イギリスの、とある町に聳え立つ名家の豪邸。そこに、優しい両親や兄弟達と何不自由なく、幸せに暮らす少女がいました。
ある日、少女はボランティアで生まれて初めて病院へ行きます。少女はそれまで「病院」という所を知りませんでした。
お金持ちである彼女は、病気になればお医者さんが家に来てくれるのが普通だと思っていたのです。そこはとても狭く、換気が悪いために
新鮮な空気も入ってこない。異臭の中に汚いベットがぶつかり合うように並んでいました。各病棟では酒を飲み、売春する者までいる。
この当時の病院とは、秩序と衛生のない酷いところでした。この時はじめて、少女は人間の悲惨さ、惨めさに目を開きます。
恵まれた家庭に育ったこの少女は、自分が幸せであればあるほど、不幸な人のことを考えるようになっていきました。

1837年2月7日。17歳になった少女は、この日不思議な夢を見ます。「私のところに来て奉仕しなさい」目の前に天使が舞い降り
自分に手をさし向けてそう言うのです。しかし、その時少女にはどうすることが神様に奉仕するという事になるのか
その意味が分かりませんでした。それからというもの少女はその答えを懸命に探しはじめます。
「自分のしたいこと」ではなく「自分のすべきこと」は何か。
少女が答えを見つけ、動き出したのは24歳になった7年後のことでした。

彼女は離縁も辞さない両親の猛反対を押し切り、近所のサリスベリという町の病院へ。
そこで、修道女のように病気や怪我の人の世話をしたいと願いでます。
当時の看護婦といえば、身寄り、身分の無い人達の職業です。
見れば、彼女は身なり、仕草、言葉遣いから名家のお嬢様であることが誰にでも取ってわかる。
「本気なのかね?」と、院長は信じられないという風で彼女に名前を尋ねました。彼女は答えます。

「・・・フローレンスです。フローレンス・ナイティンゲール」