Present BY Kasumi Yahagi
数
本の題名
作者
霞美の一言メモ
5星評価
698
プラネタリウム
梨屋アリエ
プラネタリウムをキーにした短編集。性病感染と言う事態に、愛する人から愛されたかったと言う
至純な気持ちを親に理解してもらえない姉。家を飛び出し、外の世界に生き方を見つけようとした
姉の気持ちを察した「水に棲む」が印象に深いです。
時に人は、我が子を一人の人間として見られなくなるのでしょうか。08/01/04
★★★
699
ブループリント
シャルロッテ・ケルナー
短命を悟ったピアニストの女性が自分の人生を託すためにクローンを出産。
どう生きてもこれは自分の人生ではないと思い悩む、子の葛藤。
魂までもがクローン化されるわけではないのだと実感しました。
クローンと言う言葉自体が、当人にとっては差別用語なのですね。08/01/07
★★★
700
そのぬくもりはきえない
岩瀬成子
犬の散歩を頼まれたおばさんの家で不思議な少年と出会う主人公。
実はある男性の少年期の分身で、少女は少年との交流に自由な安らぎを得ていきます。
そんな我が子に、独善的な考えを止め真の理解を示そうとする母親。
自由でいようとする子供と、型通りになろうとする大人の、静かな葛藤を感じました。08/01/09
★★★
701
ホームレス中学生
田村裕
中学の時、差押さえで家を失った筆者の実録。兄と姉も野外での生活を強いられる事になります。
三人を救った友達の家族との出会い。極貧ながらも筆者の生活を支えた、まだ学生の兄と姉。
読むに平静ではいられないものがあります。どんなに空腹でも万引きをしなかったこと。自分達を見捨てた父親を憎まなかったこと。
この二つのことが、彼を成功へと導いている気がします。08/01/11
★★★☆
702
キノの旅]T
時雨沢恵一
文明の力を知らない国の人が、フィルムの入っていないカメラを『ボタンを押すとその景色が心に残される機械』と解釈した「写真の国」が良いです。
カメラの真意をついているかのようですね。08/01/13
★★☆
703
クロニクル千古の闇3
魂食らいミシェル・ペイバー
さらわれた狼のウルフを救うため、極寒の地へ足を踏み入れるトラクとレン。
時には意見を違わしながらも二人は前に進み、生贄にされかけたウルフを救って無事森への帰還を果たします。
土地様々な決まりや掟に触れ、決してひとりでは生きられない、時代の凄まじさを感じました。レンとの冒険の今後に期待です。08/01/17
★★☆
704
メディエータ3
メグ・キャボット
本編最終巻。彼(幽霊)とスザンナの出会いを妨げるべく、過去に戻って恋敵の命を救おうとするポール。追うスザンナ。
歴史の通りに彼が死ねば私は霊の彼と出会える。しかし、彼女は彼を救わずにはいられなくなります。
正しい行いは辛いことの方が多いのかも知れない。その分、その報われが嬉しかったです。08/01/21
★★★
705
ヘヴンアイズ
デイヴィッド・アーモンド
孤児院を脱走し筏で川を下る三人。漕ぎついた沼で三人が出会ったのは、水かきのある少女と不思議な老人。
そして三人は少女を現実の世界へと連れ帰ります。生と死のコンストラクトが読者をトランス状態にするような不思議な本で、
ゴシックな雰囲気がしばらく頭から離れませんでした。兎に角魅惑的。08/01/22
★★★☆
706
君はフィクション
中島らも
短編集。恐怖のあまり最後まで見ることのできない映画「コルトナの亡霊」が絶妙でした。
人々の噂と反応それのみで、映画の内容を読者の脳裏にかきたてます。08/01/23
★★
707
レイン
吉野匠
時代は中世群雄割拠の時、ドラゴンスレイヤーのレインが義理人情で軍と戦うある種の英雄話です。
無鉄砲と見せかけてそうじゃない、みたいな主人公。RPGのシナリオを読んでいるような感覚でした。08/01/25
★★
708
隣の女
向田邦子
短編集。久しく忘れていた女としての自覚を取り戻してゆく女性達の物語。別れてしまったけれど私は変われた。
外で会う夫に異性を感じた。恋によるその心の変化に、ある種の既視感を覚えます。08/01/29
★★
709
いつか、ふたりは二匹
西澤保彦
猫に乗移って児童殺傷事件の真相を探る主人公の少年。そして、多くの犠牲の上に解決された事件。
分身となってくれた猫を失い、落胆する彼に問いかける、親友の犬の言葉が胸にしみました。
『いつか人は、全ての人とお別れしなければならないの。だから、せめてそれまで、一緒にいましょう』08/01/31
★★★
710
メディエータ0
メグ・キャボット
主人公スーズとジェシーが出会うまでの物語。ですが、ジェシーとの絡みはあまりなく無鉄砲なスーズのやり方が目をひく一冊です。
ブードゥー教で強制除霊って、今回のスーズは特に困ったちゃんだ。08/02/03
★★
711
雨恋
松尾由美
自分の死因を調べて欲しいと願い出る少女の霊。途中、そんな過去への興味を失い、主人公との今を追おうとする彼女。
やがて、彼が彼女の姿を始めて見た時、彼女は既に手の届かない所へ行こうとしていた。その刹那に結ばれる二つの心が儚い物語です。08/02/06
★★★
712
動物園の鳥
坂木司
引きこもり探偵鳥井と坂木の物語最終章。猫の虐待事件を皮切りに鳥井の荒療治に踏み切る坂木の決断に涙。
友情とは、お互いが成長すべく変化を受け入れる勇気にあるのかも知れませんね。08/02/07
★★
713
蹴りたい背中
綿矢りさ
人付き合いの苦手な女子高生が、同じクラスのアイドルおたくと縁あって遊ぶように。
その無垢な心をポンと足の裏で小突いてやりたい。そんな、主人公の気持に何気なく共感を得てしまいます。芥川賞受賞。08/02/08
★☆
714
暗殺の天使
安達正勝
フランス恐怖政治時代。完全懲悪主義のマラーを暗殺した美少女シャルロット・コルデの生涯。
古代英雄に自分を重ね、万を救うために一人を殺したと言い放ち、刑場で自分の掛かるギロチンを見たいな見たいなと
ねだるその姿はまさに夢見っ子のそれで、彼女の人生をどう解釈したらよいのか迷う程でした。08/02/11
★★☆
715
モルヒネ
安達千夏
余命幾許も無い元彼が医師となった彼女の元を訪れる。救いを求めるでもなく彼女に触れた後、また何処へなりと去って行く彼。
何にせよ一人ではいられない彼の孤独感が目を引く薄暗い感想を持ちました。08/02/12
★★
716
スターガール
ジェリー・スピネッリ
人の誕生日にはウクレレを手に祝福してまわる変わり者、スターガール。少女の奇行に人は惹かれ、都合によっては嫌悪する。
「彼女よりも自分達の方が孤独だということに、皆が気づいてしまった」そんな、個人と集団の心理と性質が深く描かれています。
それにしても、自分を生きるスターガールは魅力的過ぎる。08/02/15
★★★☆
717
夏に抱かれて
サガン
ドイツ占領下のフランスを背景に、レジスタンスの夫婦とその友人の三角関係を描きます。
情事に心の置き所を失い、ラストでそれを取り戻すためかゲリラ活動に身を投じる婦人。
寂寞とした読後感でした。08/02/18
★☆
718
ぼくと未来屋の夏
はやみねかおる
未来予知を謳うおかしな男と少年の物語。夏休みの自由研究で村の数々の伝説を謎と解いていきます。
中でも旧陸軍毒ガス実験の話が恐ろしい。予知云々が本筋とあまり絡んでない所が、ちょっと残念。08/02/19
★★
719
空中ブランコ
奥田英朗
短編集。トンデモ精神科医、伊良部一郎シリーズ第二段。無垢な伊良部と接する事で不安の原因を自分の中に発見して行く患者達。
可笑しいだけでなく考えさせられるものもあります。ストレス解消のためと町中の看板に悪戯して歩く「義父のヅラ」が特に笑えました。
「空中ブランコ」で直木賞受賞。08/02/21
★★★☆
720
ゾラ・一撃・さようなら
森博嗣
依頼者の女性と車椅子の母親によって、謎の殺し屋ゾラと一騎打ちになる主人公の探偵。
依頼者の抱える追うに追いきれぬ複雑な事情に、母親を庇って生きる娘の物静かさがあまりに印象的な本でした。08/02/25
★★★
721
ZOKUDAM
森博嗣
大人版タイムボカン。悪戯集団ZOKUDAMとそれを阻止する正義の集団TAIGON。
この2集団2カップルがロボット作ったりロボコンに参加したり、メカ好きの筆者の慧眼も光ります。
仄かにラブコメも在りです。08/02/27
★★★
722
戻り川心中
連城三紀彦
短編集。大正〜昭和初期を背景に描かれる悲しい事件の数々。
自分を『八百屋お七』に喩えた少女の狂った恋物語「桔梗の宿」がお薦めです。
「戻り川心中」で日本推理作家協会賞受賞。08/02/29
★★★
725
空の境界(上・中・下)
奈須きのこ
人の持つ残酷の衝動は魂の起源にある。という概念に憑かれた人々の物語。
多くの残酷を描くその中に何を問おうとしているのかが、今ひとつ見当たらず。
最後、主人公と共に在ろうとする殺人者、識(人名)の中に、各々がその答えを探す他ないようです。08/03/12
★☆
726
あのころはフリードリヒがいた
ハンス・
ペーター・リヒター
ナチスの人種差別政策で崩壊した、とあるユダヤ人一家の悲劇を描く。あまりにも悲しい物語。
フリードリヒ少年の簡素な死の描写に、本当にそれを書くのが辛かったのであろう、筆者の気持ちを察しました。
本書は、訳者が多くのドイツ人に進められて翻訳を決意。08/03/14
★★★
727
34丁目の奇跡
ヴァレンタイン・
デイヴィス
子供たちのために自分をサンタと名乗る老人。その善意ある虚言が裁判沙汰となり、サンタの存在を巡って合衆国がゆれます。
最後どうなったか?サンタが居ないはずないでしょうが。映画の台本を書籍化。08/03/17
★★☆
728
ソナタの夜
永井するみ
短編集。数々の不倫物語を見事なまでに綺麗に描いています。
その巧妙な表現や展開に、不倫の罪深き部分を見落としてしまう。ある意味、麻薬的な一冊です。08/03/19
★★☆
729
二重奏
赤川次郎
霊視能力のある少女が精神病院を出て親戚の家に引き取られます。
そこで、病院への送還覚悟で幽霊の青年と協力し、殺人犯から皆を守ることに。
か弱き少女の見せる「女の強さ」が逞しいですね。08/03/24
★☆
730
リリー・モラハンのうそ
パトリシア・ライリー・ギフ
ドイツ支配下のフランスから逃げてきたユダヤ人の子に、軍艦に乗移ってみんなの所に行こうと嘘をつく少女リリー。
残してきた妹。ノルマンディーへ従軍してしまった父。会いたい人を思い浮かべては、その虚構に縋る二人。
やがて少年はその嘘を可能と信じ、ひとり海へ漕ぎ出してしまいます。待つ者の心の辛さをかみ締め、
戦争と言うものを改めて知ることのできる物語でした。ラストは感涙。08/03/26
★★★☆
731
世界の「美女と悪女」が
よくわかる本著・世界博学倶楽部
女傑の中でも特に衝撃的だったのはイタリアのカテリーナ・スフォルツァ。
敵陣より我子を残して逃走し、敵に向かってスカートを捲り上げ
「子供なんかいくらでも生めるわ!」って、それは反則です。08/03/26
★★
733
夜の鳥1 夜の鳥
夜の鳥2 ヨアキムトールモー・ハウゲン
鬱で仕事のできない父と夢を諦めた母の子、ヨアキム少年。
生活の様々な不安が、箪笥の中の鳥やもう一人の自分等、幻覚となって少年に迫ります。
そして、親友の少女と踏み出す新しい一歩に幻の消失を予感させるラスト。ある種の既慨感を覚えました。08/03/28
★★★
734
クレージー・マギーの伝説
ジェリー・スピネッリ
黒人と白人の生活が隔絶されていた1960年代アメリカ。
双方の居住区を行き来する孤児マギーが、その架橋を作って行きます。
憎しみ合うというよりは、相手を知らぬが故に恐れあっていた互い。
相手を知ろうと思う心の大切さを実感します。ニューベリー賞受賞。08/03/31
★★★☆
735
闇の底のシルキー
デイヴィッド・アーモンド
炭鉱の奥深くに潜むと言う精霊シルキー。子供たちの臨死ごっこがその存在へと繋がり物語を一つに紡いで行きます。
現実と空想を同等に捉える子供たちの視点が、嘗て自分も抱いた幻想を呼び覚まします。08/04/04
★★★
736
メディエータ0 episode2
吸血鬼の息子メグ・キャボット
今回の相手は吸血鬼を自称する友人の父親と叔父。そして、自分は殺されたわけではないと訴える謎の女性の霊。
霊のその訴えの理由に涙です。延命を諦めた家族を、自分ならどう思うかな。08/04/07
★★
737
神はサイコロを振らない
大石英司
行方を眩ました旅客機が10年後に突如帰還。時空の歪が戻るその時まで、最後の時間を各々に過ごす乗客達。
愛する人の突然の帰還に、人生をやりなおす人々の物語。
題名は、未来の情報を過去に持ち込んでさえも、地下鉄サリン事件や911テロは起きたのだと言う事の意。08/04/10
★★
738
星を数えて
デイヴィッド・アーモンド
短編集。神聖なものを追い求める人間の滑稽さが儚なく、この喜劇こそが人生でありそれを悲しく思わないのが子供なんだと思いました。
白雉の床屋から人が離れて行き、やがては自分も見限ってしまう「ジョナダブ」が、
ある種のリアルを物語っていて、とても悲しかったです。少々難解な本です。08/04/14
★★
739
その歌声は天にあふれる
ジャミラ・ガヴィン
里親を探すと赤子を引き取り、その子供たちを見殺しにしていた男とその息子ミーシャク。
ある一人の赤子を天使と謳い連れ去るミーシャク。やがて天使は、彼を置いて戻るべく所へ帰って行く。
少年の運命と共に、18世紀英国の知られざる残酷な現実も物語ります。ウィッドブレッド児童文学賞受賞。
08/04/19
★★
740
イン・ザ・プール
奥田英朗
トンデモ精神科医、伊良部一郎シリーズ第一段。
携帯電話を手放せなくなった少年の物語「フレンズ」がお薦め。
孤独を恐れ、メル友との繋がりに固執する現代人の悲しい心を、面白可笑しく物語ります。
人は誰もが孤独と闘っている。それを認められなくなると言う事自体が、ある種の悲愴なのかも知れません。08/04/22
★★★☆
741
町長選挙
奥田英朗
トンデモ精神科医、伊良部一郎シリーズ第三段。
小さな島で繰り広げられる町長選挙。賄賂、汚職、何でもありの世界で主人公が見たのもは、島を愛する住民達の心でした。
愛の形は雪の結晶の様に、億あっても何一つ同じ形をとらないのかも知れませんね。08/04/24
★★★
742
注文の多い料理店
作・宮沢賢治
絵・味戸ケイコ
不道徳な猟師二人が山中で料亭を発見。店の言われるがままに身に着けているものを取りはずしてゆくことで
逆に自分達が化け物に食われかける、恐ろしいお話です。粗雑に扱った番犬にその身を救われるところに
動物を庇ったある弁護士の言葉を思い出しました。「人間は裏切る。しかし、犬は我々とは違う」08/04/25
★★☆
743
神様のパズル
機本伸司
宇宙は作れるか?と言う難問に立ち向かう、天才女子高生沙羅華と主人公の落ちこぼれ大学生。
宇宙の原理をわかりやすく、且つ面白おかしく、物語の中に組み込んで説明。
そして、戻るべく場所に戻るようにできていた、宇宙の真理と沙羅華の運命。その、相対性を成す結末に感嘆です。小松左京賞受賞。08/05/01
★★★☆
744
キャッチャー・イン・ザ・ライ
J・D・サリンジャー
村上春樹翻訳でのタイトル再読(感想No407)。心未成熟の青年が、そんな自身に喘ぎながら吐き出す、自分なりの道徳。
ライ麦畑で遊ぶ子供を見守りたいというその考えが、仄かに主人公を照らします。訳者に打って付の物語と実感。08/05/07
★★★
745
ブラック・ヴィーナス
アンジェラ・カーター
時代に抗う女たちをテーマにした短編集。集中しないと過ぎる詩的表現に本筋を見失いそうでした。
狼に育てられた少女の物語「ピーターと狼」が深く儚いです。08/05/10
★☆