あたしの目の前で楓と耕一がしている。公園の奥まった茂みの中で。  15分前までは、こんなことになるなんて全然頭に浮かばなかったのに。  あたしの目の前で耕一がすごく激しく腰を動かしている。楓と抱きしめあって、楓にキ スをしている。今まであたしが見たこともないよいうなキス。  楓もあたしが今まで見たことの無い表情で耕一の…を受け入れている。楓のこんな表情 は、ずっと楓を見てきたあたしでも知らない表情、いやずっと見てきたからこそ見れない 表情だった。  頭がくらくらする。  視界は赤く染まって、何を見たらいいのかわからない。  それなのに、二人の快楽にふける表情、滴る汗、そしてあそこ……、そんなところは目 をこらさなくても、しっかりとあたしの眼窩に刻み込まれてくる。  目を逸らしたい、あたしはこの寒空の下でねっとりとした汗をかきながら、そんなこと を思っていた。  だけど、あたしの体は全然言うことを聞いてくれなくて、あたしはただ二人の交わりを 見つめていた。  そもそも、どうして楓はあたしに、こんなところを見せようとしたんだ?  あたしが、二人が公園の真ん中でしているのを見てしまった。それは、まあ、良くはな いけど……、あたしがそのまま逃げ出せば良かっただけのこと。どうしてあたしをわざわ ざ呼び止めて見せるんだ。 「あっ、んっ、こ、耕一さん、き、気持ちいいですか?」  あたしの耳にそんな楓の声が飛び込んでくる。 「あぁ、か、楓ちゃん、す、すごく気持ちいいよ」  耕一は楓の耳元でそんな言葉を囁いている。その間にも、耕一は貪るように楓のあそこ に自分の物を出し入れしている。  あたしはどうしてこんなところでこんなことを見ているんだろう。どうして見なければ いけないんだろう。  二人の交わりを少しは想像したことはあったけど、実際のそれはあたしの想像も及ばな いような激しい…獣のようなものだった。  あたしの中にも、何か湧き上がってくるのものはあるけれど、今はただ立ち去りたいと いう衝動に駆られる。だけど、あたしの足は言うことを聞いてくれない。  あたしは気がつくと、口の中がカラカラに乾燥してしまっていることに気付いた。あた しはバカみたいな表情で二人を見ていたんだろうか。あたしは口を引き締めて唾を飲み込 んだ。  楓の視線があたしに絡みついて、楓の表情が一瞬にして変わる。  今までの溺れるような表情から、もっと…なんて言うのか女の表情に変わった。 「うそはいけませんよ、耕一さん」 「なっ?」  耕一の顔がぴくりと震えた。  何を言ってるんだ、楓は? 「本当は足りないんですよね、耕一さん」 「か、楓ちゃん、そ、そんなことは……」  足りない?楓はなんの話をしてるんだ。 「耕一さん、いつも通り……」 「か、楓ちゃん、い、言わないでくれっ」  耕一があたしの方をちらりと見る。なんなんだ、あの耕一の表情は。  二人のこんな姿をあたしに見せておいて、まだそれ以上の何かがあるって言うの。 「耕一さん……」  楓が耕一の耳を噛んで、その上舌で耳を舐める。 「あっ」  耕一がなんか可愛い声を出す。 「耕一さん、お尻をいじって欲しいんですよね」  初めは楓が何を言ってるか分らなかった。  その次には何かの聞き間違えだと思った。 「こ、耕一が、お尻をいじってほしい?」  あたしの口からは自然とそんな言葉が漏れ出していた。 「そうですよ、梓姉さん」 「そ、そんなこと……」  耕一は楓の胸に顔をうずめて、うめくような声を上げる。  だけど、耕一は否定しなかった。  その瞬間、ようやくあたしの頭に衝撃が伝わってきた。  眩暈がする、真っ直ぐ立っているつもりなのに、周りの木立が曲がって見える。  そんな中で耕一の姿だけははっきりと見える。あたしの認識能力は耕一だけに限定され てしまったみたいに。 「だから、梓姉さん、耕一さんにシテあげてくれませんか?」  楓がそんなことを言ったような気がする。  でも、よく覚えていない。あたしは気がついたら耕一の後ろに立っていた。  汚いとかそんなことは全然思わなかった。  そのときのことで覚えているのはただ耕一を犯したい、という衝動だけだった。