とある商人の男が商売仲間からこんな話を聞きます。「あの山の麓では、三つ目の娘が毬つきをして遊ぶらしい」
それを聞いて男は思いました。「その三つ目の娘を見世物にすれば、楽して金もうけができるな・・・」
男はさっそく三つ目を縛る縄をもってその山へ出かけて行きます。そして、待つこと半刻。本当に三つ目の少女が現れるのでした。
男は娘に襲いかかり、縄で少女の手を後ろに縛り上げました。三つ目の娘は恐怖と苦痛に震え、泣きながら許しを乞います。
「おねがいです。おねがいです。どうか許して下さい。お家に帰して下さい」
しかし、男は聞き入れようとしません。男は娘を縛っている縄をひっぱり、無理矢理町へ連れて帰ります。
しくしくと泣きながら男に従う三つ目の少女。町につくと、それを見た人々は口々に言いました。
「おい!あれを見ろ!なんて酷い事をするんだ!子供を縄で縛って家畜のように引いて歩いているぞ!」
男はあっという間にかけつけた役人達に取り囲まれてしまいます。男は必死に弁解しました。
「違う!違うんだ!あの子の額をよく見てくれ!!あの子は三つ目の化け物なんだよ!!!」

結局、男は奉行所で裁きを受ける事になります。男は土下座をしてお奉行の登場を待ちます。
「おもてを上げよ」やって来た奉行の命令に従い、顔をあげた男は驚愕します。
なんと、奉行もそのまわりの役人も、みな三つ目だったのです。 奉行は、珍しいものを見るように男をまじまじと見て言いました。

「裁きは一先ず置いておく。まずはこの二つ目の化け物を見世物にせい!」