イラクのシャニダールで旧石器時代の少女が発掘された。
腰に獣の皮を巻きつけ、打製石器でマンモスを追い回す。伸ばしっぱなしの髭や髪。会話は息遣いとジェスチャーのみ。
原始時代のそんなイメージは、この発見により一変する。

少女の周辺だけに、8種類もの花の成分が検出されたのだ。献花されたものであると思われる。
花を美しいと思うのなら、その精神は清潔を好んだであろう。身を着飾っていた可能性も高い。
人の死を悼む気持ちがあるということは、それ相応の道徳も持ち合わせていたはずだ。
彼らの感性は、私たち現代人に限りなく近かったということになる。

花を手に少女を弔う人々。そこには、どんな物語があったのだろう。少女は一体、どんな人生を送ったのだろう。
私たちと同じように、天の彩雲をあおぎ、星に手を伸ばし、自分とは何かを考えたりしたのだろうか。