誤爆によって砲弾の直撃を受けたベトナムの孤児院。宣教師数名に児童一人が即死し、何人かの怪我人がでました。
その中でも、特に酷い怪我を負ってしまった少女がいました。現地の医師が到着するまで待ってはいられない。アメリカ人医師は
片言のベトナム語に身振り手振りで子供達に訴えます。「今、君たちのお友達が大怪我をして大変なんだ。
至急、輸血しなければならない。誰か血を分けてくれないか?誰でもいいんだ」子供達はみな黙ってしまいます。
(私のベトナム語が通じていないのか?)そんな心配を始めたその時、中から一人の少年がおそるおそる手をあげました。
これは助かったと、この米軍医師はすぐに輸血の準備をはじめます。

輸血を始めてしばらく、ふと少年は自分の顔を手で覆いました。
「なに?どうしたの?」米軍看護婦の問いに、少年はなんでもないと首を振ります。
しかし、少年は震えていました。「寒いのかしら?何が不安なの?」看護婦は狼狽します。
言葉が通じなければ、その理由を聞くこともできない。
少年は何でもないと首を振り続けるのですが、体は震え、目には涙が溢れているのです。いったいどうしたというのか。

そこへ、現地のベトナム人医師がかけつけてきました。米軍の医師、看護婦は少年の症状を事細かく訴えます。
それを聞いたベトナム人医師は、少年にベトナム語で質問してみると、何だ、そういうことなのかと一安心。
少年もまた、このベトナム人医師の説明を受けてほっと胸をなでおろします。ベトナム人医師は説明します。
「この子は 『全ての血をあげなければならない』 と、そう聞いたと言っています。
このまま自分は血を抜かれて死ぬものと思い、おびえていたのですよ」
「待ってくれ…。だとしたら、なぜこの子は協力してくれたんだろう?」
ベトナム人医師がそれを通訳して尋ねると、少年はあっさりと答えました。

「ともだちだから」