BOOK-23
Present BY Kasumi Yahagi


[順不同。これは霞美の個人的な評価です]

本の題名 作者 霞美の一言メモ 5星評価
1064 フイヤン派の野望 佐藤賢一 小説フランス革命6。フランス革命を進めてきたジャコバン派が分裂。急進派を弾圧するフイヤン派にロベスピエールは頭を抱えます。 それでも、街行く人々の声援に気を取り直すピエール。第二の王政を作ってはならないと様々な思惑が錯綜する議会。 派閥争いはまだまだ続きます。12/12/05 ★★
1065 憑物語 西尾維新 吸血鬼化が進む阿良々木。そんな最中に誘拐されてしまう、神原と阿良々木姉妹。 斧乃木の協力を得て三人を救うべく、阿良々木が奔走します。 いつもながらの長い前置き。妹と風呂で洗いっこするシーンを長々と見せ付けられます。 筆者こういうの好きだなと。12/12/07 ★★
1066 万能鑑定士Qの短編集T 松岡圭祐 代官山の人気質屋に出張鑑定に出る莉子。オーナーの駒澤と共に珍事件を追います。 一人の女性を追い続け、夢破れてしまった駒澤の叔父、香川の想いに涙です。 小笠原と駒沢。あわや三角関係になると思いきや、最後のネタバレに頬が緩みます。 なるほど、駒沢は大人なわけだ。12/12/13 ★★☆
1067 落涙戦争 森田季節 泣けない体質の主人公を泣かそうと、あの手この手で襲い掛かる泣かせ屋の面々。 主人公に寄り添う泣かせ屋ホトトギスの献身。それでも泣けない主人公が不憫でした。 連なる急展開は良いのですが、涙の意味についてもっと掘り下げて欲しかったです。12/12/14 ★☆
1068 ジロンド派の興亡 佐藤賢一 小説フランス革命7。穏健に王制維持を唱えるフイヤン派。対するジャコバンクラブ、ジロンド派は 反革命を支持するオーストリアへの主戦論を展開。ロベスピエールは普通選挙制による共和制の樹立を急ぐべきとしてジャコバンクラブで孤立します。 ルイの王政復古模索も木魂して議会は更に泥沼化。重い展開です。12/12/24 ★☆
1069 ライアの祈り 森沢明夫 縄文の若き狩人ライアと平成の世を生きるバツイチの桃子。 桃子は運命の人と出会い、前世の破片を拾い集めてゆくことになります。 祈りが世紀を超えてくれたら、どんな素敵なことでしょう。また縄文時代の進んだ文明に驚かされました。12/12/28 ★★★
1070 猫桃神話 望月飛鳥 怪奇ファンタジー。数多の神話や伝承に猫族桃が巻き込まれていきます。 理解するにその手の予備知識が必要で、些か手厳しさを感じます。作中に出てくるお菓子はかなり美味しそうだ。13/01/08 ★☆
1071 霧こそ闇の 仲町六絵 筒井家に仕える典医の夫婦の物語。物の怪や怪しい行者との対峙。そして、戦に離れ離れになる二人。 妻、狭霧の正体を知りつつも、その愛を信じて待ち続けた夫、義伯。その絆に心打たれます。電撃小説大賞メディアワークス文庫賞受賞。13/01/16 ★★
1072 紫式部 山主敏子 紫式部の一生。人を批判したり、悪口を言われて落ち込んだり。 彼女の日記を読んで、今も昔も人の感性はそう変わらないのだと感じました。 どこにでもいそうな少し不器用な女性。孔明のように、偉人とはそういう人なのかも知れません。13/01/18 ★★★
1073 創世の島 バーナード・ベケット 世紀末。伝染病を寄せ付けまいと部外者を監視するアダム。しかし彼は難破した一人の少女を助けてしまう。 時は流れ、アダムに興味を持ったアナックスが彼を主題に就職試験に挑みます。口頭試問を通して自分は何者かを知る彼女。 アダムとアナックスの心が一つになる、驚愕のラストに心奪われました。エスター・グレン賞受賞。13/01/21 ★★★☆
1074 桐島、部活やめるってよ 朝井リョウ ヒーロー桐嶋が部活を辞めたと噂する生徒達。各人の視点でそんな学校生活の様子が描かれます。 陰陽に分かれるグループ。付かず離れずの友達関係。極端な不良生徒を除けば、自分の世代と大差ないです。小説すばる新人賞受賞。13/01/24 ★★
1075 ベラスケスの十字の謎 エリアセル・カンシーノ ベラスケスの名画「ラス・メニーナス」の謎に迫る。絵画に描かれている少年ニコラスがベラスケスと謎の男ネルバルとの橋渡しとなり、事の真相に触れていく。 「絵に時を閉じ込める」ベラスケスの想いに感嘆です。しかし何故ニコラスは犬を踏んでいるんだろう。ラサリーリョ賞受賞。13/01/29 ★★☆
1076 愛と革命
ジョルジュ・サンド伝
坂本千代 仏革命の時代を生きた女流作家サンド。女性の生き難いこの時代を、多面で切り開いていきます。 多くの困難に挫けなかったのは、己という基盤がしっかりと心に根ざしていたからと感じました。しかし、驚くほど恋多き女性ですね。13/02/01 ★★
1077 シュヴァイツァー ジェームズ・ベントリー 音楽家であり、哲学者であり、医者でもあるシュバイツァーの伝記。約束された成功を捨てて、病魔に苦しむアフリカの人々に生涯尽くします。 彼にとって能力とは人助けのための手段であり、それ以外の何物でもないというのがひしと伝わってきました。斯くありたいです。13/02/04 ★★☆
1078 怪談 ラフカディオ・ハーン 小泉八雲の怪談。こうして読みなおすと、怪談と言えど日本の物語はやはり繊細で美しいですね。 神に願い命を賭して子を救った乳母の物語「乳母桜」に感涙です。13/02/07 ★★★
1079 フェッセンデンの宇宙 エドモンド・ハミルトン SF短編集。この宇宙は塵の一部なのではないか、ここは自分の想像の世界なのではないか。 誰もが一度は思う誇大妄想を見事な筆力で物語に仕立て上げています。 自分の妄想する世界に実際に行ってきたという男の話「追放者」がお薦め。13/02/16 ★★★
1080 青の時代 三島由紀夫 叶わぬ恋に対するエゴから、サラ金業を創めた主人公の大学生。 行きつく当てのない金儲けに冷めて行く魂。未来に希望の持てない現代人の心理を投影しているかのようでした。13/02/22 ★★
1081 共和政の樹立 佐藤賢一 小説フランス革命8。恐怖政治の引鉄となった「九月虐殺」。マリーの親友ランバル候爵夫人の無残な死。 そして多数決によるルイの処刑。曲者サンジュストの色濃い活躍も手伝って、恐怖政治の影がじわじわと迫ってきます。 何気に、ルイはその狂気に歯止めをかけることのできる最後の人物だったのかも知れません。13/02/28 ★★☆
1082 プラトニック・セックス 飯島愛 厳格な家庭から逃げ出し、夜遊び、万引き、シンナー、援交と、生きるためなら何でもやった少女。 AV出演がきっかけとなって芸能界デビューを果たし、親と和解したところで本書は終わっています。 もっと、この女の子を導いて上げる大人や友人がいたならば、彼女は間逆の人生を歩んだかも知れません。13/03/01 ★★★
1083 ビタミンF 重松清 妻や子供とうまくいかないお年頃の父親を描いた短編集。その酸っぱさは現実なのだろうが、それだけではないはずだと、ちょっと捻くれた眼で読んでしまいました。 架空のいじめられっ子に己を重ねる娘「セッちゃん」。大人はこういう気持ちを、わかってあげて欲しいです。直木賞受賞。13/03/05 ★★☆
1084 戦争は女の顔をしていない スヴェトラーナ・
アレクシエーヴィチ
英雄論以外に何も明かすことはないと、政府にねじふせられてきた、第二次大戦ロシア兵達の真実。 作者は真実を求めて元女性兵士たちを訪ねてまわり、その証言を本書にまとめます。どの話も壮絶でした。 血に泥にまみれても女でありたいと思い続けていた彼女たち。純真な心に降り注ぐ戦火の灰が、あまりにも悲しかったです。13/03/14 ★★★★
1085 ジャコバン派の独裁 佐藤賢一 小説フランス革命9。国王の処刑に憤慨する諸外国、経済の崩壊、反乱。ジロンド派は苦境に陥りジャコバン派は革命裁判所設置、公安委員会発足と勢力を増して行きます。 おそらく、本当の独裁はこの先にあり。語り手エベールの言葉使いがとにかく汚いです。13/03/19 ★☆
1086 万能鑑定士Qの短編集U 松岡圭祐 保育園を救うための高価な古銭を、安く買いたたかれてしまった少女。莉子の協力も甲斐なく、園は閉鎖に追い込まれてゆく。 それを横目で見ていた万能贋作者、雨森華蓮。黒い正義がかっこよすぎでした。彼女が主役の本があっても良いですね。13/03/23 ★★☆
1087 ビブリア古書堂の事件手帳4 三上延 栞子の母親が登場。江戸川乱歩幻の原稿を合い挟んで二人はやりあうことになります。 古書マニア同士の対決、なかなか異色でした。本書を通して生身の乱歩に触れられたのも良かったです。 次に取り上げられる古書が何なのか、楽しみですね。13/03/27 ★★☆
1088 特等添乗員αの難事件V 松岡圭祐 恋人那沖の家に迫りよる政敵の陰謀。得意のラテラルシンキングで彼を助ける絢奈。 今回も小出しネタ満載で、飽きを感じませんでした。今後、絢奈は那沖の政治家一家にどう溶け込んでいくのか、いかないのか。 ハッピーエンドの予測はさて置き、注目したいところです。13/03/29 ★★☆
1089 コーヒー味わいの「こつ」 田口護 問答形式で珈琲について教えてくれます。後半は大型焙煎機の扱いや手入れの方法など、職業的な観点も書かれています。なかなかの良書です。13/03/30 ★★☆
1090 どんがらがん アヴラム・
 デイヴィッドスン
SF短編集。異色の作家というだけあって奇怪な文章が目立ち、なかなか読みづらい。 自分の妄想に侵されてゆく警官の話「すべての根っこに宿る力」が奇しくも絶妙です。13/04/07 ★☆
1091 夜更けのエントロピー ダン・シモンズ SF短編集。死んだ母を甦らせる一家。しかし、母の人らしからぬ行動に家族は心を失っていく。 人間とは、魂とは何かを思い知らされました。それでも母と暮らそうとする主人公は、正気なのか狂っているのか。「黄泉の川が逆流する」 ゾンビの子供たちの復活を願った熟年教師の話「最後のクラス写真」もお薦め。13/04/14 ★★
1092 願い星、叶い星 アルフレッド・ベスター SF短編集。世紀末。半ば正気を失った男女が出会い、ヒッピーも同然に誰もいない世界で半裸で過ごす。 それが、第三者の介入により、突如として正気を取り戻す。「昔を今になすよしもがな」が秀逸です。13/04/19 ★☆
1093 めたもる。 日比生典成 好きなものに化けられる、お札をめぐる数々の物語。 化けることで物事を好転させ、そして、また元の自分に戻らなければならないことを悟ってゆく主人公たち。 人を選びその札を手渡すことで、現世に愛を育もうとした、狐の純真な心に涙です。13/04/24 ★★☆
1094 輝く断片 シオドア・スタージョン SF短編集。新聞ラジオを欠かさず、世界のあらゆることから目が離せなくなった男。 心配する周囲にそれを奪われ、自分の世界に引き籠った彼の取った行動とは。 冷静に狂ってゆく男の物語「ニュースの時間です」に脱帽です。13/05/07 ★☆
1095 R&R 静月遠火 無限ループする一日からなんとか脱出しようとする青年。毎回、初対面として相談をもちかけられる百音。 百音に恋焦がれ、いくら話しかけても、翌日には全てがリセットされてしまう。 青年の失望と焦燥が胸に痛い。それでも、本当にすきならば人は声をかけ続けるんですね。13/05/09 ★★☆
1096 色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年 村上春樹 学生時代、四人の友人に突如絶縁宣告される主人公つくる。心に蟠りを抱えたまま年を重ねる彼に、恋人が四人に会うことを勧めます。 そして巡礼の旅がはじまる。筆者らしく一部の謎は残されますが、はっきりと描かれたつくるの希望に、しこりの残るような読後感はありませんでした。 学生時代に残してきた謎って、誰でも持っていそうですね。13/05/17 ★★★☆
1097 万能鑑定士Qの推理劇V 松岡圭祐 贋作の世界から足を洗い、婚約者と全うに生きようと意気込む錦織。 怪しい雇い主の手にかかり世界各地で造形に没頭する彼。救おうと奔走する莉子と錦織の彼女。 彼の身に一体何が起こっているのか、随分と当惑させられましたが、なるほどです。 ロシアの隕石落石とか、筆者は常にネタを求めているんですね。13/05/21 ★★☆
1098 菊と刀 ルース・ベネディクト 昭和初期。文化人類学者の著者が日本人を分析。日本に行ったことのない著者ですが、鋭い分析をしています。 礼節を重んじ、過去や失敗に固執せず、新しいものを取り入れ、個人より全体を尊ぶ。そんな日本人の特徴は、現代もさして変わりないかも知れません。 尚、著者は女性です。13/05/28 ★★☆
1099 もう、服従しない アヤーン・ヒルシ・アリ ソマリア出身、元オランダ女性議員の半生を描く。コーランに基く男尊女卑に苦しみ、単身オランダへ逃亡。 その後、イスラムを離反し、ムスリムの女性たちの苦しみを世界に訴え続けます。 男性への絶対服従。性器切除。家族の名誉のために内輪で執行される名誉殺人。 遠い異国の文化だなどと思わず、今現実に起こっている問題なのだと、再認識させられました。 問題作、著者脚本のショート映画「サブミッション(服従)」はネットで視聴可能。13/06/12 ★★☆
1100 たんぽぽ娘 ロバート・F・ヤング SF短編集。著者の持ち味であるロマンチックとは、聊かかけ離れた作品も多かったです。 「たんぽぽ娘」の他、涅槃で出会い生きる気力を取り戻す男女の物語「河を下る旅」。 幼い頃の忘れものを異星で見つける「第一次火星ミッション」がお薦め。13/06/20 ★★★
1101 友だちになれたら、きっと。 ガリト・フィンク
メルヴェト・アクラム・
シャーバーン
実話。筆者の仲介により文通するようになったユダヤ人ガリトとアラブ人メルヴェト。 テロや戦車に脅えつつも、二人は紙の上で友情を育んでいきます。 しかし、大人になった二人は各々の道を。平和に対する意識も違えてしまいます。 それが大人になるということならば、悲しい限りです。13/06/25 ★★
1102 パレスチナの声、イスラエルの声 土井敏邦 双方の声を集めてまわった筆者のルポ。特に難民となったアラブ人たちの悲惨な生活に、胸が痛くなりました。 「我々は攻撃する気などない。そちらが攻撃を止めればよい」と、お互いが相手を知らずに恐れているふしがあります。 たったひとつ共通するものは平和への願い。安全な生活。まずは知りあうところから始めなければならないと、強く感じました。13/06/30 ★★★
1103 たった一人の30年戦争 小野田寛郎 終戦を知らず30年間フィリピンで諜報活動し、援軍を待ち続けた小野田元少尉の手記。 共に戦った二人の仲間が撃たれてしまったことは、本当に残念でなりません。 彼の言葉には、現代人が学ぶべきものが多分にあります。右派左派関係なくファンがいるというのも頷けました。 「なぜ私だけが権化や亡霊として世論の俎上にあげられるのだろうか。私はただ、少し遅れて帰ってきただけの男である」13/07/05 ★★★☆
1104 開錠師 スティーヴ・ハミルトン 寡黙症の少年が開錠師になり、愛する人のために犯罪に加担してゆく。 リアルな結末が胸に突き刺さりました。才能が人生を豊かにするとは限らないのですね。 解錠のイロハもリアルに書かれています。13/07/17 ★★☆
1105 「食べない」健康法 石原結實 一日三食は多すぎるし、食べ過ぎると白血球の働きが鈍ると、小食を推奨。 食べないというよりは、上手に少しずつ食べるといった健康法です。 確かに現代人は過食の気があるので、一読の価値はあると思います。後半は喜びの声の雨霰です。13/07/19 ★★★
1106 罪と音楽 小室哲哉 詐欺事件を起こしてしまった著者が、絶頂からの迷走と転落の人生を、素直な気持ちで書いています。 人を狂わす金と名声。浅い人間関係の中で仕事に縋りつく日々。憐れみすら感じてしまいました。 「これからは、ひとりの社会人として、真当に生きていきたい」この本を読んで、私は彼の言葉を信じました。13/07/21 ★★★☆

Last Up Data : 2013/07/25

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