Present BY Kasumi Yahagi
数
本の題名
作者
一言メモ
5星評価
134
王城の護衛者
司馬遼太郎
幕末の影役者達に焦点を置いた時代もの短編集。第一話「王城の護衛者」においては会津藩藩主松平容保の悲劇の生涯と、
それを証拠立てた驚きの傍証を今に伝えます。感慨深いラストに注目。(メモ:「鬼謀の人」「英雄児」「人斬り以蔵」は単行本「人斬り以蔵」に掲載)02/12/30
★★★
135
軍師二人
司馬遼太郎
秀吉の天下統一より後、徳川と豊臣で政権を競り合う1600年前を舞台とした時代もの短編集。
大阪冬、夏の陣や関ヶ原に未来をかける男達に、それを見舞い時には操る女達を描いています。03/1/7
★★☆
136
司馬遼太郎の日本史探訪
司馬遼太郎
NHK総合テレビで放映された「日本史探訪」を文庫化。物語ではないのでさして期待しないで読んだのですが、これが結構面白い。
歴史について、司馬遼太郎他多数ゲストが意見を交し合うといった形式で、松本清張との対話もあります。二大スター夢の競演♪03/1/10
★★★
137
月の砂漠をさばさばと
北村薫
(挿絵)
おーなり由子
仲の良い親子二人の楽しい日常を、おーなり由子さんの絵と共に物語る。
子供の視点で描かれたものではありますが、内容は大人向け。の中でも「猫が飼いたい」は必読。涙が止まりません。03/1/10
★★★
138
覇王の家
司馬遼太郎
徳川家康の生涯。600P近い厚い本にもかかわらずその展開は中々足早です。本能寺による織田政権崩壊後の、秀吉との抗争までを一気に物語ります。
秀吉死後の生涯(大阪夏・冬の陣や関ヶ原)については一切触れず、家康最後の時を少しだけ書いて物語は終結。
著者は関ヶ原を別に書いているので、そこに続くような形になっているのかも知れません。
家臣のことにも多く触れているのですが、本多忠勝の逸話がなかなか面白かった。家康は覇者とは言っても、これといって特別な人間ではなかったです。03/1/22
★★★
139
MISSING
本多孝好
一風変わった推理もの短編集。人の抱く微妙な心理に焦点を宛がって、事の真相を推察していきます。
ラスト二話は推理ものではありませんでが。それを読んで、筆者はかなり村上春樹の作品に影響を受けているなという印象を受けました。
その一方である「瑠璃」が、そういう意味で面白かったです。03/01/23
★★☆
140
こころのチキンスープ18
涙が教えてくれたこと
(執筆)
ジャック・キャン
フィールド
マーク・V・
ハンセン
良い本と出会いました。特に体に障害をお持ちでそれに落ちこんでおられる方には是非読んでもらいたい。
立ちはだかる苦難に真正面から立ち向かった様々な人の体験談をまとめたもの。
病気を克服するということは、同時に自分の心の在り方を解決するということ。
そして、人は己や他人の命について本気になって考えた時、誰もがその生き方を迷わなくなります。頭ではなく、心で下す決断。
そのことを、主観、客観の両面より垣間見ました。03/01/24
★★★★
141
真説宮本武蔵
司馬遼太郎
剣に生きた人々を題材にした時代物短編集。一話目「真説宮本武蔵」では、武蔵を剣豪と言うより兵法者として分析しています。
今日における武蔵の過大評価に捕らわれない、司馬遼太郎独特の客観的な史観が冴えます。03/01/30
★★☆
142
盤上の敵
北村薫
内容はネガティブ。北村薫がこういうものを書くこと自体にショックを覚えて筆者に非難の葉書を出す人が沢山いたようですが。
筆者はそれに目を通し、冒頭に「安らぎや人生の訓戒、教訓を得たいという方は読まないで下さい」と断りを入れています。
優しく暖かい文章を書くという著者のイメージが、ここへ来て悪い形を取ってしまったか。
内容自体は、巧緻なトリックに思わず驚嘆。推理小説の中でもコレほどのものはそうないのでは。読んで損はありません。03/02/02
★★★
143
捨て犬を救う街
渡辺眞子
平成12年、日本の保健所で殺された犬の数は249274匹。猫は527289匹。
動物保護国家オーストラリアの委員会が「2桁間違ってますよ」と、訂正してしまうほどの数。
特に共感した一文を要約して紹介します。「保健所は殺処分の現実の一端のみがメディアに流れると市民から非難を受ける。
しかし見誤ってはならない。真に責められるべきは保健所ではなく、そこに動物を捨てる人間だ」03/02/05
★★★☆
144
マザー・テレサ
沖守弘
電車の中で何度か泣きそうになってホトホト困りました。最も貧しい者に仕えると誓ったマザーテレサを写真家、沖氏が取材。
その形跡を写真付きでまとめた本。どんなに知名度が高くなろうと、貧しい人の側にありつづけた彼女の生き様に心うたれます。
彼女がノーベル平和賞を授与した時。メダルを手にしたマザーの写真を取らせて欲しいと言う筆者に彼女は優しく言います。
「私はメダルのために貧しい人と共にいるわけではないのですよ。オキ」
また、己の弱さを何隠さずそこに書いた筆者、沖氏にも好感が持てました。03/02/06
★★★★
146
クレオパトラ(上・下)
宮尾登美子
頭脳明晰、容姿端麗なクレオパトラの外交手段とは、隣国(ローマ)の覇者を愛することにあったと言える。
当時のローマで囁かれた「売春婦」の酷評も、平坦に見れば致し方ないかもわかりません。
兎にも角にも、問うはクレオパトラ本人の想いが本物だったのか否かということに尽きると思います。
幼少よりクレオパトラをずっと見守ってきた衛兵隊長アポロドロスの想いが切ない。03/02/17
★★★☆
147
アルジャーノンに花束を
ダニエル・キース
32歳にして幼児の知能しかないチャーリィーが、手術により天才的頭脳を得る。もう誰からも馬鹿にされることはないと喜ぶチャーリィー。
しかし、彼がそこに垣間見たものとは何であったか。彼は叫びます。
「愛情を与えたり受け入れたりする能力がなければ、知能というものは精神的道徳的な崩壊をもたらし
神経症ないし精神病すらひきおこすものである。つまり、自己中心的な目的でそれ自体に吸収されて、
それ自体に関与するだけの心、人間関係の排除へと向かう心というものは、暴力と苦痛にしかつながらないということ!」
私達は知識と愛情の均衡を、果して保つことができているだろうか。そして、あまりにも優しく、深く、切ないラストが待っています。03/02/20
★★★★
148
宮本武蔵
司馬遼太郎
史実の宮本武蔵です。物語では、沢庵和尚が少年武蔵に愛情を持って肩入れをするとなっていますが、
実際は生涯この二人が接触することは無かったようです。一切の脚色を取り除いた、人間武蔵を描きます。03/02/24
★★☆
150
砂の器(上・下)
松本清張
巧緻なトリックに執着する今時の推理小説よりもリアルです。犯行の動機はまさにその時代。昭和40年代を背景にして起こりうるもので
ハンセン氏病に対する当時の社会背景、世論や偏見を垣間見ることができます。
また、当時を肌で感じられるような文章が良いですね。「出店に並ぶ綺麗な財布」「国鉄目蒲線」「家賃五千円?!高いわねぇ〜」「映画見にいくぞ、洋服に着替えなさい」とかとか。03/03/03
★★★
151
蛍川・泥の河
宮本輝
昭和30年代を背景に主人公の幼年期と思春期の二つの視線でこの世の哀歓を綴る。
そこに描かれた現状そのものから離れて、読解を要するところがあるように思われ、また自分の浅学非才も手伝って話の趣旨をうまく胸の内に入れられませんでした。
「泥の河」は太宰治賞。「蛍川」は芥川賞、受賞。03/03/05
★★
152
国境の南、太陽の西
村上春樹
物語とは言い難いです。「ぼくが寝たいというより、この子はぼくと寝なければいけないのだ」など、そういった我侭な感情を
百歩譲ってある種の運命的要素として並べ立て、そうせざるを得ないことを、論じ立てているように見えます。
村上春樹作品の主人公には、共通して自分の好き嫌いを運命、もしくはそれに類似した霊的干渉のせいにする風がありますが、
それが世間に受け入れられるのは、誰もが自分もそういった力に背中を押されているのだと感じている。
もしくは、感じたいからなのかも知れません。03/03/10
★★★☆
153
R.P.G
宮部みゆき
ネット上に築かれた人間関係の狭間で発生した殺人事件。
「もし自分の顔を見せず、声も聞かせず、ハンドルネームの陰に安全に身を隠して、その心の内を誰かに語る機会を得ていれば」
そうすべきであったとは言わない。しかし、そうせざるを得ないほどにネットが病んだ心のよりどころになりつつあることを考えさせられる、
人間の弱さと切なさの入り混じった結末でした。同著作「模倣犯」と「クロスファイア」の刑事が再会し、今回の事件に挑みます。
それを読んでいない私にはわからないところがありましたが、話の枢軸を捉えるに差し支えはなかったです。03/03/13
★★☆
154
バグ
松岡圭祐
分厚い本ですが、苦になりません。ある新作ゲームをプレイした子供達が次々と自虐的な行動に走り、負傷者が相次ぐ。
原因を突き止めるために奔走する主人公は、そのゲームを開発した会社の堅実な若社長。
実際に起こった事件も会話に多く取り上げられていてリアリティーがあり、読者の盲点をついたトリックには思わず感嘆。
爽快なラストもいいです。主人公のライバルの、悪者のおじさんが良い味だしてます。03/03/19
★★★☆
155
陰陽師
夢枕獏
まさに平安ゴーストバスターズ。伝説の陰陽師安部清明が、親友雅弘の持ちこむ怪事件を次々と解決。
思っていたよりもずっとシンプルに構成されていて、とても読みやすいものでした。
読者層が広いというのも頷けます。因みに、陰陽師は役職で言うと国家公務員なのだ。03/03/24
★★☆
160
新太平記(全5巻)
山岡荘八
非常に読みずらいものでした。公私共に喧騒で在ったこともあり、内容がなかなか頭に入らず四苦八苦しながら読みました。
多くは楠木正成、新田義貞対足利尊氏との攻防が描かれています。
特に難しいことが書かれているわけではありませんが、登場人物の入れ替わり立ち代りが目まぐるしく、太平記を知らない人が読むには些か苦行になりそうです03/05/08
★☆
161
パプリカ
筒井康隆
主人公パプリカは患者の夢へ入りこみ、そこで精神的に治療を施す夢探偵謙サイコセラピー。
人が無意識の内に抱え込んでいる恐怖や欲望、その醜悪を、彼女はどのように相手に認識させ、解決して行くか期待して読んだのですが、残念。
後半夢の中の虚像(怪獣とか)が現実の世界で大暴れするなど、破天荒な展開に着いて行けなかったです。03/05/15
★★
162
城をとる話
司馬遼太郎
牢人車藤座が思い立って単身城(帝釈城)を奪おうと決起する単純明快な快活話。「車」性につていの余談が面白かったので紹介。
車氏はその一族から善七という人を出したのですが、この人が乞食の群れを組織化して江戸に潜入。
関ヶ原の恨みを晴らすと単身江戸城に忍び込み家康を暗殺しようとして捕まります。
家康は彼の豪胆さに飽きれ、処刑するにしのびずと、なんと彼を物乞頭(公務員)に任命。
以来300年間乞食する人は、彼の鑑札が要ったそうです。このため、諸国で車性を名乗る家はみんな他姓に改めなければならなかったので、
こんにちでは大変希少な性となっています。映画トラさんの苗字も車でしたね。03/05/20
★★☆
163
戦場のピアニスト
ウワディスワフ・シュピルマン
映画「戦場のピアニスト」の原作。ユダヤ人ピアニスト、シュピルマンはナチスの悪政から命からがら生延びる。
本書には映画にないエピソードとして、シュピルマンを救ったとあるドイツ将校の日記が添えられています。
この日記がシュピルマンの体験と当時の国家情勢、そして、国境を越えて見るべく人間の姿とは何かを言外に語っており
映画とはまた違った感想を持てると思います。全てを奪ったドイツ軍の、それもその将校たる人の中に、国や人種を越え
人間を思う人がいたことを、晩年のシュピルマンはどう受けとめたのだろう。ウワディスワフ・シュピルマン2000年7月6日永眠。03/05/26
★★★
164
少女パレアナ
エレナ・ホグマン・ポーター
少し読んで、世界名作劇場の「愛少女ポリアンナ」と気がつきました。
孤児となった少女、パレアナが気難しい叔母に引き取られるのですが、天性の明るさとその快活且つ破天荒?な発想と行動で、
大人達の頑な心を癒していきます。こんなにも面白いお話だったのだと目を丸くして読みました。
最初から最後まで笑いあり涙あり、また希望を改めてそこに垣間見ることのできる、心から人にお勧めできる本です。03/05/29
★★★☆
165
パレアナの青春
エレナ・ホグマン・ポーター
少女パレアナもいつしか二十歳の大人の女性へ。展開はジミー、ジェミー、パレアナの三角関係へと進展。
嘘のつけない彼女の素直率直な狼狽はどこか諧謔にあって、大きな魅力でもあります。そして、歓喜誘うラストシーン。
現在パレアナの物語りは二人の女流作家にひきつがれ既に50巻に及んでいるそうなのですが
翻訳者曰く、ポーター夫人の二冊「少女パレアナ」「パレアナの青春」にはとても及ばないそうです。
原書は第一次世界大戦の一年前1913年発表。ポーター夫人は1920年永眠。57歳。03/06/04
★★★☆