第二次世界大戦。ヨーロッパ戦線ではドイツがフランスを侵略。
フランスは難攻不落と言われたマジノ要塞を落され已む無く降伏します。
ドイツ総統ヒトラーのパリ入場にあわせ、沢山のドイツ兵がフランスにやってきます。
その中に、とあるパン屋に通いつめる青年兵士がいました。パン屋の娘は、やがてこの兵士と顔見知りになります。
当時、ナチスの党政策により配給を止められていたユダヤの人達は、小さな子供までもが街頭で物乞いを
しなくてはなりませんでした。この青年兵士は、その子供たちに影でそっとパンを分け与えていたのです。
後にそれを知ったパン屋の娘は、この青年兵士の優しさに深く感動し、いつしか二人は恋におちます。

しかし、その四年後事態は急変します。
ロシア地方において、極冬軍の猛反撃を受けたドイツ軍は次々と敗退。フランス市民も銃を取ってナチスに蜂起。
ドイツ軍は各地で敗れ、フランスはまた独立した一国家に戻ります。
青年兵士は民衆との市街戦で戦死。娘は同じフランス市民に虐待を受けます。
この狂気はドイツ兵と付き合っていた全ての女性が対象でした。
髪を切られ、服を引き裂かれ、体中にナチスの鍵十字をペイントされて市中を引き回されました。
一通り町を回ると、彼女は貨車から乱暴に放り出さる。
・・・その彼女に、コートとパンを与え、抱きしめてくれる人がいました。
あの人はもういない。フランス市民もドイツ兵も、今や私の見方にはなり得ない。
私にはもう頼れる人などいないのに、いないはずなのに、一体誰が。
「…だ…れ?」切れた唇で懸命に問う彼女をそっと制し、その人は答えます。

「あなたのパンと、あなたの大切な人によって、生き長らえた者です」

青年の祈りは、届いていたのです。