Present BY Kasumi Yahagi
数
本の題名
作者
霞美の一言メモ
5星評価
852
[映]アムリタ
野崎まど
映画の天才最原最早が、主人公を役者に抜擢。やがて、彼女がその映画を撮った本当の目的に主人公は息を呑む。
オウム事件の洗脳騒ぎを思い出しました。電撃小説メディアワークス文庫賞受賞。10/02/20
★★☆
853
出撃!魔女飛行隊
ブルース・マイルズ
第二次対戦に活躍したロシアの女子飛行隊の実録。
過酷な軍生活の中で、それでも女性らしさを取り止める女性たち。そして、散ってゆく命。
戦う以外に生き方を見失ってしまったリディア・リトヴァクなど、本当に可哀そうでした。
後書きで「よくあれだけのことをした」と振り返る老女達の言葉に胸がいっぱいになります。10/03/07
★★★
854
デート・ゲーム(1)
ナタリー
・スタンディフォード
男と女どちらがセックスに興味があるか?ネットを使った学内調査を始め、それから理想の彼氏を追い求める少女たち。
手探りで姓を知ろうとする少年少女の純心と奮闘が何とも微笑ましいです。10/03/10
★☆
855
刑事一代
佐々木嘉信
帝銀、下山、吉展ちゃん誘拐殺人、三億円事件など、昭和の大事件を追った平塚八兵衛刑事の実録。己で確かめるという信念から。
捜査の洗い直しによって解決された事件も多く、それは様々な社会問題に対しても、同じことが言えるのではないかと思えました。
当時騒がれた吉展ちゃん事件に、それが今では珍しくなくなってしまった現代社会の残酷さを鑑みます。10/03/19
★★
856
朝やけのランナー
著・真鍋和子
画・こさかしげる
日本最初の女性アスリート、人見絹枝の自伝。空路のない時代に遠いヨーロッパへ足を運び、たったひとりで
日本代表としてオリンピックを闘い抜いた彼女には脱帽します。人の強さの意味を深く考えさせられました。
彼女は銀メダルを得ましたが、メダル関係なしに偉大ですね。10/03/23
★★☆
857
人見絹枝物語
小原敏彦
若き選手たちを引き連れてオリンピックに望むも、結果のみを評価しその苦労を省みない大衆の身勝手さに唇を噛む絹江。
しかし、彼女の人生がもたらした指針は今もアスリート達を導き続けています。
できれば、これまでの苦難の報いを、ひとりの女性として得て欲しかったです。享年24歳。10/04/01
★★
858
不思議のひと触れ
シオドア・スタージョン
SF短編集。奇怪な物語の数々。中でも、人間の皮を着た未知なる生物の私生活を覗き見する男の話が絶妙でした。
筆者はTVスタートレックの脚本を担当。知らなかった。10/04/15
★★★☆
860
偽物語(上・下)
西尾維新
怪異に犯されたふたりの妹を救おうと奔走する主人公。今回は忍野忍も語りだし物語はぐっと前進します。
凄まじいまでの正義感をもった妹は圧巻。予告された次回作にも期待です。10/05/10
★★☆
861
夜会服
三島由紀夫
接待パーティーに追われる毎日に終止符を打ちたい息子。夜会服を切り裂くべく、息子夫婦と姑との確執を描きます。
意地悪に裏打ちされた姑の孤独が、少し可愛そうかもです。10/05/12
★★★
862
夏子の冒険
三島由紀夫
殺された恋人の仇、大熊に猟銃で立ち向かう青年。その爛々とした目に惹かれる我儘娘夏子。
復讐を終え常人の目つきに戻った彼に関心を失う彼女。なんとも可笑しくて滑稽な読後感でした。10/05/16
★☆
864
万能鑑定士Qの事件簿T・U
松岡圭祐
偽札の大量流出によってパニックに陥る日本。真相を探って奔走する鑑定士凜田莉子。
何の進展もないままもうページが終わってしまうと思いきや、最後の最後で数々のヒントが一つに結晶し真相が暴かれます。驚愕でした。
個人的に、彼女の生立ちと性格に重なるものがあって高評価。10/05/19
★★★★
865
空の彼方
菱田愛日
防具屋の店主ソラが紡いだ冒険者たちの絆の物語。
病気で外に出られず、待つことしかできない彼女の思いが、冒険者たちによって外の世界へ運ばれ行きます。
彼女もまた、壮絶なものと闘っているひとりの冒険者でした。電撃小説大賞受賞。
10/05/24
★★★
866
対岸の彼女
角田光代
同じ歳の雇い主の女社長と親しくなる、主人公の主婦。大人同士であるが故に接近しきれない、ある種リアルな女の友情を描きます。
自由を求めて友達と家出した、社長の学生時代の体験が切なかったです。10/05/26
★★★
867
少女七竈と七人の可愛そうな大人
桜庭一樹
七人の男と寝た母の娘、美少女川村七竈。腹違いの弟や勝手に宣戦布告をする恋敵の後輩。自分を父親と名乗る男。
取りまく人々に対する七竈の受け答えが何ともおかしくて、一風変わったその魅力にはまってしまいました。10/05/28
★★★☆
868
死の影の谷間
ロバート・C・オブライエン
核戦争後の世界で、自分以外の生存者と遭遇する少女。
その男は信用できるのか。緊迫した展開は、まるで小説ミザリーのようで恐ろしいです。
語られぬ未来を、弧を描く鳥に示すラストは秀逸。10/06/02
★★★
869
青の聖騎士伝説
深沢美潮
主人公の騎士がアサシンや愛する女性と出会い旅をする。LVの概念があり、RPGの世界を象ったような本でした。
呪いに体を蝕まれ自害したエルフの章が悲しい。10/06/03
★★★
870
サブリエル
ガース・ニクス
古王国物語T。アブホーセンの称号を持つネクロマンサーの父からメッセージを受取る、娘サブリエル。
少女は父のいる冥界へ足を踏み入れて行きます。そして、邪悪なネクロマンサーによって滅んだ一国の王子を救い二人は父の助け元、黒幕との対決へ。
亡霊や精霊、ネクロマンサーのベルなど、リアルに書かれたダークファンタジィーの世界は陶酔必至。ハリーポッターより面白いです。オーリアス賞二部門で大賞受賞。10/06/10
★★★☆
871
うさぎおいしーフランス人
村上春樹
いろはかるた調に構成された雑文集。わけわからない上に、ダジャレまで聞かされちゃいます。10/06/11
★
872
ライラエル
ガース・ニクス
古王国物語U。先視の力を授からず苦悩する少女ライラエル。
同族クレアの予言によって旅立ち、サブリエル王妃の息子サムと出会い、悪鬼ネクロマンサーに立ち向かいます。
本当はできる学習能力と美しい容姿に相反し、自己嫌悪から人目を避けるライラエルの姿に、どことなく現代人の陰を垣間見ます。
ライラエルに付き添う犬の精霊と、サムを支える猫のモゲットのコンビが頼もしいです。物語は続巻へ。10/06/22
★★★
873
トゥルー・ビリーヴァー
ヴァージニア・
ユウワー・ウルフ
スラムの街で、未来に向かって駆け出す少女の物語。宗教にはまった親友、受験、失恋。失望の後、希望を持つことでまた全てが良い方向へまわってゆく。
自分を苦しめていたものを許すことで拓けてゆく世界観が清々しいです。ゴールデンカイト賞、マイケル・L・プリンツオナー賞受賞。10/06/25
★★★
874
アンドロイドは
電気羊の夢を見るか?フィリップ・K・ディック
アンドロイドを始末するハンターの物語。本物の生命が高値で取り引きされる悲しい未来に、命の意味が問われます。
何であれ、そこに愛を問えるものが命なのでしょう。ブレードランナーの題で映画化。10/06/30
★☆
875
オーデュボンの祈り
伊坂 幸太郎
完全に独立した島に連れてこられた主人公。
未来を予見する案山子の死をきっかけに「島に足りない何か」を探す旅がはじまります。
その何かが精神論や偶像ではないところに、物語の奥深さを感じました。新潮ミステリー倶楽部賞受賞。10/07/06
★★☆
876
復讐の誓い
ミシェル・ペイヴァー
殺された親友の復讐を誓うトラク。それを心配する少女レン。トラクが我を見失うのではないかと、ずっとはらはらさせられました。
そして、レンとトラクの賢明な判断に回避される、多民族闘争勃発の危機。
子連れとなったウルフや常にトラクの鞘であり続けるレンとの今後にも期待です。10/07/12
★★★
877
アブホーセン
ガース・ニクス
古王国物語最終巻。ついに復活する先滅者を前に、奮い立つアブホーセン陣。
操られ、魔の復活を手助けしてしまう友人サム。本心を明かさない白猫モゲット。どれも、目が離せません。
「どうか世界を元通りに」とい台詞が胸に木霊します。ファンタジィーでは群を抜いた作品でした。
最後までライラエルを守り通した「不評の犬」が捧げる、物語のピリオドに感涙。10/07/20
★★★☆
878
ケストナー
クラウス・コードン
ナチスに抵抗し続けたドイツの作家。エーリヒ・ケストナー。戦争の愚かさに逸早く気づき、警鐘を鳴らし続けます。
若い頃、弱者のために何かできないかと配給や道行く物乞いに声をかけたりしますが失敗。
それも尊いのですが、人助けは人それぞれにベストなやり方があり、彼はそれが執筆活動にあったのだろうと思えたりもしました。
ケストナーの人生を通して、ドイツの歴史をよく知ることができます。ドイツ児童文学賞受賞。10/07/25
★★★☆
879
万能鑑定士Qの事件簿V
松岡圭祐
音を駆使した詐欺事件に立ち向かう莉子。犯人も手口も分かっているのに、なかなか証拠を掴めず。
しかし、莉子の活躍による犯行の妨害で、犯人は追いつめられていきます。ラストの解決シーンは、彼女らしくソフトで少し切なかったです。
今回も莉子の台詞に散りばめられた雑学が面白い。犯人モデルはK室氏か。10/07/27
★★★☆
880
蒼空時雨
綾崎隼
人生をかけて初恋の人に告白する沙矢。そんな彼女を取巻く人々の恋物語。
秘密の恋を貫くが故に無関心な人間を演技せざるをえなかった双子の姉、風夏が好きです。電撃小説選委員奨励賞受賞。10/07/30
★★★☆
881
催眠
松岡圭祐
多重人格の由香を救おうと奔走する臨床心理士嵯峨。緘黙症の小学生をカウンセリングする嵯峨の後輩愛子。
二つの物語が結びついたとき、由香の謎と悲しみが紐解かれます。TVで見る催眠術の誤解を解き、その真実を物語ります。10/08/04
★★★
882
イクバルの闘い
フランチェスコ・ダダモ
パキスタンの絨毯工場で借金のかたに働かされる子供たち。
違法な雇用を罰する法があっても、悪習から抜け出せない搾取者たち。国の現実が見えてきます。
主人に逆らい、夢見る凧の絵を絨毯に織った少女の後姿が忘れられません。10/08/05
★★★
883
万能鑑定士Qの事件簿W
松岡圭祐
古い映画ポスターを廻る連続放火事件。莉子は臨床心理士嵯峨と共に立ち向かいます。
嵯峨の登場による期待した心理戦はあまりないのですが、結末における彼の役割には驚きました。
取巻く映画マニアたちが別の意味で莉子に襲いかかってきます。まったく困ったちゃんだ。10/08/09
★★☆
884
千里眼
松岡圭祐
自衛隊を除隊しカウンセラーになった岬美由紀が宗教テロに立ち向かう。
爆弾処理からF-15による空中戦と忙しない展開が続きます。美由紀の涙に、学術的な分析だけで人の心を推し量るなど、おこがましいことなのだと感じました。10/08/16
★★☆
885
ミッキーマウスの憂鬱
松岡圭祐
夢の国ディズニーランドの舞台裏を描いたフィクション。準社員として雇用された主人公が、正社員との確執を目の当たりにして困惑。
夢を見ていたい人は読まない方よいかも。とはいえ、両社員のあるべき理想も書かれていて、読後感は爽快です。10/08/18
★★★
889
蒼穹の昴(全4巻)
浅田次郎
中国がヨーロッパに侵食されつつある清朝末期。老人の占う希有な未来を辿る文秀と春雲。
文秀は科挙に合格して宰相に。春雲は自ら性器を切って宦官となります。
貧弱な国体を憂う西太后の狭間で、運命の意味を悟る二人。
春雲を支える、都を追われた元宦官たちの哀しい姿が忘れられません。10/09/09
★★★
891
悪人(上・下)
吉田修一
困惑と衝動に人を殺めてしまった男。その彼を好きになってしまった平凡な毎日を送る女性。
必死に取り留めようとした愛の絆の後に、それを紐解いて感想する二人の色の無い言葉が重い。
真実のあり処を問う深さがあります。大佛次郎賞、毎日出版文化賞受賞。10/09/22
★★★☆
892
わたしには家がない
ローラリー・サマー
ハーバードへいった元ホームレスの少女の自伝。宛てなく流離う母を疎ましく思ったり愛したり。
私にはこの母親がそう奇特には見えませんでした。定住を得られず自らも強いて求めなかっただけの女性。
彼女の高い知能は、この母と沢山の本と、知らずに実践していたマインドマップノート法が、その要因ではないかと。10/10/09
★★☆
893
インシテミル
米澤穂信
高額報酬を条件に殺人を推奨する、クローズドサークルもの。
息を呑む疑心暗鬼の心理描写、の割に物語は幾つかの説明が足りないまま終わってしまいました。続編が?10/10/16
★★
894
1Q84 BOOK1
村上春樹
アサシンの青豆と予備校講師の天吾。
二人は1984年を境に歴史が改竄されているのではないかと疑い始めます。
登場人物たちの意味深な言葉、謎の少女ふかえりや、男を釣る女友達など
村上ワールドは健在です。10/10/29
★★★
895
永遠の0
百田尚樹
特攻で死んだ祖父について調べる弟と姉。
祖父の戦友を訪ね歩き、過酷な戦争の実態を知っていきます。
そして、祖父の思いを受け継いだ仲間達の人生が、主人公の元に明かされる。
大量の資料を良い所取りで読んでいるような、綿密な描写が光ります。
ただ、特攻員達の無念があまりに辛くて人に薦めづらいです。10/11/04
★★★☆
896
赤い手袋の奇跡
ギデオンの贈りものカレン・キングズベリー
赤い手袋を巡り、人生を取り戻した男と命を救われた少女の物語。
奇跡は信じる者に訪れることを、せつに訴えています。
自分の病の回復ではなく、男の改心を願った少女。奇跡を得るに値する祈りでした。10/11/07
★★★
897
マギーの約束
赤い手袋の奇蹟カレン・キングズベリー
一緒にいてくれる父親を求め神様に手紙を書くマギー、。
それをきっかけに、ボランティアの男性とマギーの母親との運命がまわりはじめます。
失った愛を今一度信じるように、彼女に語りかけ続けたマギーのダミーパパ。
奇跡は人の心の中に、常にあるんですね。10/11/09
★★★
898
向日葵の咲かない夏
道尾秀介
S君の死体遺棄事件を巡るミステリー。三歳の妹とS君の生まれ変わりの蜘蛛と共に真相に迫る。
同時に、登場人物たちの心の闇がトリック的に明かされていきます。気持ち悪いというのが率直な感想です。10/11/12
★★
899
万能鑑定士Qの事件簿X
松岡圭祐
フランス旅行で再開した旧友の店で食中毒事件が発生。
無理やり着いてきた恩師と供に、莉子が原因究明に挑みます。
犯人が犯行に至った動機。フオアグラの残酷な製法には軽い目眩を覚えました。
ラスト、物を見る目について語る学芸員の会話が莉子の更なる活躍を期待させてくれます。10/11/17
★★★
901
猫物語(黒・白)
西尾維新
羽川翼の怪異猫を彼女から切り離そうとする主人公。陰の感情を怪異として切り離してしまう羽川翼。
憎しみや悲しみから逃れることのリスクを悟り、身を擲って彼女は本当の自分を取り戻そうとします。
負の感情も自分の一部。認めることが大切なんですね。翼を助ける戦場ケ原の毒舌が相変わらず面白かったです。10/12/01
★★★
902
“菜々子さん”の戯曲
高木敦史
教室のトラップで全身不随となってしまった少年。そこに居合わせた菜々子さん。
トラップを仕掛けた犯人は誰なのか。見舞いに通う菜々子さんの言葉は本当なのか。少年は動かない体で考えます。
ヤンデレという評もありますが、私は何とも果敢ない恋物語に思えました。学園小説優秀賞受賞。10/12/05
★★★