BOOK-13
Present BY Kasumi Yahagi


[順不同。これは霞美の個人的な意見です]

本の題名 作者 霞美の一言メモ 5星評価
562 安岡正篤一日一言 安岡正篤 筆者は歴代の首相が相談に訪れたと言う経済界の偉人。 勉強せよ、哲学せよ、惰眠するなと多くの志を一日一言形式で載せています。 難しい言葉が多いので肩の力を抜いて読みましょう。かすみのお気に入りは 「悟りは喜怒哀楽をしなくする事ではなく、いかに喜び、哀しみ、怒り、楽しむかというところにある」 06/11/18 ★★☆
563 ポポイ 倉橋由美子 生きた美少年の首を預かって共に暮らす女性の話。 あまりに違いすぎる互いの立場が全てを滑稽に見せて面白い。 この後どんな展開になってもおかしくないと思える際どさが終始読者を惹きつけます。 尚、ポポイはギリシャ語の感嘆詞で主人公が首につけた名前。本来はラジオ脚本です。06/11/20 ★★★
565 頼むから静かにしてくれT・U レイモンド・
 カーヴァー
短編集。静かな伏線がいろいろな感情を掻き立てます。 差出人不明の手紙より息子について尋ねられる母親。家を去った息子について語り、あなたは誰ですかと問い返す母親こそ その手紙の主が息子であることを確信しての質問であり、この話の掲題「嘘」なのではないかと私は読みました。訳、村上春樹。06/11/26 ★★★
566 仮面の告白 三島由紀夫 自伝。同性愛者である事を告白したもの。 個人の生理的欲求や感覚を有機化した絵や文章は受け難いものとなりがちですが この本はそうでも有りませんでした。「誇大な表現は私の癖なので許してもらいたい」などの注釈に 柔らかさを感じ、多くに感化される自分を「自分程憑依体質な者もいないと思う」って、皆そうだよと、若干のおかしみを持って 思えたりしました。人間三島由紀夫を知るに一番いい本かも知れません。06/11/28 ★★★
567 探偵伯爵と僕 森博嗣 児童向けの冒険物と思いきや話は一転。主人公の少年は残酷な犯罪と向き合う事になります。 子供が狙われるからこそ、子供も知っていなければならない現代の狂気。 そしてラスト二ページの新事実によって物語は更に姿を変える。お薦めの一冊です。06/12/01 ★★★☆
568 寺田寅彦は
 忘れた頃にやって来る
松本哉 「天災は忘れた頃にやって来る」の名言で有名な昭和初期の物理学者。 稲妻、トンビ、満員電車、サイコロ、コンペイトウ。 分野を超えて身近な物理現象に疑問を抱く無垢な探究心に見習うべきもの多々です。06/12/04 ★★
569 キノの旅] 時雨沢恵一 小さな誘拐犯がいつしか人質の少女を守るはめに。 そして、それを追うハンターキノ。奇麗事の通用しないキノの性格が、話に更なるスリルを加えます。 突如現れるあとがきのトリックにも吃驚。06/12/05 ★★★
570 雨月物語 (原作)上田秋成
(訳)小沢章友
江戸中期の怪談集。奇を衒う現代のホラーと違って情深いものが多いです。 死して尚約束を守る、誰かを待つなど、人生の切なさや儚さを感じました。 人間に恋しそれ故に狂気に走って退治されてしまった大蛇の物語が、私には切なかったです。06/12/07 ★★★
571 富士山 田口ランディ 短編集。リストカット、自殺、堕胎など人生の陰の部分を富士山と言う陽と比較して描きます。 堕胎に何の情けも持たない非道徳な少女の陰を通して見る命や正義が儚いです。 実際には、永久に無関心ではいられないはずだよ、と。06/12/11 ★★
572 フラッタ・リンツ・ライフ 森博嗣 前シリーズの主人公草薙の部下、クリタ少年が今回の主人公。 上官になる前の草薙そっくりで、またも戦いの中にしか自分はないのだと思い込んだ少年の物語です。 愛とは何かを結論付けられないままに草薙に惹かれてゆくクリタ。続編が出そうです。06/12/14 ★★
573 ティファニーで朝食を カポーティ 自由奔放な少女が男に捨てられ、結局外国に高飛びするお話。子悪魔の典型を描いたような小説でした。 ティファニーで朝食とはその店の前で立食する事。映画の方はハッピーエンドだそうです。06/12/20 ★☆
574 クリスマスツリー ジェリー・サラモン 人生を共に生きた大切な1本の木を都会のクリスマスツリーのために手放す初老のシスター。 彼女の想いと灰色の町を照らすツリーに、現実に蔓延る虚無と理想の大切さを深く感じました。名作ですね。06/12/21 ★★★
575 よもつひらさか往還 倉橋由美子 マスターの不思議な酒で異世界を体験する主人公。霊魂との可笑しな交流が描かれます。 髑髏のコマチさんが別作品POPOIを連想させて面白いです。06/12/22 ★☆
576 姉ちゃんの詩集 サマー 奇才現る。弟が面白がってWEBに公開した姉の詩集。感じた事や人に言われたことを自分用の奇抜な日本語で綴る。 思春期にしか書けない言葉の羅列が面白いです。本書は正に究極のノンフィクション。 こんなノートの一冊は誰だってもっているものですよね。尚、「サマー」は姉ちゃんの学校でのあだ名。06/12/30 ★★★
577 アーサー王と円卓の騎士 ローズマリ
 サトクリフ
サトクリフオリジナルのアーサー王伝説再話。冒険という夢と別れの現実が交差した騎士達のエピソード集です。 物言い達者な女達の中でも静謐さが気を引くエレイン姫が印象に深い。 父を助けるためにランスロットと契り、片思いのままに世を去った彼女の想いがあまりに切なかったです。07/01/03 ★★★
578 ふたりのトスカーナ ジェリー・サラモン 第二次大戦中のイタリア、トスカーナに住む姉妹の物語。統帥やファシズムを賛美する子供達に教育の重みと恐ろしさを実感しました。 ラスト、家に踏み込むナチス親衛。姉妹はこの祖母の家にひきとられており、姓が違ったために虐殺を免れます。実話です。07/01/09 ★☆
579 DeepLove アユの物語 Yoshi 最後は援交で人を助けようとして他界した少女の悲しい物語。 何度も出てくる「幸せって、ならなきゃいけないの?」という言葉が心に木魂しています。 人は過ちを悔い苦しんでいる時にこそ変わり、前進している。 本書のモデルとなった少女より「私のような子を減らして欲しい」と言う手紙を受けて書かれた作品です。 売上の一部はエイズ基金に寄与されています。07/01/11 ★★★☆
580 あふれた愛 天童荒太 愛故のすれ違いを描いた短編集。現代の病理をよく穿っていました。 人は結局自分が一番なのか。そんな克服すべき心の内を謄写しているかのようです。07/01/14 ★★★
581 獅子は死なず 陳舜臣 短編集。インド独立のために奔走したボースの物語が面白い。 英国に妻子を作っていたとは彼にも浪漫があったんだと話を括りますが、 それがあったからこそ盛んに生きることができたとも取れそうですね。07/01/18 ★★
582 天使がくれたもの Chaco 告白前に失った好きな彼との事を綴った、少女のウェブ日記を小説化したもの。 そのすれ違いに、今を生きる時間というものの限りを深く感じました。 付き合ったり別れたりという過程にもどかしさを感じないのは、心に必要な大切なもの得るための必然だったからなのかな。07/01/19 ★★
583 ベリーショート 谷村志穂 短編集。主人公が皆女子高生と一貫しているせいもあってか、全く違う話なのに一個の長編小説を読み終えたような読後感です。 今思えば、学校生活って退屈さえも小説となり得るような事なんですね。07/01/23 ★★☆
584 沈黙の王 宮城谷昌光 古代中国の短編集。まだ文字のなかった時代に「目にも見える言葉」という発想でそれを作った中国の王。 言語障害と言う苦難より抱いたその願いは、彼の天命だったのかも知れないと感じました。07/01/26 ★☆
585 逃げ道 サガン 第二次大戦時。パリから疎開する男女四人が農村の夫婦に助けられ、しばらくそこで暮らす事に。 育ちの違いすぎる両側の人間関係が滑稽で可笑しな物語です。 「ただ笑ってくれればいい」「道徳を盛り込む気は更々ない」と筆者は言いますが 生と死が喜劇的に書かれているからこそ、また儚いものも感じます。07/02/02 ★★★
587 細川ガラシャ夫人(上・下) 三浦綾子 疱瘡で美貌を失った母とその妻を一途に愛した光秀の優しさを受けて育ち、細川家にと嫁いでいった玉子。 父の謀反で山中に身を潜める事となるも、その苦しみが彼女と基督信仰を深く結びつけて行きます。人間苦しい時こそ尊いものが見える。 時勢に抗い差別なく人命を尊ぶ信者達の精神は、行間の基督教に対する筆者の贔屓目を差置いても、酌むべくものを感じさせました。 玉子は石田三成の人質になることに抗って自害。彼女の自決に三成は他の人質を掌握できず、この事が関ヶ原の勝敗を大きく分けたと言われています。07/02/08 ★★★
588 ロード・ロス ダレン・シャン 人狼に変身したら二度と人間には戻れない。そんな遺伝病を持つ一族が、人間に戻るために命を懸けて悪魔とチェスで対戦。 児童書とは思えない残酷な描写が読者に子供騙しではないと囁き、チェスの心理戦に拍車をかけます。 まだ未熟な主人公の少年が今後どう棋士として成長して行くのかに期待です。07/02/14 ★★★
590 夏姫春秋(上・下) 宮城谷昌光 紀元前の中国。絶世の美女、夏姫を巡り滅び行く王達に、私は人を不幸にするだけと悲観する夏姫。 己の苦しみから床に臥す自分の侍女の一生を想い、赦しを請うその姿が儚い。 夏姫に正太后のような権威欲があったら、到底この時代を生き残れなかったでしょう。 そして、ラストの彼女の幸せはそこになるべくして成ったものと至純に思えました。直木賞受賞。07/02/19 ★★☆
591 ミミズクと夜の王 紅玉いづき 森で夜の王に拾われた元奴隷の少女ミミズク。やがて王国は夜の王を捕らえ、少女は王宮での豊かな暮らしを手に入れます。 しかし、彼と森に帰る事を望む少女。作者自身が、奇麗事で安っぽくてもいいのと言うように、全く奇を衒うことの無いシンプルな物語です。 しかし、そこに心の儚さや奥深さを感じて止みません。感涙。 語弊を恐れずに言えば、この作品はライトノベルの範疇を超えています。電撃小説大賞受賞。07/02/21 ★★★★
592 藤十郎の恋・恩讐の彼方に 菊池寛 ひとつの概念に囚われる人間の懊悩や羞恥心を描いた短編集。 その忸怩から克服まで、あと一歩話を展開させてほしいと思いました。 私はあなたに投票したという嘘と、自分で自分に投票したという秘密。 その一票に二つの心が交錯する「札入れ」が何とも絶妙です。07/02/25 ★★
593 失われた土曜日 内堀稔子
(写真)吉田一法
ドイツ軍によって完全に破壊されたフランス、オラドゥール村の悲劇の記録。 その虐殺の理由が未だ曖昧である言うことに深い憤りを感じました。もしくは、その暗黙自体が嘘偽りのない戦争の姿なのかも知れません。 わずか生き残った人たちは村の隣に新たな村を作り、焼き尽くされたオラドゥール村をそのまま保存することを決意。 オラドゥールはラテン語で「冥福を祈る」の意だそうです。あまりにも悲しい偶然。07/02/27 ★★☆
594 Destiny of Love 神谷文 ドラマの中で書かれた小説で日本人と韓国人の恋愛を描いた物語。 韓国ドラマのマンネリが色濃いですが、韓服チマ・チョゴリに対する偏見や美しさについて書かれていた部分は興味深かったです。 どこに心無い人がいるかもわかりませんが誇りを持って着て歩いて欲しいと思いました。何より、綺麗なのだから。07/03/01 ★☆
595 ハードボイルド・エッグ 萩原浩 騙されて雇った助手のお婆さんと事件に巻き込まれてゆく売れない私立探偵。笑いの連続ですが、最後は涙を誘います。 何でもやらかす元気なお婆さんの正体は、身寄りのいない孤独な一人暮らしの老人だった。 「彼女は婆さんではなく、80歳のひとりの女性だった」と主人公。心打たれます。07/03/06 ★★★
596 木かげの家の小人たち いぬいとみこ あるイギリス人が置いていった小人の一家に、戦争での貧困に苦しみながらも食料のミルクを与え続ける子供達。 側に居てほしいという一心で尽くすその姿に、妖精との共存に欠かせぬ健気な心を感じます。07/03/08 ★★
597 そういうふうにできている さくらももこ 出産の体験を綴ったエッセイ。初めて子供を見た時「その時は何故か、そんなに感動は沸かなかった」と筆者。 それは、麻酔で痛みなく出産したからではないかなと、私は感じました。07/03/09 ★★★
598 本所深川ふしぎ草紙 宮部みゆき 本所七不思議を背景に描かれる人情もの。与える事と、突き放す事で人助けをする前者後者の二人が 互いに受け入れない「片葉の芦」に、善し悪しを超えた人間関係の深さを感じました。吉川英治新人賞。07/03/13 ★★★
599 神様からひと言 萩原浩 お客様相談室に配属され、苦情処理を任される主人公。 企業ストーカーによる強請りから「お宅の商品うちの犬に食わせても大丈夫か?」等、 傍若無人な問い合わせに四苦八苦しながら対応して行く愉快痛快な物語です。 その苦心に共感するサラリーマンも多そう。 題名の「神様」とは「お客様」の意。07/03/16 ★★★
600 世界の日本人ジョーク集 早坂隆 この面白さは、感想を書くより本文を引用した方が早そうです。 沈没間近の船から乗客を飛び降りさせるために、船長は各国の船客に言いました。アメリカ人には『飛び込めば英雄ですよ』。 イギリス人には『紳士なら飛び込んで下さい』。イタリア人には『飛び込めば女性にもてますから』。 ドイツ人には『飛び込むのがこの船の規則です』。フランス人には『飛び込まないで下さい』。 日本人には『みんな飛び込んでますよ〜』07/03/20 ★★★★
601 雨あがりのウエディング 矢部美智代
(絵)田中槇子
父親の再婚に不安を隠せない主人公の女の子。我が子の気持ちを考える父に、連れ子との生活を想う彼女。 そして、その悩みに贅沢を感じた、親のいない施設の友達。皆の想いが、再婚に対する数々の受け止め方を教えてくれます。07/03/21 ★★★
602 第三の時効 横山秀夫 短編集。法の目を掻い潜った捜査の彼是に舌を巻きます。 犯罪者と同じだけの狡猾さを刑事達に感じ、どちらも同じ人間なのだと言うことをふと思ってしまいました。 時効をネタに自供を目論んだ「第三の時効」がお勧め。警察記者だった筆者にしか書けないと言う、ある種のブランドを強く感じる一冊でした。07/03/26 ★★★
603 心の青あざ サガン 物語の進行と同時に筆者本人の感想が同じ割合で書かれています。 彼女は何を思いながら物語を作っているのかと言う、一つのドキュメンタリーとして面白かったです。 青あざを訳したDES BLEUS A L'AMEのAMEは魂という意味もあり。 本書は、戯曲「スウェーデンの城」の続編。通りで解らない所が多いと思った…。07/03/29 ★★☆
604 ある微笑 サガン ちょっとしたアバンチュールのつもりが、彼に執着するようになってしまう主人公。 最後は不倫相手の妻に慰められる始末で、結局はひとり大きな傷を負う事となります。 愚かさを感じつつも、彼女を責める気になれないのは、その弱さと孤独への抗いを、 どこかで自分の中に認めているからかも知れませんね。07/03/30 ★★☆

Last Up Data : 2007/04/02

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