オグリキャップ

 風邪を引いても気がつかないような私が、1ヶ月半も入院してしまった。

「ウイルス性感染症」だったっけ?

なんでも風疹の細菌が血管に入り込んでしまったらしく、毎日40度以上も熱が上がった。

そのせいで肝機能障害まで引き起こして、さらに退院が延びる。

 でも、絶対にクリスマスには退院しなくっちゃ・・・。

私はほぼ無理矢理、イブに退院した。

 90年12月25日。

この日の有馬記念で、はじめて好きになった馬が引退する。

私はオグリキャップだけは購入馬券からはずしたことがない。

必ずから流して買っていた。

「これ以上オグリキャップをさらし者にするな」というスポーツ紙の記事があった。

こう考えるのもファンの心理・・・。

一人で船橋法典の地下道を歩いていると、知らないオジサマに声をかけられた。

「おねえちゃん、今日は何買いに来たの?」

(当時女の子が一人で競馬場に行くのはめずらしかったのだっ)

「オグリキャップ!」

オジサマはしそうな顔だ。

「オグリキャップはね、もう勝てないんだよ」

 オグリキャップはJC以外で初めて、強い馬のあかしである『単枠指定』をはずされた。

4番人気。

同枠に2番人気のメジロアルダンが入ったので連は結構売れている。

 オグリの単勝と連を3点買って家に帰った。

4コーナーでオサイチジョージをかわして先頭に立ったとき、

私は一人、テレビの前で声を上げて泣いていた。

小さい頃から負けず嫌いだった私が、声をあげて泣いた記憶はこのときしかない。

 私は単勝馬券を換金しなかった。

このときの換金率があまりにも悪かったためコピーサービスができたんだよね。

(私もその要因の一人だっ!)

その馬券を財布にしまってお守り代わりにしている。

まだ馬名もレース名も入っていない単勝馬券。

【中山 90年5回8日 9レース  1000円】