ポロロン♪。ウクレレを鳴らしながら今日も彼女がやって来た。クラス全員の誕生日を調べ上げているのか
彼女はゲリラ的に祝福しに現れる。学校の食堂で皆の注目を受けながら、今日も誰かがその祝福を受けていた。
ありがとうとは言うものの、恥ずかしくて仕方がない。

どちらかと言えば、彼女は内気で目立たない存在だった。それがある日、彼女は突然豹変する。
ゲリラお誕生日会をはじめ、様々なクラブ活動に現れてはひとりチアリーダーを決行。時には自分を出場させろといい出す始末。
先日は生徒達に不人気な数学教師の頭をいきなりハリセンデひっぱたいた。頭の中でよくやっていたから今日は実行に
うつしてみたと言う。彼女は一ヶ月の停学を食らったが、皆の予想通りルール無視で学校に現れた。
頭がおかしい。ただの目立ちたがり屋。そんな嘲笑を超えてついた彼女のあだ名は「スターガール」。
常識と言う檻の中でじっとしている僕らにとって、彼女の行動はまさに爽快だった。

ある夜、僕は彼女から学校に呼び出された。校舎の明かりが辛うじて届く校庭のど真ん中で彼女は僕を待っていた。
いつもの派手な改造制服とは違うノーマルな制服姿で、星空を見上げている。今度は何をやらかす気なのだろう。
「うん、よく来たね。実は私、君のことが好きだ。中学の頃からずっとずっと好きだった」そう言って彼女は僕にキスをした。
「これ、私の宝物なんだ」彼女はポケットから指輪を取り出す。「綺麗でしょ。私のお婆ちゃんがくれたんだ。
これを贈られた相手は絶対にしあわせになれる、…らしい。君はこれを将来のお嫁さんにプレゼントするといい。
きみら夫婦は永遠に幸せになれる」恥ずかしいからもう帰る!と言い捨てて、彼女は早々に帰ってしまった。
ひとり校庭に残された僕。まだ混乱している。スターガールが僕にキスをした。好きだと言われた。
でも、あんなにストレートな告白をしておいて、別の女性に贈る指輪をプレゼント?

その翌日からスターガールは学校に姿をみせなくなった。
クラスみんなで捜索を開始してから半年。何かを隠しているっぽい担任の机の引き出しを物色し
(スターガールを見慣れてしまったせいで僕らはかなり大胆になっている)僕らはやっと彼女の居場所を突き止めた。

「見つかっちゃったか…」スターガールは病院のベッドの上で恥ずかしそうに笑った。
僕は彼女の痩せ細った指に、あの指輪をはめてやる。「『この指輪を贈られた人は絶対に幸せになる』そうだよね?」
スターガールは自分の指にはめられた指輪を見つめている。「信じてないのかい?」彼女は微かに首を振った。
「スターガール。告白はやり直しだ。学校へ行こう!」

病室からの逃走ルートはクラスのみんなで確保した。みんなの声援を後に、僕とスターガールは走り出す。
それは指輪の力なのか、走り出す彼女には既に奇跡が起きていた。
やがてドナーとなる僕の手は、少女の手とその命をしっかりと繋ぎとめている。
彼女は僕に手を引かながら、夕暮れに輝く星々に向かって泣きながら叫んだ。

「やっぱり私、生きるのが好き」