BOOK-7
Present BY Kasumi Yahagi


[順不同。これは霞美の個人的な評価です]

本の題名 作者 霞美の一言メモ 5星評価
297 月のしずく 浅田次郎 短編集。自分の不幸に惨めさを感じつつ片意地を張る二人の男女がとある成り行きより肩を寄せ合い、その刹那に涙を流す「花や今宵」がなかなかよかったです。04/11/05 ★★☆
298 姫椿 浅田次郎 短編集。シエという中国の神獣を偶然飼う事になった主人公は自分を不幸だと思ったことは一度も無いと言い放つ。 しかし、シエの不思議な能力で不幸の全てを吸取ってもらった時、彼女は本当は自分が不幸だった事に気づいて泣きます。 一人で生きて行くために必要だった欺瞞。そこに、憐憫を感じました。04/11/09 ★★☆
299 かもめのジョナサン リチャード・バック 我々は生きるために食べ、そのためだけに飛べばいい。そんな仲間達の常識を覆し、一羽最速を目指して飛び続けるかもめのジョナサン・リヴィングストン。 他を真似ず自分だけの拘りを持ち、やりたいことを精一杯してみたい。 そんなジョナサンへの憧れがこの本をベストセラーにしたのではないかと思います。04/11/09 ★★
300 こころのチキンスープ2
 生きることは愛すること
(執筆)ジャック・
キャンフィールド
マーク・V・ハンセン
執筆者二人が全米から集めた感動の体験話集。 本書は神や宗教的教義を用いず物事をありのままに書いているので解釈が一方通行にならず、人種や宗教や国境を超えて理解し得る本になっています。 人が人に贈りたい本当のプレゼントとは、いつだって物質的意味合いを超えた自分の気持ち。この本はそう言ったモノを明瞭に見出していると思います。 「サーカス」「贈り物」「窓」がお薦め。「サーカス」なんて、こんなに優しい人がいたらあなた天使さまですか?って聞く。04/11/11 ★★★★
301 変調二人羽織 連城三紀彦 連城三紀彦傑作推理コレクション。「変調二人羽織」は大学在学中に執筆し幻影城新人賞を受賞。 お薦めは「メビウスの環」。被害者と加害者、紙一重の入れ替わりに驚愕です。04/11/14 ★★☆
302 ブランコのむこうで 星新一 自分の分身に導かれ入りこんだしまった人々の夢の世界。少年はそこでいろいろな人の夢と現実に触れて行きます。 現実では気丈にある人が夢の世界では泣いていたり。その他、心の開放、成功者への嫉妬、生死の境、良心の呵責。 夢に心の悲鳴を投影する人の儚さに多くを感じました。04/11/17 ★★★
303 その時ぼくは
 パールハーバーにいた
グレアム
 ソールズベリー
主人公は真珠湾(ハワイ・オアフ島)に住む日系アメリカ人の少年。一家は日本の真珠湾攻撃によりスパイの容疑をかけられ 祖父と父が憲兵に逮捕されてしまう。疑心暗鬼や偏見という戦争の悲劇を子供の視点で見つめます。 以下余談。戦後、隔離収容された日系ハワイ人は釈放されましたが全財産を没収されました。米国は80年に入ってその非を認め生存者一人に二万ドルの賠償金を保証。 実際ハワイの日系人はスパイどころか第442部隊として日本軍と戦い勲章まで得ていました。本書はスコット・オーデル賞受賞。04/11/18 ★★☆
304 一夜の櫛 連城三紀彦 推理モノではありません。多くは三角関係に熟れきった悲しい恋物語。「娘」は堕胎した女性の複雑な心情を良く捉えていると思いました。 本妻と元愛人との心の互助を画いた「梅の実」もお薦め。04/11/19 ★★★
308 月神の統べる森で
地の掟 月のまなざし
天地のはざま
月冠の巫王
たつみや章 たつみや章の古代ファンタジーシリーズ全四巻。 神や自然との調和を重んじ集落を形成して暮す縄文文化の人々と、そこから距離を置いて発足した権力支配のクニ(国)に生きる弥生文化の人々が、考え方の異なりから争いを起こします。 神々の力を借り支配勢力に立向かう主人公ポイシュマ少年と、彼との出合いで権力主義に疑問を持ち、人間の本質を考えなおすクニ生まれのワカヒコ。 二人の運命的な出会いに物語は二転三転します。そもそも争うという行為そのものを知らない主人公ポイシュマが、その汚れを知って行く過程など歯痒いものがありました。 アイヌのカムイ(神)に対する考え方を殆どそのままに用いているところは個人的に大好きです。 第一弾「月神の統べる森で」は野間児童文芸賞受賞。自然や動物達と共に生きる互助精神の大切さ、人間に取って尊ぶべくものとは何かをひしと感じます。04/11/24 ★★★
309 こころのチキンスープ (執筆)ジャック・
キャンフィールド
マーク・V・ハンセン
体験話集、シリーズ第一巻。白昼愛を口にすることの難しさと本当は誰もがそれを望んでいることを証明したような実話が多かったです。 人々の多くはその抱擁に涙を溜めてこう言います。知らなかった、本当は愛されていたんだ、愛はいつもそこにあったんだ、と。 愛している。その言葉に救われた命を奇跡と思うより、愛の作用を必然と考えた方が自然かも知れませんね。「ホームレス」「老人と花束」が好きです。04/11/25 ★★★☆
310 夢ごころ 連城三紀彦 人の未練や執念をテーマに書かれた短編集。静かなる復讐を画いた「露ばかりの」が凄いです。 他、著者の体験談「その終焉に」には、本当にそんなことがと吃驚させられました。04/11/26 ★★☆
311 2/26 笠原和夫 「昭和維新」を志に陸軍青年将校が蜂起した2・26事件。同じクーデターでも5・15事件のような政治的謀略と違い国民の貧困を救うためという、その志は良かった。 手段が暴力でさえなければ今日においても彼らはもっと理解を得たのではないかと儚く思います。 決起首謀者、磯部浅一の遺書。「維新という事は結局祈りです。それは、国家改造の具体案でもなければ改造でもない。祈りです」04/11/27 ★☆
312 世界の中心で、愛をさけぶ 片山恭一 つまらないと紹介されました。確かに良いとこ取りで書かれた感はあります。 しかし、潰乱した現代社会でこの廉直な愛の形が多くの人に渇仰されている事自体は、理解できなくもなかったです。04/11/28 ★★
313 私という名の変奏曲 連城三紀彦 自分が殺したはずなのにと、男女七人が自分以外の犯人の登場に混乱する長編密室ミステリー。 大犯罪の割にはその動機が今一つ漠としており、トリックの巧妙さだけが色濃く残った読後感でした。04/11/30 ★★☆
314 ピンクのチョコレート 林真理子 短編集。物語ですがエッセイに近い。中には話しの括りがよくわからないモノもありますが、それも特色として許される風の本でした。 どの話も現代人の抱える孤独感を穿っています。04/11/30 ★★
315 こころのチキンスープ11
 動物たちの贈り物
(執筆)
ジャック・
 キャンフィールド
マーク・V・ハンセン
マーティ・ベッカー
キャロル・クライン
愛の体験話集、動物編。あるトラック運転手はバーの片隅に居た異臭を放つ汚い空腹の犬に、出合うたび餌を与え語りかけ続ける。 やがて犬はその過酷な環境に体を壊し、歩く事もままならなくなります。犬を病院に運んだ男に獣医は言います。 「野良犬?この犬に帰る場所がないのなら安楽死させてやる他ないよ」男はいつしか芽生えていた愛を持って叫びます。「帰る家ならあります!」。 「あの時、お互い人生のどん底にいた…だから助けた」。犬もまた同じ事を感じたからこそ彼に懐いたのではないかと思いました。04/12/01 ★★★☆
316 夏の庭 湯本香樹実 近所の爺さんを見張って死ぬ所を見てみようと無邪気な計画を立てる小学生。 的にされた頑固爺さんはそんな子供の浅知恵を手玉に取って弄ぶ。そんな中、子供達とお爺さんは次第に親しくなって行きます。 その交流にお爺さんの人生を垣間見る子供達の率直な気持ちに共感。そして、予想し覚悟できていたはずのラストに、 やっぱり子供達と一緒に哀しむ自分が居ました。日本児童文学者協会新人賞、児童文芸新人賞、米国バチェルダー賞、ボストン・グローブ=ホーン・ブック賞、受賞。筆者は東京音大作曲科卒。04/12/02 ★★★☆
317 絵のない絵本 アンデルセン 月が見てきた多くの人の儚い一面を謡う散文。映像を見るように読むか、もしくは話の真意を掴もうと思って読むかで 感じ方も随分変わって来ます。宗教的教義が若干色濃いです。04/12/03 ★☆
318 午後の曳航 三島由紀夫 船乗りが海を捨て子連れの女と一緒になろうとする。そして失った海に生きる情熱と自由奔放。 何かを捨てねば新しいものは得られない。その事に目を瞑った男の話です。物語は連子の殺意に帰結。04/12/06 ★☆
319 たそがれ色の微笑 連城三紀彦 短編集。熟れた恋を様々な形で書いていたのが、最終話「風の矢」でイメージも一変。 親を殺され孤独となった主人公の子狐が、その仇と思われる人間に飼われる事に。 やがて始まった戦跡に主人を探し、屍の中に子狐が見つけたのはその人に化けていた自分の親狐だった。 「弱肉強食の森の生活に疲れ果て人間になってみれば、人間の世界も同じだったよ…」生きる事の憐れみをひしと感じました。04/12/07 ★★★
320 無憂華夫人 菊池寛 時は明治。険悪な両家の男女の、成就できない恋の未練を描いたもの。 今や男尊女卑の時代とは違うものの、誰にでもあり得る運命なのではないかと儚い気持ちで読みました。04/12/08 ★★☆
321 モリー先生との火曜日 ミッチ・アルボム 難病ALS(筋萎縮性側索硬化症)に犯され寝たきりとなったモリー教授と交わす「命」の授業。死と向き合う自らの心情を生徒である著者に披瀝する先生。 実際にモリー先生の授業を受けているような気持ちになりました。老いについての授業など印象深いです。 「若さにしがみつく必要なんかないよ。70歳になれば3歳にも20歳にも50歳にもなれるんだ」 死を直前に尚前向きなモリー先生に脱帽、感涙です。04/12/09 ★★★☆
322 青のフェルマータ 村山由佳 辛い経験から失語症を患った女性と、そのセラピスト的存在になったイルカの物語。 水着じゃなくて裸で触れ合いたいという海中の彼女が読むに絵的で、始終ユートピアを連想させてくれます。04/12/10 ★★★
323 ベロ出しチョンマ 斎藤隆介
(絵)滝平二郎
斎藤、滝平コンビの童話集。庶民の立場に立って画かれた物語は心暖まるものばかり。 「ベロ出しチョンマ」は、身分社会における理不尽な処刑に最後まで幼い妹を気遣い、死して尚可笑しな顔で笑わせ様とした長松の優しさに心打たれます。 物語に添えられた滝平氏の切り絵もすごく良いです。04/12/13 ★★★
324 星の王子さま サン・テグジュペリ 筆者が友人レオンに自分の分身として贈った一作。様々な星を旅し、大人や動物達と言葉を交す星の王子様。 「大人にはよく説明してやらないとわからないのです」など、大人と子供を等価値に見る目線が新鮮です。 筆者は1944年フランス飛行中隊長としてコルシカ島沖合いを偵察中行方不明。04/12/14 ★★☆
325 夏の終り 瀬戸内晴美 締りのない三角関係。主人公の女性が二人の間を右往左往ともどかしいです。女流文学賞受賞。04/12/14
326 こころのチキンスープ4
 ガンを超えて生きる
(執筆)
ジャック・
 キャンフィールド
マーク・V・ハンセン
パティ・オーベリー
ナンシー・ミッチェル
癌と闘って来た人達の体験話集。全く同じ治療をしてきた二人の医師の癌治療成功率は22%と74%。 前者の医師がその違いを問うと彼はこう答えます。「僕らは同じようにエトポシド・プラチナブ・オンコヴィン・ヒドロキシュリア を処方してきたけれど、君はこれを『EPOH』と読んでいるだろう。僕は『HOPE』と読んで患者に投与している。違いはそれだけだよ」 他の話にも、生きる気力がいかに命を繋ぐかを深く実感します。 恐い癌の症例に恐怖しないよう、しっかり主旨を捉えて読みたい本です。お薦めは「赤ちゃんの生命を救おう」。04/12/15 ★★★
330 功名が辻(全4巻) 司馬遼太郎 戦国武将山内一豊とその妻千代の物語。主役は妻の千代と言っていいです。 女大名とまで言われた千代の賢明ぶりは読むに爽快で、またそれらを誇示しないところが魅力的でした。 有名所では、一豊が欲しがった名馬を黄金十枚であっさり買った千代の挿話。 大金で買ったのは馬ではなく、それを見る者の心であったという話です。 「太閤記」「覇王の家」では読めなかった、山内夫妻から見た秀吉、家康観も面白い。 物語のラストが千代に内密で行われた一豊の悪政であることが、致し方ないにしても哀しかったです。04/12/22 ★★★☆
331 こころのチキンスープ8
 探しものは何ですか?
(執筆)
ジャック・
 キャンフィールド
マーク・V・ハンセン
ハノック・マカーティ
メラディー・マカーティ
愛の体験話集第8弾。 主に、求めるより与えた方がより多くのものを得るという格言がそのまま実証されたような話が集まっています。 自分が与えたものを忘れ、人から受け取ったものを覚えているという人は幸福な人なのだと言うことを実感します。 また、そういう人ほど自分より他人の幸福を願って止まないものですが。 「間違い電話」「わたしより」「名詞と副詞のお勉強」「どんな病気も治せる薬」がお薦め。04/12/24 ★★★☆
332 ネコのミヌース アニー・M・G
 シュミット
舞台はオランダ。人間の姿になってしまった迷い猫のミヌースが、上り症の新聞記者と供に暮らすことに。 主人公はミヌースと暮すことでその致命的な欠点を克服して行きます。 人間と野良猫との共存を堅苦しく問題定義せず、猫が人間になってもいいじゃないかという柔らかい考え方が、 逆に猫の気持ちを考える機会を読み手に与えてくれます。銀の石筆賞受賞。04/12/25 ★★★
335 峠(上・中・下) 司馬遼太郎 長岡藩藩士、河合継之介の伝記。明敏な頭脳で時世を捉えつつ、佐幕、攘夷、勤皇と言った三角図の中を無尽に動き回る継之介。 この人物、奇しくも志が見えにくく、話の中盤までは彼が何の安泰を願って奔走しているのかが今一つわかりませんでした。 終盤。西軍の蜂起に長岡藩中立の意思を説こうとし、官軍の土佐藩士、岩村高俊に跳ね除けられてしまうシーンが痛々しい。 当時まだ青年であった岩村の浅慮で継之介を敵にまわし、長岡藩と一戦を交えてしまったことが、官軍最大の失敗であったと維新の功績者が後に述懐。 ラストはその言分に頷けるような展開でした。05/01/07 ★★
336 ルート225 藤野千夜 公園に弟を迎えに行き、そこから迷い込んでしまったパラレルワールド。両親のいない世界での生活が始まります。 もしこれを悲観的に書いたら、こんなにやりきれない物語もないなと思いますが、それを姉の口語体でブラックユーモアに画かいているところが救いであり、面白いところでした。05/01/09 ★★★
337 使いみちのない風景 村上春樹
(写真)稲越功一
どんな美しい景色も結局はそのことのみに留まり使いみちがない。 本文がそう結論ずけてあるために、稲越氏の美しい写真が文章にそぐわなくなっています。筆者はそれを考えたのでしょうか。05/01/09 ★☆
338 幕末テロリスト列伝 (編集)
歴史を旅する会
人斬りと評された人物を俎上に多数の作家が執筆。 暗殺者は岡田以蔵など低い身分より政治利用されている者が多く、人斬り以外の活路を、例えば龍馬のような誰かが見出せてやれたなら 悔いるべくは悔いて人生を見つめなおせたのではないかと儚く思いました。本をくれたS先生に感謝。05/01/12 ★★
339 いま、会いにゆきます 市川拓司 病気(自閉症?)の巧とその息子二人の元に、他界した妻が生前の言葉通りに帰ってくる。 物語にはよくある既視感を覚えましたが、にしても、謎解きも含めて素直に面白かったです。 個人的には、これと引合に出されるセカチュウよりずっと好き。2004年、夫婦役に中村獅童、竹内結子出演で映画化。05/01/13 ★★★
344 屍鬼(全5巻) 小野不由美 甦りを果たした死人、屍鬼の仕業により村に蔓延して行く不可解な死。 友人や肉親の成れの果ての姿に人々は何を思い、どう行動するのか。 その悲劇に生じた数々のドラマが、この長い物語を読むに飽きを感じさせません。 また別の見方として、物語はその設定上、死があるからこそ生は尊いのだという命の必然性をあえて無視しているため、 ここに命の尊さを求めることはできないなと感じました。 生や死や命。人生。こちらだって生きるために殺すのだから仕方がないという屍鬼の言い分も含めて、 深く頷けるような訴えや考えは、私には見当たりませんでした。エンターテイメントとして楽しめた本です。05/01/21 ★★★
345 こころのチキンスープ13
 本当におこったラブストーリー
(執筆)
ジャック・キャン・フィールド
マーク・V・ハンセン
マーク&クリッシー・ドネリー
バーバラ・デ・アンジェリス
恋愛の良いとこどりが書かれているわけではありません。 恋の成就についてではなく、永い結婚生活に感じる倦怠感を乗越えて見るべく訓戒を示したような体験話が多かったです。 良い人と長く一緒にいれば、息を吸うような自然さで優しくされることを当たり前のように思ってしまう。 しかし、本当はその小さな心遣いのひとつひとつが常に馴合いではなく新鮮であるということに、改めて気づかされたりします。 「わたしを見守るひとがいる」がお薦め。05/01/24 ★★★

Last Up Data : 2005/01/24

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