お願い、来ないで!どうかそのまま…。
私の方を見ないで、話を聞いてください。

私はこのお屋敷で、ひとりで住んでいます。ひとりぼっちになってから、もう随分と経ちます。
こんな姿ですから、人と話すことも、触れ合うこともない、冷たい日々です。
美しい容姿を失ったことよりも、辛くて悲しいのは、この孤独です。

屋敷の外はどんな様子でしょうか。
私を愛してくれたあの人は、お元気でしょうか。優しい姉さまたちは、達者で暮らしているのでしょうか。
みんながしあわせでいるのなら、私はとてもうれしい。
もしあの人たちに会うことがあったのなら、どうか私は元気でいると、伝えてください。

庭の石造を見て、びっくりなさったでしょう。彼らは私を心配してこの屋敷へ足を踏み入れてしまった、町の人々です。
私はその何人かと目を合わせてしまい、それで彼らは、あのような姿になってしまいました。
私は弓と矢を作り、塔の上からその矢を放って、人々を追い払ってきました。
やがて、町の人々は何らかの事情を察し、ここへはこなくなりました。
石化を解く方法は、私にもわかりません。毎日こうして庭に出て、彼らに触れて、元の姿に戻りますようにと、祈る日々です。

あなたは、なぜここへやって来たのですか?私のことを知って、危険を承知で、この屋敷へ入ってきたのですか?一体、なぜ?あなたは―
…あぁ。そうですか…、それでここへ。…わかりました。
それでは、その大きな盾に私を映すとよいでしょう。それで、私の首に狙いを定めることができます。

その前にひとつ、私の願いを聞いてはくださいませんか?
どうか私に、祈る時間をください。
ひとりぼっちになってからは辛いことばかりでしたけれど、でも私にも幸せなときがあって、愛した人たちがいて、守りたかったものが、たくさんあって―
どうか私に、手を組む時間をください。
祈る時間を。