BOOK-17
Present BY Kasumi Yahagi


[順不同。これは霞美の個人的な評価です]

本の題名 作者 霞美の一言メモ 5星評価
746 世なおしトークあれこれ 美輪明宏 彼の考えは特別な事と言うより常識で、それが崇高な良識と成り得るまでに廃退してしまったこの国の道徳を悲しく思いました。 日本はマネーゲームなどやめて文化を大切にするべきと、私もそう思います。08/05/15 ★★☆
747 ナチ将校の妻 エーディット
 ハーン・ベア
第二次大戦下ドイツ。SSの手を逃れるためにユダヤ人であることを隠し続け迫害を生抜いた女性の物語。 ナチス将校との結婚は純愛ですが、夫はまるで彼女を救うためだけに現れ去っていった、風のような存在に見えました。 生活のためにSSに入るなど、当時の国民の事情にもよく触れています。08/05/26 ★★★
748 虹果て村の秘密 有栖川有栖 道路の建築を巡り起った殺人事件。刑事希望の少女と推理小説化希望の少年がこの謎に挑みます。 虹は綺麗だけれどいつかは消えてしまうもの。いつまでも眺めているものではない。 旧日本軍の埋蔵金に目が眩んだ犯人にのしかかるこの言葉が、多くを語ります。08/05/30 ★★
749 きっと天使だよ ミーノ・ミラーニ イタリアで戦災孤児だった少年が、富豪となりアフリカの内戦孤児を助ける立場に。 両軍の軋轢になかなか平穏を保つことのできない施設。 やがて訪れる大きな危機の回避に、平和は奇跡であることを悟ります。 何故戦争は起こるのかに、一歩踏み込んだ児童書です。チェント賞、リブリ・インフィニティー賞、受賞。08/05/31 ★★★
750 中等部超能力戦争 藤野千夜 嫉妬心が電球を割る。そんなプチ超能力を持ったクラスメイトと友情を育んでゆく主人公。 友情の瓦解と共に、主人公は同じ力を自分の中にも見出します。実際、私達の小さな嫉妬や苛立ちは形を変えて放電されている。 何ともリアルなミステリーでした。08/06/04 ★★★
751 ボロボロになった人へ リリー・フランキー 短編集。人生を変えるきっかけを得ても、人の本質は変わらない。しかし、そこに諦めを見たくはない。 孤島での現実逃避「おさびし島」と、ゴミ捨て場で女を拾い今を変えようとした三人の少年の話 「Little baby nothing」にそう感じました。08/06/18 ★★
752 銀のキス アネット・カーティス
 クラウス
少女と吸血鬼。それぞれの抱える孤独が二人を引き合わせてゆく物語。 永久の命に苦しむ吸血鬼が儚い。また、自分を知って欲しい願うその渇愛に 人間とそれ以外の者の差がわからなくなりますね。ベストブックスフォーヤングアダルト他多数受賞。08/06/21 ★★☆
753 時の旅人 アリスン・アトリー 19世紀初頭を生きるイギリスの少女が15世紀にタイムトリップ。 イギリスに亡命したスコットランド王妃メアリー・スチュアートの救出に加わります。 歴史の通り彼女を助けられず絶望する領主アンソニー。叱咤する婦人の言葉が耳に残りました。 「まだ終わっていません。自分を救うのです」08/06/29 ★★
754 透明人間の納屋 島田荘司 工作員の男が夢描いた理想郷。主人公の少年と母親との幸せな家庭。 そして、彼を打ち砕いた悲惨な現実。ミステリーの中枢に北朝鮮問題を 叙情的に描いた、深くて社会派な児童書です。08/07/04 ★★★
755 キーリ 壁井ユカコ 霊視能力を持つ少女と不死の青年との不思議な旅。少女の霊視を通して死者達の人生の一部をなぞっていきます。 芸と無礼を勘違いされ殺されたピエロの話が切ないです。電撃ゲーム小説大賞、大賞受賞。08/07/16 ★★
756 ポケットに名言を 寺山修司 筆者が日々メモってきた名言をここに紹介。堅実な言葉が多い気がします。筆者の性格かな。08/07/18 ★★
757 痛快!寂聴仏教塾 瀬戸内寂聴 出家の体験談から釈迦の一生、般若心経の解説など分かりやすく講義。 宗派に捉われない仏教の常識がよく分かります。飽きさせない文章運びなど流石は作家さん。08/07/19 ★★★
758 クビツリハイスクール 西尾維新 スパイ養成学校みたいな所から少女を連れ出すべく潜入する主人公。 密室殺人と刺客の正体にカラクリを置いたミステリーです。 狂気や道徳の描写がアニメ的ですがコミカルではない一風変わった作風です。08/07/24
759 少し変わった子あります 森博嗣 店の場所と同席する女性が毎回変わる謎の会席料理店。 向かいに座る女性と自分との不思議な状況や関係についていろいろ考察する主人公。 人間関係の接点を探るその心理に不思議な既視感を覚えます。08/07/30 ★★★
760 つっこみ力 パオロ・マッツァリーノ 人間正しさだけではついてこないことをユーモアに解説。 メディアや統計の正しい見方を具体例を上げながら教えてくれます。 失業率と自殺数をすぐに結びつけるヘボ学者に物申すと筆者。天晴れです。08/08/04 ★★★
761 わたしがちいさかったときに 著・長田新
画・岩崎ちひろ
原爆の体験記。被爆当時の子供たちが書いたもので、あるがままの体験がそこに綴られています。 「学校のみんなと町が燃えているのを見ました。先生も友達も誰も口を開きませんでした」08/08/05 ★★★
762 すべてがFになる 森博嗣 PCウィルス、トロイの木馬にヒントを得た完全犯罪。 謎の男たちと消えて行く真賀田博士の姿はハンニバル・レクター博士みたいでした。 題名のFとは16進数。SEさんは仕事を思い出しちゃう感じな本だ。08/08/15 ★★★
763 メンデルスゾーンとアンデルセン 中野京子 スウェーデンのソプラノ歌手リンドに恋するデンマークの童話作家アンデルセン。 ドイツのユダヤ人作曲家メンデルスゾーンに恋するリンド。 その愛に答えることのできないメンデルスゾーン。小説のような三人の人生を辿ります。 また、彼らの人生を知って名声イコール幸福ではないのだということを改めて思いました。08/08/21 ★★★
764 白蝶花 宮木あや子 里子や二号さんが珍しくなかった大正から昭和初期を生きる女性達の数奇な運命を描きます。 姉妹、夫婦、主人にメイド。傷つけ合いながらも惹かれあう人の心。些か百合寄りです。08/08/27 ★★★
771 三国志(1〜7巻) 宮城谷昌光 後漢より三国時代へ。曹操が魏王として起ちあがるところで七巻読了。 正史は演義とは違った、薄情な劉備や情け深い曹操など、その実像が面白いです。 中でも劉備の子を救う趙雲子龍の武勇は目をひきます。演義で完璧超人なのも頷けますね。08/10/16 ★★★
772 祈祷師の娘 中脇初枝 祈祷師の娘として、家業をからかわれたり、霊感が備わっていないことに劣等感を覚えたりと、 現実の問題を俎上にのせつつ少女の青春を描きます。 そんな呪縛から逃れようとする彼らの思いは、形は違うにせよ俗世の私たちにも通ずるものがあって。 そこに境はない、みんな一緒なのだと思いました。08/10/18 ★★☆
773 トルストイの民話 トルストイ 短編集。清貧や愛を重んずる話が多く、それを実践しようとした筆者の意志を感じます。 憎しみは人を不幸にしかしないと説いた「火は放っておけば消せない」がお気に入りです。 悟りの境地にあり過ぎちゃって海の上を滑る老人達「三人の隠者」。ちょっと悟りすぎた。08/10/22 ★★☆
774 アヒルと鴨のコインロッカー 伊坂幸太郎 本屋を襲おうと主人公に持ちかける隣人。その奇特な計画の全貌が、登場人物達の悲しい過去と共に暴かれていきます。 のうのうと生きている犯罪者への憤り。制裁に走る聖者の悲しい愚行。 「アヒルと鴨は洋と和の違い」題はブータン人の友人の言葉です。吉川英治文学新人賞受賞。08/10/28 ★★☆
775 スローグッドバイ 石田衣良 様々な恋模様を描いた短編集。主題の「スローグッドバイ」以外は明るい気分を運んでくれます。 パソコンで若い女性に成りすました老女の物語「ローマンホリデイ」。シナリオは王道ですが私は好きです。 心豊かなお婆さんの台詞が何所となく頭に残っています。「年を取ったって、何も悟りはしないものよ」08/10/30 ★★★
776 扉の外 土橋真二郎 密室に閉じ込められた生徒達が、謎の監視者が提示するルールの元に互いの生存をかけて頭脳戦を始めます。 その状況や心境に書き足りなさも感じましたが、これまでの息苦しさを掃う幻想的なラストがそれを由としてしまう。 中々に異色な作品でした。映画CUBEによく似ていますね。電撃小説大賞金賞。08/11/01 ★★★☆
777 少女怪談 藤野千夜 短編集。奇怪な出来事が思春期の少女特有の奇行と重なり絶妙です。 友達の生霊がちょっかいを出す物語も、多感なこの時期の私達には普遍的だったかもと可笑しく思いました。08/11/04 ★★
778 太陽の子 灰谷健次郎 戦後30年目の神戸で働く沖縄の人々。未だ終わらぬ戦争の意味を読者に問いかけます。 殺し合いに匹敵する戦後差別の醜悪さこそ、学ぶべき戦争の姿なのかも知れません。 当時の沖縄の人は「かわいそう」のかわりに、心が痛むの意「肝苦(ちむぐる)さ」という言葉を使うとか。何て深い。 08/11/07 ★★★
779 カカオ80%の夏 永井するみ 「レンタル孫」のボランティアにはまった友人を救うべく奔走する主人公。 善を利用した犯罪は、現代の病理をついている所があります。 お金で成立させた人間関係に人は満足する?主人公と同じ疑問が湧きます。08/11/08 ★★
780 たったひとつの冴えたやりかた ジェイムズ・ティプ
 トリー・ジュニア
人類を滅ぼす病原菌を食い止めるべく太陽に突っ込む少女の勇気のSF物語。 それが、たった一つの冴えたやり方。主題が胸に響きます。 スケールの割にページ数に比例した物足りなさを感じてしまうのが残念。08/11/10 ★☆
782 ハリー・ポッターと
 死の秘宝(上・下)
J・K・ローリング 最終巻。全ての謎が解き明かされる中でも、特にスネイプの過去が私の目を引きました。 恋焦がれた人の幻影を追うかのように、その想いに忠実であった彼の人生。切ない想いが胸を刺します。 私的には第二の主役でした。ポッターはハーマイオニーとくっつくものと思ってましたが…何か半ライス大盛みたいなしっくり感だ。08/11/22 ★★★
790 三国志(全8巻) 吉川英治 前半は劉備、後半は孔明をメインに描く三国志。五虎将最後の将軍老いた趙雲が、今は無き関羽と張飛の子、 関興と張苞に助けられるシーンや、劉備に先立たれた孔明の深い孤独など、世代の変遷に儚さを感じます。 三国時代の後、孔明知る老人の言葉がまた深いです。 「孔明殿はこれといった特徴もない、どこにでもいそうなごく普通の方です。ですが、今更ながら思うのです。 あのような人はどこを探してもいないであろうと」09/01/11 ★★★☆
791 チェ・ゲバラの遥かな旅 戸井十月 アルゼンチン人でありながらキューバ革命の立役者となったゲバラの人生。 暴政への抵抗は、現在耳にするゲリラと言う言葉をまた違う風に響かせます。 新たな革命に身を投じボリビアで落命するゲバラ。彼は望まないでしょうが、 キューバに留まりカストロと良政を敷くもう一つの人生の可能性を思うと、切なくなります。09/01/20 ★★★☆
792 手紙 東野圭吾 差別と偏見の果てに、家族を守るため服役中の兄との決別を決意する主人公。 一つの答えとして頷けますが、本当にそれで良いのか否かはわかりません。 ただ、人を殺めることの罪の重さを深く感じました。09/01/23 ★★★
793 草の花 福永武彦 兄と妹その二人に恋する男性の物語。彼は私に兄の幻影を見ていたのだと語る妹の遣り切れない女心が、複雑にして廉潔です。 09/01/28 ★★☆
794 銀齢の果て 筒井康隆 老人版バトルロワイヤル。老い故の思い意外に酌むべく物語もなく、些か諧謔の過ぎる本でした。09/01/30
795 反社会学講座 パオロ・マッツァリーノ 少子化や失業に対する統計のトリックを暴く。社会の様々な問題に対しその本質を捉え皮肉とユーモアを交えて講義します。 確かに、年金問題を少子化の話に摩り替えられてはたまったものではないです。09/02/07 ★★★
796 フェルマーの最終定理 サイモン・シン 「Xのn乗+Yのn乗=Zのn乗においてn>=3の時、これが成り立たないことを証明せよ」 16世紀にフェルマーが与えた命題は、3世紀を経てようやく証明に至ります。 オイラー、ソフィ、ラメ、クンマー、ガロア、谷山&志村、そして証明を完成させたワイルズ。 リレーのように走駆する数学者達の人生は壮絶にして深く儚い。 難解な数論の世界を解りやすく画いた一冊です。何だか頭よくなった気がするー。09/02/17 ★★★
797 見知らぬ妻へ 浅田次郎 短編集。これ以上の贅沢はないと思って買った団地。時と共に寂れてゆくその家に、老いた夫婦が物語る「うたかた」に多くを思いました。 自分もマンションだったからかな。09/02/19 ★★
798 とある飛空士への追憶 犬村小六 嫁入りの皇女を隣国へ送り届ける飛行士の物語。ローマの休日のような身分差や冒険において、惹かれ合うふたつの心に目が離せません。 ライトノベルですが会計検査資料書評が掃き溜めに鶴と高評価。 文学的価値を問うものではありませんが、読んで頷ける面白さがありました。09/02/24 ★★★☆
799 ビューティフル・ボーイ トニー・パーソンズ 離婚を機に職や親権を失い人生が瓦解してゆく主人公。不恰好ながらも自分の幸せを諦めないその姿には、共感できる滑稽さと涙があります。 そして、幸せとは何かを手放すことに見出した主人公の答えに、正しい人生を望む切なる思いを感じました。ブック・オブ・ザ・イヤー受賞。09/03/02 ★★★
800 めぐりあう時間たち マイケル・カニンガム 小説「ダロウェイ夫人」に関係する3人の女性達が時を超えて各々の人生を見つめ直す。 彼女達の普遍的な空虚さ意外に然したるテーマが見えてきませんでした。理解には相応の歳が必要か。ピュリッツア賞受賞。09/03/08
801 架空の球を追う 森絵都 短編集。誤解や喧嘩にも断ち切れぬ姉妹の仲を描いた「二人姉妹」 元ヤンとワケあり御曹司の新婚旅行を描いた「ドバイ@建設中」がお薦め。 前者のラストには私の好きな筆者らしさが出ていてよかったです。09/03/11 ★★★
802 祈り 美智子皇后 宮原安春 弱者に尽くす彼女の思いがよくわかる。なるべくして皇后になった方と思えました。 失声するまで彼女を攻撃しつづけたマスコミや宮内庁旧臣派はサイアク。入内に悩む彼女に言った皇太子の言葉が素敵です。 「自分は境遇から人に対して配慮が足りないという懸念があります。思いやりの深いあなたに補ってもらえたなら」09/03/16 ★★
803 昭和天皇 三十二の佳話 加瀬英明 広く知られた裕仁天皇の人柄ですが、無私無欲を貫き常に国民を思う心には武士道的な精悍さすら感じました。 戦時中。軍部との難しい関係の中で、昭和天皇なりの戦いが推察できます。 「皇室や私のことなど心配しなくてよい。すぐにこの戦争をやめよう」「マッカーサ殿。私はどうなってもいい。国民を助けて欲しい」09/03/19 ★★☆
804 火を喰う者たち デイヴィッド・
 アーモンド
市場で出会った火喰いの大道芸人、帰還兵のマクナルティ。キューバ危機における戦争の足音を後遺症的に恐れるマクナルティ。 彼を救うべく少年の家族と祈り。核の脅威が侵蝕する日常の中に、戦争と裏表一体にある平和の奇跡が見えてきます。 ボストングローブ・ホーンブック賞他受賞。2009/03/21 ★★★

Last Up Data : 2009/03/25

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