撫によってかもはや限界まで充血しきっている。 「耕一さん、あんな状況でお尻いじられて……気持ちよかったんですね」 「そんなこと……ないよ」 「そうですか?」 楓ちゃんは笑って俺の首筋にキスをしてくる。 そのまま、楓ちゃんは俺の首筋に舌を滑らせる。 「ううっ」 そのくすぐったくも、神経を昂ぶらせる感触に、俺のペニスがびくんと蠢く。 そしてそのまま楓ちゃんが俺の三箇所……アナルとペニスと首筋へ同時に愛撫してくる。 首筋に楓ちゃんの通った路が唾液で残り、外気に熱を放出する。 と、同時に楓ちゃんの手によってペニスがゆっくりと擦られる。 いくらアナルも同時に責められているとはいっても、その指使いはあまりにも中途半端でもどかしいもので、俺の澱みは下半身に降り積もっていく一方だった。 「っっ」 楓ちゃんが俺の首に強く吸い付いてくる。 それと同時にアナルが楓ちゃんの指によって広げられ、入り口近くを愛撫される。 それでもペニスの刺激はあまり変わらずに、一定の間隔でなぞられていくだけだった。 「はぁぁぁぁ」 俺は下半身の澱みを吐き出すように大きく息をするが、そんなものの効果があるはずもなく、楓ちゃんの責めによって俺の脳ミソの獣の部分が叫び声を上げる。 「ぁ、ぁぁぁ……っっ」 そんな俺を見つめながら楓ちゃんの下は俺の首から顎へと滑っていくだけだった。 「はぁっ」 俺は耐えられなくなり、楓ちゃんの唇を貪る。 「はぁ、んっ、んっっ、むっ、ぷぁ」 「んっ、あっ、んっ、ふぁ、んっ、むむっ」 だがその間も楓ちゃんの責めは俺を蝕んでいく。 俺が楓ちゃんの唇を舐めても、吸っても、いや、むしろそのことが一層俺のなかで終局を望む欲求を高めていく。 「ぷぁぁぁ………」 楓ちゃんが唇を離し、俺の耳に舌を差し入れてくる。 その背中が凍るような快楽に俺は思わず「ぁぁぁ」と声を上げてしまう。 耳を舐めながら、楓ちゃんは俺に囁く。 「耕一さん…、スゴイモノ欲しそうな表情してますよ」 俺はそのセリフに何も感じることなく「あぁ」と頷く。 俺の中ではもう終局に対する渇望で溢れ返っていた。 「出したいんですね」 「あぁ」俺は再度頷く。 「良いですよ、耕一さん……」 耳をかぷっと噛んだ楓ちゃんは再び舌を首筋に走らせる。 そして俺のアナルの中で楓ちゃんの指先がのたうつように、腸壁を刺激してくる。 ペニスを握っていた手の動きのさっきまでのもどかしい動きでなく、高まっていくことのできる動きに、おれの中の澱みも先鋭化されて指向性を持ち始める。 「ぁぁぁぁ、ぁぁ、か、楓ちゃん……」 俺の唇から涎が伝うが、それは楓ちゃんの舌によって楓ちゃんの口内に飲み込まれていく。 「ああぁぁぁ、ぁぁ」 俺の限界にあっというまに近づいてくる。 「あ、ぁぁ」 楓ちゃんは相変わらず俺の首筋への口と舌での愛撫を続けながら、ペニスを表側と裏側両方から刺激してくる。 「あ、ぁ、ぁ、か、楓ちゃ……ん、あぁぁぁぁぁぁ」 「オンナノコみたいですよ……耕一さん」 「あぁぁ、ぁぁ」もはや俺の中では止まらない快楽に思考がまとまらない。 「楓ちゃん……もう、俺……ぁぁぁぁ」 俺の中で限界に達する。 俺が腰を動かして、ペニスが脈動する。そして、……と思った瞬間、ペニスに鈍い痛みが走る。 「ぁ、ぁ、ぁ、ぁ、ぁ、ぁ、ぁ」 予想していた快楽が雲散霧消し、むなしくペニスが動く。 精が放たれることなく、全てが楓ちゃんの指一本でせき止められる。 「ぁぁぁぁ…………」 虚しい快楽が俺の下半身を支配する。 楓ちゃんの指が輸精感を締め付け、俺の最終地点は失われる。 「か、楓ちゃん………」 「………、もう少し……」 「………ぁぁぁぁ………」 一旦失われた快楽は消えうせ、俺のペニスはその虚しさに泣く。 「耕一さん……、もっと気持ちよくなって良いんですよ」 そういった楓ちゃんの指が再び動く。 「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」 その中途半端な状況から突然持ち上げられて、俺は獣欲の声を上げてしまう。 周りに人がいるのかどうかを確認することも出来なかった。 今までで一番激しい愛撫に俺は何をすることもできずに楓ちゃんの愛撫に悦ぶことしかでなかった。 「あぁぁぁ、あ、か、楓ちゃん……あぁぁぁっぁ、俺は……あぁぁぁぁぁぁ」 「もう出したいですか……」 「あぁぁ、か、楓ちゃん……た、頼むから……」 「出したいんですね……耕一さん……私にお尻いじられて出したいんですね」 「楓ちゃん……、あぁ」 俺のアナルの中で楓ちゃんの指が跳ねる。 「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」 爆ぜた。びくんと、ペニスが動いた後に、今度は外界に精液が放出される。 「あぁ、ぁぁぁ、あぁぁぁ、あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」 体が蕩けるような快楽と、射精による刹那的な快楽に支配される。 「ぁ、ぁ、ぁ、ぁ…………」 俺は心地よい脱力感に支配される。 「いっぱい……いっぱい……出しましたね……」 その一言に俺は気を引き戻す。 あんなに射精してしまったらコートの中の惨状は……。 そう思うと、楓ちゃんが片手をコートの隙間から覗かせる。 そこには、俺が今し方放出した樹液に満たされていた。 「楓ちゃん……」 「耕一さん……の……」 楓ちゃんは熱に浮かされたような表情で自分の手のひらを満たしている、精液に舌を這わせる。 「か、楓ちゃん……そんなの……」 「耕一さんの……だったらいくらでも……」 俺はただ楓ちゃんの喉下を俺の精液が通過していくのを眺めていることしかできなかった。 最後の一滴を手から舐めとった楓ちゃんは、今度は俺のコートの中に潜る。 「ん、ぁぁぁあぁ、か、楓ちゃん」 俺のコートの中で楓ちゃんは俺のペニスに舌を這わせる。 舐め取られる感覚に俺は残ったほかの力も吸い取られそうになる。 と、目が合う。 遠くから歩いてくる、梓と。 気付いたみたいだ。走りよってくる。 もう、逃げるには遅すぎる。 楓ちゃん……に声をかけても……遅すぎる。 絶対にやってたことがばれる。殺される。どうしたらしいいんだ。