Present BY Kasumi Yahagi
数
本の題名
作者
霞美の一言メモ
5星評価
394
アンネの日記
アンネ・フランク
ナチスの手を逃れ他のユダヤ人達と隠れ家で暮らすアンネの一家。
日記には隠れ家での不安や皆の焦燥が書かれてはいますが決して暗いものではなく、思春期ならではの恋愛感や戸惑い、
未来への希望などが文面に溢れています。
その後、密告により収容所へ送られた全員の内、生き残ったのは生存者の少ないアウシュビッツへ送られた父親ただ一人。
日記を持っていた彼のみが助かったという事に儚い奇跡を感じます。アンネはベルゲン・ベルゼン収容所でチフスを患い他界。15歳でした。05/06/04
★★☆
395
ジーキル博士とハイド氏
スティーヴンソン
別人に変身できる薬を持ってして両者になりきるハイドことジーキル博士。
人の善と悪を変身する事で切離そうとして適わず。あくまで魂は一つである事を立証しているかのようでした。05/06/08
★☆
396
電車男
中野独人
映画が面白かったので読んでみました。慣れないページ構成と2ch用語にちょっと苦労しましたが小説にはないリアルタイムな息遣いが面白い。
2chみんなのアドバイスを頼りに彼女ことエルメスにアタックする電車男。みんなのツッコミが笑えます。
彼がみんなに好かれたのは、カッコつけずに己を露呈したからだと思いました。電車くんにある種の可愛気を感じます。
尚、映画は本より先に見た方がいいです。05/06/15
★★★☆
397
蒲生邸事件
宮部みゆき
時空旅行者の力にて226事件真っ只中の帝都にタイムスリップ。そこで遭遇する蒲生邸の自殺事件に挑む主人公。
軍人が国を先導する時代において、帝國瓦解の未来を知ったとたん手の平を返して軍閥跋扈を非難できるだろうか。
己の意思で歴史に忠実に生きる事が未来に対してずるをしない廉直な精神であると、そんな解釈が儚い物語でした。日本SF大賞受賞。05/06/19
★★
398
わが勲の無きがごと
津本陽
戦争から帰ってきた清健はなぜ目聡く小ずるい人間に変わってしまったのか。その壮烈な理由に
人を人として見られなくなる戦争の精神破壊を垣間見ます。尚、勲(いさおし)は手柄の意の雅語的表現。05/06/23
★★☆
399
侍はこわい
司馬遼太郎
短編集。同期が出世して行く中、一人功績を目に留められず禄高五千石に納まり続け、それを己の器として多くをの望まなかった権平。
やがて他の家々が途絶え消え行く中、権平の家だけが幕末以降もその禄高を守り続け後世に家を残す。
偉業とは決して一時の華やかさの中にのみあるわけではないと言う事をひしと感じます。
他、忍の騙相「四貫目の死」などお薦めです。05/06/25
★★★
400
マリー・アントワネットの首飾り
エリザベス
ハンド
ジャンヌ婦人が幼くして失った家名を取り戻すために謀った詐欺事件。彼女は逮捕され法廷で敗訴し国を追われます。
やがて、この数億円の首飾りのやり取りに、飢えた国民が女王を嫌悪し蜂起。彼女の意図せぬところで事件は革命へと発展します。
後に三階の窓から転落死と言う彼女の呆気ない最後を考えると、明智光秀のように時代の継目を担うための運命だったのではないかと、やり切れなく思いました。05/06/29
★★
401
幽霊のような子
トリー・ヘイデン
幼くも性の知識が露骨見られ、その他体に浮かぶ不可解な傷、暗示的な絵画、蜘蛛に監視されているなどと脅える少女。
トリイは自分の経験とその子を信じようと思う気持ちのみで証拠のないまま虐待の告発に踏切ります。
告発当初は確たる証拠を得られずも、その後父親が幼女に対する猥褻で逮捕される。
家(ホーム)もまた、密室に成り得るを事を証拠立てた恐ろしい内容でした。
推断による告発は火の粉を被る覚悟がなければ出来ませんが、その行動を必然として行ったトリイの勇気に賞賛。05/07/08
★★★
402
フェアリーテイル
モニカ・クリング
実際に起こったコティングリー村妖精事件を元に作成された映画が原作。
幼い少女二人が川辺で五枚の妖精の写真を撮影。晩年、彼女は内四枚は創作と告白したものの
最後の一枚は何も細工していないと明言し世を去っています。
この妖精騒ぎは近代兵器の使われ始めた第一次大戦当時唯一の明るいニュース。
事の真相はともかく、妖精は平和のシンボルとして信じられて良いものと素直に感じました。05/07/09
★★☆
403
NHKにようこそ!
滝本竜彦
9割笑いのブラックユーモア。ひきこもりから脱出するためあらゆる策を試みる主人公ですが、
薬やエロゲーなどあらぬ方向へ走って事態は泥沼化。そんな中、救いの道を教授しようとするおかしな少女と出会います。
やがて、彼女もまた自分と同じ苦しみの内にある事を知る主人公。
行動は千差万別にしろ、私たちは皆孤独に苦しむ同じ狢なのだと言うことに普遍の切なさを感じます。
ここで、NHKは日本ひきこもり協会の略。05/07/11
★★★
404
オペラ座の怪人
ガストン・ルルー
一つの事件をレポートするかの様な描かれ方で、それ故舞台程のロマンスを感じる事はできませんでした。
老いたラウル子爵が怪人のオルゴールを買い戻すエピソードもなく、不気味な事件であった、と物語を括っています。
本書は三輪秀彦訳で、怪人を幽霊と訳しています。05/07/14
★
405
ICO
宮部みゆき
ゲームを脚色して小説化したもの。霧の城に生贄として送られた少年イコが、そこで出会う少女ヨルダと城の謎を解明かして行く。
イコと少女の言葉が通じないところが話を巧みにしていて面白い。やがて解き明かされる悲しい過去を知りつつも、ヨルダの手を引き続ける
イコの廉直な気持ちに清々しさを覚えました。05/07/16
★★★
406
BH85
森青花
BHはバイオヘアの略。発毛剤BH85が植物となって人の体を覆い、他の人との融合を繰り返す。
やがて世界中の人々との融合を果たし人類は一つの植物として熟成される。
そして、融合できない一部の人間は「見えない未来なら明るく考えよう」と生き方を決意。
BH85の85は開発者の好きなバストのサイズで、同僚の恵と結ばれ彼女の3サイズを
知った時明かされる物語の落ちです。日本ファンタジーノベル大賞受賞。05/07/19
★★☆
407
ライ麦畑でつかまえて
J.D.サリンジャー
「あなた、本当に好きなものってあるの?」と問われ、主人公は自分の望む生き方を喩えてこう言います。
ライ麦畑で遊んでいる子供達は、自分がどこを走っているのかわからない。崖っぷちに近づいた時
その手を掴んであげられるよう見守り続けたい。皮肉屋で不平不満だらけの主人公。
だからこそそんな存在になりたいと、その優しさに憧れたのでしょうか。
本当はこんな自分を変えたいのだと一度は誰もが思うように。05/07/22
★☆
408
幻の女
湊正和
短編集。若い頃の過ちに眈々と対峙する初老の主人公達。
歳を取れば人間そうは変われない。そう言われている気がして正直気が滅入りました。05/07/27
★☆
409
檻のなかの子
トリー・ヘイデン
心だけが幼い17歳のケヴィン。体が成熟しているだけに彼の癇癪や狂気は危険極まりなく、
そんな彼と向かい合うトリイの身を、読むに按じないではいられません。
そして、言い聞かせられる年齢を当に超えたケヴィンがここまで生きる力を取り戻したのは奇跡と言って過言ではなく
文字通り襲われ、苦しみつつも、愛することを止めなかった彼女には脱帽せざるを得ません。
シーラがチャーリーの名でちょこっと登場。05/08/05
★★☆
410
ZOKU
森博嗣
アンパンマンやタイムボカンシリーズのような乗りで、暴色、暴笑、暴芸族と称し、町に様々な悪戯をしかける悪の組織ZOKUと、それに対する組織TAI。
敵味方でどことなく惹かれ会う恋の行方に決着を着けてくれたらもっと良かったですね。
とにかく愉快な本でした。05/08/12
★★★
411
アンテナ
田口ランディ
妹の失踪をきっかけに狂い出す家族。
妹の不完全な死が蟠りとなって家族の心を狂わせているのだと気づいた主人公は、
哲学と動物的本能に頼りながら解決策を模索していきます。
相談に乗ってくれたSM嬢にはまっちゃうなど倒錯的な描写も多いのですが、俯瞰して見れば結構面白い本でした。05/08/18
★★★
412
ガラスのうさぎ
高木敏子
筆者の戦争体験を綴った体験話。空襲で親を失い一人ぼっちになった少女は、まわりの人に助けられ
ある時は虐げられながらも、歯を食いしばって生きて行きます。
この本を読んで一に感じたのは、戦争という苦しみの極みにおいて曝け出される人の本性です。
平和の尊さを知ると同時に、どんな時も優しい人間であり続ける強さを得たいと思いました。05/08/19
★★★☆
413
天使の卵
村山由佳
父親の発狂と母親の再婚。彼女を振ってその姉に告白し同棲。そして、死別。
主人公をここまで辛辣な境遇に置いてこの物語の云わんとしている事は何なのかという事について、
それが彼女への愛と言うならば、やり方的に私は好めません。直木賞受賞。05/08/22
★★
414
たくさんの愛をありがとう。
朝日新聞社
朝日新聞「声」の選り抜き99編。苦しい時こそ前向きに考える力強い投書の数々です。
「変える」の漢字を一生懸命調べ、誤って「蛙」と綴った作文に花丸をつけた定年間近の小学校の先生のお話が好きです。05/08/23
★★☆
415
償い
矢口敦子
死を誘う少年と、その少年の命を助けた元医師であるホームレスのお話。
思い込みが自分に呪いをかけ人生を狂わせてしまう。一人では運命に抗えない二人。
しかし、互いに心を開くことによって呪縛は解き放たれます。
ここに言う運命とは、人が理屈ずけした過去以外の何物でもないと感じました。05/08/31
★★
416
ポルノグラフィカ
島村洋子
約束の地で元恋人とで再会するヨーコは、嘗ての快感に浸りながら様々な記憶を手繰り寄せて行きます。
舞台となった情熱の島、バリ島の雰囲気をもっと引き出して欲しかったです。05/09/02
★★
417
熊と結婚した女
ジョン
ストラレー
本書のタイトルは手に負えなくなってしまった結婚相手の熊を騙して殺してしまうと言う古い童話。
事件はこの童話に沿っていると真犯人を追う探偵。家族ぐるみの殺人と言うオチが何より恐ろしいです。05/09/09
★☆
418
どきどきフェノメノン
森博嗣
大学研究室での色恋沙汰物語。冴えない彼が策を練って主人公佳那にアッタク。ちょっとした「電車男」ですね。
主人公佳那のハキハキ感が、嫌味なほどに爽快でした。05/09/11
★★☆
419
ネコが元気をつれてくる。
麻生圭子
ネコとの調和があまり語られていないのが残念。人間関係の拗れを「猫がいるからいいもんね」と逃避するのは
あまりに寂しいです。猫と私と言うよりは、自分の事ばかり語っている気もします。05/09/13
★☆
420
ラディゲの死
三島由紀夫
短編集。ラディゲの話もそうですが、何らかの形で死にオチをつけた些か気味の悪い話が多かったです。
歴史物という程の内容ではありませんが、陰陽師を書いていたのには吃驚。05/09/16
★★
421
幕末明治剣客剣豪総覧
別冊歴史読本
居合の先生が借してくれた本です。数十人の作家が幕末の剣士に焦点を当て執筆。
己の武功を日記に一文字も書かない伊庭八郎や、「勝って誉められ負けて罵られたとて何の名誉も羞恥も
あったものではない」と剣法の勝敗を嫌い、精神の修練に努めた藤川整斎の言葉など、この道の重みを感じます。05/09/18
★★☆
422
西の魔女が死んだ
梨木香歩
己の死をも愛する人の心に良い形で活かそうとした西の魔女ことお祖母ちゃん。
死は生の終わりなのではなくその一部であることを、雄弁に語っています。
日本児童文学者協会新人賞、新美南吉児童文学賞、小学館文学賞受賞。05/09/20
★★★☆
423
二十四の瞳
壺井栄
昭和3年、瀬戸内海べりの一寒村に赴任する若い女性教師。
軍閥政権の教育方針に苦悩しながらも12人の子供達を教え、彼らの卒業を見守る。やがて、日本の敗戦を経て生徒達と再開。
夫や子供、教え子をも貧困や戦争に失い、すっかり老け込んでしまった小石先生に、生徒達は嘗ての恩を感じ思いやりの心を持つ。
喩え辛辣な人生に多くを失い続けても、愛だけは必ずそこに残るのだということを改めて思うお話でした。05/09/21
★★★
424
こころのチキンスープ
「誇り高き人生」
(執筆) ジャック・
キャン・フィールド/マーク・V・ハンセン
心のチキンスープ3「愛を見つめる 死を見つめる」を再構成し文庫化したもの。絶望を希望に変える数々のお話。
幸も不幸も受け止め方一つで別物になってしまう。だからこそ、不幸には耐え貫く価値があるのだと、そう感じました。
個人的に「クッキーどろぼう」がお気に入り。05/09/22
★★★☆
425
こころのチキンスープ
「小さな奇跡」 (執筆)ジャック・
キャン・フィールド
心のチキンスープ6を再構成し文庫化したもの。特に女性の生き方について語ったお話が多かったです。
男尊女卑の社会に屈することなく走り抜け、レポーターになり、作家になり、パイロットになっていった彼女達の強さに多くを学びます。05/09/25
★★★
426
司馬遼太郎が考えたこと1
司馬遼太郎
筆者20代から30代の間に書かれたあとがきやエッセイ。戦争体験や新聞記者としての苦心に、甘酸っぱい恋。
大学で蒙古語科を選択したのは馬族になるためだった、と言うのには驚きました。05/09/30
★★★
427
女王の百年密室
森博嗣
時代は近未来。主人公ミチルと彼をサポートするロボット、ロイディはナビゲータの故障で道に迷い、
とある老人の導きでプラトニズム(善の至高性)に保たれた小さな国に足を運ぶことに。
そこで起る殺人事件がミチルの悲しい過去とリンクし行きます。
悪しき思考のない街で、犯罪者に罪の清算を迫るミチル。苦しくも、善と悪は裏表一体の観念であることを
今一度考えさせられる、切なく、やりきれないお話でした。解き明かされる主人公の謎には吃驚。筆者のらしさを感じる、特異なミステリーですね。05/10/05
★★☆
428
悲しみよこんにちは
サガン
BONJOUR TRISTESSE の全訳。父の再婚相手に嫉妬する少女の物語で、その複雑な心情を感情的過ぎず、且つ機械的に
なりすぎずに表現しています。著者18歳の時の作品と知って唖然。嫉妬心に我を忘れた少女の心情。
「私は突然その時、自分がひとつの観念的実存物にではなく、生きた、感じやすい人間を攻撃したのだということを知った」
これが18歳の描写とは脱帽です。1954年度フランス批評大賞受賞。05/10/07
★★★
429
デューク
江国香織
絵:山本容子
死んでしまった犬のデューク。悲しみに暮れる主人公の前に突如現れる不思議な少年。
死や別れが全ての終わりではないことを、優しい形で教えてくれる本でした。個人的にこういうお話は大好きですね。05/10/07
★★★