Present BY Kasumi Yahagi
数
本の題名
作者
霞美の一言メモ
5星評価
607
アーサー王宮廷物語
T・キャメロットの鷹
U・聖杯の王
V・最後の戦いひかわ玲子
筆者の創作である双子の姉妹。兄のフリンと妹のメイウェルの視点で物語りは進行。
メイウェルと仲良しのエレイン姫の章は特によく出来ていて、ランスロットに実らぬ恋するエレインと、
魔法を使ってランスロットと契るもう一人のエレイン、一人を同姓同名の二人の人物にして書いています。
エレインの生涯を、操通したままにさせたところに、筆者のエレインに対する深い思い入れを感じました。
一通り姫君や騎士達各々の物語を知った上で読むと入りやすい本です。おそらく筆者は自分と同じくエレイン嬢の話が一番好きっぽい。07/04/11
★★★
608
ショートカット
柴崎友香
瞬間移動を覚えた女子大生が、着の身着のままで大阪から東京へ。
表参道を散策しながら東京の元彼や友人の事に思いを馳せます。日常の中にそっと描かれた非現実性が新鮮です。2007/04/12
★★
609
ブラームスはお好き
サガン
17歳年下の青年とアバンチュールに走る39歳の主人公。
結局、長年の夫婦生活に戻るべき必然を理屈抜きで思わせるような、歯痒い描写が印象的でした。2007/04/15
★★
610
聖の青春
大崎善生
29歳で他界した天才棋士、村山聖。幼少からの闘病生活によって培われた彼の生命に対する真直ぐな想いは、
極端でありながらも心惹きつけて止みません。「髪も爪も折角生えて来たものを、何故切るんです?」
いじめと貧困の子供時代を耐え抜いて棋士となった森師匠との縁も深いものを感じます。
師弟と言うよりは、互いに支え合うようにして生きる二人。
短命を予期しつつも語る彼の最後の願いは、あまりに尊く儚いものでした。
「僕には夢が二つあります。一つは、名人になって将棋を止めてのんびり暮らすこと。
もう一つは、素敵な恋をして結婚することです」新潮学芸賞、将棋ペンクラブ大賞受賞。2007/04/20
★★★★
611
シロツメクサ、アカツメクサ
森奈津子
短編集。同性愛を普遍的乃至コミカルに描いたものが多い。
様々な自我の在り方について収束してゆく絶妙な結末がこの本の凄味です。
親子関係の入代わりを繰返すSF「一郎と一馬」がお薦め。2007/04/24
★★★
612
ポプラの秋
湯本香樹実
預かった手紙をあの世に届けるのが自分の使命だと言う、ポプラ壮の大家のおばあさん。
やがて、おばあさんの死とそこに集まった多くの手紙が、みんなの儚い思いを紡いでいきます。
筆者の抱くリアルなおばあさん像が何とも温かいです。2007/04/25
★★
613
くらのかみ
小野不由美
遺産相続を巡る殺人未遂事件を解決すべく、立ち上がった子供たち。
怪談話から発展、登場した座敷童子が事件解決の糸口となってゆく展開は見事です。
「おもしろそうだったから姿を現してみた」という純粋無垢な童子の動機はどこか寂しくて儚いですね。2007/04/27
★★☆
614
ビッグフィッシュ
ダニエル・ウォレス
ジョークでしか人生を語らない父親に真実を求める息子。
具体的にはどうだったのかと言う事細かい真実よりも大切な、人生と心の良き在り方を教えてくれます。
題名は大物の意。これの映画大好きです。2007/05/06
★★
615
アーサー王物語
ジェイムズ・ノウルズ
聖杯についてはこれまで読んだ本の中で最もわかり易かったです。
キリストが晩餐に使った聖杯。これのある地は平和に保たれるというもの。
この長い物語に入る触りとしてお薦めできる本です。2007/05/08
★★☆
616
アーサー王と聖杯の物語
ローズマリ・サトクリフ
サトクリフのアーサー伝第二段。聖杯探索に出た円卓の騎士達が主人公。冒険の果てに多くを失う騎士達。
完全なハッピーエンドではないこと。聖杯に行き着くのが探索団の英雄、ランスロットではないことなど、
これら陰の要素がこの物語を寓話で終わらせない凄みとなっています。07/05/09
★★★
617
アーサー王最後の戦い
ローズマリ・サトクリフ
サトクリフのアーサー伝第三段。王と王妃、ランスロットの三角関係が発端となって滅ぶアーサー王朝。
憎しみ傷つけあいながらも惹かれあう三つの心がシームレスに描かれ、愛や人の滑稽さ、儚さを伝えます。
アーサー死後の騎士達については、より詳しく語られていました。
Fate/Stay nightの、王の最後を看取ったベディビエールの名はおそらくこの本より採用。07/05/10
★★★
618
川の少年
ティム・ボウラー
臨終真近の頑固お爺さんと孫娘のジェス。
川で出会った謎の少年とお爺さんとの言動が距離を隔てて符合し、
お爺さんの願いとその一生が、川に擬えてジェスに伝わって行きます。
児童書ですが子供が読むには意味深過ぎかも。カーネギー賞受賞。07/05/13
★★★
619
最悪なことリスト
トリイ・ヘイデン
里親と暮らす少年が友達の少女と梟を育てることに。
アーサーと名付けた梟。手放したくないと言う少年の我侭が、やがて最悪の結果を招きます。
悔い、自分を責める少年。それはきっと、誰もが触れたであろう既概感でした。
愛に対して無知だった幼い頃の自分がそこに居ます。07/05/15
★★★
620
ALONE TOGETHER
本多孝好
人の心の闇を引出してしまう催眠能力を持つ主人公。
「本当は自分が可愛いだけでしょう?」って、誰もがその心と闘い、善であろうとしているんじゃないかと、
主人公と脳内で押し問答しちゃいましたYO。07/05/17
★
621
メディエータ
メグ・キャボット
150年前の青年幽霊に恋するメディエータ(霊能者)の少女が、彼の死因にも関係した、事件に立ち向かう。
あの世とこの世の小難しいルールを抜きにした、一風変わったラブコメものです。コバルトぽかった。07/05/22
★★
622
東京奇譚集
村上春樹
短編集。ジャズの生演奏で思わぬ僥倖に巡り合った筆者が、その類の神様はいるのかも知れないと語る。
そう考えられる事、それ自体が素敵ですね。同じ本を読んでいたことから主婦と恋路にはまりかけたゲイの友人の話もお薦めです。07/05/23
★★★☆
623
ケルトの白馬
ローズマリ・サトクリフ
イギリスの地上絵アフィントンの白馬を題材にした小説。
侵略者に服従した主人公が地にそれを描くまでの物語です。
死を深きに置かない古代人の心理描写が珍妙でした。07/05/24
★★
624
狂骨の夢
京極夏彦
とある髑髏を巡っての怪事件。後醍醐天皇と正統を争う亀山上皇の後継問題、愛人の首を持って逃走した女性など、
一つの髑髏が複数の事件を結びつけて行く。狂気を受け止めるべく惻隠の情をもっと書いて欲しかったです。
にしても、単行本で千ページはぶ厚すぎて手が疲れる。07/05/31
★★☆
625
がばいばあちゃんの
幸せのトランク島田洋七
彼女と駆落ちして一路東京へ。
目標さえない筆者に期待し、支え続けた彼女には脱帽でした。
また、二人に巡った至福は、欲望的ではないことで成り立っている気もしました。
幼い頃の知恵と貧乏の経験が、その精神を作り上げていたのでしょうね。07/06/01
★★★
626
がばいばあちゃんスペシャル
かあちゃんに会いたい島田洋七
筆者と母親の物語ですが、母親を主観におけば、母と娘の物語でもありました。
娘の仕送りを使わずに貯め続け、筆者のために自分は貧しいままであり続けた祖母。
そして、母親もまた息子のために「芸人はいつ売れなくなるかわらない」と
祖母と同じことをします。受継がれた優しさに只管感動です。07/06/04
★★★☆
627
パーフェクトワールド
清涼院流水
車椅子の主人公とホームステイのレイが、語学を学びながら京都を散策。
英文の説明と共に進行するミステリーが赤川次郎のEMITみたいでした。
超面白い英語の教科書って感じ。07/06/05
★★☆
628
落語的学問のすゝめ
桂文珍
筆者が大学で行った講義をそのまま書籍化。笑いの他、多くの知恵やものの見方を教えてくれます。
博識ながらその多くを捨象しながら話していそうですね。07/06/07
★★★
629
ナイトミュージアム
レスリー・
ゴールドマン
深夜に目を覚ます博物館の展示品達。彼らを守るために奔走する雇われ警備員の物語です。
お話自体は至極単純。映画で見る方が絵的に楽しめるかも。07/06/08
★☆
632
チャームド VOL1〜3
コンスタンス・
M・バーグ
魔力を持つ三姉妹が悪魔と戦うホームドラマの小説版。
悪魔との闘いの他、仕事や恋に右往左往する姉妹達が何だか微笑ましく、
欧米ドラマ独特の台詞も笑えます。白のショーツはハイスクールで卒業よ!とか。
ラストは昔の米ドラマにはない展開にあって驚愕。本書三冊でシーズン1完結です。07/06/15
★★☆
633
ほんまにオレはアホやろか
水木しげる
落第と失敗を繰り返しながらも天性の楽観思考で生き抜く筆者。
戦後の生き難き時代を絵の腕一つで食べて行こうとする筆者の壮絶な半生には、
まさに「生き抜いた人」と言った感想を持ちます。
「あの頃の僕を支えていたのは生きることの自信だった。『絶対に生かされる』という楽天的な信念だった」
07/06/19
★★★☆
634
出口のない海
横山秀夫
海軍の神風、神潮特別攻撃隊。
神風同様、生き残れば非国民と罵られる彼等。それに乗る事が決まった時点で彼らは死んでいなければならない存在となってしまう。
戦争の狂気と病理をまざまざと見せられました。人間魚雷回天は「天を回らし戦局を逆転させる」の意。2006年映画化。07/06/21
★★★
635
クライマーズ・ハイ
横山秀夫
日航機墜落事故を追う新聞社の話。
尊い命が出世の材料として扱われる、業界の集団心理を恐ろしく思います。
そんな中で、正しい事をしようとするのは本当に難しく勇気がいる。
おそらく、会社人の誰もが一度は考える事なのではないでしょうか。
題名は、恐怖が絶頂に対して無感覚になった状態の事。07/06/26
★★
636
墜ちていく僕たち
森博嗣
コミカルな短編集。性別が入代わってしまった人たちのお話。
エロくないのが良いと後書の通りかも知れませんが、その辺の好奇心あってこそという気もします。
こういったテーマさえも詩的に書こうとするところは筆者ならでは。『別の人間になってしまいたい』と締め括る「どうしたの、君たち」がお薦め。07/06/27
★★
637
空港にて
村上龍
短編集。コンビニ、公園、空港。それを一つの世界として書いています。
主婦の噂が飛交う「公園」と義足技師を目指す風俗嬢のお話「空港」が印象に深かったです。07/06/28
★★
638
黒い空
松本清張
高級式場運営の会長であった妻の遺体を隠し、経営の実権を握るその夫と秘書の女。
時は経ち、四方や完全犯罪成立かと思いきや意外な落とし穴によって沈黙は破られます。
山内、扇谷上杉家の歴史的怨嗟を背景にしていますが、その因縁さえ塗潰す、
金で揺れる現代人の恐ろしさを感じました。07/07/04
★★★
639
裁判官の爆笑お言葉集
長嶺超輝
裁判中に在った判事の言葉。
題名とは違い深いものが多く、辛辣な事件に気持ちを抑えて裁判を進行させている判事の気持ち良くがわかります。
余談、裁判傍聴を趣味にするって、私は違和感あります。07/07/04
★★☆
640
兎の眼
灰谷健次郎
勉強を教えるだけが先生ではない。子供達の個性や家庭、その地域を
考えられる人こそが本当の先生なのだと、ひとりの女性教師を通して
その理想を物語ります。時代を超えて語り継ぐべく教師像ですね。07/07/06
★★★☆
641
新撰組
童門冬二
近藤勇の先見が些か過ぎていて、精緻な史実を求める人に、この創作は受付けないかも。
新撰組の衰退や沖田、土方の最後には殆ど触れておらず、油の乗った時期の新撰組を快活に描いてます。07/07/15
★☆
642
津軽
太宰治
青森出身の筆者が里帰りでの出来事を綴る。
地元の歴史に触れ、友人と酒を飲み、育ての親である奉公の女性との再開に自分の性格の原点を見つけます。
心情を嘘偽りなく書けたと締め括る筆者在り。07/07/20
★★
643
人生のちょっとした煩い
グレイス・ペイリー
短編集。特異な文章に跳んだ内容。スラスラ読める本ではないです。
利用されたと思い込んだ男の僻んだ手紙に適当な贈物で答えをつき帰す女のリアリティが絶妙な
「コンテスト」がお薦め。訳、村上春樹。07/07/23
★★
644
黒い家
貴志祐介
私欲を満たすため、安直に人を殺す。
現実の保険金殺人事件と重なり恐しいこと極まりないです。
保険の謳う互助精神も、その欲望が濁してしまう。
社会の黒い現実を一緒に垣間見ました。筆者は元保険屋さん。
かなり怖いという意味でお薦めです。日本ホラー小説大賞、大賞受賞。07/07/25
★★★☆
645
チェルノブイリの森
メアリー・マイシオ
史上最悪の人災チェルノブイリ原発事故で放射能汚染されたゾーンを筆者がレポ。
政治や事故の詳細については触れず、只管に今のチェルノブイリを語ります。
森は、人間が立ち入らなくなったことで動物達のオアシスと化していることに驚き。
今尚、青空の下廃墟を覆う美しい緑の景色が、事故を物語っています。07/07/30
★★
646
僕は天使の羽根を踏まない
大塚英志
輪廻転生に端を発したサイコサスペンス。
人物の正体や目的がさっぱりと思ったら、摩陀羅という作品の完結編らしい。
来世のために今世を捨てるラストが嫌でした。人はあくまでも今を生きているんだから。07/08/01
★
647
マーシャとダーシャ
マーシャ/ダーシャ
ソ連に生まれたシャム双生児の記録。
生まれてすぐに母親から引き離され、研究施設を始め生活の場を転々とする姉妹。
ソ連には障害者などいないと言張る支離滅裂な国政が、二人を苦しめ続けます。
姉妹の性格は不思議な程に正反対なのですが、読み進める内に、この二人は心身共にないものを補いあった
一つの完璧な存在なんだという事に気がつきました。
施設で親の訪問のない二人が、他人のそれを見ては階段下に隠れて抱合って泣く。
そんな二人を支えるのは、やはり悲しみを知った弱い立場にいる人々でした。07/08/03
★★★☆
649
ジェノサイドの丘(上・下)
フィリップ・
ゴーレイヴィッチ
100日で100万人が殺されたワンダ虐殺の記録。
ツチ族根絶やしを目論んだ一部のフツ族が起こした事件です。
ユダヤ人虐殺の三倍もの犠牲者を出したこの事件が、何故世界で周知に至らなかったのか。
それは「遠い国の内戦」と世界が見放した残酷な無関心からでした。
マザーテレサの言葉が思い起されます。「愛の反対は憎しみではなく、無関心です」
この歴史を描いた映画「ホテル・ルワンダ」は超お薦めです。07/08/10
★★☆
650
スラムオンライン
桜坂洋
ネットゲームの世界での自分の在り方に、現実の対人関係を見出してゆく主人公。
目の前に居るものが画面か生身の人間かでは、同じ人間相手でも全く違いますよね。
恋や青春もまた然り。07/08/12
★☆