BOOK-18
Present BY Kasumi Yahagi


[順不同。これは霞美の個人的な評価です]

本の題名 作者 霞美の一言メモ 5星評価
805 女神 三島由紀夫 短編集。女性の美に執着し、妻と娘にその倒錯的な想いを託す「女神」。 とある少女の誘いにより一夜主となった主人公をその後も待ち続ける、狂った母娘の物語「雛の宿」がお薦め。 若さへの執着や未練が、狂気と正気紙一重の狭間に在ることを実感させられます。09/03/27 ★★★☆
806 ヒトラーに抱きあげられて イルムガルド・A・ハント 実録。当時ヒトラーを支持していたごく一般的な筆者の家庭。 ナチス指示と言う仲良しグループが肥大し凶悪化してゆく様がわかります。 それは、戦争という極論以外にも活かすべく教訓になると言えそうです。09/04/09 ★★☆
807 肩胛骨は翼のなごり デイヴィッド・アーモンド 家の物置小屋に潜んでいた浮浪者のようななりの男、スケルグ。 心臓の弱い生まれたばかりの妹と彼の、二人の存在が生命の躍動を織り成す一風変わった物語です。 彼の持つ翼の意味は、如何様にも理解し得ることができそう。カーネギー賞受賞。09/04/12 ★★★
808 レベッカのお買いもの日記 1 ソフィー・キンセラ 買物依存症のレベッカがその立ち直りを図り、やがては幸せを掴んでゆくシンデレラ物語。 余計な買物への理屈付けは覚えありすぎで笑えます。レベッカに親身に協力するルームメイトや、 口座の差押さえをせずに督促を根気強く続ける担当銀行員のおじさん。 拙い主人公を支える優しい人々に心温まりました。09/04/18 ★★★☆
809 追放されしもの ミシェル・ペイヴァー 「魂喰らい」として仲間から追放されてしまうトラク。そして、頑なまでにトラクを助けようとするレン。狼のウルフ。 お互いが打ち明けられなかった過去の秘密に動揺し、嫉妬し、心揺れるながらも二人と一匹は決して手を離さない。 そんな深い絆が、思春期の複雑な心情と併せて描かれています。正にソウルメイト。09/04/24 ★★☆
810 レベッカのお買いもの日記 2 ソフィー・キンセラ 恋人ルークとNYでの成功に乗り出すレベッカ。 しかし、買物癖をゴシップにされ、恋も仕事もうまくいかなくなります。 改心とアイディアと友情で窮地を脱するレベッカ。大きな私欲、それよりも常に人を優先できる彼女が本当に魅力的です。 レベッカが泣く泣く手放したスカーフを密かに買い戻すルーク、男だ。09/05/13 ★★★
811 きつねのはなし 森見登美彦 ちょっとした物々交換から、終いには大切な人まで奪われかける主人公。 彼女を取り戻すために独り祭りの中に入ってゆくシーンは、妖しく且つ幻想的で絶妙です。 時代は現代ですが、子供に帰って恐ろしい御伽噺を読んでいるかのようでした。09/05/22 ★★☆
812 バカの壁 養老盂司 話が通じないのはバカの壁があるせいと筆者。 それを解く整然とした理論の中に実体験や生徒に対する愚痴もちらほらあって面白いです。 Yは表現。Xは体験。aは感性や感情で、Y=aXと人を定義。 なるほどですが、Yが必ずしも数的性質を持つかについては疑問です。09/05/26 ★★☆
813 太陽の塔 森見登美彦 女性との縁が皆無な京都の学生がそのグレイなパワーを間違った方向に向けて大暴れ。終始笑わせてくれます。 その笑いは伏線なのか、ふられた彼女との、太陽の塔でのラストシーンはなんとも眩かったです。 日本ファンタジーノベル大賞受賞。09/06/01 ★★★
814 レベッカのお買いもの日記 3 ソフィー・キンセラ 結婚式は華やかなNYか故郷英国の片田舎かで迷うレベッカ。 夢と現実の狭間で、結婚式とは何かを何度も見つめなおします。 今回もレベッカを支える多くの優しい人たちが印象に深い。 流行らぬ母の古いウエディングドレスを受け入れる、レベッカの心の変化に涙です。09/06/08 ★★★☆
815 女ざかり 丸谷才一 女性の権利を社説で説いた女性記者が各界の批判より窮地に陥ってしまう。 恋人や女家族と協力しそれに立ち向かって行きます。 正義や理論の他、女であることを武器にしているところが何とも絶妙。09/06/24 ★★
816 バスジャック 三崎亜記 短編集。愛する人の死を受け入れるとは何かを学ぶ少女の物語「送りの夏」。 意味不明な二階扉を設置するはめになった「二階扉をつけてください」がお薦めです。 その二階扉の使い道が判ると同時に発生する事故。ぞっとしました。09/06/30 ★★☆
817 ラン 森絵都 失った家族との再会を求めて走り出す少女環。その目的はいつしか、過去への逃避行ではなく 生きる力を身に着けることそのものに置換わって行きます。霊界と言う非現実的な世界を背景に、 生きる者はやはりここに生きるしかなく、過去へ向かって走ることはできないのだということを実感します。09/07/12 ★★☆
818 魔王 伊坂幸太郎 念じたとおりに人の言葉を操る主人公。とある政治家の滅亡を正義と信じて走り出す。 正義を魔力で貫こうとする、その異様さに思わず身を引きます。09/07/15 ★★
819 悪夢のエレベーター 木下半太 突然止まったエレベータに閉じ込められた四人。ひとりひとりの正体が明かされて行くにつれ 事故は事件へと急変していきます。然る人の幸せを願って狂気に走った女性、それは本当に精神病故の行動なのか。 ひとえには理解し得ない深さがあります。09/07/17 ★★★
820 悪夢の観覧車 木下半太 観覧車に予告された爆弾テロ。事態が進むにつれ、各籠の中で狼狽する被害者たちの事情が一本の線に繋がれていきます。 大活躍する一見天然ボケの妻に、リアルに目を覚ます人も少なくないかも。09/07/23 ★★★
821 悪夢のドライブ 木下半太 売れないお笑い芸人の運び屋と、詐欺師を目指す少女。その少女の一家を崩壊させた詐欺師の女。 マフィアのダイヤを巡り、勝者を決する物語が始まります。読んで思うに、詐欺は一番大きな 土台を作った人が勝つんですね。一家の自殺より、既に勝負は決していたのかも知れません。09/07/30 ★★☆
822 東京物語 奥田英朗 1980年代を生きる青年の物語。Wデッキや江川やバブル。その年代を代表するキーと、 当時の将来を思う気持ちに今を鑑みます。淡い恋を描いた「レモン」がお薦め。09/08/04 ★★
823 イヌの気持ちが
 おもしろいほどわかる本
イヌとの暮らしを
 楽しむ会
犬の行動理由を数多く紹介。飼犬であろうと、犬は犬の世界を生きていることがよくわかります。 悲しかったのは、愛情を欲する幼少期をガラスケースの中で過ごしているがために起こす犬の行動。考えるべき重要な問題だと思いました。09/08/06 ★★★
824 カンニング少女 黒田研二 姉の死の真相を突き止めようと、姉の在校していた有名大学へ入学しようと必死になる妹。 友人の力を借りて合格すべく様々な手を試みます。その謎に隠された小さな誤解と優しさが暖かくも切なかったです。 にしても、下敷きにQRコードを埋め込むという発想はすごい。09/08/13 ★★★
825 ネコの気持ちが
 おもしろいほどわかる本
ネコとの暮らしを
楽しむ会
ネコの行動パターンを分析した本。未だ解明されていない「ネコはなぜ集会するか」。 本書も謎としていますが、わからない方が素敵な気もしますね。人が入って行くべきではない、猫だけのテリトリ。09/08/14 ★★☆
826 キング牧師とマルコムX 上坂 昇 人種差別問題において非暴力を唱えるキングと、暴力には断固抵抗すべきと訴えるマルコム。 マルコムはキングの思想に歩み寄りをみせたところで殺害され、キングもその直後に同じ運命を辿ります。 目的同じくも言動の相反した二人。しかし、私にはふたりがひとりに見えたりもしました。09/08/19 ★★
827 ベートーベン パム・ブラウン 変わり者のレッテルを背景に、本当は孤独に苦しんできたベートーベン。 何度も引越しを繰返すような疑心暗鬼の中で、言い換えれば彼はそれでも人を愛したと言えるのかも知れません。 聴覚を失った指揮者に贈られる喝采。奏者の一人が、それに気づかせてあげるシーンは感慨深いです。09/08/22 ★★★
828 ムンクの時代 三木宮彦 スウェーデンの画家、ムンクの一生。優しい母や姉に先立たれ、自身も病弱故死に対する恐怖が 人一倍強かったムンク。「叫び」など前期に描かれた作品の方が、晩年の落ち着いた作品よりも 高評価というのは皮肉なものです。独身ながらも賑やかな晩年を過ごした80歳のムンク。 死の直前に言った彼の言葉は、そんな彼の心のうちを物語っていました。「こんなに長生きするとは思っていなかったよ」09/08/27 ★★★
829 モモ ミヒャエル・エンデ 休息やゆとりを人生における無駄な時間と、人々を洗脳して行く時間泥棒たち。 決められたこと意外には何もできなくなってゆく人々の姿は、仕事に忙殺される現代人への警告にも聞こえます。 そして、モモと共に取り戻した時間で私たちはどんな素敵なことができるのか。可能性に想いを馳せます。09/09/03 ★★★☆
830 数学ガール 結城浩 主人公と数学ガールミルカさんが只管数式を読み解いていく。ほとんど数式で埋め尽くされた本です。 難しいし専門的過ぎてつまらないという書評もできますが、見方を変えて、知らなかった数式記号の意味を知るというだけでもなかなかに面白い。 数学に熱中する人の気持ちが少しだけわかった気がします。09/09/13 ★★★
831 プライドと情熱
 ライス国務長官物語
アントニア・フェリックス 黒人女性初の国務長官を勤めたコンディことコンドリーザ・ライス。 天才と称される彼女ですが本書を読むに彼女は至って普通の人で 進路や婚期やその他諸々についても私たちと同じように悩みながら生きていました。 彼女の成功は黒人としての差別を感じさせないよう、その環境を作り続けた両親の力も大きそうです。09/09/23 ★★
832 数学ガール
 フェルマーの最終定理
結城浩 フェルマーの最終定理を紐解くための、事前知識を前半に折込 後半は定理説明のキーとなるモジュラー曲線の一部を実際に解いて見せてくれます。 フェルマーを知りたいけれど何のとっかかりもない、という人にはお薦め。前作同様、主人公のモテっぷりもすごい。09/10/08 ★★★
833 葉桜が来た夏 夏海公司 宇宙人アポストリと人間の共存を描く。主人公とアポストリの葉桜が互いの存在を理解し合ってゆく物語ですが 心に残ったのは友情に焦がれながらも互いの平和を信じることができなかった岡町灯日という少女のこと。 そのまま命を落とす彼女が可愛そうでなりませんでした。電撃小説大賞選考委員奨励賞。09/10/13 ★★★
834 ナイト・ガーデニング E・L・スワン 庭師の50代男性と脳梗塞で半身不随となった60代女性の恋愛を描く。 様々な問題が二人にふりかかりますが、年相応に熟成された恋愛に有無を言わさぬ物を感じました。死が二人を別つその終わりさえも。09/10/16 ★★★
835 クビキリサイクル 西尾維新 無人島で繰り広げられる首切り密室殺人。人生を乗っ取るための策略。 他人に成りすまし人生を奪うことが、一人の名の基に繰り返されていたら。 面白い発想ですが、それでも人は他人にはなれはしないと言う持論が先走りました。 シリーズの持味のようですが、個人的に無関心な主人公の戯言がメンドクサイ。09/10/28 ★★☆
836 クビシメロマンチスト 西尾維新 友達であることが嫉妬による殺意の対象にならない、はずはないという哀れな事件。 途中、主人公の過ぎる戯言にイラっとしました。二次複線の話術による殺人は、アクロイド殺しの探偵ポアロを想像させます。09/11/05 ★☆
837 男道 清原和博 現役を引退するまでの筆者の自伝。西武時代の栄光と巨人時代の挫折。球界の利害関係。親友との確執。両親の思い。 ありのままに語られた彼の野球人生に心打たれました。歩くこともままならない膝で入った最後の打席に号泣です。09/11/10 ★★★★
839 化物語(上・下) 西尾維新 憑かれた少女達を救って歩く主人公。笑える本ですが、戯言の中に見え隠れする彼女たちの悲しみに、 ふと心引き込まれます。お母さんの家を探し続ける少女の物語「まよいマイマイ」に涙です。09/11/26 ★★★☆
840 もう一度、投げたかった 山登義明/
大古滋久
広島カープのストッパー。津田恒美の生涯を追ったドキュメンタリー。気が小さいからこそ「弱気は最大の敵」と 己に言い聞かせてマウンドに立ったその姿は、偉大であり、どこか身近でもあります。 病魔に立ち向かう恒美とそれを支え続けた妻。二人は本当の意味で、喜びも苦しみも分かち合って生きていました。09/12/01 ★★★
841 赤い指 東野圭吾 少女趣味より子供を殺害してしまったダメ息子とその罪を庇う夫婦。 痴呆の実母を犯人に仕立て上げようとします。そして、彼女の取った行動とは。 痴呆とされている人の真実。その一例を垣間見ます。09/12/07 ★★★
842 パパとムスメの7日間 五十嵐貴久 父と娘が入替わってしまうコメディタッチのどたばた劇。 物語は王道ですが、ラストで言葉少なに分かり合う親子の姿には深いものを感じました。09/12/12 ★★★
843 告白 湊かなえ 教師の娘が生徒の小児的殺意によって殺されてしまう。登場人物たちの本音が錯綜する中で、女教師の静かな復讐が始まります。 微笑と友情の裏に隠された憎悪がとにかく痛いです。本屋大賞受賞。09/12/18 ★★★☆
844 人魚の涙 天使の翼 フランチェスカ・
 リア・ブロック
美しい母とその妻しか目に入らない父の狭間で、荒んでしまった娘エコー。 背中に翼をつけた少年や様々な人々との出会いの中で、自身と向かい合ってゆきます。 筆者特有の散文的な語りは読むのに難有りですが、夕焼けに深呼吸するような不思議な読後感がありました。09/12/26 ★★☆
845 ムーンウォーク マイケル・ジャクソン 幼少からアルバム「バッド」を発表する時期までの自伝。 良識的なありのままの彼を知ることができます。次の言葉がとても印象的でした。 「成功は確実に人を孤独にします。当時僕は本当に孤独で誰でもいいから僕を知らない人と友達になりたくて、 よく当ても無く近所をさ迷い歩きました」10/01/03 ★★☆
846 イサナ 龍宮の闘いへ たつみや章 異国の漂流者クレと龍神のヒコナ、少女イサナがシャチ一族との決戦に挑む。 壮烈な闘いに揺れる恋心。ヒコナを想うきみの宮の姫が可憐です。 人と神を密接に描きつつもどこか一線をひいた絶妙な世界観。子供騙しのない大人も読める児童書です。10/01/10 ★★★
849 とある飛空士への恋歌
 (1〜3巻)
犬村小六 革命に両親を殺され、民家に引き取られた王子が飛空士を目指す。 多くの仲間と出会い、そして戦闘で仲間を失うまでの展開で続編待ちです。 主人公と幼馴染のアリー、主人公の知らない仇クレアに待ち受ける運命に、哀しい予感がします。 それにしても中盤アリーメンの話でひっぱりすぎ。10/01/28 ★★
850 傷物語 西尾維新 主人公が何故ヴァンパイアになったかまでを描いた、化物語の前日譚。 人と怪異の相容れぬ関係と、何千年も生きるヴァンパイアの孤独があまりに切なかったです。10/02/06 ★★★
851 夜は短し歩けよ乙女 森見登美彦 恋焦がれし恋人を求め京都の町を徘徊する青年の奇想天外な物語。 途中、著者特有の戯言口調にくどさを感じてしまったのが残念です。10/02/13 ★☆

Last Up Data : 2010/02/13

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