Present BY Kasumi Yahagi
数
本の題名
作者
霞美の一言メモ
5星評価
471
ひげよ、さらば
上野瞭
記憶喪失のヨゴロウザと言う猫が主人公。知り合いになった相棒、片目猫と縄張りを一つにまとめて
新しい猫の世界を築こうとします。権力、ファシズム、戦争、おいては薬物(マタタビ)に溺れての自我崩壊まで、
人と猫の一生、人間社会と野良の世界が重なって見える奥深い物語でした。約八百ページの大作。06/02/27
★★★
472
ソフィアの白いばら
八百板洋子
ブルガリアのソフィアに留学した筆者YOKO。彼女は様々な国の人と接する事で、今世界に起こっている事を痛感して行きます。
北爆に失う家族。一家亡命。内戦参加。自国の危機迫る事情に自分の元を去って行く友人達。
自分の狭量な世界感を広げてくれる一冊でした。日本エッセイスト・クラブ賞、産経児童出版文化賞、受賞。06/03/02
★★★☆
473
こころのチキンスープ14
あなたの天使がいるところ
(執筆) ジャック・キャン
フィールド/マーク・V
・ハンセン/ジェニファ
ー・リード・ホーソン/
マーシー・シモフ
女性の投稿を集めたシリーズ第2段。女性であることのハンデを克服したものの他に、母性の強さを感じるお話が多かったです。
ボランティアで作った毛布に編みこんだメッセージが、すぐ近くの苦しんでいた知人を救っていた、温かい偶然「毛布に編みこんだ愛」。
事故で濁流に飲みこまれてしまった女性に「泳げ!メアリ・アン!!この手を掴るんだ!」と、亡き父の声を聞き一命を取りとめた物語「父の手」が好きです。06/03/05
★★★
474
チョコレート工場の秘密
ロアルド・ダール
板チョコの当り券でお菓子工場に招待されるチャーリー。チョコの川や減らない飴玉など奇想天外な発想が面白いです。
皆無に等しい確率に身を凌いで板チョコを買ってくれたお祖父さんとの交流が暖かい。
また、貧しいチャーリーにとって一枚の板チョコが特別な意味を持つと言う事が、幼き日の自分と重なりました。06/03/07
★★★
475
ヴィーナスという子
トリイ・ヘイデン
何を語りかけても反応を示さなくなってしまった少女、ヴィーナス。
特殊学級で諦めずに語りかけ続けたトリイの献身的な努力に、少女は少しずつ心を取戻して行きます。
虐待に足の指を失ったヴィーナスがトリイに宛てて書いた短い手紙に心うたれました。「しあわせです」。06/03/14
★★★☆
476
彼女の部屋
藤野千夜
短編集。何気ない日常をドラマチックに見せてくれる本です。
死んだ父の帰宅に何気なく接する家族の物語「父の帰宅」がお薦め。
ラストの母の一言が印象的です。「あ、おとうさん今(あの世に)帰りました」06/03/16
★★
477
こころのチキンスープ3
愛を見つめる死を見つめる
(執筆) ジャック・キャン・
フィールド
/マーク・V・ハンセン
これを編集した『こころのチキンスープ「誇り高き人生」』(425冊目)の差分を読みました。
母親のアル中に悩む少年に、自分のアル中経験を告白し、力になってくれた強面教師の男らしさ「ぼくに起こった奇跡」。
ある少年野球の審判が、人それぞれの役割とは何かを語った手紙「あるアンパイアの手紙」がお薦めです。06/03/16
★★★☆
478
剣の乙女
稲葉義明/
F.E.A.R
歴史から神話までジャンルを問わず、剣に生きた女性達を紹介。
私の好きな巴御前を始め、ロシア東部戦線第586女子戦闘機連隊のパイロット、リディヤ・リトヴァクの悲しい空や
北魏時代の女性戦士、木蘭(ムーラン)の物語などが印象深かったです。複雑な出来事を要約し過ぎているため読むに若干の難あり。06/03/16
★★
479
こころのチキンスープ12
みんな誰かを愛してる
(執筆) ジャック・キャン・
フィールド
/マーク・V・ハンセン
最早絶望的と思えた、体の不自由さや悪しき者への呼びかけが克服されて行く奇跡の物語。
現実的でありたいのならば奇跡を信じるべきだ(デビット・ベングリオン)とは、言ったものです。
ガラスを割って逃げてしまった少年が、封筒にバイトで貯めた7ドルを添えポストに投函して謝罪したのに対し、
同じく封筒に7ドルと、あなたを誇りに思います、とメモを添えて答えた老婦人の物語「本当の許し」が好きです。06/03/18
★★★
480
秘密の花園
F・H・バーネット
お金持ちの祖父に引き取られた心無き少女が、祖父が亡き妻と愛しんだ秘密の庭を通して優しさを取り戻して行きます。
その屋敷で病人扱いされていた少年に生きる気力を取り戻させ、皆で復活させた庭に祖父もまた本来の明るさを取り戻す。
花園に投影されたその心が暖かかったです。06/03/23
★★★
481
ベジタブルハイツ
藤野千夜
部屋に野菜の名前がついた借家ベジタブルハイツ。仕事や恋や受験に四苦八苦する住人達のやり取りが軽やかに描かれます。
「みんないつからここにいて、いつまでいるんだろう」これ、よく思います。06/03/25
★★
482
こころのチキンスープ5
自分の仕事好きですか
(執筆) ジャック・キャン・
フィールド
/ジャックリーヌ・ミラー
労働者が本当に求めているものとは賃金でも地位でもない事を立証している、経営者に読んでもらいたい本です。
薄給を詫び子供に買ってあげられないグローブを手渡す店長「ジェシーのグローブ」。
誰もが羨む笑顔で世を去った、孤独な老人の心を見つめた「一足の靴下」に感涙。
ヒューレード・パッカード社の社長が難題を解決した社員に感謝の気持ちと無我夢中で手渡した弁当のバナナ
「ゴールデンバナナ賞」は傑作です。06/03/28
★★★☆
483
ダウン・ツ・ヘヴン
森博嗣
『スカイ・クロラ』『ナ・バ・テア』に続くクサナギ・スイトの空、第三弾。
生きる価値を見失いかけていたスイトに企画された空中戦。
結局、撃合う事にしか生きることを見出せない主人公が切ないのですが
鮮やかな空が印象に残る一冊でした。06/03/30
★★★
484
北斗の人
司馬遼太郎
北辰一刀流の開祖、千葉周作の青年期から流派立上げまでを描く。
是までの難解な抽象論を切り捨て剣の道を合理的に具現化させた最初の人です。
面白かった逸話を紹介。決闘を受けた剣術とは無縁の男が、死ぬのは良いが無様な死に方はしたくないと千葉に相談。
千葉は「眼を瞑り上段に構え背中が冷っとした時刀を振り下ろせ」と助言。男は言われた通りに構えると
相手は敵わぬと悟りその場を去ります。凄っ!06/04/07
★★★
485
オシムの言葉
木村元彦
ジェフユナイテッド市原・千葉監督(平18)、イビチャ・オシム監督。
内戦の激化するボスニアに已む無く家族を残し一人チームの指揮をとり、選手の民族間の隔たりや
マスコミの圧力等、複雑な難問を骨太な意思と信念で次々と打破して行きます。
やがて、ユーモアと意味深な言葉は「オシム語録」と呼ばれいろいろなところで紹介されるように。
「ライオンに追われた兎が肉離れを起こすか?」と、走るサッカーを提唱。
06/04/18
★★★
486
こころのチキンスープ17
親と子を変えた
愛の不思議の物語
(執筆) ジャック・キャン・
フィールド/マーク・V
ハンセン/キンバリー・
カーバーガー/
レイモンド・アーロン
親子関係のお話を集めた本シリーズ。養子やステップペアレント(継親)故の葛藤を持ち上げたものも多く、
米国の社会事情を垣間見た気がしました。父の再婚相手に、その父の葬儀に実母を呼んでよいか?と尋ねると彼女は
「もちろんよ。私の子供達のおかあさんじゃないの」と答える「限りない愛」。
再婚相手の夫とその連れ子との間に血の繋がりと言う壁を感じ、その寂しさ故に夫になりますまして家を出た子供等とメールやチャットをしてみる。
しかし、ある日のメールに「お父さんにもよろしく」の追申を見て涙したペアレントの母「また今度ね!愛してる!」が好きです。06/04/18
★★★
488
嫌われ松子の一生(上・下)
山田宗樹
かなり不幸な女性の話です。小さな誤解から教師を首になり、それから不幸の連続で常人ではとても耐え切れない人生を歩む主人公松子。
それでも、彼女はどこにでもあるごく普通の幸せを必死に追い求めます。
その波乱万丈な人生に共感を覚える人は少なくとも、誰もが彼女を身近に感じてしまうと思います。
愛と憂いの狭間を不器用に生きた彼女こそ、あまりにも人間らしい。読み終えてみれば心温まる本でした。06/04/25
★★★★
489
こころのチキンスープ7
夢中になれるもの
ありますか?
(執筆) ジャック・キャン・
フィールド/マーク・V
ハンセン/マイーダ・ロ
ジャーソン/マーティン
ラッテ/ティム・クラウス
仕事に対する考え方を問うものが多いです。心に残ったお話は「ただ、そばにいるだけで」。
演説を仕事にしていた男が、ある日友人の妻の不幸に立ち会います。
落ち込む友人を目の前に慰めの言葉さえ見つからず、ただそばに居てやることしかできなかった自分。
彼はその時自分を恥ずかしく思うのですが、友人は後年そのことを感謝し続けていたと語ります。
人間いざとなると雄々しく賢明に振舞うことなどできない。しかし、その不器用にも尽くした小さな行動にこそ、愛が肯定されている。
これには深く思うものがあります。06/04/30
★★☆
490
いのちが危ない!
江原啓之
自殺は何の解決にもならないのだと言うことを切に語る一冊。
筆者は霊能力者ですが、その世界に執着して物事を語るわけではなく、現実的且つ前向きに生きることの意味を説きます。
筆者曰く、自殺者の魂は例外なく生きていた方がどれほど楽だったかと後悔の念に捕らわれるのだそうです。
テーマは自殺ですが、暗い本ではありません。人生の一つの捉え方として、前向きになれる本でした。06/05/01
★★☆
491
西城秀樹のおかげです
森奈津子
実にエロ面白かったです。えらいストレートで卑猥なんですが、どこかさっぱりしてました。
エロいことばっか言うなと怒鳴るたびに(Mだから)喜ぶメイドの話が笑えました。
「めちゃめちゃにしてほしいのに指一本触れてもらえないなんて…。でも、そんな辛さもまた格別でございます」
って、なんか文章的魅力あり。06/05/04
★★★
492
「世界の神々」がよくわかる本
造事務所
ロキやヴァルキリーなどよく聞く神々のエピソードを紹介。
根源の違う神話がとある一点で交差するところなど興味深かったです。
ページ数の関係で内容を要約し過ぎているところが残念。06/05/04
★★
493
語り女たち
北村薫
とある富豪が物語りをしてくれる女性を募り話を聞く、という構成の短編集。
アンデルセンの「絵のない絵本」に近いものを感じました。
妻とそっくりの人形を作って愛した不気味な夫の話「わたしではない」と
梅の木を懐かしむ老人の呼びかけに、自分の前世がその木であった事に気づく「梅の木」がお薦めです。06/05/06
★★☆
494
夜の果てまで
盛田隆ニ
主婦との駆け落ちに走った青年の物語。二人の世界を守るためにお互いが自分の培ってきたものを捨てて行く。
恋は盲目の典型ですがその愚かさを突き放して読めない、人生の憐憫を感じました。06/05/12
★★☆
496
キノの旅[〜\
時雨沢恵一
真実の解釈にすれ違う人々の心を描いたブラックユーモア。
主人公キノ。その師匠。剣の使い手シズと、三組の旅人が登場しますが、今回シズと旅をすることになった初登場の少女、
ティーの存在が色濃く面白かったです。やばくなったら手榴弾とか。ティーのために安住の地を探すシズの今後が気になるところ。06/05/19
★★★
497
かっこ悪くていいじゃない
森奈津子
バイセクシャル(男女両方が性愛対象の人)の女性が主人公。特異な恋愛を求めるため傷つく事が多く、仕舞いには
とある夫婦に弄ばれてしまう始末。それでも恋をしようと彼女はまた歩き出します。
とは言え、前向きと言うより物寂しさを感じました。きっと恋は一途であることが大切なんだと思います。06/05/20
★☆
498
こころのチキンスープ9
もうすぐ大人になるあなたへ…
(執筆) ジャック・キャン・
フィールド/マーク・V
ハンセン/キンバリー・
カーバーガー
10代の子供達の話を集めた体験話。泣いてもいいよと励ましあった少女二人が大人になって再会。
容姿も性格も正反対になっていた二人が同じ言葉で手を取り合う「泣いてもいいよ」が好きです。
人(の心)は変わるといいますが、ずっと変わらない気持ちだって持ち合わせていると私は思ってます。この二人のように。06/05/21
★★
499
月の輪グマ
椋鳩十
動物を取り扱った童話短編集。その親子関係に重点を置いていて、悲しいまでに我が子を優先する動物達に私達も見習いたいです。
我が子の安全を優先させ、あえて遠出して餌を獲りに行っていた猫の話。「屋根うらのネコ」がお薦めです。06/05/22
★★
500
愛されない子
トリイ・ヘイデン
今回は障害児学級の生徒の母親が話の核として登場。
容姿端麗、頭脳明晰の彼女がストレスからアル中となり、トリイを手伝うことでそんな自分を変えようとします。
子供達と向き合う中で、障害児で反応を示さない我が子より笑ってくれたよその子を好きになってしまったと懺悔する彼女。
その酷にして至純な感情を誰が責められようと思いました。
徐々に人間不信を克服して行く彼女ですが、その不安や懐疑は何も特別なものではないと私には思えました。
他の大人達は、もう少しだけ上手く嘘をついて人と接しているだけなのだと。
本書の本当の題名は「Just Another Kid(もうひとりの子)」。この母親の事ですね。06/05/31
★★★☆
501
こころのチキンスープ10
母から子へ 子から母へ
(執筆) ジャック・キャン・
フィールド/マーク・V
ハンセン/ジェニファー・
R・ホーソン/マーシー・
シモフ
様々な親子関係に焦点をあてたエピソード集。
母たる者の力強さや愛情に心打たれます。構成として難を言うと、明るいものばかりではなく
母ゆえの葛藤や切なさについても、もっと取り上げて欲しかったところ。
あんたの髪の色は私に似たねぇと言うと、私は養子だから関係ないよと娘。
その言葉に、やだ私ったらいつも忘れちゃうのよねと呟いた女性「遺伝」。
RH-の血液を探して絶望していた父が、ヒッチハイクで拾った帰還兵にその種の血液をもらい救われる。
その後、探しても見つからないこの恩人に対し、あれは本当に兵士だったのか?
本当は兵士の格好をした天使だったのではないか?と本気で思えた「軍服の天使」が好きです。06/06/01
★★☆
502
ナ・バ・テア
森博嗣
読む順序が前後しましたが『スカイ・クロラ』『ダウン・ツ・ヘヴン』を含む三部作の、本書はその第二作。
生と言う時間平面状を鬱々と生きる主人公が機械的感情で堕胎を望み、パートナーは身をもってそれを制します。
二人の気力と無気力の狭間をいったりきたりするような、やはり一風変わった読後感です。06/06/04
★★☆
503
からくりアンモラル
森奈津子
短編集。主にエロとSFに分ける事ができそうですが、後者が面白かったです。
人間のふりをし続けた父親の話「ナルキッソスの娘」に感嘆。
エロいのはあんまりでした。電車で読むのはちょっと苦。06/06/07
★★☆
504
イサナと不知火のきみ
たつみや章
神と人が共存していた時代。男児のように船乗りを目指し、結婚を拒み続けている少女イサナ。
彼女は船作りの木を探しに出かけ、そこに宿る龍神と出会う。
その後、再び漕ぎ出た海で、今度は海の死者を操る不知火の一族に囚われ、嘗ての一族の水難に関わる謎に足を踏み入れて行きます。
冒険と恋愛と神秘が折笠なっていて面白い。続刊待ち。それでイサナは誰と結婚することになるのだろう?!06/06/08
★★★
505
アクアリウム
篠田節子
とある湖で遭遇した未知の生物イクティを守るため開発事業に立ち向かう主人公。
後半イクティを失ってからの主人公の行動が何とも闇雲で、イクティは一体なんだったの?的な読後感がちょっと残念です。06/06/11
★☆
506
屋久島ジュウソウ
森絵都
もののけ姫の舞台となった屋久島の旅行記他、海外旅行での体験などを綴った旅のエッセイ。メンバーの精神状態など率直に述べた感想が面白かったです。
常々思うに旅は計画外の所で思い出に残るものと出会う事が多いですね。
管理人は佐渡に行こうと思っていたのですが、何もないとか書いてあってプチショック。
ジュウソウ(縦走)は登山用語で尾根づたいに歩くことの意。06/06/12
★★★
507
不撓不屈
高杉良
1963年。国税局は、飯塚毅税理士の打出した節税対策(別段賞与)を認めず、飯塚氏の会計事務所諸共叩き潰そうとする。
一税理士と国税庁との全面戦争になった通称「飯塚事件」。
鬼をも恐れぬ国税局の踏込みに受けた中小企業の恐怖は筆舌に絶します。
それでも、断じて違法はないと正義を貫き通す飯塚氏やそれを支えた人々に、昭和の人の義に生きる気概を感じました。今年六月映画化。06/06/16
★★★