[1] 胆石

(1) 胆嚢胆石, 胆管胆石(総胆管, 肝内)とに分かれる

¨         胆嚢胆石

a)       コレステロール胆石, コレステロール過飽和による結晶析出.

b)       太った中年女性好発, “4F”とも言われる(female, fatty, forties, fertile)

c)        90%は無症状, 発作を起こすときは疝痛(胆嚢頸部での結石の嵌頓のため), 発熱, 黄疸の3大徴候. 脂っこいものを食べると誘発.

d)       診断はUS. 体位変換で動くacoustic shadow(AS, 音響陰影)

e)        治療は胆嚢炎と頸部嵌頓を起こしたとき. 無症状では治療しない.

¨         胆管胆石

a)       ビリルビン・カルシウム胆石, 胆道感染症(Oddi括約筋が緩む→腸内細菌の侵入), 細菌性βグルクロニダーゼの作用により形成. 

b)       高齢者多発

c)        90%は有症状. 治療の必要. 放置すると閉塞性黄疸や化膿性胆嚢炎

d)       診断はEUS(超音波内視鏡). USではガスのため, 上手く見えないこともある.

¨         肝内胆石:肝内胆管に出来る. 肝内での胆管走行に奇形. 難治性

(2) 胆嚢結石の治療方法

¨         外科的治療:胆摘(開腹, ラパ胆(腹腔鏡下胆摘出術))

¨         胆石融解療法(MTBE, 経口), 体外衝撃波結石破砕(ESWL):ラパ胆のほうがメイン

(3) 胆管結石

¨         外科的治療:胆管切開Tチューブドレナージ

¨         内視鏡的乳頭切開術(EST) or 内視鏡的乳頭バルーン拡張術(EPBD)によるVater乳頭からのアプローチと, 経皮的肝的胆道ドレナージ(PTBD)による経皮的アプローチとがある.

 

[2] 急性閉塞性化膿性胆管炎AOSC

(1) 胆石, 特に総胆管胆石の嵌頓による合併症として最も危険

(2) 胆道内圧の上昇→エンドトキシンを含む胆汁が血管に逆流

(3) 起炎菌は腸内細菌(E.Coliやクレブシエラ)

(4) 速やかなドレナージをしなければDICMOFに移行する.

(5) Reynoldsの5徴:Charcotの3徴(発熱, 黄疸, 右季肋部痛)+ショック, 意識障害 を見る

 

 

[3] 胆嚢腺筋腫症(胆嚢アデノミオマトーシス)

Rokitansky-Aschoff sinusの過形成, 胆嚢壁筋層肥厚, 癌との鑑別が難しかったり, 有症状では胆摘.

[4] 原発性硬化性胆管炎(PSCprimary sclerosing cholangitis)

(1) 中年男性に多い

(2) 総胆管に原因不明のびまん性線維化.

(3) 原因不明. 潰瘍性大腸炎の合併が多い→自己免疫疾患?

(4) 予後は著しく悪く, 肝移植の適応.

cf.  PBCと間違えるな. PBC:原発性胆汁性肝硬変. 中年女性に多く, 抗ミトコンドリア抗体(+), IgM血症などを伴う自己免疫疾患.

 

[5] 胆嚢ポリープ

(1) コレステロールをMφが貪食して生じた泡沫細胞が充満して出来る

(2) EUSによって胆嚢癌, 胆石や腺腫と鑑別

(3) 1cm以上の場合は癌であることが多い. 鑑別できないときは手術

 

[6] 胆管癌

(1) 性差はほとんどない. 特に50歳以上.

(2) 肝門部胆管癌が50, ついで下部胆管癌, 中部胆管癌

(3) 下部胆管癌の症状:総胆管閉塞症状(US, CTで肝内胆管腫脹 / 胆嚢の腫大→触知可能(Courvoisier徴候) / 血清中直接ビリルビン上昇 / ALP, γ-GTP上昇)

(4) 外科手術の適応

(5) 肝門部胆管癌はCarot三角があり, 手術が難しい→ Klatskin tumor

 

[7] 胆嚢癌

(1) 女性, 高齢者に多い. 男女差1 : 2

(2) 胆嚢結石と膵胆管合流異常が危険因子

(3) 初期は無症状

(4) 血液検査でCEA, CA-A19が上昇. 早期診断の決め手にはならない.

(5) EUSが診断の決め手.

(6) 外科的治療の適応, 黄疸まで出てくると予後不良

 

[8] Vater乳頭部癌

早期に閉塞性黄疸が出現するため, 他の胆道系の癌よりも予後はよい.

 

[9] 閉塞性黄疸

(1) 胆管の閉塞により胆汁の流れが滞る.

(2) , 結石, 膵炎など原因疾患はさまざま.

(3) 自覚症状:右季肋部, 心窩部の痛み, ウーロン茶様の尿, 白色便

(4) 血液検査でALP, γ-GTPなどの胆道系酵素の上昇. 直接ビリルビン優位のT. Bil上昇.

(5) USで胆管の拡張

(6) 治療はまずはドレナージ!それから原因を追求.

 

[10] 胆嚢炎

(1) E. coliKlebsiellaが起炎菌として最も多い.

(2) 急性では上腹部, 右季肋部, 心窩部などが痛み, 吐き気, 嘔吐, 発熱など. 堪能触知. 重症ではReynold5徴.

(3) 右季肋部の触診で疼痛のため呼気の途中で深呼吸が止まる(Murphy徴候)

(4) 血液学検査:炎症反応(CRP(+), WBC上昇, 血沈亢進). 胆道系酵素, GOT, GPT上昇. T. Bilも上昇

(5) 超音波:第一選択で行う.

(6) その他, 採取した胆嚢材料の培養.

(7) 膿瘍, 腹膜炎, 敗血症

(8) 早急なドレナージ

 

[11] その他, 先天性の胆道拡張症, 膵管合流異常

(1) 総胆管が膵管に開口して共通管をなして十二指腸に開口→総胆管の拡張と, 膵液の総胆管への逆流が多い.

(2) 膵管が総胆管に開口して共通管をなして十二指腸に開口する場合, 膵液の総胆管への逆流が起こる.