[4] 間質性肺疾患
肺の間質:基底膜で境された肺胞壁の結合組織よりなる. 広義には気管支周囲組織や毛細血管網を含む血管周囲組織, 肺胸膜下層, 小葉間隔壁の結合組織を含む広範な領域.
[分類]
(1) 臨床経過による分類
¨ 急性
¨ 亜急性:BOOP, NSIP/NCIP
¨ 慢性
(2) 病理組織分類
¨ 通常型UIP(Usual Interstitial Pneumonia)
¨ 剥離型DIP(Desquamative IP)
¨ びまん性肺胞障害DAD(Diffuse Alveolar Damage)
¨ 器質化肺炎型BOOP(Bronchiolitis Obliterans Organizing Pneumonia)
¨ 分類不能型NSIP/NCIP(Nonspecific/Nonclassifiable IP)
→病理組織と臨床分類は対応
¨ 急性:DAD
¨ 亜急性:BOOP, NSIP/NCIP
¨ 慢性:UIP, DIP
(3) 特発性間質性肺炎IIPの分類
急性型(AIP), 慢性型(IPF:特発性肺線維症, CFA)
[亜急性IP]
(1) BOOP
¨ 可逆性(肺胞リモデリングなし)
¨ 肺胞腔内線維化はポリープ状, やがて消失
¨ 病理所見:胞隔炎, 肉芽組織, 蜂巣肺なし, 間質の広範囲な線維化なし.
¨ CXP所見:移動性の両肺野の浸潤影
¨ 炎症反応陽性:CRP(+), 血沈上昇, WBC増加
¨ BALF:Tリンパ増加. 特にCD4+の方が多い
¨ ステロイド(プレドニダゾール)の反応良好 = 予後は良い
(2) NSIP/NCIP
¨ BOOPに類似. BOOPよりも予後は悪い
¨ 壁在性肺胞腔内線維化優位
¨ 肺胞上皮の再生がUIPよりも良い. 可逆性
[DADとAIP(急性型IIP)]
(1) DAD
¨ フリーラジカルやプロテアーゼ等の障害因子によるtype I上皮細胞, 内皮細胞の障害. 剥離壊死に陥る.
¨ AIPのときに示す組織所見がDADである.
¨ 透過性亢進→非心原性の滲出性肺浮腫 = 肺水腫
¨ 硝子膜形成あり
¨ 間質細胞の肺胞腔への侵入→筋線維芽細胞→肺胞腔内高度線維化
(2) AIP
¨ Hamman-Rich症候群とも言う.
¨ 急激に発症, 急激に呼吸不全
¨ 病理組織的にはDAD
¨ CXP所見はびまん性浸潤影
¨ 急性炎症:CRP(+), 血沈亢進, WBC増加
¨ BALF:好中球増加
¨ ステロイドパルス療法. 多くの場合予後不良.
[慢性IIP]
(1) UIP
¨ 初期はMφ, リンパ, 好中球を介した肺胞炎→肺胞腔内線維化
¨ 炎症が治まると蜂巣肺(肺胞道を残して線維化する為)
¨ 肺水腫なし
¨ 肺胞上皮の再生が悪い→予後不良
¨ 気管支上皮が覆い被さってくる = 気管支化
(2) DIP
¨ 急性期の形態
¨ 肺胞腔内にMφ存在
¨
ステロイドに対する反応良好
(3) 慢性IIPの概念
¨ 慢性の経過, 肺の線維化とリモデリング
¨ 蜂巣肺にいたる.
(4) 臨床症状
¨ 労作時呼吸困難
¨ 乾性の咳
(5) 理学的所見
¨ fine crackle
¨
ばち状指
(6) CXP, CT所見
¨ 肺底部からはじまるスリガラス様陰影, 線状網状影, 肺野縮小, 蜂巣肺
(7) 肺機能検査所見
¨ %VC低下 = 拘束性障害
¨ DLCO%の低下 = 拡散障害
¨
PaO2の低下
(8) 臨床検査所見
¨ 赤沈亢進
¨
γ-globulin増加
¨ LDH高値
¨
RA(+)
¨
抗核抗体(+)
¨ BALF:正常
(9) 予後
¨ 5生率 40-50%, あまりよくない
¨
肺癌の合併が多い
(10) 治療
¨ 安静, 感冒等の呼吸器疾患, 肺癌に注意
¨ 進展期は酸素療法, ステロイド(症状が強ければパルス).
¨ 急性悪化時はステロイドパルス
(11) 慢性型のIIPの活動度を見る血清マーカー
¨ SP-A/SP-D
¨
KL-6
¨
LDH
[膠原病による肺病変]
(1) 慢性間質性肺炎IP, 肺線維症(UIP), 胸膜炎を呈する
(2) 薬剤や疾患による感染防御能の低下
(3) 心不全性のうっ血
(4) 疾患特有の病変
¨ SLE→肺胞出血
¨ PSSとMCTD→肺高血圧
¨ PM/DM→AIF = DAD
¨ Sjögren症候群→LIP “Sjögrenではlip(唇)がかわくよ”
[過敏性肺炎]
(1) III型, IV型のアレルギーが細気管支から肺胞にびまん性に起こる
(2) びまん性肉芽腫性間質性肺炎の総称
(3)血中IgG上昇 = III型アレルギーのため
(4) BALFでCD4+Tリンパ(+) = IV型アレルギーのため
(5) ツ反陰性化:最も特徴的所見
(6) CXP:びまん性散布性粒状陰影
(7) 帰宅誘発試験(+)
(8) %VC低下:拘束性障害, DLCO低下:拡散障害, PaO2低下:肺胞換気障害
(9) 聴診所見で捻髪音(fine crackle)
(10) CRP(+), 血沈亢進, WBC上昇
(11) 原因
a) 日本では夏型過敏性大腸炎が75%で一番多い
¨ 夏の関東から西日本に多く, とくに主婦に多い
¨ カビ(Trichosporon)による
b) 鳥飼病
¨ 鳥の羽毛と関連
c) 農夫病
¨ かびた枯草. 好熱性放線菌
(11) 治療:抗原からの隔離, (副腎皮質ホルモン→普通いらない)
[薬剤性肺炎]
(1) 薬剤投与後, 2week以内に惹起される
(2) CXP:びまん性粒状陰影
(3) 血沈亢進, WBC増加, LDH増加
(4) リンパ球刺激試験(+)
(5) DLCO, %VC, PaO2いずれも低下
(6) 抗がん剤, 抗生物質のほか最近では漢方薬で問題
(7) 毒性反応, またはIII, IV型アレルギー反応
(8) 直ちに薬剤を中止する.
[放射性肺炎]
(1) 抗がん剤等で頻度が上がる
(2) 陰影が照射野に一致して, 肺区域や葉に関係なく広がる
(3) ステロイドで治療