大澤 武司 (Dr. OSAWA Takeshi)
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熊 本 日 記 (2008年5月)
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□2008年5月30日(創立記念日) 南阿蘇
らくのうマザーズ阿蘇ミルク牧場 Canon EOS 40D/SIGMA 18-200mm F3.5-6.3 大学の創立記念日を利用して南阿蘇へ。来熊以来、慣れない家事に疲れ気味の妻のためにもこのあたりで小休止。ドライブついでに南阿蘇で温泉につかる。抜けるような青空に匂い立つ初夏の新緑。大自然のなかにいることを実感する。
子ヤギと もとより研究者のホームページでどのような情報を発信すべきなのかについては議論があるが、堅苦しい話ばかりではつまらないだろう。もとより「近況報告」的なページではあるが、マスプロ講義では知りえない「先生の日常」を知ることで、少しでも学生さんとの距離が縮まればとも思う。
牛の乳搾り もちろん、いろいろな建前はあるが、基本的には東京の「ばぁば」や「おじいちゃん」や「おばあちゃん」にいち早く写真を見せることが目的のひとつであることは言うまでもない。ご寛恕あれ。
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□2008年5月28日(水) 海外事前研修
我が東アジア学科は毎年夏に約1か月間の短期海外留学を実施している。通常は北京なのだが、周知の通り「奥運」のため、今年は吉林大学で漢語研修。引率の教員が持ち回りで事前研修を担当することになっており、政治・歴史が専門の私は、中国語の実用会話を訓練するわけにもいかないので、「吉林」や「長春」にまつわる教材を準備した。
「吉林」や「長春」といえば、やはり「残留孤児」である。長春には残留孤児の養父母が住む「中日友好楼」があるという。一方、熊本は「開拓団」送出数第3位という歴史を持つ。細かく紹介するには時間が足りないが、少しでも全体像を知ってもらい、「熊本」と「長春」を結びつけてもらえればと思う。細かい部分はともかく、興味を持ってくれた学生さんもいたようだ。
南開大学より「修改」論文をアクセプトした旨のメールが届く。刊行は来年初め。コメント |トップ
□2008年5月26日(月)
朝早く研究室へ。溜まっていた事務仕事を一気に片づける。 同時に締め切りが迫っている中国語論文の「修改」を進める。執筆すべきものは多々あれども手が回らず、「筆債」という言葉が頭をよぎる。講義準備も進める。
午後は専門演習。「モティベーション」という言葉が頭をよぎる。
研究室に戻り、一気に「修改」を終わらせる。何とか規定量まで「圧縮」成功。最終的にどのような形になるのかは不明だが、「種」を蒔いておくことは重要。中国へ送信。「6月14日締め切りの論文」という言葉が頭をよぎる。コメント |トップ
□2008年5月25日(日) 最近頂いた2冊
関連性のある本を2冊頂いた。まずは小林英夫・柴田善雅・吉田千之輔編『戦後アジアにおける日本人団体―引揚げから企業進出まで』(ゆまに書房、2008年)。某研究プロジェクトでご一緒させて頂いている加藤聖文先生がお送り下さった。
私自身、先週末も東京に日帰りして「引揚」関係の仕事をしてきたばかりということもあり、大変興味深く読ませていただいている。ひとくちに「引揚」研究といっても、その範囲が極めて多岐にわたることを改めて「痛感」させてくれる内容となっている。仮に「帝国の人的収縮」という視点から「引揚」を見る場合、はたして「人数が多かった」という理由から、主に中国のみを語ることで何かを考えようとするにはやはり限界があることを強く再認識させられた。
書評が書けるかどうか、真剣に考える。
残るは早稲田大学の劉傑先生から頂いた『新華僑 老華僑―変容する日本の中国人社会』(文藝春秋、2008年)。劉先生とも某研究プロジェクトで最近ご一緒させていただいている。
共著者である譚■(王+路)美さんは、『中国共産党 葬られた歴史』(文藝春秋、2001年)で存じ上げていたが、やはりインタビューを土台に書かれた部分が面白く、学会終了後の博多のビジネスホテルで寝しなに一気に読了。
翌日、東京行きの機内で劉先生の執筆部分も読み終え、近現代の日中間における「ヒト」の移動が簡便にまとめられていた点に感心した。
両先生から頂いた本を読むに、やはり今後の日中間における市民社会の接合を視野にいれつつ、かつての「ヒト」の移動に研究関心が集まっている点を強く感じた。
一次史料の発掘が進み、「引揚」研究は新たな段階に入りつつあるが、改めて自分の研究をもう少し広い視点から位置づけなおさなければならないと感じた。コメント |トップ
□2008年5月吉日(晴天) 大阿蘇
白川水源 Canon EOS 40D/SIGMA 18-200mm F3.5-6.3 母が来熊しているので阿蘇山をドライブ。帰りの渋滞が怖いのでまだ阿蘇方面には出かけていなかった。とりあえず南阿蘇から111号線を北上して、中岳火口や草千里、そして米塚などを訪れるコースを走ることにする。
まず訪れたのが「白川水源」。自宅のすぐ裏を白川が流れていることもあり、ぜひ訪れたいと思っていた。素人でもそこその写真が撮れるほど美しい水源。この名水で焼酎を割って、馬刺しと人文字ぐるぐるを食せば、「快哉熊本!」である。
阿蘇山 続いて阿蘇山。「雨は蕭蕭と」は降っていなかったが、確かに「もしも百年が この一瞬の間にたつた」としても、不思議はないような感覚にとらわれた。わずか実走3時間弱のドライブ。これほどまでの大自然に触れられるとは。熊本恐るべし。
中岳火口
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□2008年5月23日(金) マスプロ講義
おしゃべりを止めない学生を怒鳴る。基本的に最低限の出席以外はとらない主義なので、受講する学生は静粛にして欲しいと思う。怒鳴るのは大人げないが、「諦めの境地」に立つにはまだ早すぎるだろう。真面目に参加している学生さんには申し訳ない講義となった。コメント |トップ
□2008年5月21日(水) 論現代台湾
慈湖紀念公園
朝9時から中国近代史の講義。本来ならば康有為や梁啓超、あるいは孫文を紹介しながら、清末の「改革」と「革命」の思想を講義する予定だったのだが、前日の馬英九氏の中華民国総統就任式に触れて、90分間まるまる「現代台湾政治論」を打つ。
台湾は難しい。少なくとも「経緯」を丁寧に説明しなければ、馬英九国民党の再登板の意味を学生に伝えることはできない。ずいぶん前に訪れた「慈湖公園」の写真をレジュメに織り込みながら、「現代台湾政治群像」である蒋介石、蒋経国、李登輝、陳水扁、そして馬英九を紹介する。「アイデンティティが複雑である」ということの意味が少しでも伝われば思う。
午後は会議が立て続けに3つ。学生さんの研究室訪問も2件ほどあり、「少しは馴染めてきたか」と感じる。コメント |トップ
□2008年5月18日(日) 東京出張
朝一番、福岡から東京へ。渋谷のNHKで秋に放映予定のNHKスペシャルに関する企画打ち合わせ。詳しくは書けないが、「引揚」をめぐって当事者が持つ記憶とその背後にあった「極めて現実的」な国際関係を重層的に描き出せればと思う。2時間半ほどの打ち合わせの後、再び羽田へ。日帰りでも充分に仕事はできると実感。日本は狭い。コメント |トップ
□2008年5月17日(土) 現代中国学会 in 九州大学
来熊後初めての「学会」報告。西日本部会の春季研究集会ということで、とにかく顔を覚え頂くことを目標とする。論題は、先月天津の南開大学で中国語で報告したものを、日本語で紹介することに。いうまでもなく、紹介する事実関係は同じだが、報告するステージがホームかアウェイかによって、当然「切り口」は変わる。
最終報告であったが、議論はなかなか白熱したと思う。何よりも素晴らしかったのは、コメンテイターである。尚絅大学の和田英穂先生をお迎えした。周知のように和田先生は中華民国の対日戦犯処理政策研究の第一人者である。奇遇なことに和田先生とは共通点が多い。まず二人とも1973年11月生まれ。某先生にお招き賜り北海道に行った。「中国」の戦犯政策研究をしている。同じ熊本の大学に就職。研究会前の昼食にココイチでカレーをかっこむ...。間違いなく深い「ご縁」がある。
また、今回は新中国の法制史の研究者である九州国際大学の通山先生もご参加くださり、貴重なコメントを数多く頂いた。学部時代に法律は少しかじったものの、法制史をご専門とされている先生からのご助言はやはり別格である。建国初期に登場する法律家たちの個性や「その後」、あるいは「量刑」をめぐる法制度確立の過程と対日戦犯処理における量刑問題との因果関係など、今後の研究テーマを頂くことができた。
博多の夜を満喫したいところだが、明日は早朝から飛行機で東京に飛ぶため、劉傑先生より頂いた『新華僑 老華僑――変容する日本の中国人社会』(文藝春秋、2008年)を読み終えて就寝。
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□2008年5月16日(金) 講義
履修者が250名を超える大教室の講義もすでに6回を超えた。ようやく半分という感じだが、最近、あまりにも中国をめぐっていろいろとイベントや事件が発生しているので、どうしても本題に入る前の「導入」の話が長くなってしまう。
それだけ「話すこと」に慣れてきた証拠なのだろうが、一方で講義計画もある。A3のレジュメ3枚という分量そのものが、もとより90分では紹介しきれないので、「続きは来週」という形になることも...。コメント |トップ
□2008年5月8日(木) 沙飛写真展
午前中は自宅で講義準備と研究費応募書類の最終確認。研究を進めたいと気持は焦るが、まずは足場づくり。次の研究課題につなげるためにも、これまでの研究を確実にまとめて形にしなければ。仕事の合間に某有名雑誌の記者の方からの取材依頼に応え、簡単な現状分析のコメントを書く。「パンダ外交」と胡錦濤主席。取材を受ける立場になったか...。
午後は仕事の合間を見て、熊本市民会館で開催されている「沙飛写真展」へ。熊本の日中友好協会が協力されたようで、なかなか立派なパンフレットも用意されていた。いわゆる俘虜寛待の現場を捉えた一葉の写真も魅力的だが、個人的には魯迅を囲むサロンの写真――上海の魯迅記念館で実物大の人形で再現されているあの場面である――が沙飛の手によるものであったと知ったことが衝撃だった。
同じ市民会館のホールで行われていた就職セミナー。そこから出てきたリクルート・スーツに身を包んだ学生さんとおぼしき若者が、足を止めて沙飛の写真を食い入るように見ていた。何かを感じたようだ。こういう衝撃は若いうちに受けた方がいい。その意味でも、少しでも多くの学園大生に足を運んでほしい。コメント |トップ
□2008年5月3日(祝) 人文字ぐるぐる
熊本の郷土料理「人文字ぐるぐる」 熊本は食べ物が大変美味しい。すべての基本である「水」が美味しいせいか、まずご飯が美味しい。そして、当然のことながら野菜が安くて美味しい。都心のモスバーガーの店頭にある「原産地」表示を見ても、「熊本県産」の素材が多いことに気づくだろう。さらには馬肉。決して馬刺しだけでなく、焼き肉はもとより、カレーやコロッケ、ハンバーグ、もちろん煮物や煮込みなど、すでに日々の食卓に馬肉は欠かせない存在となっている。
なかでも気に入っているのが「人文字ぐるぐる」。「人文字」という郷土野菜をかるくゆでで、一本づつに分けたものをぐるぐると巻いて、からし酢味噌で食べるのだが、これがお酒に良く合う。「じゃくじゃく」とした触感が楽しめ、なによりも身体によさそうである。妻も最近ようやく作り慣れてきて、写真のような「ぐるぐる」が日々食卓にあがるようになった。コメント |トップ
□2008年5月1日(木) 事務作業など
終日研究室にて科研費応募「神請書」の作成。もとより当たる確率は極めて低いのだが、奥運会と一緒で「参加することに意義がある」の精神である。昨日研究室にパソコンなど機材一式が入ったので仕事もはかどる。
今回はパソコンやプリンタ(インクジェットで充分)などは必要最低限に抑え、なによりもこだわりのある大型ディスプレイを少し奢った。A4原稿が2枚並べて確認できるよう、24インチワイドのものを入れてもらった。すでに講義を受けている学生さんはうんざりしているかもしれないが、私はレジュメづくりマニアであるため、画面はとにかく大きいほうが効率が良いのである。
翌日の講義準備などを進めているとあっという間に夕方5時。学科会議に参加。熊本県内外の高校の名前を含めて、耳にすることがすべて勉強である。帰宅後、引き続き「神請書」づくりにいそしむ。コメント |トップ
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