BOOK−25
Present BY Kasumi Yahagi


[順不同。これは霞美の個人的な評価です]
本の題名 作者 霞美の一言メモ 5星評価
1169 沈まぬ太陽(全5巻) 山崎豊子 JAL日本航空役員に蔓延る怠慢と汚職。利益優先人員削減による過酷な労働に次々と挫かれてゆく現場の従業員達。 そして、ついに起こってしまった、御巣鷹山日航機墜落事故。 外部から会長を抜擢し組織の更生に当たらせるも、利権にしがみつく旧役員達は悪行をやめようとしない。 御巣鷹山に木魂する憎しみと悲しみの叫びが、企業という冷たい穴倉に吸い込まれてゆく。何ともやり切れない現実でした。16/02/26 ★★
1171 海賊とよばれた男(上・下) 百田尚樹 外国から石油の利権を守るために戦った男。モデルは出光興産創業者出光佐三。 日本の国益のために大企業の謀略にも耐え、走り続けたことは立派ですが、個人的には、家を守るために身を引いた妻ユキが心に残りました。 誰かのために人生を手放すなど、勝った負けたと騒いでいる男たちに果してできるだろうか。16/03/31 ★★
1172 櫻子さんの足下には死体が埋まっている 白から始まる秘密 太田紫織 時は遡り、櫻子と正太郎の出会いから語られる本書。櫻子が正太郎を亡き弟、惣太郎に重ねてしまうところに、彼女の心の氷解が垣間見られます。 ふたりは過去をどう振り切り、未来を築いてゆくのだろう。16/04/19 ★★★
1174 失楽園(上・下) ミルトン 前半は神に戦いを挑む元天使・サタン軍団の活躍、後半は神の作りしアダムとイブの物語。 思考を停止させてただ只管に神に仕えるのはおかしい。そんな禁断の「知恵」を巡ってのこの物語には、 清教徒革命で奔走した筆者自身の思想が、色濃く感じられました。平井正穂氏訳。16/05/13 ★★★
1175 ラオスにいったい何があるというんですか? 村上春樹 著者の海外体験記。各国お勧め料理屋やランニングコース、レコード店、昔住んでいた家を訪ね歩いたりと、彼の思い出に触れることができます。 彼が去って後、政治経済的に不安定になってしまった国も多々。著者も悲しく思っているのでは。16/05/18 ★★★
1176 ビル・エヴァンス
ジャズ・ピアニストの肖像
ピーター・ペッティンガー ビルの生涯を、その仕事ぶりを中心に描かれています。 音楽的才能に恵まれながらも兵役時代に覚えた麻薬から足を洗い切れず、心身共に衰弱していたことから、命を絶つためにあえて麻薬を止めなかったのではと語られていました。 どちらにせよ、本当に惜しい話です。16/06/04 ★★
1177 わたしが降らせた雪 グレース・マクリーン 自分の作ったミニチュアが、どうやら世界とリンクしている。少女は奇跡の雪を降らせることから、都合の悪い人たちへの排除へと、 世界を誘導していきます。そして、取り返しのつかない事態になってゆく。物事を自由に操るということの恐ろしさを痛感します。16/07/02 ★★
1178 職業としての小説家 村上春樹 小説を書くことについて語る筆者ですが、内容は自伝的要素も色濃くとても興味深かったです。筆者に対する勝手な解釈もこの本で解けました。 物語は何度も書き直しをして、紆余曲折を経て完成していること。外国で本を売るにあたって、筆者は自分の足で売る努力をしていること。 大物だからといって、勝手に本が売れているというわけでは決してありません。16/07/07 ★★★
1179 火花 又吉直樹 芸人として生きようとすることの現実を、その心理を、恐ろしいほど的確に云い得ています。 芸人である筆者ならではの素晴らしい作品でした。「必要がないことを長い時間かけてやり続けることは怖いだろう? 一度しかない人生において、結果が全く出ないかもしれないことに挑戦するのは怖いだろう?」 直木賞受賞。16/07/11 ★★★☆
1180 最後の瞽女 小林ハルの人生 桐生清次 人間国宝となった盲目の旅芸人、小林ハル。幼くてして両親を失い、辛い瞽女修行を耐え、心無い人々に虐められ、それでも言い訳せずに生き抜いて来ました。 80代になって身投げまで考えていたなんて、本当に遣る瀬い気持ちになります。その後、多くの人にその人生を認められたハルさん。心の底から賞賛を贈りたいです。16/08/01 ★★★☆
1181 獣の戯れ 三島由紀夫 嫉妬しない妻を嫉妬させるために奔走する夫。その夫に雇われたアルバイトの青年は、その婦人に同情しいつしか不倫の関係に陥っていく。 結局、三人ともまともなフリをして、お互いの心をかき回して喜んでいる。人間的理性を演じているだけの獣。そんな風に読み解けました。16/08/16 ★★
1182 粛清の嵐 佐藤賢一 小説フランス革命10。ジャコバン派マラが殺されたことで、ギロチンによる粛清が加速。容疑のかかったジロンド派の面々が次々と殺されていきます。 マラを殺した逸話の多い美少女、シャルロット・コルデーについてもう少し深く掘り下げてほしかったです。16/08/22 ★★
1183 ベッドタイム・ストーリー 乙一 星の位置を変えて先輩の病を治そうとした、健気な超能力少女の物語。気持ちの意味づけとして、人は占星術を作り出したのではないか。 運命を受け入れ、静かに語る青年の言葉に涙しました。16/08/22 ★★★☆
1184 ダイアログ・イン・ザ・ダーク 乙一 二人の兄弟に誘拐された娘。残酷な仕打ちを続ける兄と優しく接してくれる弟。娘はふたりの男の狭間で、心の本質に触れていきます。 愛せるなら憎めるし、憎めるなら愛せる。恐ろしい心当たりです。16/08/25 ★★☆
1185 私のサイクロプス 山白朝子 和泉蝋庵シリーズ2作目。一行がいろいろな恐怖を体験する短編集ですが、今回は使えない主人公、耳彦が淡い恋心を抱く 「星と熊の悲劇」が悲しくも印象深かったです。グロテスクの中にもどこか暖かみのある、不思議な本です。16/08/31 ★★★
1186 メアリー・スーを殺して 乙一・中田永一・山白朝子・越前魔太郎・安達寛高 学園ものからおぞましいものまで、多彩な物語が詰め込まれています。乙一氏の「ZOO」に近い一冊。 泥棒扱いされた主人公を救ってくれた、ちょっと不潔なクラスメイト「宗像くんと万年筆事件」がお勧めです。16/09/11 ★★★
1187 花とアリス殺人事件 乙一 ユダという名の男子生徒を巡る、少女たちの青春群像劇。死や引きこもり、噂やいじめ。 それら陰惨なものに対し、自分なりに立ち向かう彼女たちの姿が眩しい。読後感も素晴らしい作品でした。16/10/04 ★★★
1188 かの名はポンパドール 佐藤賢一 マンネリの生活を送るベルサイユ宮を一変させた平民出身の才女、ポンパドール婦人。 ルイ15世が夜伽がなくてもいいから側にいてくれと願う程。人間的魅力が想像できます。 ルイが彼女を失ったとき、真逆の性格を持つデュバリー婦人を側に置いたという落ちが何とも儚いです。16/10/21 ★★★
1189 ラパチーニの娘 ナサニエル・ホーソーン 短編集。完璧な存在となってしまったが故に散ってしまった娘の命。それを観察していた心無き学者の父。その儚き終着点に愕然としました。 人生とは過程にあるのだと訴えたかったのか。16/11/26 ★★★
1190 天才 石原慎太郎 金と根回しを駆使し、列島改造を断行した田中角栄の人生を、当時対勢力にいた若き政治家、石原慎太郎が描く。 米国の陰謀により賄賂の疑惑をかけられたロッキード事件。田中は有罪になっても、これを否定し続けていました。 冷静に事件を読み返してみると、確かにこの判決には疑わしいものがあります。愛人を作る父を嫌っていた娘眞紀子が、角栄の最後を看取ったそうです。16/12/18 ★★★
1191 私は存在が空気 中田永一 様々な超能力者が登場する短編集。テレポート能力のある引きこもり少年の物語「少年ジャンパー」は羨ましい。 私も放課後にグランドキャニオンとか行ってみたいです。超能力があっても恋や仕事が成就するとは限らない。 そんなところも、この本の魅力だと感じました。16/12/23 ★★★
1192 極北 マーセル・セロー 北のとあるボロ小屋から主人公の旅が始まります。旅が進むにつれて見えてくる物語の全体像。 主人公の容姿や立場など小さなことが全て謎賭けになっており、見える箇所が徐々に広がっていく、 巧妙な文章構成に驚愕。人にお薦めできる一冊です。村上春樹訳。17/01/03 ★★★☆
1193 アリス殺し 小林泰三 夢の世界と現実の世界がリンクした、奇怪な殺人事件。ふたつの世界を行き来しながらの、生き残りゲームがはじまります。 しかし、自業自得とはいえあのラストはあんまりです。ぞっとします。17/02/02 ★★★
1194 往復書簡 湊かなえ 短編集。手紙のやり取りを通して蘇る数々思い出と、明るみになってゆくその真相。 実はあの時ああ思っていた、こう思っていた。人間関係には、良いことも悪いこともあるはずですが 思い出になると、それが偏りがちになるもの。過去を清算するとは、その偏りを正すことから 始めなければならないのかも知れませんね。17/04/01 ★★
1195 夜葬 最東対地 独自の埋葬文化を持つ村の呪いが、一冊の雑誌を引き金に、若い記者たちに歩み寄る。 逃げきれないと顔面をシャベルで削り取られるなど、とにかく不気味極まりない本です。 謎の全てが心霊現象と言うのはどうも、もうひと捻り欲しい所です。17/04/06 ★★★
1196 殺人犯はそこにいる 清水潔 北関東連続幼女誘拐殺人事件。警察の見栄と失敗により歪められた犯人像、そこから生まれてしまった冤罪。 国家はその失敗を認められず、犯人と思われる最も疑わしき人物が未だ娑婆をうろついている状態です。 そして、過去同じ捜査法で逮捕された死刑囚に疑われる冤罪。恐ろしい真実です。 本のタイトルはあまりに広い意味を含みます。17/04/20 ★★★☆
1197 居合林崎甚助 近衛龍春 父の仇、坂一雲斎を倒すために抜刀術を生み出した居合の祖、林崎甚助の半生。 物語は敵討ちが終わる21歳まで。その後居合をどう人生に活かしたのか、人生の役に立ったのか、それも知りたかったです。17/05/12 ★★★
1198 GOSICK RED 桜庭一樹 移民としてアメリカに渡った一弥とヴィクトリカ。記者と探偵業をはじめ、二人は新しい生活を始めます。 今回挑むのはマフィア殺しの無差別殺人事件。ヴィクトリカが考え一弥が走る展開は良い意味で相変わらず。 大戦後のアメリカの気分もわかる一冊です。17/05/31 ★★☆
1199 GOSICK BLUE 桜庭一樹 17/06/07 ★★
1200 GOSICK PINK 桜庭一樹 17/06/24 ★★☆
1201 GOSICK GREEN 桜庭一樹 17/07/05 ★★
1202 ロビンソン・クルーソー D・デフォー 1659年、アフリカに奴隷を求めに行く船が難破。ロビンソンは無人島に漂着、サバイバル生活がはじまります。 衣食住の確保や人食い人種との争い。幸不幸以前に、いろいろな事がおこれば人はそれで生きていける。 街にいたって、目的がなければ生きていけませんよね。17/07/26 ★★★☆
1203 コーヒーの医学 野田光彦 医学というより統計学的観点から、珈琲が体に与える影響を分析。結論から言うと、注意すべきは膀胱癌。 後は癌に対して無影響、もしくはそれを抑制するということでした。 珈琲が人体に与える影響をここまで広範囲且具体的に扱った書籍は珍しいです。17/07/30 ★★★★
1204 徳の政治 佐藤賢一 小説フランス革命11。恐怖で政権を維持しようとするサンジェスト、ロベス・ピエール。 革命を共にした嘗ての仲間を次々と処刑していきます。虚ろになってゆくロベス・ピエールの精神。 「人は幸せなら何もしない、不幸だから行動を起こすんだ」処刑されたダントンの言葉が重いです。17/08/16 ★★★
1205 雑賀の女鉄砲撃ち 佐藤恵秋 秀吉が最も恐れた女射撃手、蛍。鉄砲という武器に人生を賭けて戦国の世を生き抜いた蛍と三人の姉の物語です。 蛍の放った一発が中々世継ぎを作れなかった秀吉の歴史と符合しているのはすごい。 性別も生まれも関係ない。何かに集中して生きるということの、大切さを学んだ気がしました。17/08/26 ★★★☆
1206 革命の終焉 佐藤賢一 小説フランス革命12。大革命の首謀者ロベス・ピエールも捕らわれの身となり、革命は終焉を迎えます。 結局は王政復古の必要性が見直され、武力の行使も必要とされ。まわりの国と歩調を合わせられなかったことを考えると、 この革命はあまりにも早すぎたのかも知れません。それでも人類史上大きな意味を持っていることは、間違いなさそうですが。17/09/06 ★★
1207 青べか物語 山本周五郎 漁師町浦安で暮らしていた筆者の体験話。その土地の気風や、ひとりひとりの人生がありありと目に浮かびます。 半ば騙されて買ったというぼろ船。今も川のあちこちで朽ち果てています。17/09/19 ★★★★
1209 天国でまた会おう(上・下) ピエール・ルメートル 第一次大戦中。戦場で私利私欲のために上官に殺されかけた男の物語。 自らの人生を放棄して悪人を追い詰めていくその様には、ある種の虚しささえ感じました。 復讐が爽快なのは、物語が与える麻薬的な幻想なのだと気付かされます。17/12/11 ★★★
1210 誰も僕を見てない 山寺香 川口市祖父母殺害事件。ニュースでこれを知り、この可哀想な青年の生い立ちを分かってやりたい。そんな思いから手に取った本。 母親の指示で物取り殺人を犯してしまった少年。無罪となった母親。一体誰がこれを納得すると言うのでしょうか。 責任能力のない親から子供をどう救うべきか。考えさせられます。17/12/12 ★★★
1211 時をとめた少女 ロバート・F・ヤング 彼氏に冷凍保存の刑が言い渡されたとき、彼女は自分の時間も共に止めるため、とある職業に就く「時をとめた少女」。 少し暗い話が多い中、著者らしいロマンに溢れていて面白かったです。18/02/04 ★★
1212 驚異の老眼回復法 中川和宏 眼球を動かす毛様体筋を鍛えると同時に、視認する脳のトレーニングも必ず一緒にする。 これがこの本から得た一番の情報です。書かれたトレーニングを全て実践するのは難しいですが、 目の運動法は知っておいて損はないと思います。18/02/04 ★★★
1213 シャガール 愛と追放 ジャッキー・
ヴォルシュレガー
ロシアの片田舎から、パリ、ニューヨークと困難を乗り越え、絵を描き続けたシャガール。 生きているうちに巨匠と評された彼でしたが、イコール幸せであるとは言えません。 妻の死や友の裏切り、ユダヤ人としての困難、貧しい時期も長くあり、画家としての人生とは何かを考えさせられます。 画廊から家に戻る途中心臓発作で急死。97歳。亡くなったその日も絵を描いていたんですね。18/04/13 ★★☆
1214 暮れていく愛 鹿島田真希 愛し合いながらも疑心暗鬼を抱く、煮え切らない夫婦の物語。きちんと気持ちを口にすることの大切さを痛感します。18/04/21
1215 アイヌ神謡集 知里幸恵 アイヌの神々の美しい物語が、まるで子守唄のように心に入ってきます。アイヌ人である筆者ならではの、素晴らしい翻訳です。 日本政府によって浄化されかけたアイヌ文化。この本が政府からそれを守ったと言っても過言ではないと思います。18/05/05 ★★★
1216 知里幸恵物語 金治直美 アイヌ人であることを誇りに思えなかった少女が、アイヌ語研究の学者と知り合い、その考え方を変えてゆきます。 彼女が命をかけて書き上げたアイヌ神謡集の美しさは、彼女の気高い精神そのものなんだと感じました。 アイヌの精神を世に残すために生れて来たような、聡明な少女でした。享年19歳。18/05/16 ★★★
1218 騎士団長殺し(1・2部) 村上春樹 主人公の肖像画家が離婚をきっかけに住むこととなった、雨田具彦画伯の山荘。 出ていく妻、不倫相手、大きな穴、少女、謎の男。例のごとく、これらのキーが数多の不思議となって物語は進行します。 「子供を作るということについて」彼にしては珍しい題材を扱っているなと感じました。18/07/17 ★★★
1219 インビジブルハート ラッセル・ロバーツ 正しさを法で強制しても、人が心から変わらなければ、世の中は変わらない。 主人公である経済学の教師の言葉を借りて、様々な文献や蘊蓄を紹介しつつ、新しいものの見方を教えてくれる本です。18/07/26 ★★★
1220 人形を捨てる 藤堂志津子 私小説。浮気性の父をもつ両親のことから始まり、仕事、友人、お酒、恋愛など、なかなか思い通りにならない人生が綴られています。 自分はどう生きたいのか。具体的にしながら日々を送ることの必要性を感じました。18/09/07 ★☆
1221 生きがいについて 神谷美恵子 生きがいとは何か。対比される絶望から、心の復活への道のりを、様々な事例を上げて分析した本。 己の内面を分析することが、より多くの理解へと繋がることを知りました。 苦しみにある人ほどそれができているので、幸せとは何なのかをよく理解しているということですね。18/10/05 ★★★
1222 熊の敷石 堀江敏幸 旧友とフランスの片田舎で過ごす日々。ユダヤ人、ゲットー、全盲の子、離婚など、陰のある問題が物語を駆け巡る。 癖のある文体と不注意で手元の食べ物を地に落としたような、唐突な結末に少々面喰います。18/10/14

Last Up Data : 2022/04/29

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