うららかな日曜。まだ日も高いが、その女性らしい部屋には紅茶の香りが漂い、そして その香りにそぐわない淫猥な水音と声が響いている。 「はぁ、和樹ぃぃ……」  その部屋の主は目を瞑って。想い人の名前を呟きながら、自分の秘所を一心不乱に愛撫 している。その口が想い人の名前を発するたびに、口元から涎がつたって落ちていく。  瑞希は上半身は服を着ているが、下半身には何も身にまとっていない。ベッドの背もた れに背中をあずけて自慰行為にふけっている。だかその手の動きは女性の自慰行為とはか け離れたものだった。  それも全ては瑞希の女性の上にある男性器のせいだった。 「ふぁぁ、ぁ、な、なんで……」  瑞希はその物体に嫌悪感を持ちながらも、その器官がもたらす肉欲からは逃げることが できない。瑞希のそれはまるでもう一つの感情を持っているかのように瑞希の行動を束縛 している。そこには喜怒哀楽に近い感情があり、そして肉欲とが瑞希に強い衝動を与えて いた。  愛しい人のことを考えると、その男性器の感覚も瑞希の思考に入りこんでくる。たまに 和樹を怒鳴ったりしたときには、まるでその男性器が泣くような感覚を覚えてしまう。  そしてまたある時は、今日の様に瑞希に激しい性欲を与えてしまう。  そのカラダにコンプレックスを持つ瑞希は、和樹はもちろん誰とも性的な関係は持った ことはない。それでも他の男性に似た構造をもつ瑞希のそれは瑞希に自慰行為を欲求して くる。  今日も、締め切りに向けて缶詰になっている和樹に夕食でも作ってあげようか、と考え ていた瑞希が、和樹の顔を思い浮かべているうちに、下腹部に疼きを感じてしまった。そ の疼きは消えることなく、増幅していき、瑞希は自慰行為を始めてしまったのである。  瑞希は右手で腺液で濡れた肉棒を擦っている。左手は文字通り処女地である女性器の表 層を軽くなでるに留まっている。 「あぁぁぁ、ぁぁぁぁ」  瑞希はその自慰行為で快感を貪るように、肉棒を擦り続ける。 「ぁぁ、和樹ぃ、ぁぁぁぁぁぁぁ」  瑞希は左手で自分の太股を掴む。弾力がある太股が指をのみこんでいく。その感触に瑞 希は熱い吐息をはいて応える。  瑞希は男性器の単調な快感を嫌っていた。それは男性の象徴だったから。瑞希は目をつ むって男性器を愛撫しながらも、自分の体をさぐるようにしていた。  太股を愛撫していた左手が、肌の上を伝って動いていく。下腹部やへそを通し過ぎた手 は上半身を隠していた服の中に潜っていく。  さっきまでだらしくなく開いていた口が、つばを飲みために閉じられる。瑞希は期待に 顔が熱くなるのを自覚してしまう。こんな女らしくない自分の中で、女性的なもの……胸 を触ることが瑞希の自慰行為の中では大きな部分を占めている。  それはその女性的であるという精神的安息をもたらすだけでなく、悦楽を瑞希にもたら すものだったから。  自分の指がブラジャー越しに触れただけで瑞希は少しカラダを震わせてしまう。瑞希は もどかしく、ブラジャーを外す。  その瞬間、拘束されていたブラジャーが緩み、瑞希の乳首を刺激する。 「あっ!」  かすかな刺激さえ瑞希に悦びを与える。  瑞希はおそるおそる、だが淫蕩な期待をこめて自分の胸をつかむ。 「ひゃぁぁぁんぅっっ」  すでに期待に固くなっていた乳首に触れただけで瑞希は全身を震わせてしまう。 「あぁっ、やぁっ、あっ、あっ、あぁっ」  瑞希が自分の指を動かすたびに、その豊かな胸が服の中で変形する。そのたびに瑞希は 悦びの声を出してしまう。  瑞希はただ自分の胸をいじることに没頭していく。右手でいじっている肉棒も悦びに腺 液を流しつづけ、女性器も侵入に備えて体液で濡れてしまっているが、胸から拡散する痺 れに瑞希は溺れていく。  瑞希のカラダも熱く火照っていて、全身に汗がしたたり、顔から汗が服に水滴となって 落ちる。服が汗でまとわりついてしまうが、瑞希はかえってその熱く湿った状態に、体を 覆われているようで心地よく感じてしまう。 「ぁぁぁ、む、胸……、気持ちいいっ」  瑞希は自分の胸が快感をもたらしているといことを認めるように口に出す。それが瑞希 の中のブレーキを破壊した。 「あぁぁぁ、いいぃっ、私、あぁぁ」  瑞希の右手が激しく動く。ゆっくりとなでるようだった動きが、攻め立てるような動き になってくる。それとともに、瑞希は高まりにのぼっていく。 「ぁぁ、いい、あぁぁ、ぁぁ、か、和樹ぃぃぃ」  瑞希の胸を愛撫する左手も狭い服の下で激しく貪る。そんな中でも瑞希の頭の中は和樹 の姿で占められている。  そして弾ける。 「ぁぁ、あぁ、ぁぁ、あ、ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」  瑞希の右手は自分の肉棒が膨らむのを感じた。その瞬間、瑞希の顔に熱い飛沫が降りか かる。 「あぁぁぁぁ、あ、熱いよぉ」  瑞希は目を開けて自分の体を精液が汚していくのを見続ける。  瑞希が手を動かす度に、肉棒から放たれた精液が自分の顔を目掛けて飛んでくる。その ほとんどは着ている服の上に白いまだら模様を描いていく。自分の胸に服越しに精液の熱 と付着した衝撃がが伝わってくる。  そんな中でも瑞希の右手は肉棒をしごきつづける。 「あぁ」  勢いをもたない精液が肉棒からだらりとたれてくると、瑞希の手の動きも止まった。肉 棒は力を失いかけているが、まだ固さは保っていた。  いつもなら瑞希はここで自慰行為の後の虚無感に襲われるところだったが、今日は違っ た。 「やっほ〜、遊びにきたよ〜」  目の前に友人である玲子の姿を見つけては。  玲子の言葉を発した口が閉じるには時間がかかった。  友人の自慰行為を見てしまった。それよりその友人にはペニスがついていて、そして顔 や服、そして床まで白濁液で汚れていたのだから。