BOOK-15
Present BY Kasumi Yahagi


[順不同。これは霞美の個人的な評価です]

本の題名 作者 霞美の一言メモ 5星評価
651 チーム・バチスタの栄光 海堂尊 心臓移植、通称バチスタ手術のスペシャルチームに、医療過誤による過失致死の容疑がかかる。 厚生労働省大臣官房秘書課付技官にして変人、白鳥圭輔が、主人公と一緒に事件を解決に導きます。 主役はもう殆どこの白鳥でしたね。事件性や犯行の動機を見て思うに、そう深いものは感じませんでした。 個人的にはエンターテイメントの印象が強い。筆者は非常勤の現役医。このミステリーがすごい!大賞、大賞受賞。07/08/16 ★★☆
652 小池真理子 お互いの情事を許し合う可笑しな夫婦に気に入られ、自分もまたそんな二人に 惹かれてゆく平凡な女子大生。やがて、三人の仲を引き裂く人物が現れ、主人公はその男に銃を向ける事になります。 何が、誰が間違っていたのか。そんな疑問をも抱かせぬ、濁流のような展開がページ数を感じさせません。 平凡だからこそ狂気に走るという主人公が物語と平行して書かれている浅間山荘事件の首謀者、永田洋子氏と重なりました。 彼女もまた、特徴のない平凡な女子大生だったことを筆者は知っていたのでしょうか。直木賞受賞。07/08/24 ★★★☆
653 ひとがた流し 北村薫 仲良し三人の内の一人、アナウンサーとなった千波の病を知って皆が動き出す。 三十路女と四十路男の告白は、若者のそれより純粋無垢を感じました。 地味ですが、人生を相称した様な雰囲気の本です。07/08/25 ★★
654 鱗姫 嶽本野ばら 体に鱗が生えるという奇病を描いたサイコもの。 吸血姫の代名詞エリザベート・バートリーは治療のために生血を塗っていた、と言う仮説が目を引きました。 若返るために殺人を繰返した彼女ですが、皮膚の皺を鱗に置き換えればさして変わりのない発想です。やめれー。07/08/27 ★★
655 おぅねぇすてぃ 宇江佐真理 時は明治。通訳を目指す千吉と異人に嫁いだお順が、時を経て結ばれる物語。 お順がサバサバしていてか、待つと言う描写がちょっと物足りなくて残念。実在のモデルあり。掲題はHonestyの音訳。07/08/29 ★☆
656 阿修羅ガール 舞城王太郎 身勝手な凶悪犯の意識に入り込んでしまう主人公。 その視点より、現実の狂気犯罪の一端を垣間見た気がしました。 情操足らぬ主人公の俗っぽい口調が特徴の本です。三島由紀夫賞受賞。07/08/31 ★☆
657 零式 海猫沢めろん 戦争によって心身共に犯された少女が、同じ経験を持つ主人公と出会い、 狂ったその地からの脱出を試みる。悲しい爽快感が胸を貫きます。 一種独特の世界観に根強いファンが居ると言うのも頷けました。07/09/04 ★★★
658 メディエータ2 メグ・キャボット 150年前の優しき幽霊と生きた難癖ある彼との狭間で、恋に悩む主人公。 幽霊と結ばれるわけがないと咆哮する彼氏に、それを悟っているがために 苦しむ霊の彼がこれまた切ないです。07/09/05 ★★★
659 ラインの虜囚 田中芳樹 ラインの虜囚の正体を確かめるため、頼れる仲間と旅に出る少女。 虜囚がナポレオンかも知れないという噂をはじめ、当時の実在人物を当てた構成に感動です。 主役を支える脇役達がかなり光ってます。07/09/07 ★★★☆
660 ミシン 嶽本野ばら 短編二編収録。歌姫ミシンに恋焦がれた主人公が、当人の希望より殺意を抱く。 熱狂的ファンの盲目を緻密に描いています。美空ひばり塩酸事件を彷彿とさせますね。ぞぞぞ。07/09/07 ★★
661 ハリー・ポッターと賢者の石 J・K・ローリング 両親の過去から自分の本当の姿に気づいていく少年ハリー。 ロンやハーマイオニーと仲良くなって行く過程など、本ならではの緻密な描写が面白いです。 髪ぼさぼさ、八重歯、ガリ勉のハーマイオニーのイメージは、映画と若干異なりますね。 格言めいたダンブルドア校長の台詞が、話をより濃密にしていました。07/09/12 ★★★
662 ハリー・ポッターと秘密の部屋 J・K・ローリング ポッター二作目。ついに width="70" 現れた黒幕が、日記の思い出の中にいると言う発想が凄い。 幽霊達の事細かい描写にも、イギリスが心霊研究の最先端にあることを感じさせます。 トイレのゴースト「嘆きのマートル」を見て、トイレの花子さんを想像しない日本人はまずいない。世界共通なんですね。07/09/15 ★★★
663 ハリー・ポッターと
 アズカバンの囚人
J・K・ローリング ポッター三作目。前作の伏線が見事なまでに繋がった一冊。 父親の学生時代の過去を解く事により、ダンブルドア派とヴォルデモート派の色分けが旗幟鮮明にされて行きます。 「一緒に暮らさないか?」亡き父の親友シリウスの言葉に、家族という一縷の希望を垣間見るポッター の思いが、深く儚いです。07/09/19 ★★★☆
665 ハリー・ポッターと
 炎のゴブレット(上・下)
J・K・ローリング ポッター四作目。三校魔法大会を巧みに利用し復活を試みるヴォルデモート。 魔法省の介入と言う政治的要素も絡み、物事はより錯綜を極めます。 常に懊悩するポッターに、その深刻さを中和するかの如くどうでもいい事で喧嘩するロンとハーマイオニー。 そして、ポッターを優勝まで手助けする脇役達が光っています。07/09/27 ★★☆
667 ハリー・ポッターと
 不死鳥の騎士団(上・下)
J・K・ローリング ポッター五作目。ヴォルデモート復活に対抗すべく組織されたダンブルドア軍団。 物語は赤対白と言った単調なものではなく、ハリーを嫌うスネイプの悲しい過去や、偶像とは違った父の実像、 人間臭さを少しずづ見せるシリウスなど、組織内部の人間像に迫りつつ進行します。 魔法省の刺客のおばさんから頑なまでに生徒と教師を庇うダンブルドアの格好良さと、反抗期のポッターのイライラ度は異常。07/10/04 ★★☆
669 ハリー・ポッターと
 謎のプリンス(上・下)
J・K・ローリング ポッター六作目。ヴォルデモードの弱点を探るべく過去に迫り、 終盤は守るべく大切なものを失うことでポッターはある種の自立に目覚めて行きます。 ロンとハーマイオニーがいなかったら益々暗い展開で、それをどう覆すのか、次作に期待を抱かせます。 今回はスネイプがキーマン。この人怪しすぎ。全体的に。07/10/11 ★★★
670 日曜日の
 アイスクリームが溶けるまで
清水マリコ 遠い記憶の少年と出会い幼い日のスパイごっこの続きをする主人公京子。 「大人たちの陰謀で、現実しか見えないように仕向けられているんだ」 胸を打つ視点でした。抽象的な様でリアルです。07/10/13 ★★★
671 解夏 さだまさし 短編集。目を患い視界を失って行く主人公の心の収束を描いた「夏解」。 親や友人や恋人、寄り添う人が共に居ると言う事が深い意味を刻んでいます。 外国人差別や痴呆との向き合いを描いた他の短編も秀逸で、粗相する祖父にオムツを買い 「辛いだろうが使おう」と言った孫の言葉には込上げるものがありました。 「夏解」は仏教用語で生命の息吹が芽を出す「結夏」より、その活動が収束する日の事。2004年映画化。07/10/16 ★★★☆
672 Kanon 日溜りの街 清水マリコ 何かを探し続けている少女あゆと、その手伝いをするようになる主人公。 そして、探し物が見つかります。それは、あゆが主人公と紡いだ遠い日の残像。 原作は18禁ゲームですが広く話題となっただけあり、物語性は確かに濃いです。 萌え要素は寧ろいらない、とか言ったらかすみは埋められますか?07/10/17 ★★★
673 Kanon 雪の少女 清水マリコ 主人公を想う幼馴染の恋物語。それは、その手助けをする謎の存在あゆあってこそでした。 この世界の王道か幼馴染が起こしに来るとか、放課後パフェ奢るだとか、いろいろ萌だえ死にそう。07/10/18
674 Kanon 笑顔の向こう側に 清水マリコ 余命僅かな少女栞の物語。大半は安直な展開ですが、ラストの奇跡にあゆ最後の願いが架けられているところは見事でした。 個人的には完璧な美少女像にある栞より、永久の別れを恐れることから栞を遠ざけた 不器用な姉の方に気持が向きます。とか言ったらかすみは吊るされますか?07/10/19 ★★
675 Kanon 少女の檻 清水マリコ 校内で夜な々魔物に剣を振るう少女舞。 呑めない展開に首を傾げて読んでいましたがラスト魔物の正体が分かった時は物語の巧妙さに息をつきました。 むしろ萌えとかいらない、とか言うのはなしですか?07/10/22 ★★
676 Kanon
 the fox and the grapes
清水マリコ 自分は捨てられたんだと思い込んだ子狐が命を削って人と化し、その温もりを今一度求めようとした切ない物語。 それだけに、このシリーズお約束の奇跡も一際光っていました。全5話中一番良いかも。07/10/23 ★★★
677 クレィドゥ・ザ・スカイ 森博嗣 一度は気を失ったクリタをキルドレから開放しようと、病院から連れ出すフーコ。 その目論みは失敗に終わり、十字を切って命を失った彼女と、また無機質な戦争と言う世界に 淡々と戻って行くクリタが悲しい程に対照的でした。 感情無く書かれた狂気が、心の秤を静かに狂わせます。07/10/24 ★★★
678 憑神 浅田次郎 厄病神に付き纏われた武士のお話。度重なる不幸より生を悟り、最後は死神をも受入れ義に生きようとします。 不幸は辛いだけではなく、より多くを気づかせてくれると言えそうです。07/10/29 ★★
679 DSJ ふかわりょう 怪しいサイトより現実の気に入らないものを次々と消して行く主人公。 この手の人間は、皆消えてしまえばいいという考えに行き着く他ないものですね。 ドラえもんの「独裁スイッチ」の話によく似ています。 文章の殆どが台詞で、脚本みたいな本でした。題名はデリートサービスジャパンの略。07/10/31 ★★
680 ひまわりの森 トリイ・ヘイデン 実話を元にした小説。主人公の母はナチスのレーベンスボルン計画によって奪われた我が子の事で心を患い 終には人を殺め自らも命を失います。母の語っていたひまわりの森を探す旅に出る娘。 そして、夢描かれたその美しい森と現実の狭間に少女は唇を噛みます。 彼女は辛辣な経験あってこそ、その美しい花畑を夢描いたのでしょうか。リアリティのある深い本でした。07/11/06 ★★★
682 機械じかけの猫(上・下) トリイ・ヘイデン セラピストの主人公が自閉症の少年コナーとその母親の話しを通じ、一家の陰鬱な過去を謎解いて行く。 殆どサスペンスです。彼等の言う空想や虚言には必ず何か意味がある。 その視点は、この筆者ならではと感じます。コナーと母親各々より語られる物語りは、読み砕くのに若干難あり。07/11/14 ★☆
683 美しい人 古閑万希子 原作は映画。九人の女性の人生が点で結ばれている一風変わった小説。 人は皆それぞれの事情を抱えて生きている。 人生に平凡などないのだという事を改め、胸が熱なりました。07/11/15 ★★★
684 ピアニッシシモ 梨屋アリエ ピアノと言う運命に縛られた少女と出会う主人公。 二人は親の望むそれではなく本当の自分を見出すために暗中模索で駆け出します。 安全な親の意見よりも、危い自分の決断にしがみつく二人。 一見理解し難い十代の奇異な言動の儚き根本に、心が揺れました。児童文芸新人賞受賞。07/11/19 ★★★☆
685 父の詫び状 向田邦子 エッセイ。時代特有の食卓に描かれる父親の優しさや不器用さより、 留守電のアナウンスに必死に話しかける人々など、感性豊かな昭和の人々にある種の羨みを感じました。 他、家族と乗越えた空襲の話も必読。無駄なく魚を捌いたような文章が乙です。07/11/21 ★★★☆
686 空色の地図 梨屋アリエ 未来の自分に宛てた手紙を切欠に、主人公は強く変ってしまった古い友人と再開。 二人はお金を貯めて其々の想いを胸にグライダーに乗りこみ、その空に未来を架けます。 私たちが美しい山や海や空を通して垣間見たいものが、そこに描かれているかのようでした。07/11/22 ★★★
687 楽しみと日々 金井美恵子
(オブジェ)金井久美子
古い映画のこと知らない人置いてけぼりで語ります。極端に句点が少なく読みづらかったです。07/11/24
688 ビューティフル・ジョー マーシャル・サンダーズ 18世紀に実在したカナダの犬。耳と尻尾を斧で切断されるという虐待を乗越え、 やがて心優しき主人の元で一生を過ごします。 動物に対する倫理が欠けていた時代に、動物愛護の精神を訴える飼主一家。 ジョーの目線で人と動物の在り方見つめます。 しかし、この時代。子鳥の剥製を帽子につけるなど確かに酷い。07/11/25 ★★☆
689 鍵のかかる部屋 三島由紀夫 短編集。その覚えを悟られたくないような惻隠の心理を描く、筆者の慧眼が光ります。 大切なパイプを無くした代議士が、その焦燥の理由を憎き妻の訃報にすり替える「訃音」が何とも絶妙。07/11/28 ★★
690 タッチ ダニエル・キイス 事故で被爆した夫婦の苦悩と再生を描く。 虚脱感。脱毛。偏見。悪夢の中で人間性を保つ事がどれ程のことか、考えさせられます。 そして、死産した我子に涙する主人公に、どんな不幸も崩す事の出来ない人の心を垣間見ました。 杜撰に廃棄される放射能物質の現状を書いたあとがきは必読。07/12/04 ★★☆
691 カーの復讐 二階堂黎人 財宝を荒らされた復讐か生霊カーに殺されていくボーバン家への人々。 これを、怪盗ルパンが探偵役となって謎解いていきます。 善にも悪にも染まらないルパンが色濃い、一風変わった推理小説でした。07/12/05 ★★☆
692 ヒットラーのむすめ ジャッキー・フレンチ もしも話から生まれた架空の少女ヒットラーの娘。 物語のリアルさに聞き手の子供達同様、私も深く引き込まれました。自分がヒットラーの娘だったら何か出来ただろうか。 ふと、耳を付いたルワンダ大虐殺のニュースに、ユダヤ人虐殺の過去を現実の問題として真剣に考えるようになって行く子供たち。 そして、深く切ない驚愕のラスト。 フィクションと信じられない程、胸にせまるものがありました。オーストラリア児童文学賞受賞。07/12/06 ★★★★
693 クロニクル千古の闇1
 オオカミ族の少年
ミシェル・ペイバー 悪霊に憑かれた熊に襲われ父親を失う少年トラク。 その元凶を断つため、子狼のウルフと共に聖なる山を目指します。 友達となる女の子レンをはじめ、物語を安易なファンタジー物にしない複雑な人間関係が展開。 自然の神々を重んじた彼らの気持がわかるほどに、太古の闇の深さを感じました。07/12/11 ★★☆
694 クロニクル千古の闇2
 生霊わたり
ミシェル・ペイバー 奇病で倒れ行く人々を救うため、治療法を求めて族に出るトラク。 亡き母の出身であるアザラシ族との出会いより、トラクは自分が魂だけで自在に行き来のできる 『生霊わたり』であることを知ります。そして、その力に見せられた悪しき者。 神々が生きていた時代だけに、その狂気は一層真実味を増して読み手に迫ります。 愛と同じく、人の愚かさも万古変わらないのでしょうか。07/12/13 ★★★
695 きんぎょの夢 向田邦子 結婚をキーに描いたドラマの小説化。期待と不安の入り混じったそれを各々に物語ります。 婚期を逸した女性の儚き夢の後に、ふと寄り添うもう一人の男性が印象的な「きんぎょの夢」が良いです。07/12/15 ★★★
697 エデンの東(上・下) ジョン・スタインベック 生きるにおいて人の背負う罪。そして、親から子へ流れてゆく負のカルマ。 そんな、悲しい連鎖を断ち切るべく、懸命な中国人の使用人リーが、主人公アダムとその子供たちを支えます。 リーは脇役ですが、この長い物語の中で常に光輝いていて、彼の言動は人生の一つの指標になり得るものばかりでした。 「先祖がああだったから仕方が無い。そんな理由で自分の性格を諦めるのは安易すぎます」07/12/31 ★★★☆

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