BOOK-2
Present BY Kasumi Yahagi


[順不同。これは霞美の個人的評価です]

本の題名 作者 霞美の一言メモ 5星評価
78 人斬り以蔵 司馬遼太郎 主に影役者を題材とした時代物短編集。歴史の一部分を皆それぞれが少しずつ紡ぎ、新たなの時代を切り開く。 その弼づけとなった影の部分。暗躍、裏切、暗殺。故に、担うべく運命の残酷さを感じました。 ★★☆
79 梟の城 司馬遼太郎 映画と比べた時、大凡原作の方が事が仔細に描かれており面白いのですが、若干本と映画では流れが違っています。 映画では服部半蔵がうまく物語に入りこんできますが、原作ではそれがない。 また別の視点で、登場人物の過去や未来を語っています。双方各々の面白さがあります。直木賞受賞。 ★★★☆
81 つかぬことをうかがいますが…
また、つかぬことを
□□□□□うかがいますが…
ニュー・サイエンティスト編集部 「どうして空は青いの?」「ビニール袋ってどうしてシャカシャカうるさいの?」などなど。そんな疑問に答えてくれる面白豆知識。 学者さんだけではなく、主婦や教師、小さな子供など、いろいろな人が解答者となっている点が良いです。 ★★☆
84 ねじまき鳥クロニクル
(第一部)泥棒かささぎ編
(第ニ部)予言する鳥編
(第三部)鳥刺し男編
村上春樹 何が面白いのかよくわかりませんでしたが(笑)、とにかく面白かった。二つの世界を、一つの舞台に物語は進行します。 一つは現実のこの世界。一つは意識の世界。題にある「ねじまき鳥」は実際には存在しない鳥です。 作品に出てくる「加納マルタ」と「加納クレタ」は絶対叶姉妹だと思う。 ★★★★
85 いちずに一本道
 いちずに一ッ事
相田みつを 自身の経験談に説法を加えたものです。憎しみにも、悲しみにも、そして優しさにも素直な方だと羨ましく思いました。 字の大きな本なので、読書の習慣が無い方でも読むのに苦労はしません。 ★★★
87 世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド(上・下) 村上春樹 構成は「ねじまき鳥クロニクル」と同じ。物語は二つの世界で進行します。 起承転結は肯けるものがあるのですが、主人公の考え方に私が共感できなかったという点で、個人的に消化不良でした。 ★★☆
90 アンデルセン童話集
(T)人魚の姫
(U)おやゆび姫
(V)マッチ売りの少女
ハンス・クリスチャン・アンデルセン アンデルセン童話の直訳本。童話ではありますが、大人向けです。 誰かの幸せのために苦しみ、涙した者の気持ちが汲まれている。「親指姫」で語られる、親指姫を救ったツバメの気持ちなどに表れています。 「親指姫は王子様と結婚し、皆に祝福されます。ツバメも親指姫のために美しい声で歌いました。 しかし、ツバメは心の中では寂しかったのです。なぜなら、ツバメは心から親指姫の事が好きだったのですから」 ★★★☆
91 光あるうち光の中を歩め トルストイ 集落を作りひっそりと分け合って暮らすキリスト教徒の生活を、理論的に非難する医師。 その非難を受けとめながらも、無条件に他に尽くし、己の命を賭してでも分け合う事の素晴らしさを説くキリスト教徒の友人。 二人の間で主人公の心は揺れ動きます。私はキリストも一人の人間として見ているので、神の子がどうこう という論理はよくわかりませんでしたが、彼の言う信仰に得る至福はそれはそれでよいものと思いました。 ★★
92 ポケットにライ麦を アガサ・クリスティー 私は、推理小説には起承転結とは別に人の愚かさや命の儚さについての描写を求めますが、 そんな私の欲する処に合致したラストで、老婦人の流す憐憫の涙がとても印象的でした。 ★★☆
93 冬のオペラ 北村薫 わりとおとなしい作風。最後は期待通りの情の描写があって良かったです。 北村氏の探偵シリーズ。落語家:春桜亭円紫。野外豹変病の令嬢:新妻千秋。そして今回登場する。自称名探偵:巫弓彦。 三人の中でも特に濃いキャラクターです。不思議な魅力を感じました。 ★★★
95 新史・太閤記(上・下) 司馬遼太郎 太閤豊臣秀吉の快挙を綴る。徳川家康をその傘下に引き入れ天下を取るところまでの物語です。 織田信長が本能寺で死んでから秀吉は天下に目覚め、ひたすらにつき走る。 その時期からの彼の陰鬱な部分は、展開の速さに霞んでいますが、そこをライトにしたのは著者の優しさであるような気もしました。 人の気持ちを巧みに掴む秀吉像には、学べるところがあります。 ★★★☆
96 TVピープル 村上春樹 短編集。「我らの時代のフォークロア−高度資本主義」と「眠り」は、村上氏の持ち味がよく出ています。 故に思ってしまうのですが、なぜ彼はその“何か”をはっきりさせないのだろう。 「何かが違う」「何かが間違っている」そして、その何かは「正しくないことだ」と、茫漠と集約されています。 ★★☆
97 スプートニクの恋人 村上春樹 ギリシャ(の近くの島)に行きたくなります。ゆったりとした朝の時間。裸で泳いでもオッケーの静かで綺麗な海。 美味しい飲み物や食べ物。夜は綺麗な星にほんのりと地を照らす民家の明かり。まさに楽園です。 そして、その楽園で行方不明となった「すみれ」の行く先を追う物語なのです。 ★★★☆
98 馬上少年過ぐ 司馬遼太郎 幕末と戦国後期を舞台にした時代もの短編集。「城の怪」がとても印象深かったです。 「司馬遼太郎がこういうものを書く?!」と、唸らされました。このお話はお推めですよ。 ★★★
99 平 将門 童門冬二 凡そ700ページの大作ですが、素早いストーリー展開がそれを感じさせません。 東京都大手町にある将門の首塚に纏わる祟話で、多くの人は将門に恐いイメージをもっていると思いますがいかがなものか。 彼がいなければ、私達は当時の政権たるものの蒙昧さ、民衆生活の悲惨さに目を向ける事さえできなかったかも知れません。 その優しさ故に彼は奔走し、東国に「平等の世界」を築こうとした。悪の跳梁が許せなかった。 将門の理想(国)は、今まさに私たちの願うべく生き方に学べると思います。 ★★★
101 十二国記
 月の影 影の海(上・下)
小野不由美 沢山の方に薦められて読みました。お話の舞台は全くの空想の世界。その域を出てはいないはずなのにどこかリアルで 実際に憶えのあるような疑問や不安、焦燥、乖離心や自己嫌悪、その意識が主人公の状況の変化と合わせて緻密に描かれています。 また、主人公と共に我々読者も疑問符を抱きつつ物語りは進行。ラスト、その辻褄を得た時は思わず感嘆してしまう。主人公の成長もとても魅力的です。 ★★★☆
103 十二国記
 風の海 迷宮の岸(上・下)
小野不由美 久しぶりに物語でドキドキしました。主人公は未だ十歳足らずの少年で、その正体は王を選ぶ神獣、麒麟。 少年は幼いながらも麒麟として覚醒できない事に忸怩の念を抱き苦しみます。しかし、やがては国を動かす決断の時を迎えることに。 “天命”以前に、ただそばにいて欲しかった。主人公のその想いは、逝く人に「行かないで」とつぶやいた、弱い自分を思いおこさせました。 子供が好きな方は、特に面白いと思うかも知れません。私は麒麟お付役の女怪、汕子がお気に入り。 ★★★☆
104 十二国記
 東の海神 西の滄海
小野不由美 今回の主人公は雁国の王、尚隆。 尚隆を王に選んだ当時の麒麟、六太の回想と、尚隆の国に起こった今現在の事件とが平行して描かれています。 各章、各節によりその境を区切っているわけではないので、ちょっと集中して読まないとこんがらがったりするかも。 一見鈍遇に見える尚隆の政治と、一見尖鋭と思われる尚隆の批判者、斡由の反旗。しかし、二人の真意と人間の本質は、窮地にあって初めてそれを露にした。 人間一様ではないというところがこのお話の魅力でした。終盤明らかにされる事実がかなり恐い。 ここまで、十二国記シリーズはどれも偉観な結末でついつい期待してしまいます。 ★★★
106 十二国記
 風の万里 黎明の空(上・下)
小野不由美 「私は何一つ悪いことなどしていない」自分をそう庇う悲運の女性が二人。 彼女達はその因果を景王、陽子に求めて旅立ち、そして、その旅路の中でこれ迄の己を振りかえる。 苦しい事をただひたすらに我慢することで、自分は何かをしている気になっていた。 現状を変えようと動き出さねば、何もかわるはずはなかったのに、と。 お話の起承転結よりも、場面場面の緻密な心理描写に心ひかれました。 メッセージが旗幟鮮明なだけに、その主旨がすくい易かったです。 ★★★
107 十二国記
 図南の翼
小野不由美 十二国記番外編第二段。十二歳の少女、珠晶が自分の王気を見極めるために危険な旅をするお話。 「私が王になって国を統べる」そう称する珠晶だったが、本当は国を統べたいと思っているわけではなかった。 本当に王気を備えている人は、本気で自分にそれが備わっているなどと思い上ったりしない。 物事の生業を教訓的に、時には哲学的に称えるシーンが多々あります。前作の登場人物がちらほらと顔を出すのも面白いです。 ★★★
109 十二国記
 黄昏の岸 暁の天(上・下)
小野不由美 テーマにかなりの重みがあって、上下巻のページ数でこれを語りきるのは些か難しいものと感じました。 話の舵となる悪の跳梁に対して多くは触れず、成すべき前に、己の在るべき姿を問いかけます。 物語としてはまだ初まったばかり。泰麒はこれからどうなってしまうのか、続きが気になりますね。 ★★☆
110 十二国記
 華胥の幽夢
小野不由美 十二国記短編集。登場人物の苦悩に客観的見解を交え、歩むべく道を見出す。後半はその辺に焦点を中てて進行。些か理屈っぽい部分もあるかな。 最終話はどの国がどういった現状にあるのかなど、ここまでの経過をさり気なくお浚いしています。 ★★☆
111 魔性の子 小野不由美 十二国記シリーズの外伝。時に人は様々な形で現実逃避を夢見る。本当は自分の帰るべき場所が別の所に用意されているのではないか。もっと違う世界があるのではないか。 主人公は高里という少年と出会い、様々な不可解現象を目の当りにします。 自分のせいだと懊悩する高里少年と、それを気遣う主人公。やがて少年は真実を知り、自分の本来居るべく本当の世界へ帰ろうとする。 主人公はつぶやきます「行くな…。俺を一人にしないでくれ…」。 現実逃避のために夢見た理想郷を現に持っていた高里少年。それに縋りつこうとする主人公の葛藤と嫉妬が切ない。 本編を知っているか否かで、感想も大きくかわってくるところでしょう。 ★★☆
112 風の歌を聴け 村上春樹 作者はこれをある種の自伝としたいのか、そう匂わせるものがありました。主人公は親友。通称「鼠」の書いた小説をこう批評します。 「彼の作品は素晴らしいと思う。誰も死なないし、セックスの描写なんかない」著者の作品はよく誰かが死に、多くは性の描写がある。 これは、自戒なのか皮肉なのか読み手が断定することは難しく著者もそれをしていません。「伝えたい」のではなく「言いたかった」のか。 ★★☆
113 1973年のピンボール 村上春樹 良かったのはこれに登場する双子の女の子。何か絵に描いたような言動がいい感じでした。 ★★
115 羊をめぐる冒険(上・下) 村上春樹 題の通り冒険の要素が濃くて謎解きもなかなか面白い。村上氏の作品は、投げかけた疑問や主題が茫漠としたままに終わることが多いのですが、 この作品はそこのところ旗幟鮮明でした。一風変わった冒険の雰囲気を楽しめる作品です。 「風の歌を聴け」「1973年のピンボール」この「羊をめぐる冒険」で、三部作ということみたいです。 ★★★
116 レキシントンの幽霊 村上春樹 村上氏の実体験というのが興味深い。そう「レキシントンの幽霊」は、筆者が実際に巡り合った幽霊。スティーブン・キングの「シャイニング」を思い出しました。 ★★☆
118 ダンス・ダンス・ダンス(上・下) 村上春樹 目まぐるしく入れ代わる怪奇な舞台でステップを踏み続ける。そう比喩すべく様々な出来事を主人公は体験し、物事の起点であった「イルカホテル」に戻って行きます。 物語は「羊をめぐる冒険」の数年後という設定。合わせて読んだ方が楽しめます。 どことなく「ねじまき鳥クロニクル」に似た雰囲気があります。クライマックスは結構ドキドキしますよ。 ★★★☆
119 カンガルー日和 村上春樹 短編集。有体に言えばよくわからない話ばかりでしたが、面白いという理屈をつけられない理由もないのです、と言ったら村上春樹風か。 「四月のある晴れた朝に、100パーセントの女の子に出会うことについて」がなかなかよかったです。 ★★☆
121 海辺のカフカ(上・下) 村上春樹 「ねじまき鳥クロニクル」と「ノルウェーの森」を足して二で割ったような作品でした。15歳の主人公、カフカ(偽名)少年が、東京から四国へ家出するお話。 現実的に捉えたならば、些かやり過ぎだろうと思える展開がいくつもありますが、物語の主旨が人のメンタリティーに帰依しているため、それがリアルとして許されている感じ。 雑誌「AERA」で“偉大なるマンネリ”と評されたのは、的を射ていそうです。 ★★★☆
122 春の夢 宮本輝 連載当初(AD1982)は「棲息」という題で執筆が進められていた作品です。文庫化にあたって 筆者の意思により「春の夢」と改題されました。このお話を読んで、私も後者の方が断然いいと思いました。 個人的に青春文学はあまり好きではないのですが、これは一様には言い表せない深みと面白さがあり、好感がもてました。 主旨を一点に絞っていないように見えて、そのメッセージは生を謳う事そのままにと、旗幟鮮明です。 あとトカゲさんがちょっとかわいそう。 02/10/29 ★★★☆
132 翔ぶが如く(全10巻) 司馬遼太郎 明治政権樹立から西南戦争終結までの日本を、西郷隆盛を中心に描く。 西郷隆盛という実像が人々の心の中で様々な色を帯び、虚像として新たに浮かびあがる。 その虚像を掲げる人、恐れる人。そんな心理事情が明治政権内外で相重なり、これを軸に日本は濛々たる騒乱へと誘われていきます。 幕末の史記全てに共通して見られる一部終始として、戦争において自軍の敗色が濃厚になると、その指揮官の多くは己の死をもって部下を助けようとする。 新撰組鬼の副長、土方歳三もそうでした。己の死を予期した時に沸立つ人間の本質。 人を思いやるその気持ちは、何か神秘的であり、相反して哲学的でもあり、そして、最も人間的であるようにも感じました。 02/12/25 ★★☆
133 神の子どもたちはみな踊る 村上春樹 短編集。全話、阪神大震災に触れた構成となってますが、話しの主旨がそこに傾倒しているわけではありません。 深みのある何気ない一言が目に付く本でした。特に「アイロンのある風景」の最後のセリフには、感慨深いものがありました。 そう。そんな時こそ目を覚まさないと。02/12/27 ★★★

AD2002 12/26

〜 EXIT 〜