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大澤 武司
(Dr. OSAWA Takeshi)



 


研 究 日 記
(2006年7月)


□2006年7月30日(日)  「反日」以前...。

 水谷尚子著『「反日」以前―中国対日工作者たちの回想』(文芸春秋、2006年)を読む。私の研究との関係で特に注目していたのは、「戦後日中民間人道外交」において廖承志氏の右腕として民間交渉に直接携わった趙安博氏に関する部分であった。かつて『世界』に発表された記事を拝読していたので、戦後の部分に期待していたのだが、「伊藤問題」が大部分を占めていたため、当時の「北京機関」の雰囲気を知るという意味においては良いのだが...。

 近時、終戦後から建国初期にかけて、あるいは国交正常化以前、さらには国交正常化後の「日中友好物語」が数多く出版されているが、「対日工作」の「工作性」をどのように捉えるかによって、その評価は大きく分かれることになろう(もっとも、「工作」といっても、いわゆる日本語の「工作」が持つイメージとは異なるのだが...)。中国の冷戦外交の文脈においてその対日工作を位置づけた場合、あまり「友好」ばかりを強調するのはかえって本質を見誤る可能性があるのではなかろうか。

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□2006年7月29日(土)  東アジア国際政治史研究会

 研究会参加のため多摩へ。第一次大戦期から現在までの「中独ソ」同盟の消長を概観された田嶋先生、日中戦争勃発後の日本による対米世論工作を取り上げられた高橋先生、原内閣期の朝鮮官制改革を総括された李先生の各報告であった。

 独中関係という視角からする国際政治に対する考察は、日中関係や東アジア国際政治という枠組みにとらわれがちな私にとって大変新鮮であった。また、日本政府による対米世論工作については外務省の対華文化事業との関連が気になるところである。官制改革については全くの専門外であるので、今後の研究の課題をいただいた形となった。

 服部先生より『国境を越える歴史認識―日中対話の試み』(東京大学出版会、2006年)を頂く。早稲田で行なわれたシンポジウムにも参加していたため、早く購入しなければと考えていた矢先だっただけに、大変嬉しかった。

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□2006年7月28日(金)  論文執筆

 やはり終日論文執筆。ほぼ書き終える。

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□2006年7月27日(木)  論文執筆

 昨日に続き、終日論文執筆。

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□2006年7月26日(水)  論文執筆

 終日論文執筆。

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□2006年7月25日(火)  企業訪問

 就職活動というわけではないのだが、本日は3社訪問。いろいろな日本企業の社員さんにお会いすることができて楽しい。

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□2006年7月24日(月)  看病休暇

 先週から熱が上がったり下がったりの息子だったが、ようやく乱高下も落ち着き、昨日からは37.5度前後で推移している。とはいえ、また上がると困るので、今日は保育室をお休みさせた。熱もほとんどないため、一日中やりたい放題である。もっとも、息子がいると全く仕事が手につかないので、私にとってもちょうど良い休暇になる。

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□2006年7月21日(金)  修士論文中間報告会

 今年は3名の修士が論文を提出する予定である。また、テーマも中華民国法制史、「戦後日中民間経済外交」、現代中国初等教育問題と多岐にわたっており、サポートする側も幅広く参考文献に当たる必要があることから大変勉強になっている。

 今週はある意味で「命がけの飛躍の段階」であったので、院ゼミのメーリングリストも大活躍してくれた。いずれの構想も「形」になってきたと思う。その意味では、報告会はその成果のアウトプットに過ぎない。気を抜かずに、今のテンションを保ちながら夏休みに突入して欲しい。

 少し幅広く押さえようと猪木正道先生の『軍国日本の興亡―日清戦争から日中戦争へ』中央公論社、1995年)を読み直している。新書ではあるが、読み返してみるに、なぜ日清・日露戦争に勝利することができたのか、という問題が、日中戦争、あるいは「アジア・太平洋戦争」でなぜ自滅の道を歩んだのか、という問題を考えるうえで極めて重要な示唆を与えてくれることに、今さらながら気づかされ、自分の不勉強を恥じた。いや、今だからこそ沁みこんで来るのかもしれない。改めての乱読の好機到来か。

 「富田」メモは、次期首相のアジア外交上のフリーハンドを広げるものとなるのだろうか。「心の問題」と「真っ当な論理」。相互理解の着地点は「真っ当な論理」の尊重とその「真っ当な論理」と自分の「心」の距離を自分自身が理性的に自覚することではなかろうか。日中関係の好転を期待する。

 論文の「はじめに」を書く。

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□2006年7月19日(水)  研究報告

 政策文化総合研究所の研究会で報告。論題は「幻の日本人『戦犯』釈放計画―新規公開の中国外交部档案をてがかりに」。1955年春の中国政府による日本人「戦犯」釈放計画とその意義について簡単にまとめたものである。

 「比類なき寛大」と評される中国の対日「戦犯」政策における外交戦略上の一側面を中国外交部档案を利用して考察した。小さな事例であるが、建国初期中国の対日政策を考察するうえで「戦略」性という視点が不可欠であることを改めて教えてくれるものであった。簡単な研究ノートか何かにまとめようと思う。

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□2006年7月18日(火)  追い込み

 金曜日に予定されている修士論文中間報告会。本日は報告予定者の希望から急遽報告の予行練習を行なうことになった。

 例えさまざまな制約があったとしても、テーマ設定や視角のオリジナリティ、あるいは論文構成の妙によって、修士論文であれば、ある程度「形あるもの」にすることは難しいことではない。ただ、そのような一種テクニカルな部分を修士の院生に期待することは難しいので、それぞれの院生の興味や問題意識を尊重しつつ、ひとつずつ議論のなかで確認しながら、一緒に形作っていくプロセスが大切になる。

 特に、就職が内定している院生にとって修士論文を書き上げることは、将来社会で仕事をしていく際に必要な基本的なスキルを体得する大切なトレーニングとなるので、このあたりを意識しながらデータの収集、分類、整理、分析、さらにはプレゼン資料の作成、プレゼン方法、作業進行状況の共有習慣などを習得できるよう、サポートしていければと考えている。

 残すところ5ヶ月。これからが本番である。

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□2006年7月14日(金)  論文集刊行!



佐藤東洋士・李恩民編『東アジア共同体の可能性―日中関係の再検討』

 待望の論文集『東アジア共同体の可能性―日中関係の再検討』(御茶の水書房、2006年7月)が届いた。立派な装丁である。世界各国の「一度は名前を聞いたことがある」国際政治学者のなかになぜか私の名前が...。誰だこれ...という感じか。もっと頑張って「客員研究員」から次の段階へ進まなければ...。

 いまさらながらであるが、馬場先生の『満州事変への道―幣原外交と田中外交』(中央公論社、1972年)を読み直している。近々刊行されるとうかがっている尊敬する某先生の幣原喜重郎の伝記が待ち遠しい。

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□2006年7月10日(月)  合評会

 刊行されたばかりの毛里先生のご著書『日中関係―戦後から新時代へ』(岩波書店、2006年)の合評会に参加。司会は川島先生、評者は細谷先生、宮城先生、高原先生、若月先生の4名で、新進気鋭の若手研究者の豪華揃い踏みといった感じ。新書ということもあり、一般の方向けに平易な文体で書かれた戦後日中関係論なので、大学の教養ゼミなどで使うのにはうってつけだろう。今後続々と発表されるであろう書評に注目したい。

 川島先生から『公共政策を読む』(北海道大学公共政策大学院、2006年)第1集、第2集を頂いた。昨年1月の国際シンポジウム「日華外交史・日台関係史」での私の簡単な報告「戦後米国の東アジア政策と台湾の日本人技術者留用問題」について、端的にまとめてくださった一文が掲載されていたので、引用しておきたい(現物はこちらを参照)。

 ...大澤武司の報告は、「1950年代日中関係―実質的な日中間の戦後処理過程である『日中民間人道外交』の実証研究」を志しつつ、「留用と遣送」についての過程を国際関係史的に丁寧に追う。
 台湾については、アメリカ側も見ており、米国大使館から国務省への電報などから、台湾では「適切な人材が不足し、充分な情報を持たない中国側担当者が台湾の行政を引き継いだ場合、この島は極めて深刻な経済的困難と極端な無秩序に直面する」ので、「『一時的』かつ『最小限度』の日本人技術者の留用を認めるべきだ」などと、1946年4月に「台湾における日本人技術者留用に関する米中合意」が締結された。ここでは、技術者7000名、家族21000名、最大28000名、1947年1月1日までの留用が想定されていた。
 大澤は、「終戦直後、接収の客体であった『台湾』の日本人引揚及び日本人技術者留用問題が米国の東アジア政策の遂行に一石を投じ、その政策を修正させるに至った」と言う問題提起をおこなう。このように政策過程の中に引き揚げを位置づけることはたいへん重要な作業である...

『公共政策を読む』第1集、51-52頁

 この台湾における日本人技術者留用問題は、戦後の旧「満州国」地域における日本人技術者留用問題に関する国民政府、あるいは米国政府の意見対立を調整していく過程で、極めて重要な意義を持った。
 つまり、1945年12月のトルーマン声明に基づき「中国大陸からの日本人の完全な駆逐」という目的を達成したかった米国と、円滑に満洲地域の有形、無形(技術を含めた)の「敵産」を承継したかった国民政府との間には、戦後東アジア地域における「日本人」の位置づけに大きな認識の差異が存在しており、「台湾」という、「帝国」日本と最も長く、そして密接な関係を保持していた旧植民地に対する国民政府による接収過程でまず顕在化することとなったのである。

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□2006年7月9日(日)  グリーン・カレー

 とりあえずほっとひと息ついたので、家族揃ってカレーを食べに世田谷通り沿いのネパール料理店へ。自宅近くのこのお店は、お昼に食べ放題のバイキングがあり、色々な種類のカレーを一度に楽しめるのが嬉しい。挽き肉のキーマ・カレーや野菜たっぷりの野菜カレーはいつもの定番だが、今日は初めての茄子と鶏肉のグリーン・カレーがあった。筍なども入ったこのカレーはさわやかな辛さなので夏にぴったりである。息子は大好きな焼きたての「ナン」を口一杯に頬張って、特製のとうもろこしスープを堪能していた。

 午後は大学で借りてきた『軍事史学』130号記念特集号「日中戦争の諸相」を読む。少し前の研究特集になるが、こちらをちゃんと読んでから最近刊行された『日中戦争の軍事的展開』を読もうと思っている。日中戦争期における中国共産党、あるいは中国国民党の対日認識の形成過程を改めてめぐることで、建国初期中国、あるいは台湾移転後の国民政府の対日政策を考察し直すことも、当然のことながら重要な視角となってくるだろう。

 あるホームページを見ていたら、「日本近代史研究者占い」というリンクがあり、面白そうなので挑戦してみた。私は「有馬学」先生タイプだそうだ。ウィットに富んだ内容なので、引用させていただくと...


 ...有馬学さんは、浮ついた考え方を嫌う堅実な人。どちらかと言えば地味なほうですが、着実かつ慎重に物事を進め、自分の目標をしっかりと手に入れるタイプです。勉強や仕事にもきちんと取り組むので、伊藤隆大先生の評価も上々です。とても真面目で控えめな人なので、恋愛面では割と古風な考え方をするでしょう。恋愛そのものを楽しむよりは、その先にある結婚を念頭においたおつきあいをしていきそうです。そんなところが、あなたにちょっぴり近寄りがたい雰囲気を植え付けているかもしれません。だからと言ってお手軽な恋愛に走るくらいなら、仕事や趣味に没頭したほうがベター。自分磨きの期間があなたにさらなる輝きを与え、より大きな幸福へと導いてくれるはずです。

...大澤武司さんの辞書にない文字は「はじらい」です。
 当たっているようでちょっと怖い...。

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□2006年7月8日(土)  第一次試験

 良い問題だった。「一二八淞滬抗戦」はちょっと難しかったなぁ...。

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□2006年7月5日(水)  情報公開請求

 ある官公庁に情報公開請求をしていた。恥ずかしながら、具体的な文書を指定して公開請求をしたのは初めてのことである。申請後すぐに受領確認書が届き、その後昨月末に公開通知書が届いた。申請から許可まで3週間。その間、何度も丁寧な確認の電話を頂き、本日無事に資料を手にすることができた。

 事前に公開方法指定書を郵送していたこともあったのだが、時間的に余裕が無かったので、直接某官公庁に出向いたところ、担当官の方が書類など一式を持って公開指定場所の庁舎ビルから入り口受付まで降りて来てくださり、書類一式を手渡してくださった。雨も降っており、庁舎は入り口からかなり離れた場所にあったので、この心遣いは本当に嬉しかった。

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□2006年7月1日(土)  中央大学国際関係研究会

 研究会出席のため多摩へ。台湾大学政治学部教授楊永明教授による「中台関係への国際法的視点」。現在の国際関係における台湾の法的地位について、それを「制約ある国際法人格」とすることで説明を試みられた。@外交的承認の欠如(中国約160に対して台湾は25)、A国際組織への参加制限、という制約要因を挙げながらも、民主的な「独立した憲法」を持つことから「台湾」は「国家」といえるのではないか、と議論を展開された。

 全編英語による報告だったが、大変聞き取り易く、またプレゼンの方法も大変参考となるものだった。国家の国家に対する「外交的承認」が、国家の「選択」に基づく「法的結果」であり、その「選択」によって「外交的承認」を失う国家が「事実上の国家」であることとは別の問題であるとの視角は、1950年代の日中関係を研究する私にとっては、日本の中国に対する「事実上の政府承認」の問題と関連するところもあり、大変興味深かった。

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