その人は木の根に体をあずけ、眠るようにしてそこに居ました。
綺麗な女の人なのに、甲冑をつけて、大きな薙刀を抱えていました。
体中傷だらけで、ところどころに血の跡がついています。
とても怖かったけれど、私は川で手ぬぐいを濡らしてその人の顔をきれいに拭いてあげました。
すると、その人は微かに目をあけて、ここはどこかと私に尋ねます。
「木曾のお山です」と教えてあげると、その人は「木曾」と小さく呟き、静かに涙を流しました。

こんなところで、ボロボロになって、たった一人で錆びた武器を抱えて。
とても悲しいことがあったのだと思いました。